皇室典範を改正しようという動きが、最近高まってきたようです。
これ、実はかなり重要な話です。
どうやら、今国会への改正案提出は見送られそうですが、そういう時こそこの問題を考えるべき時と思い、2回にわたって皇室典範改正問題を扱います。
ズバリ、言い切ってしまうと、皇室典範改正問題は、
「女系天皇を認めるか、男系天皇を維持するか」ということだけが論点です。
その是非について論じる前に、我が憲法で「象徴」(1条)とされている天皇と、その母体である皇室というものについて簡単に触れておきましょう。
私は、子どもに、日本という国が出来たのは、いつか、という質問をされて、困ったときがあります。中学時代、業者テストで社会の偏差値がずっと70台だった私ですが、考えてみると、学校でそんなことを教えられていないのです。
しかし、どうやら、我が国が統一政権を作るきっかけになったのは、「大和朝廷」の誕生にあるようです。その初代の王が、「神武天皇」と言われる人物です。
神武天皇が実在したかどうかはわからない、と、
夢のない日教組の教員が突っ込んできそうですが、天皇や皇室というものが、我が国の建国当初から存在してきたということを、昔の人たちが信じていたことは間違いありません。
実は、この皇室には、一つの
「鉄の掟」が存在します。それは、
男系による皇位相続です。
男系というのは、父から息子へ、その息子へと、男性に家を継がせるという仕組みです。これは逆に言うと、一家の主の父親だけを辿っていくと、必ず一族の祖先にたどり着くということでもあります。
そして、なんと、
日本の皇室は、誕生以来このルールを一度も曲げていないのです!!
失礼を承知で言いますが、これは世界遺産と言ってもいいくらい貴重なことです。神武天皇から数えれば、2600年以上(実在性が認められている応神天皇から見ても約1800年)男系というルールに基づいて一つの家が継続しているのです。
今の天皇陛下の中には、聖徳太子だとか中大兄皇子だとか、教科書でしか名前を知らないような人物の時代から続く血が流れているわけです。30歳近くになって初めてこれを知って、私は正直感動しました。(笑)
すごい!と思っているのは、私だけではありません。外国の方々も揃って皇室のすごさを認めています。以下のようなエピソードでも、それがわかります。
●アメリカの大統領が、空港まで白ネクタイ
で出迎える
世界最強(最凶?)の権力者、アメリカ合衆国大統領が、上のようなスタイルで「ぺこぺこ」しなくてはならないのは、世界でたった3人だけです。ローマ法王、イギリス国王、そして、日本の天皇陛下です。
●英国の女王が上座を譲った
イギリスの現在の王朝はウィンザー朝(ウィンザー家の王朝ということ)で、改称前のハノーヴァー朝時代から数えると、292年間続いています。イギリスの女王は、今でもイギリス連邦(カナダ、オーストラリアなど、旧英国領)の元首ですが、それの人物が上座を譲る、つまり、自分より上だと認める王侯貴族は、日本の天皇だけです。
●ローマ法王がわざわざ皇居まで出向いてきた
ローマ法王は泣く子も黙るキリスト教(カトリック)の世界のボスです。その法王、ヨハネ・パウロ2世が、慣例を破って、自らその国のトップのところに赴いたのは、日本を訪問したときだけです。
非常に乱暴な言い方をしてしまえば、
世界で最も権威のある一家が皇室なのです。
その理由は、非常に単純です。皇室が、信じられないほど古いからです。ずっと同じ仕組みで血統を維持してきているという、ただそれだけの理由です。戦乱で王朝が無くなってしまうのは、世界史上珍しいことではありません。だからこそ、「世界で最も古い王朝」である日本の皇室のユニークさが際だっているのです。
ところが、その世界最強の王朝を、台無しにしてしまおうという試みがあります。「女系天皇」の導入がそれです。
問題点をいちいち説明しても迂遠なので、下の画像をご覧頂くとよいでしょう。
そうなのです。女系天皇を認めてしまうと、愛子内親王の家系の男系を辿っても、女系を辿っても、歴代の天皇にたどり着かないのです。
このことは、「世界で最も古い王朝」の滅亡を意味します。
お金や権力や軍事力は後からなんとでもなりますが、世界最古の王朝の称号と、それに伴う権威は二度と戻ってこないのです。勿体ないことだと思いませんか?
ここまでは、この問題を扱ったブログなら、たいてい触れている問題です。
しかし、ここから先がこのブログの真骨頂です。(オーバーな)
実は、女系天皇を認めてもいいのではないか、という、その考え方自体が、大きな問題を抱えているのです。
女系天皇を認めるべきであるという主張の多くは、
「皇室も男女平等の方がいい」
という、ごくごく単純な理由によるものです。
なんと浅はかな、と、笑う無かれ。単純だけに、これを批判するのは非常に難しいのです。
しかし、私は敢えて言います。
皇室には、
男女平等など不要だ!!
と。
なぜなら、文化伝統を現代人の感覚で裁くのは、
「事後法による裁判」という、最悪中の最悪のやり方だからです。
事後法というのは、犯罪行為があった後に、それを裁くために作られる法規範のことです。法学の世界では、これは「絶対にやってはならない禁じ手」として知られています。
分かりやすい例を書きます。
朝、Aさんが通学途中に、田舎にあるB駅の近くに自転車を放置した。そうしたら、その日の正午から行われたB市議会で、「自転車強制撤去条例」という条例が可決された。その条例は、「可決の時点からB駅周辺の自転車は、見つけ次第即刻撤去して鉄クズにする」という内容だった。当然、Aさんの自転車は撤去された。学校が終わって返ってきたら、Aさんは自転車がなくなってしまったので途方に暮れた・・・。
これ、あなたがAさんだったら、「そんな条例知らん!」と文句を言いたくなるはずです。当然です。
駅周辺に駐輪したら撤去されることを知っていれば、そこに止めないという選択も出来たはずです。ところが、その機会もなく、自転車を鉄クズにされてしまった。
これが「事後法による裁判」です。要するに、不意打ちなのです。だからこそ、重要な法律や憲法は「公布」(みんなに知らせる)と「施行」(実際に効力を持つ)を分けているはずです。
確かに、同じ人間で、一つの人格を持っている、だから男女が平等なのは当然だ、という理屈は、シンプルで理に適っているように思えます。
しかし、そのような考え方、いわゆる「近代合理主義」が広く知られるようになったのは、どう古く見積もっても西欧のルネッサンス(14~16世紀)、一般庶民のレベルで言えばフランス革命(1789年)の頃でしょう。皇室の男系相続は、それよりずっと前から存在しています。
男系が男女平等という公理に合わない不合理なものだ、という主張は、完全な反則です。そんなこと言う奴が馬鹿だと言われても仕方がありません。
だったらお前は
中国の纏足や奴隷制度も認めるのか、という声が聞こえてきそうですが、そういうものと男系天皇を比べること自体が愚かです。男系天皇という制度が人を殺したり人権を蹂躙したりしたというのでしょうか?
不合理な伝統なら変えなくてはいけない!というなら、
ローマ法王や歌舞伎役者には男しかなれないことも同じように不合理です。「歌舞伎の世界は男女差別だ!」などと叫ぶ馬鹿はいないはずです。男系天皇もそれと同じなのです。
それに、そもそも、
「男女平等」って、そんなに偉いものなんですかね?
人類が生まれて何百万年経ちますが、男女が完全に平等だった社会は一度も実現していません。それどころか、実現しようとすると、社会がおかしくなってしまった例はたくさんあります。
ロシア革命直後のソ連で、法律によって家族制度を廃止したことがあります。専業主婦が搾取されているから解放して人類平等を実現するというのが理由でした。その結果、
少年による強姦事件が増え、もてる男が少女を手当たり次第に妊娠させ、その多くが堕胎し、社会秩序が崩壊することになりました。(ちなみに、社民党党首の
●福島瑞穂氏は、著書
●「結婚と家族」(岩波新書)で、この
家族制度廃止を絶賛している方です)
もちろん、こんな世の中がいいという人は福島さんとそのお仲間たちくらいしかいないので(笑)、スターリンが実権を握ってすぐに元の家族制度が復活しました。
最近では、
左翼勢力が政権を握ったノルウェーで、女性の役員比率を40%以上にしない企業は処罰する、という法律を作ったら、
移行期間中に8割弱の企業が違法状態になってしまいました。これで、罰則を嫌った上場企業がみんな海外に逃げていったら、
「国破れて男女平等あり」という悲惨な状況になるでしょうね。
こんな不自然な下駄を履かせなければ実現できない「男女平等」が、人類不変の真理なのでしょうか?大いに疑問です。妄想癖のある方々が実権をするのは勝手ですが、そのために社会や普通の人々を犠牲にするのはやめてもらいたいです。勝手に内ゲバでもやってろ、という感じです。
男女平等が男系天皇制度を廃止する根拠として弱いのはわかった。
しかし、それでも「天皇制」を廃止すべきだ!!
・・・・そんな声を
●この新聞の投書欄などで目にします。私の同僚にも、さしたる根拠も無いのに、「天皇制」を廃止すべきだと主張している人がいました。(ちなみに、普段はとてもいい人です)
どうも、
皇室というものに漠然とした反感を持っている日本人が多いように思います。そして、その声が、女系天皇導入、すなわち、
「神武天皇王朝の崩壊」を後押ししているように思うのです。
本人たちにどういう意識があるのかはわかりませんし、好き嫌いもあることでしょう。しかし、ここで一つ忠告しておきます。
日本で、諸外国に比べて安定して豊かな生活をこれからも営んでいきたい、と思っているなら、
皇室制度は絶対に否定すべきではありません。
なぜなら、
天皇や皇室を否定すれば、日本を食い物にし、蹂躙しようとしている勢力に荷担することになってしまうからです。
種明かしは、次回の記事と言うことで・・・。