あの、初めに断っておきますが、トップにある写真は私ではありませんよ(笑)。
この方は、非行カウンセラーの伊藤幸宏さんという方です。
『体当たり子直し』(小学館)や『僕たちはいらない人間ですか?』(扶桑社)といった、青少年問題に関する本を書かれているひとです。
伊藤さんの人となりはこちらをご覧になっていただければわかりますが、私からも簡単に説明させていただきます。
伊藤さんは、もともと神奈川の大暴走族連合のトップでした。警察の壊滅作戦によって逮捕されて刑務所暮らしをした後、自動車修理工場に勤める傍ら、ボランティアで非行少年少女の更生活動をなさってきました。
経歴からして「ユニーク」ですが、この人の子供へのアプローチは、本当に唸らせられるものがあります。私の子供に対する考え方が、この人の著書を読んで一変したほどです。
たとえば、非行少年を更生させるときに、わざと生まれ育った場所から離れたところに住ませて働かせるということをなさっています。これは、本当に鋭いなと思いました。
非行も心の病の一種だとすれば、他の多くの精神疾患と同じように、原因になっているのは人間関係や対人環境なのです。だから、非行をしていた環境に戻れば、せっかく少年院で改心しても、また非行の道を歩んでしまうのです。これを何とかするには、場所を変えるしかありません。
伊藤さんが素晴らしいのは、それをたった一人でも「実践」している点です。もっとも、個人が出来ることには限界があり、こういう取り組みこそ国や自治体の助けがほしい、と著作の中でおっしゃっています。
教科書の中身を若い人たちが自信を持てるように変えていくのも大事ですが、こういった、子供を「すくい上げる」活動も、また充実していてほしいものです。そういう仕組みこそ、本当のセーフネットだと思うのですが。
また、伊藤さんは著作の中で、一番良くないのは「親都合の子育て」だと、喝破されています。
これは、私の体験でも、思い当たることがあります。
教育熱心なご家庭の中には、少なからず自分の子供のことをわかっていない、わかろうとしない親御さんがいるのです。
一番分かりやすい例は、子供の学力から見れば到底届きそうにもない志望校を、子供に押しつけてしまっている親御さんです。面白いことに、そういう家庭に限って、生徒の学力が勉強すればするほど下がっていくことが多いのです。
親御さんとしては、なるだけレベルの高い学校に入れることでその子の将来をいい方向に向かわせたいと思っているのだと思うのです(もちろん、単なる見栄というのもあるかもしれませんが・・・)。
ところが、勉強をしている子供はつまらなさそうにしていることがほとんどです。当然でしょう。志望校の受かるレベルまで成績が上がらなければ、絶対に親に肯定してもらえないのですから、勉強が「苦役」になってしまうのです。
それを見た親御さんは、余計に焦ってしまうのです。私たち塾講師にも、何とかしてくれ、受からせてくれ、と督励してきます。
私はもうそういう親御さんの対処法を覚えたのですが、そうでない真面目な先生などは、それを真に受けて課題をどんどん出します。残して教えていても、義務感が先に立つからどうしても深刻な顔をして接してしまいます。そうなると、子供はますます勉強がつまらなくなる・・・もう、最悪の悪循環です。
これをどうしたら克服できるのでしょうか?実は、簡単なのです。親御さんが自分にとって都合のいい志望校を捨ててしまえばいいだけの話なのです。出発点が間違っているのです。それを改めない限り、誰も幸せにはなれません。
はっきり言いますが、頭のいい子と、そうでない子というのは、どうしても同じことをやっても差が付いてしまいます。しかし、それと子供が真っ当で幸せな人生を歩めるかどうかは別問題です。親御さんにできる一番のことは、その子が出来る範囲で最大限の努力をしたら、受かろうが落ちようが「よくがんばったね!」と言ってあげることです。そういう温かい励ましは、子供ならみんなお父さん・お母さんに言ってもらいたいはずなのですから。
これは、あくまで受験に限った話なのですが、これが家庭内の話ならどうでしょうか。(以下の話は、パクリではなく、私が勝手に作ったたとえ話です)
とても甘えん坊の子供がいるとします。この子には、何の非もありません。そういう性格の子なのです。さんざん甘えさせる(なるべく沢山口をきいてあげたり、一緒に遊んだりする)ようにすれば、そのうち勝手に親から離れていきます。
ところが、一戸建てを買ってしまい、そのローンを返済するために、お母さんが夜までパートに出てしまうようになると、この子は少しずつおかしくなってきます。家のものをわざと壊したり、学校で弱いものイジメをしたりし始めます。原因をきいても、よくわかりません。
伊藤さん流に言えば、これは子供が寂しいから構ってほしいというサインを出しているのです。みなさんも、子供の頃、よくありませんでしたか?親や友達に相手をしてもらえないから、わざとひどいことを言ったり、悪いことと知りながらものを壊したり・・・私はかなり身に覚えがあります(笑)。それと同じです。
親御さんは、ともすると、このような子供の変調を、「しっかりしなさい」などとかえって叱ってしまうことが多いです。それが、間違いなのです。子供は構われたいのです。だから、ほうっておいてはいけません。もしかしたら、その子は近い将来非行に走ってしまうかも知れない。子供は簡単に成長していきますが、落ちていくのもまた簡単なのです。
しつこいですけど、今はやりの、「世界のまずしさ」なんてほうっておいて構いません。白いバンドを300円で買っても、アフリカの内戦やイラクの空爆は終わりません。親御さんなら誰にでもできる社会貢献は、小さい子供にはたくさん甘えさせることなのです。それがゆくゆくは、健全な人格を育成することにつながるのです。
勘違いしてはいけないのは、甘えさせるというのは、ほしいものを買い与えることなんかではないということです。
伊藤さんの著書の中で、心理学者の佐々木正美先生(どんな考えの方かはこちらをご覧ください)がおっしゃっているのですが、ものを買い与えたりするだけの接し方は、最悪に「粗末な育てられ方」です。相手の気持ちを受け止めもせず、物で気をそらしているだけなのですから、当然です。
物を買ってやるから言うことをきけ、というのは、大人の都合で子供の気持ちを軽んじている典型例ですね。なにか、「援助交際」というものにつながる匂いがします。ああいう売春行為を抵抗無くやれてしまう子供というのは、きっと大人との関係を物や金を通してしか築いてこなかったのでしょう。情けない話ですね。
私が子供に対して自信を持って接することが出来るようになったのは、もちろん教える対象についての理解が深まったというのもあるのですが、伊藤さんの著作を読んで感銘を受けたことが大きいと思います。
みなさんも、よかったら伊藤さんの本を読んでみてください。本当に教育や非行少年更生を実行している方の言葉は、重みがあります。
そして、それらの言葉は、まさにみなさんの「うちの子」にもぴったり当てはまることなのです。
最後に、今回の話に関連したこのブログの記事として、
●「結果への足し算」「結果からの引き算」
●結果を出せばいいとうビョーキ
があります。
よかったら、ご覧になってください。
この方は、非行カウンセラーの伊藤幸宏さんという方です。
『体当たり子直し』(小学館)や『僕たちはいらない人間ですか?』(扶桑社)といった、青少年問題に関する本を書かれているひとです。
伊藤さんの人となりはこちらをご覧になっていただければわかりますが、私からも簡単に説明させていただきます。
伊藤さんは、もともと神奈川の大暴走族連合のトップでした。警察の壊滅作戦によって逮捕されて刑務所暮らしをした後、自動車修理工場に勤める傍ら、ボランティアで非行少年少女の更生活動をなさってきました。
経歴からして「ユニーク」ですが、この人の子供へのアプローチは、本当に唸らせられるものがあります。私の子供に対する考え方が、この人の著書を読んで一変したほどです。
たとえば、非行少年を更生させるときに、わざと生まれ育った場所から離れたところに住ませて働かせるということをなさっています。これは、本当に鋭いなと思いました。
非行も心の病の一種だとすれば、他の多くの精神疾患と同じように、原因になっているのは人間関係や対人環境なのです。だから、非行をしていた環境に戻れば、せっかく少年院で改心しても、また非行の道を歩んでしまうのです。これを何とかするには、場所を変えるしかありません。
伊藤さんが素晴らしいのは、それをたった一人でも「実践」している点です。もっとも、個人が出来ることには限界があり、こういう取り組みこそ国や自治体の助けがほしい、と著作の中でおっしゃっています。
教科書の中身を若い人たちが自信を持てるように変えていくのも大事ですが、こういった、子供を「すくい上げる」活動も、また充実していてほしいものです。そういう仕組みこそ、本当のセーフネットだと思うのですが。
また、伊藤さんは著作の中で、一番良くないのは「親都合の子育て」だと、喝破されています。
これは、私の体験でも、思い当たることがあります。
教育熱心なご家庭の中には、少なからず自分の子供のことをわかっていない、わかろうとしない親御さんがいるのです。
一番分かりやすい例は、子供の学力から見れば到底届きそうにもない志望校を、子供に押しつけてしまっている親御さんです。面白いことに、そういう家庭に限って、生徒の学力が勉強すればするほど下がっていくことが多いのです。
親御さんとしては、なるだけレベルの高い学校に入れることでその子の将来をいい方向に向かわせたいと思っているのだと思うのです(もちろん、単なる見栄というのもあるかもしれませんが・・・)。
ところが、勉強をしている子供はつまらなさそうにしていることがほとんどです。当然でしょう。志望校の受かるレベルまで成績が上がらなければ、絶対に親に肯定してもらえないのですから、勉強が「苦役」になってしまうのです。
それを見た親御さんは、余計に焦ってしまうのです。私たち塾講師にも、何とかしてくれ、受からせてくれ、と督励してきます。
私はもうそういう親御さんの対処法を覚えたのですが、そうでない真面目な先生などは、それを真に受けて課題をどんどん出します。残して教えていても、義務感が先に立つからどうしても深刻な顔をして接してしまいます。そうなると、子供はますます勉強がつまらなくなる・・・もう、最悪の悪循環です。
これをどうしたら克服できるのでしょうか?実は、簡単なのです。親御さんが自分にとって都合のいい志望校を捨ててしまえばいいだけの話なのです。出発点が間違っているのです。それを改めない限り、誰も幸せにはなれません。
はっきり言いますが、頭のいい子と、そうでない子というのは、どうしても同じことをやっても差が付いてしまいます。しかし、それと子供が真っ当で幸せな人生を歩めるかどうかは別問題です。親御さんにできる一番のことは、その子が出来る範囲で最大限の努力をしたら、受かろうが落ちようが「よくがんばったね!」と言ってあげることです。そういう温かい励ましは、子供ならみんなお父さん・お母さんに言ってもらいたいはずなのですから。
これは、あくまで受験に限った話なのですが、これが家庭内の話ならどうでしょうか。(以下の話は、パクリではなく、私が勝手に作ったたとえ話です)
とても甘えん坊の子供がいるとします。この子には、何の非もありません。そういう性格の子なのです。さんざん甘えさせる(なるべく沢山口をきいてあげたり、一緒に遊んだりする)ようにすれば、そのうち勝手に親から離れていきます。
ところが、一戸建てを買ってしまい、そのローンを返済するために、お母さんが夜までパートに出てしまうようになると、この子は少しずつおかしくなってきます。家のものをわざと壊したり、学校で弱いものイジメをしたりし始めます。原因をきいても、よくわかりません。
伊藤さん流に言えば、これは子供が寂しいから構ってほしいというサインを出しているのです。みなさんも、子供の頃、よくありませんでしたか?親や友達に相手をしてもらえないから、わざとひどいことを言ったり、悪いことと知りながらものを壊したり・・・私はかなり身に覚えがあります(笑)。それと同じです。
親御さんは、ともすると、このような子供の変調を、「しっかりしなさい」などとかえって叱ってしまうことが多いです。それが、間違いなのです。子供は構われたいのです。だから、ほうっておいてはいけません。もしかしたら、その子は近い将来非行に走ってしまうかも知れない。子供は簡単に成長していきますが、落ちていくのもまた簡単なのです。
しつこいですけど、今はやりの、「世界のまずしさ」なんてほうっておいて構いません。白いバンドを300円で買っても、アフリカの内戦やイラクの空爆は終わりません。親御さんなら誰にでもできる社会貢献は、小さい子供にはたくさん甘えさせることなのです。それがゆくゆくは、健全な人格を育成することにつながるのです。
勘違いしてはいけないのは、甘えさせるというのは、ほしいものを買い与えることなんかではないということです。
伊藤さんの著書の中で、心理学者の佐々木正美先生(どんな考えの方かはこちらをご覧ください)がおっしゃっているのですが、ものを買い与えたりするだけの接し方は、最悪に「粗末な育てられ方」です。相手の気持ちを受け止めもせず、物で気をそらしているだけなのですから、当然です。
物を買ってやるから言うことをきけ、というのは、大人の都合で子供の気持ちを軽んじている典型例ですね。なにか、「援助交際」というものにつながる匂いがします。ああいう売春行為を抵抗無くやれてしまう子供というのは、きっと大人との関係を物や金を通してしか築いてこなかったのでしょう。情けない話ですね。
私が子供に対して自信を持って接することが出来るようになったのは、もちろん教える対象についての理解が深まったというのもあるのですが、伊藤さんの著作を読んで感銘を受けたことが大きいと思います。
みなさんも、よかったら伊藤さんの本を読んでみてください。本当に教育や非行少年更生を実行している方の言葉は、重みがあります。
そして、それらの言葉は、まさにみなさんの「うちの子」にもぴったり当てはまることなのです。
最後に、今回の話に関連したこのブログの記事として、
●「結果への足し算」「結果からの引き算」
●結果を出せばいいとうビョーキ
があります。
よかったら、ご覧になってください。