目を惹くニュースがあったので、紹介しておきます。このブログが最近取り上げているテーマと密接に関連しているので、是非ご覧下さい。
日産、ロシア工場着工 2車種、09年に生産開始
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/36866.html
--------以下引用--------
日産自動車は八日、ロシア第二の都市、サンクトペテルブルク市郊外で、乗用車の組立工場の起工式を行った。日本企業のロシアでの乗用車生産工場建設はトヨタ自動車に次いで二社目。二○○九年初頭から生産を開始し、生産能力は最大で年間五万台を予定している。
カルロス・タバレス副社長は式典後の会見で、生産車種は高級セダン「ティアナ」とスポーツタイプ多目的車(SUV)「エクストレイル」になることを初めて発表。同社がロシア市場の成長性を高く評価していることを強調した。投資総額は二億ドル(約二百四十六億円)に上り、七百五十人の地元雇用を予定している。
(中略)
サンクトペテルブルクには世界の自動車企業が相次ぎ進出し、トヨタは今年末から乗用車生産を開始する計画。スズキも同市に工場を建設するほか、三菱自動車も工場建設を検討している。
--------引用以上--------
我が国の自動車工業が、ロシアに進出するという話です。この話には二つの意味があります。
まず、ロシアの経済がそれほど好調だということです。参考になるニュースを掲げておきます。
ロシア経済会合に1万人 資源大国への関心高く
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/economics/20070609/20070609_009.shtml
--------以下引用--------
ロシアのサンクトペテルブルクで8日、世界の大企業のトップらが集まり、ロシアの経済情勢などを話し合う「国際経済フォーラム」が開幕した。
主催する経済発展貿易省によると、参加者は過去最高の約1万人。高成長を続ける資源大国ロシアへの各国の関心は高く、中国は呉儀副首相率いる訪問団を派遣した。
国際石油資本(メジャー)の英BPなど約60カ国の企業の幹部ら500人以上に加え、世界貿易機関(WTO)のラミー事務局長、シュワブ米通商代表らが出席。ロシア側はプーチン大統領はじめ政財界の要人が勢ぞろいし、10日までの期間中「エネルギー」「ロシアなど新興市場の成長」などのテーマで意見交換する。商談も予定され、昨年の3倍を超える計33億ドル(約4000億円)の契約が結ばれる見通し。
--------引用以上--------
上に挙げられているような契約が本当に成立するかは別問題として、参加人数を見ると、ロシア経済に対する経済界の期待が大きいことが窺えます。
ロシアの経済は何故好調かときかれたら、私は一言で答えることができます。
「プーチン大統領の指導力と、9・11事件のおかげだ」
ロシアは共産主義のソ連時代から資源輸出国として知られいました。ソ連崩壊とその後の混乱で一時的に停滞はするものの、プーチン大統領が石油企業の整理統合、それに続く事実上の国有化を図りました。そして、同時多発テロ(2001年)以降の原油高を利用する形で、以前の力を取り戻してきたのです。
この人は、ソ連時代を彷彿とさせる言論弾圧(たとえば●こちらのブログを参照)をやっていますが、別に驚くべき事ではありません。ランドパワー(大陸国家)というのは、そういうものだからです。すなわち、長大な国境線を持ち、国内に様々な民族を抱えるロシアのよう国は、自由主義で国を運営すると破綻してしまいます。ゴルバチョフ時代がまさにそうでした。
それを防ぐには、強権政治で統治するしかないのです。別に、我々に迷惑をかけなければ「どうぞご勝手に」で済む問題でしかありません(中国のように、海洋進出を狙うようになれば話は別だが)。
それに、プーチンの支持率は依然として高いものがあります。単純です。国民をちゃんと食わせているからです。
それが端的に現れているのは、車の売れ行きです。
露で日本車ブーム 販売台数5年で17倍
http://www.yomiuri.co.jp/atcars/news/20070604ve02.htm
--------以下引用--------
ロシアで日本車の人気が高まっている。石油などの資源輸出で得た巨額の外貨が国民の所得水準を押し上げ、アニメなどが火を付けた「日本文化ブーム」も追い風になっている。現地生産工場を建設中のトヨタ自動車、日産自動車に加え、三菱自動車工業なども現地生産に向けた調査を進めている。
お相撲さんと芸者が乗った新車が富士山を背景に疾走する――ロシア国内では、三菱の小型車「ランサー」のテレビCMが大好評だ。今年3月にはロシアの販売総代理店「ロルフ・ホールディングス」の一行約80人が来日し、益子修社長に片言の日本語で「クルマクダサイ」と詰め寄った。
三菱は他社に先駆けて1992年からロシアに輸出を始め、ランサーはロシアでは日本車の代名詞だ。2006年には4万5000台を販売し、車種別の輸入車販売数では首位だ。
米国の自動車業界情報サービス会社「R・L・Polk」社によると、06年にロシアで販売された新車(乗用車)181万台のうち日本車は33万台。ここ5年間の増加率は、全体の1・8倍に対し、日本車は約17倍に達する。
(中略)
資源高で裕福な国民が増え、利幅の大きい中・高級車も売れる。ロシア車は価格が安いにもかかわらず、01年に9割超だったシェア(市場占有率)は、5年で5割以下に減った。
三菱は昨年末から生産工場建設に向けた現地調査を進めている。ロシア第2の都市サンクトペテルブルクでは、トヨタが07年末、日産が09年の稼働を目指して完成車工場を建設中だ。現地生産なら25%の関税もかからず、価格競争力も増す。
ただ、現地生産の場合、一定量の部品の現地調達をしなければ、関税の減免措置が受けられないなど制約も多いが、地元メーカーの技術力はまだ未熟だ。自動車業界に限らず、過去にはロシア政府や自治体が朝令暮改で企業に対する規則を変えたり、不透明な理由で巨額な罰金を請求する事例もあった。「事業拡大にはまだリスクが大きい」(ホンダ)と慎重なメーカーも多い。
--------引用以上--------
庶民の生活に余裕があり、今後も安定した収入が確保できる見通しがある(=ローンが組める)からこそ、ベンツでもBMWでもなく、大衆車がメインの日本車が売れているのでしょう。
この豊かさも、ロシアが西欧べったりにならず、ランドパワーの王道に則って国を統治しているからこそもたらされたものです。プーチンという人物は、ロシアの「本来あるべき姿」をよく分かっているのです。
さて、冒頭のニュースから分かるもう一つのこととは何か。
それは、日本の基幹産業だと考えられてきた自動車産業が、日本を捨てることが確実になってきたということです。
日本での新車の売れ行きがさんざんなのは、以下のニュースでもわかります。
新車販売“総崩れ” 2007年上期
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200707030009a.nwc
--------以下引用--------
■登録車30年前の水準/軽自動車4年ぶり減
日本自動車販売協会連合会(自販連)が2日に発表した2007年上期(1~6月)の登録車(軽自動車除く)の新車販売台数は、前年同期比10・5%減の178万8440台と2年連続で減少した。1977年以来30年ぶりに180万台を割り込んだ。同日、全国軽自動車協会連合会が発表した軽自動車の上期の販売台数は1・7%減の105万4080台で、好調だった軽自動車も4年ぶりに減少に転じ、日本の自動車需要は総崩れの様相を呈してきた。
上期の登録車販売台数は、小型乗用車が15・1%減の89万2206台と大幅に減少するなど、乗用車、商用車を含めて全項目で減少。6月単月の新車販売台数も前年同月比11・2%減の29万1640台と24カ月連続減少するなど需要回復の傾向はみえておらず、「打つ手なし」(自販連広報室)の状況となっている。
販売低迷の理由は、景気が回復しても個人消費に大きな改善がみられず、耐久消費財の自動車への出費が家計の中で後回しになっていることが大きい。「税制の抜本的な見直しなどがない限り増加はない」(同)とし、需要回復には家計の負担軽減策が必要と訴えている。
--------引用以上--------
フジサンケイビジネスアイの記事ですが、以前の●外資べったりのムカムカする記事に比べて、実態をきちんと捉えています。
>販売低迷の理由は、景気が回復しても個人消費に大きな改善が
>みられず、耐久消費財の自動車への出費が家計の中で後回しに
>なっていることが大きい。
景気が回復しているだの、税収がアップしただのとニュースで言っていても、「ホントかよ」と思うのは、企業の業績は良くなっても国民一人一人の購買力はどんどん減少しているからです。
会社が儲かっているのに、国民一人一人の使えるお金が減っているのは、本来国民の手に委ねるべき貨幣価値を削り、企業の内部留保にしているからです。
簡単に言えば、お米を作っている農家が、苗を作らずに、来年の苗にするための米(種もみ)を売り払っているのと同じです。一時的には儲かりますが、将来返ってくる貨幣価値を犠牲にしているので、やがてジリ貧になります。小学生にもわかる理屈です。
>好調だった軽自動車も4年ぶりに減少に転じ、
というところも、それを端的に表しています。今までは「収入減→維持費の低い軽自動車へ」という流れがあり、登録自動車の販売台数の減少を余所に、軽自動車は売りに売れていたのです。しかし、もう軽自動車すら買えない層が出てきているわけです。いよいよ、種もみも食い尽くしたということでしょうか。
そうなると、根本的な解決策は、国民一人ひとりの可処分所得を増やすしかないわけですが、自動車業界の考えていることは全く逆です。簡単に言えば、
「日本で儲からないなら外国で売ればいい」
というものです。だから、一気に自動車会社が四社もロシアに進出するのです。
今の自動車会社の行動様式は、完全に「グローバリスト」(利益の極大化のために、国内への影響を顧みずに海外へ進出し、国家間の枠組みを取り払おうとする人々)のそれになってしまっています。
もしかしたら、10年後トヨタはロサンゼルスに、日産はモスクワに、スズキはニューデリーに本社を移転しているかもしれません。そんな国が、自動車王国と呼べるでしょうか。
グローバリストを野放しにすると、彼らは利益の極大化のために、生まれた国を粗末にし、やがて捨てようとするのです。戦前の満州に入れ込んだ財閥など、まさにそのような亡国の徒でした。
しかも、進出した土地(大陸)は周囲が敵だらけなので、権益を守るためには武力を投入するしかありません。満州の関東軍が最大70万の兵力を誇ったことからも、そのコストが膨大であることがわかります。
そのような軍事力の投射ができないならば、いずれはその権益を奪われることになります。ランドパワーの国は、約束を守らないからです。三つ目の読売新聞の記事にも、
>自動車業界に限らず、過去にはロシア政府や自治体が
>朝令暮改で企業に対する規則を変えたり、不透明な理由で
>巨額な罰金を請求する事例もあった。
と、書いてあるではありませんか。
最近でも日本は、ロシアの豹変で痛い目に遭わされています。「サハリンのガス田開発」がそれです。開発費用を散々出させておいて、いざ操業間近になったら環境保護を名目にロシア企業に権益を譲れと言い出したという事例です。(詳しくは●以前の記事を参照)。これこそが、ランドパワーというものなのです。
つまり、日本は大陸に進出するといずれは損する運命にあるということです。
日本の場合、基本的に内需を中心に経済を回し、余った生産物を外国に売るくらいでちょうどいいのです。それを可能にする条件(技術力の高さ、教育程度の高さ、人口密度、恵まれた水資源など)が日本にはあります。
歴史を見ても、日本が平和で豊かだった時代(平安時代、江戸時代、戦後のオイルショックまでの時期)は内需中心の仕組みを採用し、対外関係はむしろ閉鎖的でした。逆もまた真なり、大陸との付き合いが活発になった時期(飛鳥時代、室町・戦国時代、そして昭和)は、動乱の時代だったということです。
ロシアは、資源の切り売りと狡猾な外交、そして強権政治という「本来あるべき姿」を忠実に実行して国を豊かにしました。
日本も、内需中心という「あるべき姿」に戻ってはいけない道理はないはずです。今からでも決して遅くはありません。日本車を日本人が買える国を取り戻しましょう。
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同和問題に対して体当たりで取り組んでいるブロガー、●なめ猫♪さんの記事が「正論」8月号に掲載されました。ネットの世界から実社会へ殴り込み(笑)するなめ猫氏を是非応援よろしくお願いします。
日産、ロシア工場着工 2車種、09年に生産開始
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/36866.html
--------以下引用--------
日産自動車は八日、ロシア第二の都市、サンクトペテルブルク市郊外で、乗用車の組立工場の起工式を行った。日本企業のロシアでの乗用車生産工場建設はトヨタ自動車に次いで二社目。二○○九年初頭から生産を開始し、生産能力は最大で年間五万台を予定している。
カルロス・タバレス副社長は式典後の会見で、生産車種は高級セダン「ティアナ」とスポーツタイプ多目的車(SUV)「エクストレイル」になることを初めて発表。同社がロシア市場の成長性を高く評価していることを強調した。投資総額は二億ドル(約二百四十六億円)に上り、七百五十人の地元雇用を予定している。
(中略)
サンクトペテルブルクには世界の自動車企業が相次ぎ進出し、トヨタは今年末から乗用車生産を開始する計画。スズキも同市に工場を建設するほか、三菱自動車も工場建設を検討している。
--------引用以上--------
我が国の自動車工業が、ロシアに進出するという話です。この話には二つの意味があります。
まず、ロシアの経済がそれほど好調だということです。参考になるニュースを掲げておきます。
ロシア経済会合に1万人 資源大国への関心高く
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/economics/20070609/20070609_009.shtml
--------以下引用--------
ロシアのサンクトペテルブルクで8日、世界の大企業のトップらが集まり、ロシアの経済情勢などを話し合う「国際経済フォーラム」が開幕した。
主催する経済発展貿易省によると、参加者は過去最高の約1万人。高成長を続ける資源大国ロシアへの各国の関心は高く、中国は呉儀副首相率いる訪問団を派遣した。
国際石油資本(メジャー)の英BPなど約60カ国の企業の幹部ら500人以上に加え、世界貿易機関(WTO)のラミー事務局長、シュワブ米通商代表らが出席。ロシア側はプーチン大統領はじめ政財界の要人が勢ぞろいし、10日までの期間中「エネルギー」「ロシアなど新興市場の成長」などのテーマで意見交換する。商談も予定され、昨年の3倍を超える計33億ドル(約4000億円)の契約が結ばれる見通し。
--------引用以上--------
上に挙げられているような契約が本当に成立するかは別問題として、参加人数を見ると、ロシア経済に対する経済界の期待が大きいことが窺えます。
ロシアの経済は何故好調かときかれたら、私は一言で答えることができます。
「プーチン大統領の指導力と、9・11事件のおかげだ」
ロシアは共産主義のソ連時代から資源輸出国として知られいました。ソ連崩壊とその後の混乱で一時的に停滞はするものの、プーチン大統領が石油企業の整理統合、それに続く事実上の国有化を図りました。そして、同時多発テロ(2001年)以降の原油高を利用する形で、以前の力を取り戻してきたのです。
この人は、ソ連時代を彷彿とさせる言論弾圧(たとえば●こちらのブログを参照)をやっていますが、別に驚くべき事ではありません。ランドパワー(大陸国家)というのは、そういうものだからです。すなわち、長大な国境線を持ち、国内に様々な民族を抱えるロシアのよう国は、自由主義で国を運営すると破綻してしまいます。ゴルバチョフ時代がまさにそうでした。
それを防ぐには、強権政治で統治するしかないのです。別に、我々に迷惑をかけなければ「どうぞご勝手に」で済む問題でしかありません(中国のように、海洋進出を狙うようになれば話は別だが)。
それに、プーチンの支持率は依然として高いものがあります。単純です。国民をちゃんと食わせているからです。
それが端的に現れているのは、車の売れ行きです。
露で日本車ブーム 販売台数5年で17倍
http://www.yomiuri.co.jp/atcars/news/20070604ve02.htm
--------以下引用--------
ロシアで日本車の人気が高まっている。石油などの資源輸出で得た巨額の外貨が国民の所得水準を押し上げ、アニメなどが火を付けた「日本文化ブーム」も追い風になっている。現地生産工場を建設中のトヨタ自動車、日産自動車に加え、三菱自動車工業なども現地生産に向けた調査を進めている。
お相撲さんと芸者が乗った新車が富士山を背景に疾走する――ロシア国内では、三菱の小型車「ランサー」のテレビCMが大好評だ。今年3月にはロシアの販売総代理店「ロルフ・ホールディングス」の一行約80人が来日し、益子修社長に片言の日本語で「クルマクダサイ」と詰め寄った。
三菱は他社に先駆けて1992年からロシアに輸出を始め、ランサーはロシアでは日本車の代名詞だ。2006年には4万5000台を販売し、車種別の輸入車販売数では首位だ。
米国の自動車業界情報サービス会社「R・L・Polk」社によると、06年にロシアで販売された新車(乗用車)181万台のうち日本車は33万台。ここ5年間の増加率は、全体の1・8倍に対し、日本車は約17倍に達する。
(中略)
資源高で裕福な国民が増え、利幅の大きい中・高級車も売れる。ロシア車は価格が安いにもかかわらず、01年に9割超だったシェア(市場占有率)は、5年で5割以下に減った。
三菱は昨年末から生産工場建設に向けた現地調査を進めている。ロシア第2の都市サンクトペテルブルクでは、トヨタが07年末、日産が09年の稼働を目指して完成車工場を建設中だ。現地生産なら25%の関税もかからず、価格競争力も増す。
ただ、現地生産の場合、一定量の部品の現地調達をしなければ、関税の減免措置が受けられないなど制約も多いが、地元メーカーの技術力はまだ未熟だ。自動車業界に限らず、過去にはロシア政府や自治体が朝令暮改で企業に対する規則を変えたり、不透明な理由で巨額な罰金を請求する事例もあった。「事業拡大にはまだリスクが大きい」(ホンダ)と慎重なメーカーも多い。
--------引用以上--------
庶民の生活に余裕があり、今後も安定した収入が確保できる見通しがある(=ローンが組める)からこそ、ベンツでもBMWでもなく、大衆車がメインの日本車が売れているのでしょう。
この豊かさも、ロシアが西欧べったりにならず、ランドパワーの王道に則って国を統治しているからこそもたらされたものです。プーチンという人物は、ロシアの「本来あるべき姿」をよく分かっているのです。
さて、冒頭のニュースから分かるもう一つのこととは何か。
それは、日本の基幹産業だと考えられてきた自動車産業が、日本を捨てることが確実になってきたということです。
日本での新車の売れ行きがさんざんなのは、以下のニュースでもわかります。
新車販売“総崩れ” 2007年上期
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200707030009a.nwc
--------以下引用--------
■登録車30年前の水準/軽自動車4年ぶり減
日本自動車販売協会連合会(自販連)が2日に発表した2007年上期(1~6月)の登録車(軽自動車除く)の新車販売台数は、前年同期比10・5%減の178万8440台と2年連続で減少した。1977年以来30年ぶりに180万台を割り込んだ。同日、全国軽自動車協会連合会が発表した軽自動車の上期の販売台数は1・7%減の105万4080台で、好調だった軽自動車も4年ぶりに減少に転じ、日本の自動車需要は総崩れの様相を呈してきた。
上期の登録車販売台数は、小型乗用車が15・1%減の89万2206台と大幅に減少するなど、乗用車、商用車を含めて全項目で減少。6月単月の新車販売台数も前年同月比11・2%減の29万1640台と24カ月連続減少するなど需要回復の傾向はみえておらず、「打つ手なし」(自販連広報室)の状況となっている。
販売低迷の理由は、景気が回復しても個人消費に大きな改善がみられず、耐久消費財の自動車への出費が家計の中で後回しになっていることが大きい。「税制の抜本的な見直しなどがない限り増加はない」(同)とし、需要回復には家計の負担軽減策が必要と訴えている。
--------引用以上--------
フジサンケイビジネスアイの記事ですが、以前の●外資べったりのムカムカする記事に比べて、実態をきちんと捉えています。
>販売低迷の理由は、景気が回復しても個人消費に大きな改善が
>みられず、耐久消費財の自動車への出費が家計の中で後回しに
>なっていることが大きい。
景気が回復しているだの、税収がアップしただのとニュースで言っていても、「ホントかよ」と思うのは、企業の業績は良くなっても国民一人一人の購買力はどんどん減少しているからです。
会社が儲かっているのに、国民一人一人の使えるお金が減っているのは、本来国民の手に委ねるべき貨幣価値を削り、企業の内部留保にしているからです。
簡単に言えば、お米を作っている農家が、苗を作らずに、来年の苗にするための米(種もみ)を売り払っているのと同じです。一時的には儲かりますが、将来返ってくる貨幣価値を犠牲にしているので、やがてジリ貧になります。小学生にもわかる理屈です。
>好調だった軽自動車も4年ぶりに減少に転じ、
というところも、それを端的に表しています。今までは「収入減→維持費の低い軽自動車へ」という流れがあり、登録自動車の販売台数の減少を余所に、軽自動車は売りに売れていたのです。しかし、もう軽自動車すら買えない層が出てきているわけです。いよいよ、種もみも食い尽くしたということでしょうか。
そうなると、根本的な解決策は、国民一人ひとりの可処分所得を増やすしかないわけですが、自動車業界の考えていることは全く逆です。簡単に言えば、
「日本で儲からないなら外国で売ればいい」
というものです。だから、一気に自動車会社が四社もロシアに進出するのです。
今の自動車会社の行動様式は、完全に「グローバリスト」(利益の極大化のために、国内への影響を顧みずに海外へ進出し、国家間の枠組みを取り払おうとする人々)のそれになってしまっています。
もしかしたら、10年後トヨタはロサンゼルスに、日産はモスクワに、スズキはニューデリーに本社を移転しているかもしれません。そんな国が、自動車王国と呼べるでしょうか。
グローバリストを野放しにすると、彼らは利益の極大化のために、生まれた国を粗末にし、やがて捨てようとするのです。戦前の満州に入れ込んだ財閥など、まさにそのような亡国の徒でした。
しかも、進出した土地(大陸)は周囲が敵だらけなので、権益を守るためには武力を投入するしかありません。満州の関東軍が最大70万の兵力を誇ったことからも、そのコストが膨大であることがわかります。
そのような軍事力の投射ができないならば、いずれはその権益を奪われることになります。ランドパワーの国は、約束を守らないからです。三つ目の読売新聞の記事にも、
>自動車業界に限らず、過去にはロシア政府や自治体が
>朝令暮改で企業に対する規則を変えたり、不透明な理由で
>巨額な罰金を請求する事例もあった。
と、書いてあるではありませんか。
最近でも日本は、ロシアの豹変で痛い目に遭わされています。「サハリンのガス田開発」がそれです。開発費用を散々出させておいて、いざ操業間近になったら環境保護を名目にロシア企業に権益を譲れと言い出したという事例です。(詳しくは●以前の記事を参照)。これこそが、ランドパワーというものなのです。
つまり、日本は大陸に進出するといずれは損する運命にあるということです。
日本の場合、基本的に内需を中心に経済を回し、余った生産物を外国に売るくらいでちょうどいいのです。それを可能にする条件(技術力の高さ、教育程度の高さ、人口密度、恵まれた水資源など)が日本にはあります。
歴史を見ても、日本が平和で豊かだった時代(平安時代、江戸時代、戦後のオイルショックまでの時期)は内需中心の仕組みを採用し、対外関係はむしろ閉鎖的でした。逆もまた真なり、大陸との付き合いが活発になった時期(飛鳥時代、室町・戦国時代、そして昭和)は、動乱の時代だったということです。
ロシアは、資源の切り売りと狡猾な外交、そして強権政治という「本来あるべき姿」を忠実に実行して国を豊かにしました。
日本も、内需中心という「あるべき姿」に戻ってはいけない道理はないはずです。今からでも決して遅くはありません。日本車を日本人が買える国を取り戻しましょう。
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同和問題に対して体当たりで取り組んでいるブロガー、●なめ猫♪さんの記事が「正論」8月号に掲載されました。ネットの世界から実社会へ殴り込み(笑)するなめ猫氏を是非応援よろしくお願いします。
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「こいつはいつもランドパワーとかグローバリストとか生徒の前でも言ってる変な塾講師なんじゃないか?」(笑)とか、「コメントを書き込む時間からして、ネット中毒なんじゃないか?」(笑)とか、憶測されるのも嫌なので、たまには趣味らしいものを紹介しておきましょう。
私は、ひとりでも外国料理のレストランにでかけて食事を摂るのが好きです。
以前はフランス料理やインド料理が多かったのですが、最近これに「ロシア料理」が加わりました。
今日は、私が何度か行っている東京・新宿のロシア料理店「スンガリー」をご紹介いたします。
まず、店内です。

少し薄暗い感じですが、まあカリブ海料理やメキシコ料理を食べるわけではないので(笑)これくらいでちょうどいいでしょう。
食前酒は、ビールにしました。ロシアで最も飲まれている「バルチカБалтика」というビールです。

詳しくは●こちらのリンクをご覧下さい。このビールには0から10まで番号が振ってあって、それぞれ味や色が異なるというのがセールスポイントのようです。私が飲んだのは「3番」(ラガービール)です。
私は酒類はあまり好きではないのですが、外国製のビールは好んで飲みます。アメリカの●「ミラー」というブランドが特に好きですが、バルチカの3番はアルコール度数や口当たりがミラーと似ていて、気に入りました。
ロシアに行ったら、「俺は酒が飲めなくはない」と主張するために、バルチカの3番を飲むことにします(笑)。ウォッカводкаが飲めないと人間扱いしてもらえないかもしれませんが(笑)。
次は、前菜です。鮭のクレープ(блины)包みです。

フランス料理でも似たようなのを食べたことがあります(●こちらのレストランの「そば粉のクレープ」)。可もなく不可もなくといったところでしょうか。玉ねぎに生臭さがなかったのは、当たり前と言えば当たり前ですが、「さすがレストラン、自分の作る料理とは違う」と実感しました(笑)。
次に、スープです。ボルシチборщも選べたのですが、迷わず「ラグマンлагмон」にしました。

画像を見れば一目瞭然ですが、ラーメンです(笑)。ウズベキスタンでは麺料理を「ラグマン」と言うようです(ロシア語になるとЛАГМАН ДУНГАНСКИЙ 「中央アジアのラグマン」とでもいうことか)。ДУНГАНというのは、トルコ系の民族を指す言葉ですから、多分中国で食べていた麺類がシルクロードを経て中央アジアに伝わったのでしょう。
味は、「チリトマトヌードル」のような感じです。ウズベキスタンに行くと日本食はあまり食べられないでしょうから、これが出てくると有り難いことでしょう。もっとも、ロシアなら「ラプシャーлапша」と呼ばれるカップ麺(だいたい韓国製)が沢山売っていますが・・・。
今回のはスープ麺でしたが、「焼きラグマン(Ковурма лагмон、ロシア語風にлапша поджаренная)」というのもあるみたいです(●こういう感じです)。旅行に行ったら、是非食べてみたいですね。
さて、メインディッシュです。これも中央アジア起源の「シャシリクшашлык」です。

写真だとただの一口ステーキのように見えますが、出てくるときは串刺しで出てきます。要するにバーベキューです。「そのまま食べるんですよね」ときいたら、「熱いので皿に取ります」と言われてしまいました(笑)。
肉は羊肉ですが、臭みが全くなかったのにはビックリしました。牛肉を食べているような気になり、思わず店員さんに確かめてしまったほどです。脂をきちんと取ると臭みがなくなるようですね。
食後には、「ロシアンティーчай」をいただきました。

普通の紅茶と大きく違うのは、写真左側にあるようにジャムが付いている点です。それぞれ「カシス」「サクランボ」「バラと蜂蜜」のジャムでした。
そして、飲み方はというと、中に入れてかき混ぜるのではありません。ジャムを口に入れて舐めるのです。そこにお茶を入れて薄めるような感じです。
サクランボというのは残留農薬がかなり多い(笑)のであまり手を付けたくなかったのですが、そのまま残すのも何なので、一口だけもらいました(こういうときまで食の安全とやらこだわると、興が冷めるのでやめた方がよい)。カシスのジャムが一番美味しかったですね。
これで5000円を下回ったので、満足できました。
しかし、いい気分で外に出たら、マッサージを勧誘する中国人女性が(笑)。そう、ここはかの悪名高き「歌舞伎町」。
すぐに、道の反対側である西武新宿駅側に逃げました(笑)。閉店時間は早いですが、純朴な方(笑)は「新宿西口店」をご利用になる方がよいかもしれませんね。
うーむ、出来上がった記事を一瞥すると、わざとらしくロシア語を挿入しているのが実にイラヤシイ記事になってしまいました。
一応ネットサーフィンだけでなく、ロシア語を勉強しているということを見せつけておきたかったのです。ご容赦下さい
ロシア料理 スンガリー
http://www.sungari.jp/
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私は、ひとりでも外国料理のレストランにでかけて食事を摂るのが好きです。
以前はフランス料理やインド料理が多かったのですが、最近これに「ロシア料理」が加わりました。
今日は、私が何度か行っている東京・新宿のロシア料理店「スンガリー」をご紹介いたします。
まず、店内です。

少し薄暗い感じですが、まあカリブ海料理やメキシコ料理を食べるわけではないので(笑)これくらいでちょうどいいでしょう。
食前酒は、ビールにしました。ロシアで最も飲まれている「バルチカБалтика」というビールです。

詳しくは●こちらのリンクをご覧下さい。このビールには0から10まで番号が振ってあって、それぞれ味や色が異なるというのがセールスポイントのようです。私が飲んだのは「3番」(ラガービール)です。
私は酒類はあまり好きではないのですが、外国製のビールは好んで飲みます。アメリカの●「ミラー」というブランドが特に好きですが、バルチカの3番はアルコール度数や口当たりがミラーと似ていて、気に入りました。
ロシアに行ったら、「俺は酒が飲めなくはない」と主張するために、バルチカの3番を飲むことにします(笑)。ウォッカводкаが飲めないと人間扱いしてもらえないかもしれませんが(笑)。
次は、前菜です。鮭のクレープ(блины)包みです。

フランス料理でも似たようなのを食べたことがあります(●こちらのレストランの「そば粉のクレープ」)。可もなく不可もなくといったところでしょうか。玉ねぎに生臭さがなかったのは、当たり前と言えば当たり前ですが、「さすがレストラン、自分の作る料理とは違う」と実感しました(笑)。
次に、スープです。ボルシチборщも選べたのですが、迷わず「ラグマンлагмон」にしました。

画像を見れば一目瞭然ですが、ラーメンです(笑)。ウズベキスタンでは麺料理を「ラグマン」と言うようです(ロシア語になるとЛАГМАН ДУНГАНСКИЙ 「中央アジアのラグマン」とでもいうことか)。ДУНГАНというのは、トルコ系の民族を指す言葉ですから、多分中国で食べていた麺類がシルクロードを経て中央アジアに伝わったのでしょう。
味は、「チリトマトヌードル」のような感じです。ウズベキスタンに行くと日本食はあまり食べられないでしょうから、これが出てくると有り難いことでしょう。もっとも、ロシアなら「ラプシャーлапша」と呼ばれるカップ麺(だいたい韓国製)が沢山売っていますが・・・。
今回のはスープ麺でしたが、「焼きラグマン(Ковурма лагмон、ロシア語風にлапша поджаренная)」というのもあるみたいです(●こういう感じです)。旅行に行ったら、是非食べてみたいですね。
さて、メインディッシュです。これも中央アジア起源の「シャシリクшашлык」です。

写真だとただの一口ステーキのように見えますが、出てくるときは串刺しで出てきます。要するにバーベキューです。「そのまま食べるんですよね」ときいたら、「熱いので皿に取ります」と言われてしまいました(笑)。
肉は羊肉ですが、臭みが全くなかったのにはビックリしました。牛肉を食べているような気になり、思わず店員さんに確かめてしまったほどです。脂をきちんと取ると臭みがなくなるようですね。
食後には、「ロシアンティーчай」をいただきました。

普通の紅茶と大きく違うのは、写真左側にあるようにジャムが付いている点です。それぞれ「カシス」「サクランボ」「バラと蜂蜜」のジャムでした。
そして、飲み方はというと、中に入れてかき混ぜるのではありません。ジャムを口に入れて舐めるのです。そこにお茶を入れて薄めるような感じです。
サクランボというのは残留農薬がかなり多い(笑)のであまり手を付けたくなかったのですが、そのまま残すのも何なので、一口だけもらいました(こういうときまで食の安全とやらこだわると、興が冷めるのでやめた方がよい)。カシスのジャムが一番美味しかったですね。
これで5000円を下回ったので、満足できました。
しかし、いい気分で外に出たら、マッサージを勧誘する中国人女性が(笑)。そう、ここはかの悪名高き「歌舞伎町」。
すぐに、道の反対側である西武新宿駅側に逃げました(笑)。閉店時間は早いですが、純朴な方(笑)は「新宿西口店」をご利用になる方がよいかもしれませんね。
うーむ、出来上がった記事を一瞥すると、わざとらしくロシア語を挿入しているのが実にイラヤシイ記事になってしまいました。
一応ネットサーフィンだけでなく、ロシア語を勉強しているということを見せつけておきたかったのです。ご容赦下さい

ロシア料理 スンガリー
http://www.sungari.jp/
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この題名は、誇張ではありません。面白いニュースが入ってきました。
ロシアと周辺親米5カ国 資源めぐり対立
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/international/25620.html
まず、前半から見てみましょう。
--------以下引用--------
ロシアのプーチン大統領、カザフスタンのナザルバエフ大統領、トルクメニスタンのベルドイムハメドフ大統領は十二日、カスピ海沿岸のトルクメニスタンのトルクメンバシで初の三カ国首脳会談を行い、トルクメン産天然ガスをカザフ、ロシア経由で欧州に輸出する「沿カスピ海天然ガスパイプライン」を建設することで合意した。
--------引用以上--------
最近、中央アジアの情勢が活発に動いています。
今回のニュースの意味は、欧米によって切り崩されかけていた天然ガス権益を、ロシアが死守したということです。
どうやら、ロシアの狙いは、ロシアと地続き、もしくは政治体制のよく似ている国との連携を強化し、天然ガス市場の価格決定権を握るというもののようです。カザフスタンは独立以来ナザルバエフ政権が続いており、トルクメニスタンも独立から昨年までニヤゾフ大統領の独裁政権でした。
ロシアが周辺諸国を天然資源によってコントロールするという構図は、日増しに強まっています。今回のカスピ海沿岸のパイプライン建設合意も、その構図の強化に資することは間違いありません。何しろ、ロシアの天然ガス埋蔵量は世界1位なのです。西欧のエネルギー政策は、ロシアの「協力」なくして成り立たないのは事実です。
しかし、ロシアが天然ガス世界の皇帝として君臨されては面白くない国々もいるわけで、その動きもまた活発になっています。元記事の後半部分を見てみましょう。
--------以下引用--------
一方、ポーランド、リトアニア、ウクライナ、グルジア、アゼルバイジャンの欧州、旧ソ連圏の親米五カ国首脳は十一日、カザフ産原油をロシア領を経由せずにウクライナ、ポーランドに運ぶ石油輸送ルートの建設促進で一致。ロシアと親米各国の間でカスピ海のエネルギー資源をめぐる対立が先鋭化してきた。
プーチン大統領は十二日の三カ国首脳会談後、記者団に「(沿カスピ海パイプラインの建設は)二○○八年半ばに始まる」と言明。ロシアのフリステンコ産業エネルギー相は同日、ロシア回避を目的に米国が別に推進しているカスピ海横断・天然ガスパイプライン建設構想についても「政治的な計画だ」と批判し、今回の建設決定が米国や親米国のエネルギー輸送計画に対抗するものであることを示した。
今回の三カ国首脳会談は、ポーランドのクラコフでの親米五カ国首脳会談(エネルギー・サミット)の日程に合わせ、急きょ行われた。カザフのナザルバエフ大統領は当初、資源供給国として同会談に出席予定だったが、ポーランド訪問は取りやめた。
ポーランドはロシアへの資源輸入依存から脱却するため、一一年までに国内油送管をウクライナの油送管につなぎ、カザフ産のカスピ海原油をアゼルバイジャン、グルジア経由で輸入する計画。
ポーランドのカチンスキ首相は「プーチン大統領がカザフスタン大統領のポーランド訪問を阻止したのなら、私たちの計画の重要性は一層明らかだ」と述べ、会談つぶしともとれるロシアの動きに不快感をあらわにした。
--------引用以上--------
>ポーランド、リトアニア、ウクライナ、
>グルジア、アゼルバイジャン
ロシアがパイプラインで支配する国々のすぐ外側の国々ばかりです。
特に、ウクライナは、2004年の「オレンジ革命」によって、形の上では自由主義政権になっています。自由主義などといえば聞こえがいいですが、要するに西側(特にアメリカ)の金融資本がその国を支配するということです。
ついでに述べておくと、このような金融資本が入り込んでくることを許容している国が「シーパワー」なのです。日本がシーパワー化しつつあることは、昨今の外資系企業の進出からも明らかです。今月から始まった三角合併(異常に株価の高いアメリカ企業の株式を対価にして、株価の割安な日本企業を簡単に買収できる方法)により、さらにその傾向は強くなって行くでしょう。
もちろん、ランドパワーのボスであるロシアも負けてはいません。ウクライナでは、親ロシア派がかなりの巻き返しを見せています。
ウクライナ 繰り上げ選実施で合意 大統領と首相 政治危機収拾へ
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2007050602014072.html
--------以下引用--------
ウクライナのユーシェンコ大統領が、反大統領派が多数を占める最高会議(議会)の解散と繰り上げ選挙実施を命じた問題で、大統領とヤヌコビッチ首相が四日、キエフで会談、繰り上げ選挙の実施で基本合意した。(中略)
首相から繰り上げ選挙実施の合意をようやく取り付けたユーシェンコ大統領は四日の記者会見で「邪悪に対する善の偉大な勝利だ」と強調。一方、ヤヌコビッチ首相は同日、キエフ中心部での集会で「われわれは選挙で勝利するだろう」と自信を示した。同日発表された最新の世論調査では首相の率いる「ウクライナの地域」の支持率は37%と大統領派の「われらのウクライナ」の9%を大きく上回っている。
--------引用以上--------
反ユーシェンコ派の首相が繰り上げ選挙に応じた理由は、ひとつしかありません。彼の率いる親ロシア派が議会選で勝利する目処がついたからです。
タイミング良く、こういう事件が起こります。
ガスパイプライン爆発=ロシア産をEUに供給―ウクライナ
http://www.jiji.com/jc/a?g=afp_soc&k=20070507012304a
--------以下引用--------
ウクライナ非常事態省スポークスマンは7日、キエフ近郊で天然ガスのパイプラインが爆発したことを明らかにした。
このパイプラインは、ロシアのシベリアからの天然ガスをドイツをはじめとする欧州連合(EU)諸国に送っており、爆発でこのパイプラインを通じた供給は停止した。
(中略)
ロシアは世界有数の天然ガス産出国で、EUは同国にとって天然ガスの最大の供給先。この爆発によるEUへの天然ガスの供給への影響は今のところ不明。
--------引用以上--------
どこの誰がやったのかは知りませんが、こういう事態が起きたら、困るのは誰か、という無言のアピールには十分です。なにしろ、ウクライナの国家財政は●こちらのPDFにあるように、格安の天然ガスを西欧諸国に転売することで成り立っていると言っても過言ではないからです。
だから、ウクライナが簡単にロシアの支配を脱却することは困難でしょう。もしできるとすれば、上の記事に書かれているグルジア経由で黒海を通るパイプラインしかありません。
私がプーチン大統領の参謀だとすれば(最近こういう書き方が多くてすみません)、もうポーランドは捨てておきます。ポーランドは、隣接国であるベラルーシをコントロールしておけば十分だからです。
そうなると、狙うべきは「グルジア」しかありません。ここを制すれば、ロシア包囲網の大前提である「黒海パイプライン」を突き崩すことが出来るからです。
そうはさせじと、シーパワー側も全力でグルジアを支援しています。●以前の記事で書いたとおり、アメリカは特殊部隊の訓練という形でグルジアに援助しています。
また、我が国も、グルジアへの支援を明言しています。
麻生外務大臣とサーカシヴィリ・グルジア大統領との会談
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/g_aso/georgia_07/gaiyo.html
--------以下引用--------
麻生大臣より、GUAM諸国の一国としてのグルジアの立場及び地政学的意味に注目しており、関係を発展させていきたい旨述べるとともに、ユーラシアを取り囲む国々と日本との関係を強化し、日本の知見・経験を活用してもらうことにより、これらの地域に一層の繁栄をもたらしたいと考え、「自由と繁栄の弧」のスピーチを行った旨述べた。これに対しサーカシヴィリ大統領より、「自由と繁栄の弧」の考え方を全面的に支持する、日本は世界で改革を志向する国々のリーダーであり、グルジアは日本の国連安保理常任理事国入りを一貫して支持している旨述べた。
サーカシヴィリ大統領より、グルジアの民主化革命はウクライナに波及し、さらにアゼルバイジャンやカザフスタンといった他の旧ソ連地域においても、ロシアから自立した政策がとられるようになっていること、特にロシアを経由せず東西を結ぶパイプラインや交通網が整備されることでこの地域に地政学的な変化が起こっているとの説明があった。
麻生大臣より、日本のやり方を取り入れてきたアジア諸国が経済的に成功し成長してきたことを紹介し、グルジアとも日本の経験を共有することにより、発展に貢献したい旨述べた。
--------引用以上--------
>グルジアの立場及び地政学的意味に注目しており
さすが麻生外務大臣ですね。この言葉の意味を理解できている政治家は、日本国内にはほとんどいないでしょう。
返す刀で、
>グルジアは日本の国連安保理常任理事国入りを一貫して支持している
こうやってシンパの国を増やしていくというわけです。
シーパワーの特徴は、技術面、経済面で「同盟」を組み、ランドパワーの圧力に対抗することができることです。ランドパワーは基本的に「支配と服従」という関係しか築けないので、この長所を生かすのがシーパワー戦略の基本なのです。
「自由と繁栄の弧」という麻生氏の構想も、そのへんをきちんと理解した上での発言だと思われます。この政治家の強みは、外国というと中国・アメリカ・朝鮮しか浮かばないという狭量な発想をしていないことでしょう。これからの日本の外交戦略には、この人は外せません。
もっとも、ロシアが反米諸国(たとえばイランやベネズエラ)と組んで、「反米エネルギーカルテル」のようなものを形成するとなると、かなり厄介な事態になってきます。アメリカが困るだけなら別にいいのですが、我が国も天然ガスをほぼ100%輸入しているのです。「ガス日照り」になった産業界が、我が国の利益に反する行動(たとえば高度な技術のロシアへの供与)を取らないとも限りません。
それをどうやって防ぐかが問題です。
以前から何度も申し上げているように、基本的にシーパワーは内陸に権益を維持することができません。たとえば、アメリカはアフガニスタン侵攻にかこつけて、ウズベキスタンの空港に空軍を置いていましたが、2005年には撤収しています。もちろん、ロシアの圧力があったからです。日本に至っては、何もできません。
そこで思い出して頂きたいのは、「シーパワーはランドパワーの協力者がいなければランドパワーに勝てない」というルールです。
勘のいい人は、もう気づいたかもしれませんね。これです。
中国と中央アジアを結ぶ「新シルクロード」建設
http://www.china.org.cn/japanese/244086.htm
--------以下引用--------
現在、中国国内では、連雲港から新疆ウイグル自治区のホルゴスまでの幹線道路がすでに全線開通しており、「新シルクロード」中国区間の整備はすでに完了している。中国とタジキスタンを結ぶ中国―タジキスタン自動車道路も開通しており、中国―キルギスーウズベクスタン自動車道路の建設工事もすでにスタートしており、タジキスタンーキルギス間およびタジキスタンーウズベクスタン自動車道路の建設および改造プロジェクトについても合意に達しており、カザフスタンを東から西へと横断する国際基準レール鉄道、中国―キルギスーウズベクスタン鉄道などのプロジェクトも前後して交渉のテーブルのテーマとなっている。
--------引用以上--------
この「新シルクロード」の建設を、日本が支援してみるというのはどうでしょうか?
今回のニュースが出たことで、ロシアはトルクメニスタンに天然ガス権益を保有することが明らかになりました。しかも、その天然ガスは、中国が喉から手が出るほどほしがっている資源です。
そこで、中国が中央アジアのエネルギー権益に割って入ることになったら・・・中国は、ロシアに中間マージンを払ってガスを買うという地位に甘んじるでしょうか?
つまり、資源乞食と化した中国を、エネルギー帝国の皇帝ロシアにぶつけることによって、中央アジアで紛争を起こさせるのです。そうすることによって、この地域はピョートル大帝の頃に逆戻りというわけです。
重要なのは、中国とロシアに手打ちをさせないことです。新シルクロードがウズベキスタンからトルクメニスタンに及べば、きっと中国が図に乗ってトルクメニスタンにあれこれ言い始めるはずです。ロシアも負けてはいないでしょう。
そして、我が国はそれに高見の見物を決め込み、その一方で燃料電池を核にした新エネルギー開発をどんどん進めるわけです。
くれぐれも注意しなければいけないのは、石油・天然ガスという化石燃料が文明の中核である限り、ロシアの人民がツァーリ(ロシア皇帝)を崇め奉ったように、天然ガス供給国がツァーリであるロシアの慈悲にすがっていかなければならないということです。
ということで、近い内に「バイオマス」の記事を書きます。ずいぶん遅れていますが・・・。
ロシアと周辺親米5カ国 資源めぐり対立
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/international/25620.html
まず、前半から見てみましょう。
--------以下引用--------
ロシアのプーチン大統領、カザフスタンのナザルバエフ大統領、トルクメニスタンのベルドイムハメドフ大統領は十二日、カスピ海沿岸のトルクメニスタンのトルクメンバシで初の三カ国首脳会談を行い、トルクメン産天然ガスをカザフ、ロシア経由で欧州に輸出する「沿カスピ海天然ガスパイプライン」を建設することで合意した。
--------引用以上--------
最近、中央アジアの情勢が活発に動いています。
今回のニュースの意味は、欧米によって切り崩されかけていた天然ガス権益を、ロシアが死守したということです。
どうやら、ロシアの狙いは、ロシアと地続き、もしくは政治体制のよく似ている国との連携を強化し、天然ガス市場の価格決定権を握るというもののようです。カザフスタンは独立以来ナザルバエフ政権が続いており、トルクメニスタンも独立から昨年までニヤゾフ大統領の独裁政権でした。
ロシアが周辺諸国を天然資源によってコントロールするという構図は、日増しに強まっています。今回のカスピ海沿岸のパイプライン建設合意も、その構図の強化に資することは間違いありません。何しろ、ロシアの天然ガス埋蔵量は世界1位なのです。西欧のエネルギー政策は、ロシアの「協力」なくして成り立たないのは事実です。
しかし、ロシアが天然ガス世界の皇帝として君臨されては面白くない国々もいるわけで、その動きもまた活発になっています。元記事の後半部分を見てみましょう。
--------以下引用--------
一方、ポーランド、リトアニア、ウクライナ、グルジア、アゼルバイジャンの欧州、旧ソ連圏の親米五カ国首脳は十一日、カザフ産原油をロシア領を経由せずにウクライナ、ポーランドに運ぶ石油輸送ルートの建設促進で一致。ロシアと親米各国の間でカスピ海のエネルギー資源をめぐる対立が先鋭化してきた。
プーチン大統領は十二日の三カ国首脳会談後、記者団に「(沿カスピ海パイプラインの建設は)二○○八年半ばに始まる」と言明。ロシアのフリステンコ産業エネルギー相は同日、ロシア回避を目的に米国が別に推進しているカスピ海横断・天然ガスパイプライン建設構想についても「政治的な計画だ」と批判し、今回の建設決定が米国や親米国のエネルギー輸送計画に対抗するものであることを示した。
今回の三カ国首脳会談は、ポーランドのクラコフでの親米五カ国首脳会談(エネルギー・サミット)の日程に合わせ、急きょ行われた。カザフのナザルバエフ大統領は当初、資源供給国として同会談に出席予定だったが、ポーランド訪問は取りやめた。
ポーランドはロシアへの資源輸入依存から脱却するため、一一年までに国内油送管をウクライナの油送管につなぎ、カザフ産のカスピ海原油をアゼルバイジャン、グルジア経由で輸入する計画。
ポーランドのカチンスキ首相は「プーチン大統領がカザフスタン大統領のポーランド訪問を阻止したのなら、私たちの計画の重要性は一層明らかだ」と述べ、会談つぶしともとれるロシアの動きに不快感をあらわにした。
--------引用以上--------
>ポーランド、リトアニア、ウクライナ、
>グルジア、アゼルバイジャン
ロシアがパイプラインで支配する国々のすぐ外側の国々ばかりです。
特に、ウクライナは、2004年の「オレンジ革命」によって、形の上では自由主義政権になっています。自由主義などといえば聞こえがいいですが、要するに西側(特にアメリカ)の金融資本がその国を支配するということです。
ついでに述べておくと、このような金融資本が入り込んでくることを許容している国が「シーパワー」なのです。日本がシーパワー化しつつあることは、昨今の外資系企業の進出からも明らかです。今月から始まった三角合併(異常に株価の高いアメリカ企業の株式を対価にして、株価の割安な日本企業を簡単に買収できる方法)により、さらにその傾向は強くなって行くでしょう。
もちろん、ランドパワーのボスであるロシアも負けてはいません。ウクライナでは、親ロシア派がかなりの巻き返しを見せています。
ウクライナ 繰り上げ選実施で合意 大統領と首相 政治危機収拾へ
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2007050602014072.html
--------以下引用--------
ウクライナのユーシェンコ大統領が、反大統領派が多数を占める最高会議(議会)の解散と繰り上げ選挙実施を命じた問題で、大統領とヤヌコビッチ首相が四日、キエフで会談、繰り上げ選挙の実施で基本合意した。(中略)
首相から繰り上げ選挙実施の合意をようやく取り付けたユーシェンコ大統領は四日の記者会見で「邪悪に対する善の偉大な勝利だ」と強調。一方、ヤヌコビッチ首相は同日、キエフ中心部での集会で「われわれは選挙で勝利するだろう」と自信を示した。同日発表された最新の世論調査では首相の率いる「ウクライナの地域」の支持率は37%と大統領派の「われらのウクライナ」の9%を大きく上回っている。
--------引用以上--------
反ユーシェンコ派の首相が繰り上げ選挙に応じた理由は、ひとつしかありません。彼の率いる親ロシア派が議会選で勝利する目処がついたからです。
タイミング良く、こういう事件が起こります。
ガスパイプライン爆発=ロシア産をEUに供給―ウクライナ
http://www.jiji.com/jc/a?g=afp_soc&k=20070507012304a
--------以下引用--------
ウクライナ非常事態省スポークスマンは7日、キエフ近郊で天然ガスのパイプラインが爆発したことを明らかにした。
このパイプラインは、ロシアのシベリアからの天然ガスをドイツをはじめとする欧州連合(EU)諸国に送っており、爆発でこのパイプラインを通じた供給は停止した。
(中略)
ロシアは世界有数の天然ガス産出国で、EUは同国にとって天然ガスの最大の供給先。この爆発によるEUへの天然ガスの供給への影響は今のところ不明。
--------引用以上--------
どこの誰がやったのかは知りませんが、こういう事態が起きたら、困るのは誰か、という無言のアピールには十分です。なにしろ、ウクライナの国家財政は●こちらのPDFにあるように、格安の天然ガスを西欧諸国に転売することで成り立っていると言っても過言ではないからです。
だから、ウクライナが簡単にロシアの支配を脱却することは困難でしょう。もしできるとすれば、上の記事に書かれているグルジア経由で黒海を通るパイプラインしかありません。
私がプーチン大統領の参謀だとすれば(最近こういう書き方が多くてすみません)、もうポーランドは捨てておきます。ポーランドは、隣接国であるベラルーシをコントロールしておけば十分だからです。
そうなると、狙うべきは「グルジア」しかありません。ここを制すれば、ロシア包囲網の大前提である「黒海パイプライン」を突き崩すことが出来るからです。
そうはさせじと、シーパワー側も全力でグルジアを支援しています。●以前の記事で書いたとおり、アメリカは特殊部隊の訓練という形でグルジアに援助しています。
また、我が国も、グルジアへの支援を明言しています。
麻生外務大臣とサーカシヴィリ・グルジア大統領との会談
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/g_aso/georgia_07/gaiyo.html
--------以下引用--------
麻生大臣より、GUAM諸国の一国としてのグルジアの立場及び地政学的意味に注目しており、関係を発展させていきたい旨述べるとともに、ユーラシアを取り囲む国々と日本との関係を強化し、日本の知見・経験を活用してもらうことにより、これらの地域に一層の繁栄をもたらしたいと考え、「自由と繁栄の弧」のスピーチを行った旨述べた。これに対しサーカシヴィリ大統領より、「自由と繁栄の弧」の考え方を全面的に支持する、日本は世界で改革を志向する国々のリーダーであり、グルジアは日本の国連安保理常任理事国入りを一貫して支持している旨述べた。
サーカシヴィリ大統領より、グルジアの民主化革命はウクライナに波及し、さらにアゼルバイジャンやカザフスタンといった他の旧ソ連地域においても、ロシアから自立した政策がとられるようになっていること、特にロシアを経由せず東西を結ぶパイプラインや交通網が整備されることでこの地域に地政学的な変化が起こっているとの説明があった。
麻生大臣より、日本のやり方を取り入れてきたアジア諸国が経済的に成功し成長してきたことを紹介し、グルジアとも日本の経験を共有することにより、発展に貢献したい旨述べた。
--------引用以上--------
>グルジアの立場及び地政学的意味に注目しており
さすが麻生外務大臣ですね。この言葉の意味を理解できている政治家は、日本国内にはほとんどいないでしょう。
返す刀で、
>グルジアは日本の国連安保理常任理事国入りを一貫して支持している
こうやってシンパの国を増やしていくというわけです。
シーパワーの特徴は、技術面、経済面で「同盟」を組み、ランドパワーの圧力に対抗することができることです。ランドパワーは基本的に「支配と服従」という関係しか築けないので、この長所を生かすのがシーパワー戦略の基本なのです。
「自由と繁栄の弧」という麻生氏の構想も、そのへんをきちんと理解した上での発言だと思われます。この政治家の強みは、外国というと中国・アメリカ・朝鮮しか浮かばないという狭量な発想をしていないことでしょう。これからの日本の外交戦略には、この人は外せません。
もっとも、ロシアが反米諸国(たとえばイランやベネズエラ)と組んで、「反米エネルギーカルテル」のようなものを形成するとなると、かなり厄介な事態になってきます。アメリカが困るだけなら別にいいのですが、我が国も天然ガスをほぼ100%輸入しているのです。「ガス日照り」になった産業界が、我が国の利益に反する行動(たとえば高度な技術のロシアへの供与)を取らないとも限りません。
それをどうやって防ぐかが問題です。
以前から何度も申し上げているように、基本的にシーパワーは内陸に権益を維持することができません。たとえば、アメリカはアフガニスタン侵攻にかこつけて、ウズベキスタンの空港に空軍を置いていましたが、2005年には撤収しています。もちろん、ロシアの圧力があったからです。日本に至っては、何もできません。
そこで思い出して頂きたいのは、「シーパワーはランドパワーの協力者がいなければランドパワーに勝てない」というルールです。
勘のいい人は、もう気づいたかもしれませんね。これです。
中国と中央アジアを結ぶ「新シルクロード」建設
http://www.china.org.cn/japanese/244086.htm
--------以下引用--------
現在、中国国内では、連雲港から新疆ウイグル自治区のホルゴスまでの幹線道路がすでに全線開通しており、「新シルクロード」中国区間の整備はすでに完了している。中国とタジキスタンを結ぶ中国―タジキスタン自動車道路も開通しており、中国―キルギスーウズベクスタン自動車道路の建設工事もすでにスタートしており、タジキスタンーキルギス間およびタジキスタンーウズベクスタン自動車道路の建設および改造プロジェクトについても合意に達しており、カザフスタンを東から西へと横断する国際基準レール鉄道、中国―キルギスーウズベクスタン鉄道などのプロジェクトも前後して交渉のテーブルのテーマとなっている。
--------引用以上--------
この「新シルクロード」の建設を、日本が支援してみるというのはどうでしょうか?
今回のニュースが出たことで、ロシアはトルクメニスタンに天然ガス権益を保有することが明らかになりました。しかも、その天然ガスは、中国が喉から手が出るほどほしがっている資源です。
そこで、中国が中央アジアのエネルギー権益に割って入ることになったら・・・中国は、ロシアに中間マージンを払ってガスを買うという地位に甘んじるでしょうか?
つまり、資源乞食と化した中国を、エネルギー帝国の皇帝ロシアにぶつけることによって、中央アジアで紛争を起こさせるのです。そうすることによって、この地域はピョートル大帝の頃に逆戻りというわけです。
重要なのは、中国とロシアに手打ちをさせないことです。新シルクロードがウズベキスタンからトルクメニスタンに及べば、きっと中国が図に乗ってトルクメニスタンにあれこれ言い始めるはずです。ロシアも負けてはいないでしょう。
そして、我が国はそれに高見の見物を決め込み、その一方で燃料電池を核にした新エネルギー開発をどんどん進めるわけです。
くれぐれも注意しなければいけないのは、石油・天然ガスという化石燃料が文明の中核である限り、ロシアの人民がツァーリ(ロシア皇帝)を崇め奉ったように、天然ガス供給国がツァーリであるロシアの慈悲にすがっていかなければならないということです。
ということで、近い内に「バイオマス」の記事を書きます。ずいぶん遅れていますが・・・。
前回の記事で、私が「ロシアは絶対に信用するな」という主張をしたところ、コメントで何人かの方から異論が起こりました。こういう形で、考えが深まっていくのがブログという双方向メディアのいいところです。
そこで、今回は、前回のような記事を書くに至った私の基本的な考えを紹介しておきたいと思います。
要するに、ランドパワー(大陸国家。ロシアや中国)との間でビジネスが成立するかどうかという問題なわけですが、これは、「イエスでもあり、ノーでもある」ということが出来ます。
まず、ここでいう「ビジネス」というものを2通りに分けて考えるべきです。
一つ目のビジネスは、「貿易」型です。
たとえば、我が国はロシアから「木材」を輸入しています。しかも、●「グリーンピース」のホームページで紹介されているように、ロシアは自国の環境関連の法令を犯してまで、大量に日本に輸出しているという現状があります。
もちろん、こういった貿易は、ロシアや中国以外の国ともたくさん行っています。
こうした「貿易」型のビジネスには、危険性はあまりありません。
もし危険性があるとすれば、輸入された物品が、日本の安全基準に沿っていないという場合です。たとえば、●中国からの輸入食品は、ランドパワーに異常なまでに好意的な我が国のマスコミでさえ時たま取り上げるので、みなさんもご存じでしょう。確かに、●こういう画像を見せられたら、「ファミリーレストランのほうれん草は大丈夫か」と心配にもなります。
しかし、その場合でも、来歴さえわかれば避けることが可能です。つまり、市場の中で淘汰される可能性があるため、それほど害が及ばないで済むわけです。もちろん、ランドパワーに異常なまでに好意的な我が国のマスコミが、きちんとした情報を提供すれば、ですが・・・。
もう一つのビジネスの形態は、「権益」型です。
「貿易」型は金を払って相手から買う(債権的)なのに対して、「権益」型は権利の設定を相手から受けて、そこから利益を回収する(物権的)という特徴があります。そして、相手国内に権利を保有するので、「権益」型のほぼ全てが不動産の支配を伴うことになります。
「権益」型ビジネスの最たるものは植民地支配です。日本もかつて満州や台湾、朝鮮(これは国際法的には「併合」だが)で、そのようなビジネスを経営していました。
この「権益」型は、はっきり言って危険です。
ポイントは、不動産の支配が必要だという点です。不動産は、貿易(債権的ビジネス)とは違い、簡単に売ったり買ったりできません。それに、保守コストがかかる点を見逃してはなりません。
たとえば、自分の土地に無断で車を駐車する人間がいたとします。おまわりさんに電話して「うちの土地に変な自動車が」と言ってみましょうか。
おまわりさんは、通報されれば確かに来てくれますが、その自動車が公道にはみ出していないことを確認しておしまいです。「民事不介入」というやつです。
一応、ナンバーから所有者を割り出す方法くらい教えてくれるでしょう(陸運局で問い合わせするなど)が、それだけです。法律の世界には「私的自治」(自分のことは自分で)という原則があるからです。もちろん、土地の所有者もしくは使用者なら、法的にはどかすことができますが、結構面倒です。
だから、みんな自分の土地は柵で囲んだり、チェーンを付けたりするのです。当たり前ですが、そういう保守費用は自腹です。
「権益」型ビジネスにも、保守費用が必要です。軍事力です。
植民地が良い例です。他人の土地ですから、ほっぽらかしておけば、現地の人間が暴れ出したり、他国の軍隊が侵入するかもしれません。だから、どの国も自国の植民地には軍隊を置きます。日本も、満州には「関東軍」を置いて、ソ連や中国に睨みを利かせていました。
軍事力無しでも権益を守れる場合は、権利を設定した国が自国より軍事的に弱い国だったり、その国の経済の首根っこを捕まえている場合(多額の借款を供与しているなど)だけです。要するに、出て行かれたら困る(買い手市場)の場合だけです。
現在、「権益」型ビジネスを本気になって展開しているのは、アメリカだけです。なぜなら、アメリカには自国の権益を保護するための軍事力があるからです。イラク戦争などを考えればすぐにおわかりでしょう。
第二次大戦後、多くの国が植民地を放棄した、つまり、「権益」型ビジネスをやめた背景には、権益を保持するコストが高いという理由があります。軍隊や治安維持もそうですが、移民が流入するという点も見逃せません。
だいいち、アメリカだってイラクでは相当苦戦していて、「米軍を撤退させろ」という声が日増しに強まっているのです(昨年の中間選挙が好例)。とにかく、物権的な支配は割に合わない場合が多いです。
実は日本も、「権益」型ビジネスではかなり損をしているのです。良い例が「朝鮮総督府」です。●こちらのブログにあるように、相当高額の国費を投入して、朝鮮の「近代化」を推進していました。
もっと良い例は「満州国」です。当地に置かれた軍隊(関東軍)は1941年には74万人に達しています。現在の自衛隊が陸海空合計で26万人だということを考えれば、予算規模も相当なものだったでしょう。それもこれも、5カ年計画で築いた生産設備という「権益」を、ソ連や中国共産軍から守るためです。
そして、これらの「権益」は、米英との対立を産み、やがて敗戦(ポツダム宣言受諾)という形で全て放棄するはめになりました。しかし、先人達の非をあげつらうだけではいけません。大陸での権益保持には軍事力が必要であり、それは必然的に膨大な負担を強いるという教訓を学ぶことが必要です。
外国で権益を持つというのは、そういうことなのです。軍事的な後ろ盾がない権益は、放棄させられたとしても指をくわえて見ているしかありません。今の日本にあるのは、自国防衛のための兵力だけだというのは、誰にでもわかることです。
前回のサハリンガス田の件でも見られたように、陸上での権益を巡る力関係では、強力な陸軍を持つランドパワーの方が圧倒的に優位です。日本がそういう国に「権益」を持っても、いずれは放棄させられることになるのです。そうなっていないのは、相手国(中国やロシア)がその気になっていないというだけで、反故にされる可能性というのはいつでも存在するのです。
日本における「権益」型ビジネスが、相互信頼で運用できているからと言って、そのような常識をランドパワーの国での「権益」型ビジネスに当てはめるのは無意味です。「相手も同じ人間だ」「不利益になるような馬鹿な真似はしないだろう」というのは、単なる希望的観測でしかありません。
結論としては、ロシアや中国、さらには北朝鮮やフランスのようなランドパワーの国とやれるビジネスは、あくまで「貿易」型に限られるということです。
ビジネスや投資は10年や20年先を見てやれ、ということをよく言いますが、それにも関わらずロシアや中国に安易に「権益」を持っている(たとえば生産ライン)工場が多すぎます。せいぜい地元企業との合弁という形にして、深入りしないのが未来のためでもあります。
それすら、額が大きくなれば大問題になります。あまりにも多くの投資をしてしまったために、「引くに引けない」という状態になってしまったとしたら・・・その権益を維持するために、戦争という最悪の選択をせざるをえなくなるかもしれません。
特に中国について言えば、今の中国との関係は、日中戦争の直前とよく似ているのです。
かつて日本企業は、「中国での利権は帝国陸海軍で防衛できる」と過信して、第一次世界大戦後に中国に次々と進出しました。
そしてその後、中国は軍閥の群雄割拠状態になりました。そこに「日貨排斥運動」というのが起こり、日本の居留民や企業の施設が現地の武装勢力に狙われるという事態が生じたのです。「五・四運動」に代表されるように、中国側に反日感情があったことも事実です。
大陸にたくさんの権益を持っていた我が国は、後に引くことができませんでした。「暴支膺懲(ぼうしようちょう)」という煽り文句を真に受けてしまい、中国との戦争状態に突入してしまったのです。
もし、中国共産党の独裁的支配が崩壊して、かつての軍閥割拠のような状態が訪れたら・・・日本企業の損害は天井知らずになるでしょう。そうなる前に、ランドパワーは信用できない、大陸に利権を持ってはいけないということを、少しでも多くの方に認識してもらい、段階的に「権益」を縮小していくべきなのです。
このブログでは、今後もこのような姿勢で、ロシアについての記事を書いていくつもりです。
そこで、今回は、前回のような記事を書くに至った私の基本的な考えを紹介しておきたいと思います。
要するに、ランドパワー(大陸国家。ロシアや中国)との間でビジネスが成立するかどうかという問題なわけですが、これは、「イエスでもあり、ノーでもある」ということが出来ます。
まず、ここでいう「ビジネス」というものを2通りに分けて考えるべきです。
一つ目のビジネスは、「貿易」型です。
たとえば、我が国はロシアから「木材」を輸入しています。しかも、●「グリーンピース」のホームページで紹介されているように、ロシアは自国の環境関連の法令を犯してまで、大量に日本に輸出しているという現状があります。
もちろん、こういった貿易は、ロシアや中国以外の国ともたくさん行っています。
こうした「貿易」型のビジネスには、危険性はあまりありません。
もし危険性があるとすれば、輸入された物品が、日本の安全基準に沿っていないという場合です。たとえば、●中国からの輸入食品は、ランドパワーに異常なまでに好意的な我が国のマスコミでさえ時たま取り上げるので、みなさんもご存じでしょう。確かに、●こういう画像を見せられたら、「ファミリーレストランのほうれん草は大丈夫か」と心配にもなります。
しかし、その場合でも、来歴さえわかれば避けることが可能です。つまり、市場の中で淘汰される可能性があるため、それほど害が及ばないで済むわけです。もちろん、ランドパワーに異常なまでに好意的な我が国のマスコミが、きちんとした情報を提供すれば、ですが・・・。
もう一つのビジネスの形態は、「権益」型です。
「貿易」型は金を払って相手から買う(債権的)なのに対して、「権益」型は権利の設定を相手から受けて、そこから利益を回収する(物権的)という特徴があります。そして、相手国内に権利を保有するので、「権益」型のほぼ全てが不動産の支配を伴うことになります。
「権益」型ビジネスの最たるものは植民地支配です。日本もかつて満州や台湾、朝鮮(これは国際法的には「併合」だが)で、そのようなビジネスを経営していました。
この「権益」型は、はっきり言って危険です。
ポイントは、不動産の支配が必要だという点です。不動産は、貿易(債権的ビジネス)とは違い、簡単に売ったり買ったりできません。それに、保守コストがかかる点を見逃してはなりません。
たとえば、自分の土地に無断で車を駐車する人間がいたとします。おまわりさんに電話して「うちの土地に変な自動車が」と言ってみましょうか。
おまわりさんは、通報されれば確かに来てくれますが、その自動車が公道にはみ出していないことを確認しておしまいです。「民事不介入」というやつです。
一応、ナンバーから所有者を割り出す方法くらい教えてくれるでしょう(陸運局で問い合わせするなど)が、それだけです。法律の世界には「私的自治」(自分のことは自分で)という原則があるからです。もちろん、土地の所有者もしくは使用者なら、法的にはどかすことができますが、結構面倒です。
だから、みんな自分の土地は柵で囲んだり、チェーンを付けたりするのです。当たり前ですが、そういう保守費用は自腹です。
「権益」型ビジネスにも、保守費用が必要です。軍事力です。
植民地が良い例です。他人の土地ですから、ほっぽらかしておけば、現地の人間が暴れ出したり、他国の軍隊が侵入するかもしれません。だから、どの国も自国の植民地には軍隊を置きます。日本も、満州には「関東軍」を置いて、ソ連や中国に睨みを利かせていました。
軍事力無しでも権益を守れる場合は、権利を設定した国が自国より軍事的に弱い国だったり、その国の経済の首根っこを捕まえている場合(多額の借款を供与しているなど)だけです。要するに、出て行かれたら困る(買い手市場)の場合だけです。
現在、「権益」型ビジネスを本気になって展開しているのは、アメリカだけです。なぜなら、アメリカには自国の権益を保護するための軍事力があるからです。イラク戦争などを考えればすぐにおわかりでしょう。
第二次大戦後、多くの国が植民地を放棄した、つまり、「権益」型ビジネスをやめた背景には、権益を保持するコストが高いという理由があります。軍隊や治安維持もそうですが、移民が流入するという点も見逃せません。
だいいち、アメリカだってイラクでは相当苦戦していて、「米軍を撤退させろ」という声が日増しに強まっているのです(昨年の中間選挙が好例)。とにかく、物権的な支配は割に合わない場合が多いです。
実は日本も、「権益」型ビジネスではかなり損をしているのです。良い例が「朝鮮総督府」です。●こちらのブログにあるように、相当高額の国費を投入して、朝鮮の「近代化」を推進していました。
もっと良い例は「満州国」です。当地に置かれた軍隊(関東軍)は1941年には74万人に達しています。現在の自衛隊が陸海空合計で26万人だということを考えれば、予算規模も相当なものだったでしょう。それもこれも、5カ年計画で築いた生産設備という「権益」を、ソ連や中国共産軍から守るためです。
そして、これらの「権益」は、米英との対立を産み、やがて敗戦(ポツダム宣言受諾)という形で全て放棄するはめになりました。しかし、先人達の非をあげつらうだけではいけません。大陸での権益保持には軍事力が必要であり、それは必然的に膨大な負担を強いるという教訓を学ぶことが必要です。
外国で権益を持つというのは、そういうことなのです。軍事的な後ろ盾がない権益は、放棄させられたとしても指をくわえて見ているしかありません。今の日本にあるのは、自国防衛のための兵力だけだというのは、誰にでもわかることです。
前回のサハリンガス田の件でも見られたように、陸上での権益を巡る力関係では、強力な陸軍を持つランドパワーの方が圧倒的に優位です。日本がそういう国に「権益」を持っても、いずれは放棄させられることになるのです。そうなっていないのは、相手国(中国やロシア)がその気になっていないというだけで、反故にされる可能性というのはいつでも存在するのです。
日本における「権益」型ビジネスが、相互信頼で運用できているからと言って、そのような常識をランドパワーの国での「権益」型ビジネスに当てはめるのは無意味です。「相手も同じ人間だ」「不利益になるような馬鹿な真似はしないだろう」というのは、単なる希望的観測でしかありません。
結論としては、ロシアや中国、さらには北朝鮮やフランスのようなランドパワーの国とやれるビジネスは、あくまで「貿易」型に限られるということです。
ビジネスや投資は10年や20年先を見てやれ、ということをよく言いますが、それにも関わらずロシアや中国に安易に「権益」を持っている(たとえば生産ライン)工場が多すぎます。せいぜい地元企業との合弁という形にして、深入りしないのが未来のためでもあります。
それすら、額が大きくなれば大問題になります。あまりにも多くの投資をしてしまったために、「引くに引けない」という状態になってしまったとしたら・・・その権益を維持するために、戦争という最悪の選択をせざるをえなくなるかもしれません。
特に中国について言えば、今の中国との関係は、日中戦争の直前とよく似ているのです。
かつて日本企業は、「中国での利権は帝国陸海軍で防衛できる」と過信して、第一次世界大戦後に中国に次々と進出しました。
そしてその後、中国は軍閥の群雄割拠状態になりました。そこに「日貨排斥運動」というのが起こり、日本の居留民や企業の施設が現地の武装勢力に狙われるという事態が生じたのです。「五・四運動」に代表されるように、中国側に反日感情があったことも事実です。
大陸にたくさんの権益を持っていた我が国は、後に引くことができませんでした。「暴支膺懲(ぼうしようちょう)」という煽り文句を真に受けてしまい、中国との戦争状態に突入してしまったのです。
もし、中国共産党の独裁的支配が崩壊して、かつての軍閥割拠のような状態が訪れたら・・・日本企業の損害は天井知らずになるでしょう。そうなる前に、ランドパワーは信用できない、大陸に利権を持ってはいけないということを、少しでも多くの方に認識してもらい、段階的に「権益」を縮小していくべきなのです。
このブログでは、今後もこのような姿勢で、ロシアについての記事を書いていくつもりです。
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当ブログでもたびたび紹介させていただき、またコメントも頂いている江田島孔明氏の「世界史におけるランドパワーとシーパワーの戦略」の特別版が上梓されました。第二次大戦と日本のとるべきだった「戦略」について、鮮やかに解説されています。是非、ご一読ください。
世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略新春特別企画最終号
http://www.teamrenzan.com/archives/writer/edajima/post_168.html
さて、最近、とある日本の大企業が、ロシアで大型プロジェクトに参加するというニュースが降って湧いてきました。
http://syoukenn.seesaa.net/article/30796555.html
(以下引用)
東芝はロシア国営企業の提携打診を好感、石川島も高い
東芝が、25円高の800円と2日続伸している。ロシアが設立を目指している国営の原子力独占企業体「アトムプロム」側が、東芝と石川島播磨重工業に対して提携を打診してきたことが、12月31日に明らかになったとの一部報道を材料視。東芝とIHIも提携交渉に応じる考えで、近く交渉入りする公算が大きいという。原発の基幹部分となる蒸気タービンや、発電機の製造、供給など、ロシアの原発建設への協力が柱になるとみられ、アトムプロムへの出資や関連技術の供与に協議が広がる可能性があるとしている。(以下略)
(引用以上)
ロシアの原子力発電所は、ソビエト連邦時代の旧式のものが多いようです。それを、日本の技術でリフレッシュしようというわけです。かつて、ソ連の原発と言えば、チェルノブイリ原発の事故がありました。このような惨事を繰り返さないためにも、日本の技術が役に立てば、こんなに嬉しいことはありません。しかも、上の記事のように、経済効果も大きい・・・。
しかし、ちょっと待ってください。
最近、ロシアと日本の経済「協力」にまつわる重大なニュースがあったのを忘れてしまいましたか?
勘のいい方はお気づきでしょう。サハリンのガス田開発がそれです。
サハリンというのは、日本領だった「樺太(からふと)」のことです。近年、東アジア最大級の天然ガス田が発見されています。そして、このガス田、日本とも地理的に大変近い。
そうなれば、誰でも期待するでしょう。「ロシアと取り引きして、このガス田から日本に向けて天然ガスを供給してもらえばいいのではないか?」と。パイプラインを建設すれば、液化してタンカーに積める必要もなくなるため、大変コストが低く、また、安定した供給も予想されます。
しかし、このガス田開発がどうなったか・・・その経緯をたどると、今回の原発プロジェクトについても大きな教訓が得られるのです。
●ノーボスチ通信という、ロシアの通信社があります。そこのウェブニュースを時系列で追いかけていくだけで、非常に面白いことが見えてきます。
まず、2005年7月の時点の記事です。
サハリン産天然ガスの対日輸出決定
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=30&more=1
>7月24日、国際石油・天然ガス開発プロジェクト
>「サハリン2」のオペレーター企業である
>「サハリン・エナジー」社は日本の九州電力と、
>日本への液化天然ガス供給について基本合意書を取り交わした。
>最初の段階として天然ガス供給は、タンカー輸送によって
>行なわれるが、それ以降は、宗谷海峡の海底にガスパイプ
>ラインが敷設される予定となっている。
同年8月の時点では、このプロジェクトが国際的に展開されていることを伺わせる記事が出ています。
サハリンで天然ガス液化工場建設
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=44&more=1
>サハリンの海洋貿易港コルサコフに8月7日、
>世界最大でしかもロシア初の天然ガス液化工場を
>建設するため、資材第一便が米国から到着した。
>今後の計画では、ガス・パイプラインを沿岸沿いに
>敷設して、サハリンから隣接する北海道(日本)まで
>延長し、その後さらに東京まで敷設する。
東京まで天然ガスのパイプラインが到達・・・なかなか魅力的な話です。日本側も乗り気になりつつあるのは、以下に紹介する11月の記事からも窺えます。
北海道の実務界、ロシア極東に自由経済特区設立に関心
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=167&more=1
>極東と外バイカルの対外貿易では、日本は伝統的に
>首位の位置を占めており、大規模燃料エネルギー発電
>プロジェクト、特に、サハリン大陸棚プロジェクトの
>実現を実現する大きな推進力になっている。
この部分を読んで、みなさんはどう感じたでしょうか?実は、ここで各人が抱く印象の違いが、決定的に重要なのです。
2006年の4月になると、サハリン関連の記事に、突如こんな記事が紛れ込んできます。
ユジノサハリンスクに第2次世界大戦時代の日本製戦車を設置
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=266&more=1
もちろん、日本人向けの観光スポットにしようという考えもあるのでしょうが、何か別の意図も感じませんかね?
続けて、こんな記事も出てきます。
拡大する投資、ロシア東部
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=293&more=1
>クラスノヤルスクで終了した「ロシアの東の発展」と
>題する経済フォーラムは驚くほどの結果をもたらした。
>民間会社がロシア東部地域に2000億ドル以上を投資
>する意向が判明した。
>この地域に存在する資源の特質上、投資する場合
>最も大きな額は燃料資源セクターに向き、しかも
>そのうち約半分は石油ガスの開発になることは容易に
>理解できる。その意味において有利な状態にあるのは
>クラスノヤルスク地方、イルクツク州、ヤクーツク
>及びサハリンである。しかし、他の地域にも
>発展の可能性はある。急速に発展するアジア太平洋市場に
>近いことは、関連企業に、加工工場建設の必要性を
>考えさせるようになった。
まさに、サハリンのガス田開発のことを言っている記事です。これからのロシア極東の発展するようすが目に浮かぶようです。さらに、同年の9月には、
サンクト・ペテルブルグでロ日最初の投資フォーラム
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=357&more=1
>フォーラムの参加者は、今日、ロシアと日本の投資協力は、
>現在のところまだ両国のポテンシャルが完全に発揮されて
>いるとは言えず、もっと力強い、建設的な性格を持たせる
>必要があるとの意見で一致した。
という記事です。ロシア側が、日本の経済協力を切望している様子がよく伝わってきます。
しかし、その9月に、いきなり事態が急転します。
「サハリン-2」開発停止?
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=358&more=1
上のURLの言いたいことは、環境破壊のおそれがあるということで、公的機関が裁判所にガス田開発の中止を提訴したということです。元の記事を読むと、相当深刻な被害が及ぶ可能性があるということがわかります。
しかし、それほど重大な問題なら、なぜ2005年のうちにロシア政府側がなんらかのアクションを起こさなかったのか、疑問が浮かんできます。
追い打ちをかけるような記事が、10月に登場します。
サハリンの環境汚染
http://www.rian-japan.com/archive/index.php?s=%83T%83n%83%8A%83%93&paged=2
このタイミング・・・偶然にしては出来過ぎだと思いませんか?
そして、結末はこれです。
露ガスプロム、「サハリン2」譲渡でシェルや日本2社と合意
http://today.reuters.co.jp/news/articlenews.aspx?type=businessNews&storyID=2006-12-22T083703Z_01_NOOTR_RTRJONC_0_JAPAN-240672-1.xml
>ロシアのガス独占企業ガスプロムは21日、サハリン沖の
>資源開発事業「サハリン2」を進めてきた国際石油資本の
>ロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事の
>3社から権益の半分を74億5000万ドルで
>取得することで合意した。
今まで全くガス田開発に関わってこなかった「ガスプロム」(ロシアの天然ガス独占企業)が、いきなり登場しました。そして、なんと経営権を掌握してしまったのです。
もちろん、何の理由もなくやりかけの事業を譲渡するような馬鹿な会社はありません。ロシアの政府機関が、シェルや三菱を環境問題で提訴していたため、それによる損害賠償などのデメリットを避けるために、地元資本であるガスプロムに道を譲ったのです。
「ハア?」と思いませんかね。同じガス田を開発するのに、ロシア企業がやれば環境を破壊せずに済むわけがありません。
もっとも、ガスプロムは訴訟当事者ではないのですから、知らん顔をしていればいいわけです。ロシア政府がガスプロムを訴えれば別ですが、どうやらそういう事態にはなっていません。
なんとひどい話でしょうか。同じことを日本国内でやった会社がいたら、業界から総スカンをくらうに決まっています。火事場泥棒だというのは明らかだからです。
ここで、ロシアに対して悪口雑言をぶつけるだけでは仕方がありません。このサハリンの事件から、何か学べることがあるはずです。
まず、このブログでも繰り返し取り上げているように、ロシアというのは、「ランドパワー」(大陸国家。詳しい話は●「世界史におけるランドパワーとシーパワーの戦略を参照)です。
ランドパワーの行動パターンを理解するには、同じランドパワーである中国の古典に大きなヒントがあります。
例えば、「老子」という古代中国の思想家が、面白いことを言っています。
「将(まさ)にこれを歙(ちぢ)めんと欲すれば、必ず固(しばら)くこれを張れ。将にこれを弱くせんと欲すれば、必ず固くこれを強くせよ。将にこれを廃せんと欲すれば、必ず固くこれを興(おこ)せ。将にこれを奪わんと欲すれば、必ず固くこれを与えよ。是を微明という。柔弱は剛強に勝つ。魚は淵より脱すべからず、国の利器は以て人に示すべからず(老子・36章)」
ここで、サハリンのガス田の事件を振り返ると、
1.天然ガス供給の合意が成立しました
2.日本と(経済)交流したいなぁー
3.環境破壊の危険あり、ヤバイぞ
4.なんならロシア企業に譲りなさい
という経緯を辿っています。「奪わんと(4)欲すれば、固くこれを与えよ(1)」、そして「歙(ちぢ)めんと欲すれば(3)、必ず固(しばら)くこれを張れ(2)」という風に、見事に一致するわけです。老子が2500年前(春秋戦国時代)に戦乱の中国でうち立てた法則が、21世紀のロシアの行動に一致する。これは偶然ではありません。
ランドパワーの基本戦略として、覚えておいて損のないことは、「馬鹿な相手を騙して奪うこと」があります。理由は簡単で、その方が血を流さずに利益を上げることができるからです。
ランドパワーの世界では、騙される方が悪いのです。相互の信頼の上に取引をする、という考え方は彼らにはありません。
つい最近の歴史を振り返ってみても、ランドパワーであるロシア(ソ連)が「馬鹿な相手」を見事にハメた出来事があります。「日ソ中立条約」がそれです。
日ソ中立条約について(Wikipediaより)
> 1941年(昭和16年)に日本とソ連の間で締結された中立条約。
>有効期間は1946年4月まで。相互不可侵および、一方が第三国の
>軍事行動の対象になった場合の他方の中立、満州国とモンゴル
>人民共和国の領土の相互尊重などを定めた条約で有効期間は5年とされた。
>一方が第三国の軍事行動の対象になった場合の他方の中立
ソ連だけに真っ赤な嘘(笑)ですね。ソ連は、大東亜戦争(太平洋戦争)の末期になり、日本の敗戦が濃厚になってきた段階で、一方的に中立を破棄して満州に攻め込んできたのです。
そして、シベリアに65万人の日本人を抑留し、6万人を死なせています。そればかりでなく、ソ連の進行に伴って史上最悪と言われる強姦の被害を、日本人を含めた女性達に与えました。
まさに鬼畜の所行です。しかし、ランドパワーというのはこういうものなのです。
日ソ中立条約とサハリンのガス田、古今の事例を通じて日本人が学ばなくてはいけないことは、
「ロシアは
絶対に
信用しては
いけない」
これに尽きます。
さて、このような観点から、石川島播磨・東芝によるロシアの原発事業参入を見てみましょう。
さすがはロシア・・・と思えることがあります。もうすでに「今度は原子力が熱いぜ!」という餌をまいているのです。先ほど紹介したノーボスチ通信の中だけでも、
ロシアの平和利用の原子力が欧州に進出(06年 11月7日)
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=388&more=1
構造改革が進むロシア原子力界
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=404&more=1
という「ノリノリ系」ニュースが見つかります。「固くこれを張れ」という段階にはすでに入っているわけです。
ロシアからすれば、日本は格好のカモです。これを、よく言われる「外交下手」「世界のことを知らない」という言葉だけで済ませてはいけません。
私が考える日本人の行動特性の一つに、「専門家がイノセント(無邪気・無垢)すぎる」というものがあります。
たとえば、ロシア語がペラペラで、インターファックス通信が配信するニュースや●プラウダを原語で読むのが大好きだという人がいるとします(あまりいなさそうですが)。そういう人に限って、ロシア語を読んだりロシア人と話したりするだけで満足してしまい、相手の言うことを鵜呑みにしてしまう傾向が強いように思うのです。
つまり、外国文化を受け容れることが「目的」になってしまい、それを日本のために役に立てようという認識が欠けている「専門家」があまりに多いのです。
日本人というのは、明治初期に見られるように、卑屈なほどに外国文化を吸収しようとする傾向があり、相手の言い分も理解しようという(世界的に見て珍しい)性格です。しかし、それが高じて、相手の広報役、ひどい言い方をすれば操り人形になってしまう危険があるのです。
おそらく、大学出のインテリににソ連シンパの社会主義者が多かったことも、そのような日本人の特性を見抜かれた「文化侵略」の結果だったのでしょう。そして、それは、某経済新聞の「今、中国が熱い!」という宣伝や、実体のない韓流「ブーム」という形で、現在も継続中なのです。
これを防ぐには、インテリを名乗る人物に地政学と歴史を勉強してもらうべきです。逆に、国家の指導者については、受験勉強をやらせてもあまり効果は期待できません。指導者には「学習能力」ではなく、「判断力」が必要だからです。
本題に戻ります。こんな予想はしたくないのですが、ロシアはもうすでに「歙(ちぢ)め」て「奪わんと」するプランを立てているでしょう。たとえば、部品や構造に不具合が出たので、賠償しろと脅すとか、もっとひどい場合には、日本の二社がてがけた原発で「事故」が起こるとかいった形です。渡りきったところで橋を落とすということです。
幸い、今の段階ではまだ取り返しのつかない段階には来ていません。契約不履行で違約金を払えば済む程度です。教育と北朝鮮以外には意欲(能力?)がない安倍首相では少々不安なので、麻生外務大臣辺りに動いてもらって、ロシアの罠を回避したいものです。
以下のフォーム、メアドで関係機関にアピールできます。みなさんも、是非ご協力ください。
経済産業省 webmaster@meti.go.jp
外務省 https://www3.mofa.go.jp/mofaj/mail/qa.html
首相官邸 http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html
当ブログでもたびたび紹介させていただき、またコメントも頂いている江田島孔明氏の「世界史におけるランドパワーとシーパワーの戦略」の特別版が上梓されました。第二次大戦と日本のとるべきだった「戦略」について、鮮やかに解説されています。是非、ご一読ください。
世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略新春特別企画最終号
http://www.teamrenzan.com/archives/writer/edajima/post_168.html
さて、最近、とある日本の大企業が、ロシアで大型プロジェクトに参加するというニュースが降って湧いてきました。
http://syoukenn.seesaa.net/article/30796555.html
(以下引用)
東芝はロシア国営企業の提携打診を好感、石川島も高い
東芝が、25円高の800円と2日続伸している。ロシアが設立を目指している国営の原子力独占企業体「アトムプロム」側が、東芝と石川島播磨重工業に対して提携を打診してきたことが、12月31日に明らかになったとの一部報道を材料視。東芝とIHIも提携交渉に応じる考えで、近く交渉入りする公算が大きいという。原発の基幹部分となる蒸気タービンや、発電機の製造、供給など、ロシアの原発建設への協力が柱になるとみられ、アトムプロムへの出資や関連技術の供与に協議が広がる可能性があるとしている。(以下略)
(引用以上)
ロシアの原子力発電所は、ソビエト連邦時代の旧式のものが多いようです。それを、日本の技術でリフレッシュしようというわけです。かつて、ソ連の原発と言えば、チェルノブイリ原発の事故がありました。このような惨事を繰り返さないためにも、日本の技術が役に立てば、こんなに嬉しいことはありません。しかも、上の記事のように、経済効果も大きい・・・。
しかし、ちょっと待ってください。
最近、ロシアと日本の経済「協力」にまつわる重大なニュースがあったのを忘れてしまいましたか?
勘のいい方はお気づきでしょう。サハリンのガス田開発がそれです。
サハリンというのは、日本領だった「樺太(からふと)」のことです。近年、東アジア最大級の天然ガス田が発見されています。そして、このガス田、日本とも地理的に大変近い。
そうなれば、誰でも期待するでしょう。「ロシアと取り引きして、このガス田から日本に向けて天然ガスを供給してもらえばいいのではないか?」と。パイプラインを建設すれば、液化してタンカーに積める必要もなくなるため、大変コストが低く、また、安定した供給も予想されます。
しかし、このガス田開発がどうなったか・・・その経緯をたどると、今回の原発プロジェクトについても大きな教訓が得られるのです。
●ノーボスチ通信という、ロシアの通信社があります。そこのウェブニュースを時系列で追いかけていくだけで、非常に面白いことが見えてきます。
まず、2005年7月の時点の記事です。
サハリン産天然ガスの対日輸出決定
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=30&more=1
>7月24日、国際石油・天然ガス開発プロジェクト
>「サハリン2」のオペレーター企業である
>「サハリン・エナジー」社は日本の九州電力と、
>日本への液化天然ガス供給について基本合意書を取り交わした。
>最初の段階として天然ガス供給は、タンカー輸送によって
>行なわれるが、それ以降は、宗谷海峡の海底にガスパイプ
>ラインが敷設される予定となっている。
同年8月の時点では、このプロジェクトが国際的に展開されていることを伺わせる記事が出ています。
サハリンで天然ガス液化工場建設
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=44&more=1
>サハリンの海洋貿易港コルサコフに8月7日、
>世界最大でしかもロシア初の天然ガス液化工場を
>建設するため、資材第一便が米国から到着した。
>今後の計画では、ガス・パイプラインを沿岸沿いに
>敷設して、サハリンから隣接する北海道(日本)まで
>延長し、その後さらに東京まで敷設する。
東京まで天然ガスのパイプラインが到達・・・なかなか魅力的な話です。日本側も乗り気になりつつあるのは、以下に紹介する11月の記事からも窺えます。
北海道の実務界、ロシア極東に自由経済特区設立に関心
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=167&more=1
>極東と外バイカルの対外貿易では、日本は伝統的に
>首位の位置を占めており、大規模燃料エネルギー発電
>プロジェクト、特に、サハリン大陸棚プロジェクトの
>実現を実現する大きな推進力になっている。
この部分を読んで、みなさんはどう感じたでしょうか?実は、ここで各人が抱く印象の違いが、決定的に重要なのです。
2006年の4月になると、サハリン関連の記事に、突如こんな記事が紛れ込んできます。
ユジノサハリンスクに第2次世界大戦時代の日本製戦車を設置
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=266&more=1
もちろん、日本人向けの観光スポットにしようという考えもあるのでしょうが、何か別の意図も感じませんかね?
続けて、こんな記事も出てきます。
拡大する投資、ロシア東部
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=293&more=1
>クラスノヤルスクで終了した「ロシアの東の発展」と
>題する経済フォーラムは驚くほどの結果をもたらした。
>民間会社がロシア東部地域に2000億ドル以上を投資
>する意向が判明した。
>この地域に存在する資源の特質上、投資する場合
>最も大きな額は燃料資源セクターに向き、しかも
>そのうち約半分は石油ガスの開発になることは容易に
>理解できる。その意味において有利な状態にあるのは
>クラスノヤルスク地方、イルクツク州、ヤクーツク
>及びサハリンである。しかし、他の地域にも
>発展の可能性はある。急速に発展するアジア太平洋市場に
>近いことは、関連企業に、加工工場建設の必要性を
>考えさせるようになった。
まさに、サハリンのガス田開発のことを言っている記事です。これからのロシア極東の発展するようすが目に浮かぶようです。さらに、同年の9月には、
サンクト・ペテルブルグでロ日最初の投資フォーラム
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=357&more=1
>フォーラムの参加者は、今日、ロシアと日本の投資協力は、
>現在のところまだ両国のポテンシャルが完全に発揮されて
>いるとは言えず、もっと力強い、建設的な性格を持たせる
>必要があるとの意見で一致した。
という記事です。ロシア側が、日本の経済協力を切望している様子がよく伝わってきます。
しかし、その9月に、いきなり事態が急転します。
「サハリン-2」開発停止?
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=358&more=1
上のURLの言いたいことは、環境破壊のおそれがあるということで、公的機関が裁判所にガス田開発の中止を提訴したということです。元の記事を読むと、相当深刻な被害が及ぶ可能性があるということがわかります。
しかし、それほど重大な問題なら、なぜ2005年のうちにロシア政府側がなんらかのアクションを起こさなかったのか、疑問が浮かんできます。
追い打ちをかけるような記事が、10月に登場します。
サハリンの環境汚染
http://www.rian-japan.com/archive/index.php?s=%83T%83n%83%8A%83%93&paged=2
このタイミング・・・偶然にしては出来過ぎだと思いませんか?
そして、結末はこれです。
露ガスプロム、「サハリン2」譲渡でシェルや日本2社と合意
http://today.reuters.co.jp/news/articlenews.aspx?type=businessNews&storyID=2006-12-22T083703Z_01_NOOTR_RTRJONC_0_JAPAN-240672-1.xml
>ロシアのガス独占企業ガスプロムは21日、サハリン沖の
>資源開発事業「サハリン2」を進めてきた国際石油資本の
>ロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事の
>3社から権益の半分を74億5000万ドルで
>取得することで合意した。
今まで全くガス田開発に関わってこなかった「ガスプロム」(ロシアの天然ガス独占企業)が、いきなり登場しました。そして、なんと経営権を掌握してしまったのです。
もちろん、何の理由もなくやりかけの事業を譲渡するような馬鹿な会社はありません。ロシアの政府機関が、シェルや三菱を環境問題で提訴していたため、それによる損害賠償などのデメリットを避けるために、地元資本であるガスプロムに道を譲ったのです。
「ハア?」と思いませんかね。同じガス田を開発するのに、ロシア企業がやれば環境を破壊せずに済むわけがありません。
もっとも、ガスプロムは訴訟当事者ではないのですから、知らん顔をしていればいいわけです。ロシア政府がガスプロムを訴えれば別ですが、どうやらそういう事態にはなっていません。
なんとひどい話でしょうか。同じことを日本国内でやった会社がいたら、業界から総スカンをくらうに決まっています。火事場泥棒だというのは明らかだからです。
ここで、ロシアに対して悪口雑言をぶつけるだけでは仕方がありません。このサハリンの事件から、何か学べることがあるはずです。
まず、このブログでも繰り返し取り上げているように、ロシアというのは、「ランドパワー」(大陸国家。詳しい話は●「世界史におけるランドパワーとシーパワーの戦略を参照)です。
ランドパワーの行動パターンを理解するには、同じランドパワーである中国の古典に大きなヒントがあります。
例えば、「老子」という古代中国の思想家が、面白いことを言っています。
「将(まさ)にこれを歙(ちぢ)めんと欲すれば、必ず固(しばら)くこれを張れ。将にこれを弱くせんと欲すれば、必ず固くこれを強くせよ。将にこれを廃せんと欲すれば、必ず固くこれを興(おこ)せ。将にこれを奪わんと欲すれば、必ず固くこれを与えよ。是を微明という。柔弱は剛強に勝つ。魚は淵より脱すべからず、国の利器は以て人に示すべからず(老子・36章)」
ここで、サハリンのガス田の事件を振り返ると、
1.天然ガス供給の合意が成立しました
2.日本と(経済)交流したいなぁー
3.環境破壊の危険あり、ヤバイぞ
4.なんならロシア企業に譲りなさい
という経緯を辿っています。「奪わんと(4)欲すれば、固くこれを与えよ(1)」、そして「歙(ちぢ)めんと欲すれば(3)、必ず固(しばら)くこれを張れ(2)」という風に、見事に一致するわけです。老子が2500年前(春秋戦国時代)に戦乱の中国でうち立てた法則が、21世紀のロシアの行動に一致する。これは偶然ではありません。
ランドパワーの基本戦略として、覚えておいて損のないことは、「馬鹿な相手を騙して奪うこと」があります。理由は簡単で、その方が血を流さずに利益を上げることができるからです。
ランドパワーの世界では、騙される方が悪いのです。相互の信頼の上に取引をする、という考え方は彼らにはありません。
つい最近の歴史を振り返ってみても、ランドパワーであるロシア(ソ連)が「馬鹿な相手」を見事にハメた出来事があります。「日ソ中立条約」がそれです。
日ソ中立条約について(Wikipediaより)
> 1941年(昭和16年)に日本とソ連の間で締結された中立条約。
>有効期間は1946年4月まで。相互不可侵および、一方が第三国の
>軍事行動の対象になった場合の他方の中立、満州国とモンゴル
>人民共和国の領土の相互尊重などを定めた条約で有効期間は5年とされた。
>一方が第三国の軍事行動の対象になった場合の他方の中立
ソ連だけに真っ赤な嘘(笑)ですね。ソ連は、大東亜戦争(太平洋戦争)の末期になり、日本の敗戦が濃厚になってきた段階で、一方的に中立を破棄して満州に攻め込んできたのです。
そして、シベリアに65万人の日本人を抑留し、6万人を死なせています。そればかりでなく、ソ連の進行に伴って史上最悪と言われる強姦の被害を、日本人を含めた女性達に与えました。
まさに鬼畜の所行です。しかし、ランドパワーというのはこういうものなのです。
日ソ中立条約とサハリンのガス田、古今の事例を通じて日本人が学ばなくてはいけないことは、
「ロシアは
絶対に
信用しては
いけない」
これに尽きます。
さて、このような観点から、石川島播磨・東芝によるロシアの原発事業参入を見てみましょう。
さすがはロシア・・・と思えることがあります。もうすでに「今度は原子力が熱いぜ!」という餌をまいているのです。先ほど紹介したノーボスチ通信の中だけでも、
ロシアの平和利用の原子力が欧州に進出(06年 11月7日)
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=388&more=1
構造改革が進むロシア原子力界
http://www.rian-japan.com/news/details.php?p=404&more=1
という「ノリノリ系」ニュースが見つかります。「固くこれを張れ」という段階にはすでに入っているわけです。
ロシアからすれば、日本は格好のカモです。これを、よく言われる「外交下手」「世界のことを知らない」という言葉だけで済ませてはいけません。
私が考える日本人の行動特性の一つに、「専門家がイノセント(無邪気・無垢)すぎる」というものがあります。
たとえば、ロシア語がペラペラで、インターファックス通信が配信するニュースや●プラウダを原語で読むのが大好きだという人がいるとします(あまりいなさそうですが)。そういう人に限って、ロシア語を読んだりロシア人と話したりするだけで満足してしまい、相手の言うことを鵜呑みにしてしまう傾向が強いように思うのです。
つまり、外国文化を受け容れることが「目的」になってしまい、それを日本のために役に立てようという認識が欠けている「専門家」があまりに多いのです。
日本人というのは、明治初期に見られるように、卑屈なほどに外国文化を吸収しようとする傾向があり、相手の言い分も理解しようという(世界的に見て珍しい)性格です。しかし、それが高じて、相手の広報役、ひどい言い方をすれば操り人形になってしまう危険があるのです。
おそらく、大学出のインテリににソ連シンパの社会主義者が多かったことも、そのような日本人の特性を見抜かれた「文化侵略」の結果だったのでしょう。そして、それは、某経済新聞の「今、中国が熱い!」という宣伝や、実体のない韓流「ブーム」という形で、現在も継続中なのです。
これを防ぐには、インテリを名乗る人物に地政学と歴史を勉強してもらうべきです。逆に、国家の指導者については、受験勉強をやらせてもあまり効果は期待できません。指導者には「学習能力」ではなく、「判断力」が必要だからです。
本題に戻ります。こんな予想はしたくないのですが、ロシアはもうすでに「歙(ちぢ)め」て「奪わんと」するプランを立てているでしょう。たとえば、部品や構造に不具合が出たので、賠償しろと脅すとか、もっとひどい場合には、日本の二社がてがけた原発で「事故」が起こるとかいった形です。渡りきったところで橋を落とすということです。
幸い、今の段階ではまだ取り返しのつかない段階には来ていません。契約不履行で違約金を払えば済む程度です。教育と北朝鮮以外には意欲(能力?)がない安倍首相では少々不安なので、麻生外務大臣辺りに動いてもらって、ロシアの罠を回避したいものです。
以下のフォーム、メアドで関係機関にアピールできます。みなさんも、是非ご協力ください。
経済産業省 webmaster@meti.go.jp
外務省 https://www3.mofa.go.jp/mofaj/mail/qa.html
首相官邸 http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html
以前から、「ロシアは危険だ」ということをこのブログでも書いてきましたが、ここに来て事態が急展開です。
露がグルジア国境閉鎖し交通遮断、郵便や送金も停止
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20061002i214.htm
【モスクワ=緒方賢一】グルジア政府がロシア軍将校ら5人をスパイ容疑で拘束した問題を受け、ロシア政府は2日、グルジアとの間を結ぶ鉄道や道路など一切の交通を遮断する「国境封鎖」に踏み切るとともに、郵便や送金を停止することを決めた。インターファクス通信などが伝えた。
同通信などによると、ロシア運輸省では、航空や鉄道、海、陸などすべての交通機関に対し、グルジアとの交通の遮断を命令した。郵便や資金の送金を停止したロシア郵政省は理由について、「安全を確保するため」と説明した。
プーチン露大統領は1日、グルジア政府がロシア軍将校を拘束したことについて、「国家テロ」と非難。露政府はグルジア国民へのビザ発給を停止したほか、駐グルジア大使を召還していた。
(2006年10月2日21時45分 読売新聞)
まずは、グルジアの地理的位置づけを確認しておきましょう。

真ん中から左にかけてのオレンジ色の国がグルジアです。よく見ると、すぐ南にイランがあるのに気づきますか?これがかなり重要なのです。
グルジアは、いわゆるコーカサス地方の国ですが、その文化はロシアのそれと完全に異なっています。
たとえば、宗教はグルジア正教と言われる、世界で最も古い部類のキリスト教の宗派であり、ロシアのロシア正教とは教会組織や典礼が全く違います。当然、ロシア語もあまり通じません。国内の旅行者向けの案内も、グルジア語か英語が普通です。
しかし、ロシア語が通じないからというだけで、上の記事のような措置は執らないはずです。世界120位のGDPしかない(当然軍事費も低い)グルジアの、何をそんなに怖れているのでしょうか?
その理由は、ロシアの「資源外交」を邪魔する最大のガンがグルジアであるということに尽きます。
ロシアでは、高騰する石油価格を背景に、資源ナショナリズムが高まっています。
そんな中、ロシアの存在を無視できないのがEUです。
ロシア大統領「欧州と協調を優先」 エネルギー供給問題
http://www.asahi.com/international/update/0925/002.html
>フランス、ドイツ、ロシアの3カ国首脳会談が23日、
>仏北部コンピエーニュで開かれた。
上のくだりが意味するのは、ロシアに対しては、大陸ヨーロッパの2大国が揃ってお伺いを立てなければならないということであり、エネルギーについては、フランス・ドイツはロシアに従属するしかないのが現状ということです。
>今年1月のウクライナへのロシアの天然ガス供給拒否は、
>ガス需要の3割をロシアに依存する欧州を震え上がらせた。
これが「外交」というものです。このブログでは、上のガス供給拒否はウクライナを締め上げるための手段だと論じましたが、それに留まらず、西欧に対する脅しでもあったということです。
もし、グルジアを経由する石油パイプラインが完成し、大陸ヨーロッパが石油までロシアに依存することになれば、中東の石油の重要性が薄くなるわけです。そうなると、果たしてどこの国が困るんでしょうかね?
すぐおわかりでしょうね、それはアメリカです。
アメリカがイラクを攻撃し、イスラエルを応援するのは、●以前の記事でも述べたように、石油決済通貨としてのドルの地位を守るためです。(もっとも、これを表舞台であからさまに口にしてはいけない。いわゆる「公然の秘密」。)
しかし、カスピ海からロシアの石油が直接欧州に行ってしまえば、そんな努力も無駄になりかねません。何と言っても、ロシアのプーチン大統領は、石油決済を全てルーブルで行うべきだと主張しているからです。
要するに、ロシアの石油権益から、グルジアを経由して欧州へ向かう石油は、ドルで買えなくなるのです。裏を返せば、中東の原油(たとえば、サウジやクウェートはドル決済)をその分買わなくなる(ドルが不要になる)のです。世界3位の経済大国ドイツが、手持ちのドルや米国債を投げ売りしたら、ドルの価値はどうなるでしょう?
逆もまた真なりといえます。アメリカがカザフスタンなどの中央アジアの穏健派イスラム諸国から石油・天然ガスパイプラインを引っ張るとき、どうしてもグルジアは押さえなければなりません。
簡単に言ってしまえば、エネルギー問題がオセロだとしたら、グルジアが「角っこ」にあたるのです。
さらに、グルジアの地図を見ていただくと、もう一つ大きな「脅威」があることがわかります。ロシアの陸軍が中東に出ていく通り道がグルジアなのです。
コーカサスといえば、有史以来、国境と民族が一致したことがありませんでした。6世紀前後のごくわずかな時期を除いて、グルジア人が自前の国家を持ったのが、敵対するロシア=ソ連の支配下の自治共和国だったというのは、大きな皮肉です。
つまり、この一帯は中東と同様、常に大国の攻防の舞台であったということです。なぜなら、中東は東西の交通路が一カ所に集まるいわゆる「ハートランド」と言われる土地であり、グルジアを含むコーカサス南部を抑えるということは、中東に対して直接プレッシャーをかけることができるという重要性があるのです。
ロシアが中東への影響力を強めれば、アメリカには弱り目に祟り目です。だからこそ、アメリカは以下のリンクのように、グルジアへの関与を強めるのです。
グルジアの特殊部隊は「アメリカ製」
http://www2.odn.ne.jp/~cae02800/georgia/sof.htm
そういえば、世間を騒がせたチェチェン人の「テロリスト」も、グルジア国内のパンキーシ渓谷に潜伏しているようです。敵の敵は味方という訳です。
さらには、グルジア国内にあるアブハジア自治共和国は、ロシアの援助を受けてグルジアに対する分離独立運動を継続しています。コーカサスの情勢はもはや、何だかよくわからないくらいこんがらがっているわけです。
私がここで言っておきたいことは、人類の歴史が始まってから、このような紛争は常に存在してきたということです。川の水が、常に流れ続けるように、これらの紛争がピタッと止まる状態=平和が存在する状態の方が奇跡なのです。平和憲法があったおかげで日本は戦争に巻き込まれずに済んだという主張がいかに馬鹿げているかよくわかります。
幸い、我々の日本は、中東やコーカサスからずいぶん離れています。ロシアの陸軍が町を蹂躙し、テロリストが跋扈する危険はありません。しかし、エネルギー問題を考えれば、決してグルジアは対岸の火事ではないのです。
日本が取りうる方策は、日米同盟を維持しつつも、中東の紛争への直接関与を避けること(アメリカの赤字国債買い増しくらいは覚悟すべき)、そして、燃料電池を初めとする代替エネルギーを軌道に乗せて、中東地域の重要性を相対化させることです。それが、同盟国アメリカや、ひいては世界のためでもあります。
しかし・・・本当にランドパワーの周辺は目が離せませんね。これに懲りずに、今後もロシアのニュースは取り上げていきます。
露がグルジア国境閉鎖し交通遮断、郵便や送金も停止
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20061002i214.htm
【モスクワ=緒方賢一】グルジア政府がロシア軍将校ら5人をスパイ容疑で拘束した問題を受け、ロシア政府は2日、グルジアとの間を結ぶ鉄道や道路など一切の交通を遮断する「国境封鎖」に踏み切るとともに、郵便や送金を停止することを決めた。インターファクス通信などが伝えた。
同通信などによると、ロシア運輸省では、航空や鉄道、海、陸などすべての交通機関に対し、グルジアとの交通の遮断を命令した。郵便や資金の送金を停止したロシア郵政省は理由について、「安全を確保するため」と説明した。
プーチン露大統領は1日、グルジア政府がロシア軍将校を拘束したことについて、「国家テロ」と非難。露政府はグルジア国民へのビザ発給を停止したほか、駐グルジア大使を召還していた。
(2006年10月2日21時45分 読売新聞)
まずは、グルジアの地理的位置づけを確認しておきましょう。

真ん中から左にかけてのオレンジ色の国がグルジアです。よく見ると、すぐ南にイランがあるのに気づきますか?これがかなり重要なのです。
グルジアは、いわゆるコーカサス地方の国ですが、その文化はロシアのそれと完全に異なっています。
たとえば、宗教はグルジア正教と言われる、世界で最も古い部類のキリスト教の宗派であり、ロシアのロシア正教とは教会組織や典礼が全く違います。当然、ロシア語もあまり通じません。国内の旅行者向けの案内も、グルジア語か英語が普通です。
しかし、ロシア語が通じないからというだけで、上の記事のような措置は執らないはずです。世界120位のGDPしかない(当然軍事費も低い)グルジアの、何をそんなに怖れているのでしょうか?
その理由は、ロシアの「資源外交」を邪魔する最大のガンがグルジアであるということに尽きます。
ロシアでは、高騰する石油価格を背景に、資源ナショナリズムが高まっています。
そんな中、ロシアの存在を無視できないのがEUです。
ロシア大統領「欧州と協調を優先」 エネルギー供給問題
http://www.asahi.com/international/update/0925/002.html
>フランス、ドイツ、ロシアの3カ国首脳会談が23日、
>仏北部コンピエーニュで開かれた。
上のくだりが意味するのは、ロシアに対しては、大陸ヨーロッパの2大国が揃ってお伺いを立てなければならないということであり、エネルギーについては、フランス・ドイツはロシアに従属するしかないのが現状ということです。
>今年1月のウクライナへのロシアの天然ガス供給拒否は、
>ガス需要の3割をロシアに依存する欧州を震え上がらせた。
これが「外交」というものです。このブログでは、上のガス供給拒否はウクライナを締め上げるための手段だと論じましたが、それに留まらず、西欧に対する脅しでもあったということです。
もし、グルジアを経由する石油パイプラインが完成し、大陸ヨーロッパが石油までロシアに依存することになれば、中東の石油の重要性が薄くなるわけです。そうなると、果たしてどこの国が困るんでしょうかね?
すぐおわかりでしょうね、それはアメリカです。
アメリカがイラクを攻撃し、イスラエルを応援するのは、●以前の記事でも述べたように、石油決済通貨としてのドルの地位を守るためです。(もっとも、これを表舞台であからさまに口にしてはいけない。いわゆる「公然の秘密」。)
しかし、カスピ海からロシアの石油が直接欧州に行ってしまえば、そんな努力も無駄になりかねません。何と言っても、ロシアのプーチン大統領は、石油決済を全てルーブルで行うべきだと主張しているからです。
要するに、ロシアの石油権益から、グルジアを経由して欧州へ向かう石油は、ドルで買えなくなるのです。裏を返せば、中東の原油(たとえば、サウジやクウェートはドル決済)をその分買わなくなる(ドルが不要になる)のです。世界3位の経済大国ドイツが、手持ちのドルや米国債を投げ売りしたら、ドルの価値はどうなるでしょう?
逆もまた真なりといえます。アメリカがカザフスタンなどの中央アジアの穏健派イスラム諸国から石油・天然ガスパイプラインを引っ張るとき、どうしてもグルジアは押さえなければなりません。
簡単に言ってしまえば、エネルギー問題がオセロだとしたら、グルジアが「角っこ」にあたるのです。
さらに、グルジアの地図を見ていただくと、もう一つ大きな「脅威」があることがわかります。ロシアの陸軍が中東に出ていく通り道がグルジアなのです。
コーカサスといえば、有史以来、国境と民族が一致したことがありませんでした。6世紀前後のごくわずかな時期を除いて、グルジア人が自前の国家を持ったのが、敵対するロシア=ソ連の支配下の自治共和国だったというのは、大きな皮肉です。
つまり、この一帯は中東と同様、常に大国の攻防の舞台であったということです。なぜなら、中東は東西の交通路が一カ所に集まるいわゆる「ハートランド」と言われる土地であり、グルジアを含むコーカサス南部を抑えるということは、中東に対して直接プレッシャーをかけることができるという重要性があるのです。
ロシアが中東への影響力を強めれば、アメリカには弱り目に祟り目です。だからこそ、アメリカは以下のリンクのように、グルジアへの関与を強めるのです。
グルジアの特殊部隊は「アメリカ製」
http://www2.odn.ne.jp/~cae02800/georgia/sof.htm
そういえば、世間を騒がせたチェチェン人の「テロリスト」も、グルジア国内のパンキーシ渓谷に潜伏しているようです。敵の敵は味方という訳です。
さらには、グルジア国内にあるアブハジア自治共和国は、ロシアの援助を受けてグルジアに対する分離独立運動を継続しています。コーカサスの情勢はもはや、何だかよくわからないくらいこんがらがっているわけです。
私がここで言っておきたいことは、人類の歴史が始まってから、このような紛争は常に存在してきたということです。川の水が、常に流れ続けるように、これらの紛争がピタッと止まる状態=平和が存在する状態の方が奇跡なのです。平和憲法があったおかげで日本は戦争に巻き込まれずに済んだという主張がいかに馬鹿げているかよくわかります。
幸い、我々の日本は、中東やコーカサスからずいぶん離れています。ロシアの陸軍が町を蹂躙し、テロリストが跋扈する危険はありません。しかし、エネルギー問題を考えれば、決してグルジアは対岸の火事ではないのです。
日本が取りうる方策は、日米同盟を維持しつつも、中東の紛争への直接関与を避けること(アメリカの赤字国債買い増しくらいは覚悟すべき)、そして、燃料電池を初めとする代替エネルギーを軌道に乗せて、中東地域の重要性を相対化させることです。それが、同盟国アメリカや、ひいては世界のためでもあります。
しかし・・・本当にランドパワーの周辺は目が離せませんね。これに懲りずに、今後もロシアのニュースは取り上げていきます。
受験勉強中に、携帯電話でかなり気になるニュースを見つけた(←勉強しろよ)ので、それに関する記事を書きます。
●暴走する露民族主義・・・相次ぐ外国人襲撃、アムネスティ警鐘
(以下引用)
国際的人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルは四日、外国人排斥を旗印とするロシア民族主義の暴走に警鐘を鳴らす報告書を発表した。外国人が多数在住するモスクワやサンクトペテルブルクなどロシアの大都市部では、毎週のように外国系住民が襲撃されるが、保安当局が真剣に対策を講じる気配はない。こうした現状は、後に独裁者ヒトラーを生み出した一九二〇年代当時のドイツの状況に酷似すると警告する専門家も出てきた。
報告書「ロシア連邦・コントロールを失った暴力的な民族主義」では、暴力的な民族主義で昨年少なくとも二十八人が殺害され、三百六十六人が負傷したと言及し、「ロシア当局者には、故意に(民族主義に)目をつむる者もいる」として早急に対策を講じる必要があると訴えた。
ロシア民族主義者による外国人襲撃事件は、今年になってエスカレートする兆候もある。ロシアのNTVなどによると、先月二十二日午後六時ごろ、モスクワ中心部の繁華街に近い地下鉄プーシキン駅構内で、アルメニア人大学生、ビゲンさん(17)が友人とキリスト教の復活祭をお祝いしようと、プラットホームに集まっていたところ、地下鉄から降り立ったロシア人の若者の集団に突然襲われ、ナイフで刺されて死亡した。若者たちはそのまま逃走した。
白夜の季節を迎えて外は明るく、乗客らで込み合う地下鉄構内で発生した白昼の殺人事件に、モスクワ市民たちは衝撃を受けたが、ビゲンさんは今年十四人目の犠牲者にしか過ぎない。
その前の週の十四日には、サンクトペテルブルクでアフガニスタン人が治安当局の制服を着た男たちの集団に襲われ暴行を加えられたほか、十三日には、南部のボルゴグラード州でロマニ人(ジプシー)たちの家族が襲撃され二人が死亡、二人が重傷を負った。七日には、サンクトペテルブルクで、人種差別の撤廃を求めて活動していたセネガル人の人権擁護団体指導者が射殺された。
一昨年二月には、同じサンクトペテルブルクでタジク人の少女(9つ)=当時=が帰宅途中に自宅の目の前で十数カ所をナイフで刺されて死亡した事件が発生。今年三月二十二日には、同事件の容疑者の若者たち八人に対する判決公判が行われ、事実上の無実判決である狼藉(ろうぜき)の罪が言い渡された。陪審員たちは、殺害された少女よりも若者たちの将来に配慮した。
ロシアの人権擁護団体ヘルシンキ・グループの法律顧問、ナビツキー氏は、外国人排斥の根には貧困や失業など同国の社会問題があり、その責任を外国人に転嫁する風潮の表れであると指摘したが、「民族主義が要因の事件は、全体の犯罪の1%に過ぎず、それを強調して過剰反応するのはまだ早い」と述べた。
しかし、ロシアの著名なジャーナリスト、ムレチン氏は、ドイツ帝国が第一次世界大戦に敗れて帝政を廃止、ドイツ共和国(ワイマール共和国)の下で復興が始まった一九二〇年代とロシアの現状を比較。「帝国の威信が失墜し、失業者数が増大。そこに登場し人気を博したユダヤ人排斥運動をドイツの官憲は当時、野放しにした」と述べ、ファシズムが誕生する前のドイツと、現代ロシアには数多くの共通点があると警告した。
(引用以上)
それにしても、ロシアというのは相当外国人労働者が多い国のようです。
それもそのはずで、実はロシアはソ連崩壊してから初めてと言っていい好景気なのです。●こちらのニュースによると、最近のGDPが前年比5.4%も伸びています。
その主な原因は、原油の世界的な高騰です。ロシアは世界第2位の原油生産国(1位はサウジアラビア)ですから、原油の希少価値が高まれば高まるほど、ロシアは利益を増やすことができるというわけです。
その好景気に引っ張られて、外国、特にCIS(独立国家共同体。要するに旧ソ連諸国)からの労働者の流入が著しいわけです。
しかし、外国人労働者がどっと押し寄せてくると、治安の悪化や住宅不足など、社会問題が増えるのはどこの国も同じです。ロシア政府は、どのような対応をしているのでしょうか。参考になるのは、●こちらのPDF資料です。
上記のリンク先にもあるように、ロシアも「一応」外国人労働者を管理しようとはしています。しかも許可制=原則禁止なので、かなり厳しいものと言えるでしょう。
しかし、おそらく実態は「ザル法」でしょう。その証拠は、●こちらのブログです。なにしろ、ロシア人の成人の3分の1が賄賂を公務員に渡したことがあるという統計がある(本当)というのです。外国人労働者を受け容れる企業が、内務省の「招待状」とやらをわざわざ請求する遵法意識があるとはとても思えません。
現実は、政府が発表する実態を大きく上回る外国人労働者がロシアの主要都市に流れ込んでいるわけです。
最も重要なことは、冒頭のニュース記事に、「ファシズムが誕生する前のドイツと、現代ロシアには数多くの共通点がある」ということです。
それもそのはずです。どちらも「ランドパワー」(意味は●こちらのサイトを参照)なのです。
ランドパワー(大陸型国家)の特徴は、勢力圏が陸続きになっているので、国境付近に本国とは異なる民族や集団がたくさん存在していることです。
第1次大戦前のドイツはポーランドやチェコを併合していたので、大戦後もそれらの国との国境地帯に「ドイツ人でないドイツ国民」がたくさんいました。また、今のロシアであれば、事実上ロシアの属国となっているCIS諸国がそうです。
これを言い換えれば、ランドパワーは常に国境付近に「反抗勢力」やそれに近い集団を抱えているということです。ロシアを悩ませている問題に、●チェチェン人によるテロがありますが、こういう少数集団による抵抗運動は、最近に始まったことではありません。1648年のボグダン・フメリニツキーの乱(ウクライナ・コサックの反乱)、1837年のケネサルの反乱(カザフ人による反乱)のように、ロシアの歴史では「恒例」といってもよいほどです。
重要なことは、歴史上このようなリスクを抱えずに成立したランドパワー国家は存在しないということです。それゆえ、ランドパワーが強権を振るっている時期には、必ずある行動を取ろうとする、いや、取らざるを得なくなります。
それが、「反対勢力の抹殺」です。
我々日本人には到底思い及ばない選択肢ですが、これこそがランドパワーの本質です。そして、忘れてはならないのは、彼らは悪趣味なのではなく、国家の安全保障という観点から、反対勢力を抹殺せざるを得ないということです。
ヒトラーは国会議事堂放火事件(1933年)後非常事態を宣言しますが、その後やったことは共産党の弾圧でした。その次にやり玉に挙がったのは社会民主党員です。ホロコースト(ユダヤ人根絶作戦)が始まったのが第2次大戦開始後です。実はまずナチスの標的になったのはいわゆる「左翼」だったわけです。
彼らが標的になった理由は簡単です。左翼政党、特に共産党は、ソ連がコントロールしている組織だからです。つまり、国境線付近にいる異民族集団と同じような位置づけにあるというわけです。ソ連からしてみれば、ソ連の国境線を侵しかねないドイツを内部崩壊させるために、ドイツ共産党を飼っているのです。まさに獅子身中の虫です。だからこそ、ヒトラーは共産主義を目の敵にしたのでしょう。
そしてナチスが軍拡、領土拡張、第2次大戦の惹起、ホロコーストといった風に、どんどんおかしな方向へ進んでいったのは、よく知られていることです。
しかし、これを「ナチスという特殊な連中」のやったこととして片づけるべきではありません。極論かもしれませんが、ナチスの歩んだ道こそが、ランドパワーの宿命なのです。
ナチス前後のドイツの歴史を、おおざっぱに抽象化してみるとこうなります。
1.敗戦で国外の領土放棄(外国人は国内に残る)
2.不景気と、それにともなう外国人排斥の動き
3.強硬派の指導者の登場(国民の熱狂的支持)
4.軍拡、領土拡張の野心をみせ、周辺国と対立
5.対立するランドパワー国家との大戦争
1.は「敗戦」を「ソ連崩壊」と置き換えてみてください。ぴったり合致しています。ドイツ帝国の場合と同じく、ソ連の崩壊も、ロシア人のプライドをいたく傷つけたことでしょう。
また、2.はゴルバチョフ、エリツィン政権下での自由経済への転換期です。合理化に伴い、割安な労働力を得るために、外国人労働者が入ってきたのもこの時期です。
そして、3.はプーチン大統領誕生です。政敵を疑獄事件で葬り、テレビ局を支配し、NGOまで許可制にする・・・ヒトラーまでは行かなくても、相当に全体主義的な指導者であることは間違いありません。
プーチンが大量得票で大統領になれたのは、第2次チェチェン戦争で徹底的にチェチェンを叩いた(大量殺戮、大量強姦を行わせた)からです。失われた「強い(ランドパワーである)ロシア」のプライドを国民に取り戻させたわけです。
こういう指導者の姿勢が、偏狭な連中に妙な自信を付けさせたという面もありそうです。
では、4.はどうなのかというと、実はつい先日その動きが出てきました。
●ロシア大統領、軍事大国復活に意欲・年頭教書演説
(以下引用)
ロシアのプーチン大統領は10日、クレムリンで年次教書演説を行い、戦略核兵器の増強を軸にした軍拡路線を明確に打ち出した。従来は軍の近代化を重視してきたが、再び軍事大国化へカジを切る。資源外交の強化も打ち出しており、議長を務める7月の主要国首脳会議(サンクトペテルブルク・サミット)を前に、西側との対立が鮮明になってきた。
上下両院議員らを前に演説した大統領は核兵器の宇宙配備の可能性や小型核兵器開発などに言及し「各国の軍拡競争は新しい段階に入った」と指摘した。そのうえで「戦略的な均衡を保たねばならない」と、軍備拡張を強く訴えた。
具体的には、ミサイルに迎撃されにくい大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を進めていることや、1990年以来となる核兵器搭載可能な新型原子力潜水艦二隻を近く配備することを表明。特に、戦略核については今後5年間でミサイル、長距離爆撃機、原子力潜水艦への配備を増強する考えを示した。
(引用以上)
この記事の中で重要なのは「核兵器搭載可能な新型原子力潜水艦二隻」と「小型核兵器開発」です。まさか、チェチェンのゲリラと戦うのにこんなオーバーな装備は必要ありません。
あくまで最悪の予想ですが、5.は「アメリカとの大戦争」になる可能性があるのです。
冷戦が終わったのに、どこで何をするのだ?と思うかも知れませんが、舞台になるとすればおそらく「黒海」か「中東」です。
黒海に関しては、●以前の記事でも紹介しましたが、ウクライナの問題です。仮にここに完全にアメリカ寄りの国が誕生してしてしまえば、黒海にアメリカの潜水艦や空母が入ってくることにもなりかねません。そうなると、ロシアの一大石油利権であるカスピ海油田が危なくなるのです。
そして、中東に関しては、やはり油田地帯だということです。ここの石油を全てアメリカが支配すれば、ロシアの「ある戦略」にとって致命傷になりかねないのです。
(以下引用)
欧州連合(EU)は天然ガスなどの安定供給を確保するため、包括的なエネルギー条約をロシアと締結する検討に入った。欧州委員会が作成するエネルギー共通政策の具体案に盛り込み、23日からのEU首脳会議で協議する。
現在は加盟国が個別にロシアと条約を結んでいるが、これをEU共通の条約に切り替える。対ロシアでは今年初め、ウクライナとの紛争や記録的な寒波で欧州向けの天然ガス供給が減少する事態が起きた。特にロシアへの依存度が高い中・東欧諸国は危機感を強めており、EU全体としての対応を求めていた。
(3月9日、日経新聞ウェブ版より)
(引用以上)
簡単に言えば、ロシアはエネルギーをダシに、EUを支配しようと考えているのです。ここにアメリカが安定した石油供給を申し出たりなどしたら、せっかくの構想が台無しというわけです。
アメリカ、フランス、イギリス、そして日本も含めた各国が、核開発が疑われるイランに対して、これ以上馬鹿な真似はやめろと言っているのにも関わらず、ロシアは「イランと一緒になってウラン濃縮をやりたい」などととんでもないことを主張しています。
その動機は簡単です。イランまでアメリカの手に落ちたら、ロシアは窮地に立たされるからです。イランはカスピ海最大の油田、バクー油田を擁するアゼルバイジャン共和国の隣国です。つまり、イランを取られれば、アメリカの「石油力」が増大し、自分のそれが脅かされることになるのです。
このロシアの行動を見るに付け、もうすでに戦争は始まっているのではないかと思ってしまいます。
外国は中国、朝鮮だけではありません。みなさんも、是非ロシアの今後の動向に注目しましょう。
●暴走する露民族主義・・・相次ぐ外国人襲撃、アムネスティ警鐘
(以下引用)
国際的人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルは四日、外国人排斥を旗印とするロシア民族主義の暴走に警鐘を鳴らす報告書を発表した。外国人が多数在住するモスクワやサンクトペテルブルクなどロシアの大都市部では、毎週のように外国系住民が襲撃されるが、保安当局が真剣に対策を講じる気配はない。こうした現状は、後に独裁者ヒトラーを生み出した一九二〇年代当時のドイツの状況に酷似すると警告する専門家も出てきた。
報告書「ロシア連邦・コントロールを失った暴力的な民族主義」では、暴力的な民族主義で昨年少なくとも二十八人が殺害され、三百六十六人が負傷したと言及し、「ロシア当局者には、故意に(民族主義に)目をつむる者もいる」として早急に対策を講じる必要があると訴えた。
ロシア民族主義者による外国人襲撃事件は、今年になってエスカレートする兆候もある。ロシアのNTVなどによると、先月二十二日午後六時ごろ、モスクワ中心部の繁華街に近い地下鉄プーシキン駅構内で、アルメニア人大学生、ビゲンさん(17)が友人とキリスト教の復活祭をお祝いしようと、プラットホームに集まっていたところ、地下鉄から降り立ったロシア人の若者の集団に突然襲われ、ナイフで刺されて死亡した。若者たちはそのまま逃走した。
白夜の季節を迎えて外は明るく、乗客らで込み合う地下鉄構内で発生した白昼の殺人事件に、モスクワ市民たちは衝撃を受けたが、ビゲンさんは今年十四人目の犠牲者にしか過ぎない。
その前の週の十四日には、サンクトペテルブルクでアフガニスタン人が治安当局の制服を着た男たちの集団に襲われ暴行を加えられたほか、十三日には、南部のボルゴグラード州でロマニ人(ジプシー)たちの家族が襲撃され二人が死亡、二人が重傷を負った。七日には、サンクトペテルブルクで、人種差別の撤廃を求めて活動していたセネガル人の人権擁護団体指導者が射殺された。
一昨年二月には、同じサンクトペテルブルクでタジク人の少女(9つ)=当時=が帰宅途中に自宅の目の前で十数カ所をナイフで刺されて死亡した事件が発生。今年三月二十二日には、同事件の容疑者の若者たち八人に対する判決公判が行われ、事実上の無実判決である狼藉(ろうぜき)の罪が言い渡された。陪審員たちは、殺害された少女よりも若者たちの将来に配慮した。
ロシアの人権擁護団体ヘルシンキ・グループの法律顧問、ナビツキー氏は、外国人排斥の根には貧困や失業など同国の社会問題があり、その責任を外国人に転嫁する風潮の表れであると指摘したが、「民族主義が要因の事件は、全体の犯罪の1%に過ぎず、それを強調して過剰反応するのはまだ早い」と述べた。
しかし、ロシアの著名なジャーナリスト、ムレチン氏は、ドイツ帝国が第一次世界大戦に敗れて帝政を廃止、ドイツ共和国(ワイマール共和国)の下で復興が始まった一九二〇年代とロシアの現状を比較。「帝国の威信が失墜し、失業者数が増大。そこに登場し人気を博したユダヤ人排斥運動をドイツの官憲は当時、野放しにした」と述べ、ファシズムが誕生する前のドイツと、現代ロシアには数多くの共通点があると警告した。
(引用以上)
それにしても、ロシアというのは相当外国人労働者が多い国のようです。
それもそのはずで、実はロシアはソ連崩壊してから初めてと言っていい好景気なのです。●こちらのニュースによると、最近のGDPが前年比5.4%も伸びています。
その主な原因は、原油の世界的な高騰です。ロシアは世界第2位の原油生産国(1位はサウジアラビア)ですから、原油の希少価値が高まれば高まるほど、ロシアは利益を増やすことができるというわけです。
その好景気に引っ張られて、外国、特にCIS(独立国家共同体。要するに旧ソ連諸国)からの労働者の流入が著しいわけです。
しかし、外国人労働者がどっと押し寄せてくると、治安の悪化や住宅不足など、社会問題が増えるのはどこの国も同じです。ロシア政府は、どのような対応をしているのでしょうか。参考になるのは、●こちらのPDF資料です。
上記のリンク先にもあるように、ロシアも「一応」外国人労働者を管理しようとはしています。しかも許可制=原則禁止なので、かなり厳しいものと言えるでしょう。
しかし、おそらく実態は「ザル法」でしょう。その証拠は、●こちらのブログです。なにしろ、ロシア人の成人の3分の1が賄賂を公務員に渡したことがあるという統計がある(本当)というのです。外国人労働者を受け容れる企業が、内務省の「招待状」とやらをわざわざ請求する遵法意識があるとはとても思えません。
現実は、政府が発表する実態を大きく上回る外国人労働者がロシアの主要都市に流れ込んでいるわけです。
最も重要なことは、冒頭のニュース記事に、「ファシズムが誕生する前のドイツと、現代ロシアには数多くの共通点がある」ということです。
それもそのはずです。どちらも「ランドパワー」(意味は●こちらのサイトを参照)なのです。
ランドパワー(大陸型国家)の特徴は、勢力圏が陸続きになっているので、国境付近に本国とは異なる民族や集団がたくさん存在していることです。
第1次大戦前のドイツはポーランドやチェコを併合していたので、大戦後もそれらの国との国境地帯に「ドイツ人でないドイツ国民」がたくさんいました。また、今のロシアであれば、事実上ロシアの属国となっているCIS諸国がそうです。
これを言い換えれば、ランドパワーは常に国境付近に「反抗勢力」やそれに近い集団を抱えているということです。ロシアを悩ませている問題に、●チェチェン人によるテロがありますが、こういう少数集団による抵抗運動は、最近に始まったことではありません。1648年のボグダン・フメリニツキーの乱(ウクライナ・コサックの反乱)、1837年のケネサルの反乱(カザフ人による反乱)のように、ロシアの歴史では「恒例」といってもよいほどです。
重要なことは、歴史上このようなリスクを抱えずに成立したランドパワー国家は存在しないということです。それゆえ、ランドパワーが強権を振るっている時期には、必ずある行動を取ろうとする、いや、取らざるを得なくなります。
それが、「反対勢力の抹殺」です。
我々日本人には到底思い及ばない選択肢ですが、これこそがランドパワーの本質です。そして、忘れてはならないのは、彼らは悪趣味なのではなく、国家の安全保障という観点から、反対勢力を抹殺せざるを得ないということです。
ヒトラーは国会議事堂放火事件(1933年)後非常事態を宣言しますが、その後やったことは共産党の弾圧でした。その次にやり玉に挙がったのは社会民主党員です。ホロコースト(ユダヤ人根絶作戦)が始まったのが第2次大戦開始後です。実はまずナチスの標的になったのはいわゆる「左翼」だったわけです。
彼らが標的になった理由は簡単です。左翼政党、特に共産党は、ソ連がコントロールしている組織だからです。つまり、国境線付近にいる異民族集団と同じような位置づけにあるというわけです。ソ連からしてみれば、ソ連の国境線を侵しかねないドイツを内部崩壊させるために、ドイツ共産党を飼っているのです。まさに獅子身中の虫です。だからこそ、ヒトラーは共産主義を目の敵にしたのでしょう。
そしてナチスが軍拡、領土拡張、第2次大戦の惹起、ホロコーストといった風に、どんどんおかしな方向へ進んでいったのは、よく知られていることです。
しかし、これを「ナチスという特殊な連中」のやったこととして片づけるべきではありません。極論かもしれませんが、ナチスの歩んだ道こそが、ランドパワーの宿命なのです。
ナチス前後のドイツの歴史を、おおざっぱに抽象化してみるとこうなります。
1.敗戦で国外の領土放棄(外国人は国内に残る)
2.不景気と、それにともなう外国人排斥の動き
3.強硬派の指導者の登場(国民の熱狂的支持)
4.軍拡、領土拡張の野心をみせ、周辺国と対立
5.対立するランドパワー国家との大戦争
1.は「敗戦」を「ソ連崩壊」と置き換えてみてください。ぴったり合致しています。ドイツ帝国の場合と同じく、ソ連の崩壊も、ロシア人のプライドをいたく傷つけたことでしょう。
また、2.はゴルバチョフ、エリツィン政権下での自由経済への転換期です。合理化に伴い、割安な労働力を得るために、外国人労働者が入ってきたのもこの時期です。
そして、3.はプーチン大統領誕生です。政敵を疑獄事件で葬り、テレビ局を支配し、NGOまで許可制にする・・・ヒトラーまでは行かなくても、相当に全体主義的な指導者であることは間違いありません。
プーチンが大量得票で大統領になれたのは、第2次チェチェン戦争で徹底的にチェチェンを叩いた(大量殺戮、大量強姦を行わせた)からです。失われた「強い(ランドパワーである)ロシア」のプライドを国民に取り戻させたわけです。
こういう指導者の姿勢が、偏狭な連中に妙な自信を付けさせたという面もありそうです。
では、4.はどうなのかというと、実はつい先日その動きが出てきました。
●ロシア大統領、軍事大国復活に意欲・年頭教書演説
(以下引用)
ロシアのプーチン大統領は10日、クレムリンで年次教書演説を行い、戦略核兵器の増強を軸にした軍拡路線を明確に打ち出した。従来は軍の近代化を重視してきたが、再び軍事大国化へカジを切る。資源外交の強化も打ち出しており、議長を務める7月の主要国首脳会議(サンクトペテルブルク・サミット)を前に、西側との対立が鮮明になってきた。
上下両院議員らを前に演説した大統領は核兵器の宇宙配備の可能性や小型核兵器開発などに言及し「各国の軍拡競争は新しい段階に入った」と指摘した。そのうえで「戦略的な均衡を保たねばならない」と、軍備拡張を強く訴えた。
具体的には、ミサイルに迎撃されにくい大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を進めていることや、1990年以来となる核兵器搭載可能な新型原子力潜水艦二隻を近く配備することを表明。特に、戦略核については今後5年間でミサイル、長距離爆撃機、原子力潜水艦への配備を増強する考えを示した。
(引用以上)
この記事の中で重要なのは「核兵器搭載可能な新型原子力潜水艦二隻」と「小型核兵器開発」です。まさか、チェチェンのゲリラと戦うのにこんなオーバーな装備は必要ありません。
あくまで最悪の予想ですが、5.は「アメリカとの大戦争」になる可能性があるのです。
冷戦が終わったのに、どこで何をするのだ?と思うかも知れませんが、舞台になるとすればおそらく「黒海」か「中東」です。
黒海に関しては、●以前の記事でも紹介しましたが、ウクライナの問題です。仮にここに完全にアメリカ寄りの国が誕生してしてしまえば、黒海にアメリカの潜水艦や空母が入ってくることにもなりかねません。そうなると、ロシアの一大石油利権であるカスピ海油田が危なくなるのです。
そして、中東に関しては、やはり油田地帯だということです。ここの石油を全てアメリカが支配すれば、ロシアの「ある戦略」にとって致命傷になりかねないのです。
(以下引用)
欧州連合(EU)は天然ガスなどの安定供給を確保するため、包括的なエネルギー条約をロシアと締結する検討に入った。欧州委員会が作成するエネルギー共通政策の具体案に盛り込み、23日からのEU首脳会議で協議する。
現在は加盟国が個別にロシアと条約を結んでいるが、これをEU共通の条約に切り替える。対ロシアでは今年初め、ウクライナとの紛争や記録的な寒波で欧州向けの天然ガス供給が減少する事態が起きた。特にロシアへの依存度が高い中・東欧諸国は危機感を強めており、EU全体としての対応を求めていた。
(3月9日、日経新聞ウェブ版より)
(引用以上)
簡単に言えば、ロシアはエネルギーをダシに、EUを支配しようと考えているのです。ここにアメリカが安定した石油供給を申し出たりなどしたら、せっかくの構想が台無しというわけです。
アメリカ、フランス、イギリス、そして日本も含めた各国が、核開発が疑われるイランに対して、これ以上馬鹿な真似はやめろと言っているのにも関わらず、ロシアは「イランと一緒になってウラン濃縮をやりたい」などととんでもないことを主張しています。
その動機は簡単です。イランまでアメリカの手に落ちたら、ロシアは窮地に立たされるからです。イランはカスピ海最大の油田、バクー油田を擁するアゼルバイジャン共和国の隣国です。つまり、イランを取られれば、アメリカの「石油力」が増大し、自分のそれが脅かされることになるのです。
このロシアの行動を見るに付け、もうすでに戦争は始まっているのではないかと思ってしまいます。
外国は中国、朝鮮だけではありません。みなさんも、是非ロシアの今後の動向に注目しましょう。
●以前の記事で、ロシアがNGO(非政府組織)を許可制にしたという話を書きましたが、だんだん事態が深刻になってきているようです。
(以下引用)
●プーチン政権、NGO規制の次は「敵対外国人」の入国制限へ新法
【モスクワ=内藤泰朗】ロシアのプーチン政権は、外国の非政府組織(NGO)の活動を大幅に規制する法律を近々施行するが、今度は、ロシアを非難する外国人の入国を制限できる新法の導入を準備していることが明らかになった。ロシアの民主主義後退を懸念する欧米諸国と、そうした外国への警戒心を強めるプーチン政権の溝がいっそう深まりそうだ。
ロシアのラジオ放送エホ・マスクブイなどによると、プーチン政権の翼賛政党「統一ロシア」が支配するロシア下院では、外国人の入国に関する法律の修正案採択が検討されている。「ロシアを尊敬せず、侮辱的な対応をする外国人」には入国ビザの発給を行わないという内容で、政権に批判的な姿勢を示す外国人ジャーナリストなども対象になる可能性があるという。
ロシアでは二〇〇七年に下院選挙、〇八年に大統領選挙が予定されており、〇四年秋のウクライナ大統領選挙に合わせて起きた「オレンジ革命」のような政権転覆の動きが起きることを強く警戒している。プーチン政権は、ウクライナには外国の資金が流入し、外国人が多数協力したとみており、これらの新法導入は、ロシアでの“革命再来”の阻止を念頭に置いたものであることは間違いない。(中略)
エホ・マスクブイの著名な評論家ブントマン氏は、これらの新法導入の動きは「政権側がいかに現在の統治システムに自信を持てず、おびえているかを示している」と指摘した。
Sankei Web 1/23朝刊
(引用以上)
・・・ロシアを非難する外国人って、私も見事に該当しますね(笑)。
日本国憲法でも、外国人に入国する自由というのは認められていません。最高裁判例は、日本にいた外国人の再入国も憲法上保障されていないといっています。(●こちらのまとめを参照)なぜなら、安全保障などの観点から、いかなる外国人を入国させるかは、国際慣習法上国が自由に決めていいからです。
しかし、それにしても、「ロシアを非難」って・・・どこまで行けば非難なんでしょうかね。これでは、当局が好き勝手に外国人を選別できることになりそうです。
ロシアが、ここまで焦っている理由は、上の引用にもあるように、ウクライナで西欧寄りの民主的な政権が出来てしまったことです。
日教組の先生でなくても、民主的なことの何がいけないのか?・・・と思うでしょう。それは、ロシアという国をよく分かっていないということです。
地政学(geopolitics)という学問領域があります。その基本は、ある国の政治決定は、地球上の地理的条件によって決まるという考えです。(興味がある方は、是非●このサイトをご覧ください)
この地政学によると、ロシアは、典型的な「ランドパワー」です。ランドパワーというのは、要するに陸軍国です。ランドパワーの考え方は、以下のようにまとめられます。
まず、国境線を首都からなるべく遠ざけようとする傾向があります。
イメージが湧かない方は、少し前の東ヨーロッパを思い出してください。みんなソ連(ロシア)の衛星国だったはずです。あれは、ナポレオンやヒトラーのような奴がロシアを陸づたいに攻めるときの「盾」だったのです。
そのために国境線が長大になり、必然的に防衛のための軍事費が膨大になる傾向にあります。
地理の授業でもよく出てくる「面積が世界一」であるロシアの軍事費は、世界で2番目です。ちなみに、GDPは16番目で、オランダ(面積は九州と同じ大きさ)よりも下です。これは、別に無理してやっているわけではありません。そうせざるを得ないのです。
そんな巨大ランドパワーの国が、死ぬほど怖いことが二つあります。
一つは、「隣接地域を他の強大な国に取られること」です。
ウクライナの場合、陸の国境というより、「黒海」です。

上の画像の真ん中が黒海ですが、北岸が一部を除いてウクライナ(UKRAINE)領であることがわかります。そして、黒海の東はじには「コーカサス地方」があり、ここはカスピ海油田からのパイプラインが通っています。(地図上のBAKUは油田の町)ロシアがほぼ独占している石油利権です。
もし黒海に、アメリカのよう強国の空母や原子力潜水艦が出てきたら、どうなるでしょう?カスピ海油田だけではありません。ロシアの首都モスクワさえも危険にさらされます。
そして、もう一つは「民主化」です。
他民族国家を力でまとめ上げている国で民主化をしたら、どうなるかわかりますか?
各民族が好き勝手に言いたいことを言い始めるに決まっています。そうでなくても、普通の国民が生活の向上を求め始めたら、軍事費を削減して民政に使わざるを得なくなります。そうなれば、もうランドパワーは空中分解してしまうでしょう。
ロシアだって選挙をやっているじゃないか、という人は、表面しか見えていません。前回の記事でも書きましたが、ロシアには言論の自由や結社の自由がありません。1998年には、政権を厳しく追及したガリーナ・ストロボイトワという政治運動家が自宅で暗殺されるという事件が起こりました。政治家が暗殺されるなど、他の先進国ではまずありません。プーチン大統領が圧倒的支持で選ばれているのは、そういう「目に見えない力」のおかげなのです。
しかも、どこの国でも民主化は「経済の自由化」を連れてきます。そうなると、その国は必ず金持ちの資本主義国(アメリカやドイツ)の影響下に入ってしまい、二度とランドパワーの言うことなど聞きません。ユーシチェンコ大統領が、透明な市場経済システムの確立を公約にしているのも、間違いなくそういう狙いがあります。軍事力で弱い奴から絞り取るという、ランドパワーのお得意の戦術が使えなくなってしまうのです。
そこで、巨大ランドパワーが生き残るための作戦は、
「隣国を、自分に服従するミニ独裁国家にしておくこと」
これしかありません。実際、ウクライナは2004年の、いわゆる「オレンジ革命」の前までは、クラフチュク、クチマというソビエト共産党出身の独裁政治家が大統領だったのです。それが、いまやアメリカやドイツの子分です。
ロシアはかなりの危機感を持っています。●ウクライナへの天然ガス供給をストップした事件も、金の問題などではなく、西欧寄りになったウクライナを締め上げるための圧力と見て間違いありません。ウクライナ側が挑発するような行動、例えば、アメリカから武器を購入するなどしたら、最悪の場合戦争が起こります。
そこまで行かなくても、ウクライナの政府高官を、濡れ衣を着せて社会的に抹殺したり、事故に見せかけて殺すくらいはやりかねません。日本人の感覚では信じられないでしょうが、それがランドパワーというものなのです。
引用した記事も、「対ウクライナ」、ひいては「対西ヨーロッパ」、もしかすると「対アメリカ」の軍事作戦の、氷山の一角なのではないか。そう思って間違いないでしょう。
なんですって?
日本はウクライナでなくて良かった?
安心してもらっては困ります。すぐ近くに、言論の自由もなく、軍事費を伸ばし続け、民主化する気など毛ほどもないまま、少数民族を弾圧し続けている巨大ランドパワーがいるではありませんか!!その国は、60年間もの間にわたり、「自分に服従するミニ独裁国家」を、朝鮮半島の北側に生きながらえさせています。ロシアと、行動パターンが何もかも一緒です。
日本まで「ランドパワー」の手に落ちてしまってはいけません。ロシアとウクライナの「戦争」は、日本にも多くの教訓を与えてくれるはずです。これからも、このブログではロシア(やウクライナ)の様子について、折に触れて紹介していきたいと思います。
(以下引用)
●プーチン政権、NGO規制の次は「敵対外国人」の入国制限へ新法
【モスクワ=内藤泰朗】ロシアのプーチン政権は、外国の非政府組織(NGO)の活動を大幅に規制する法律を近々施行するが、今度は、ロシアを非難する外国人の入国を制限できる新法の導入を準備していることが明らかになった。ロシアの民主主義後退を懸念する欧米諸国と、そうした外国への警戒心を強めるプーチン政権の溝がいっそう深まりそうだ。
ロシアのラジオ放送エホ・マスクブイなどによると、プーチン政権の翼賛政党「統一ロシア」が支配するロシア下院では、外国人の入国に関する法律の修正案採択が検討されている。「ロシアを尊敬せず、侮辱的な対応をする外国人」には入国ビザの発給を行わないという内容で、政権に批判的な姿勢を示す外国人ジャーナリストなども対象になる可能性があるという。
ロシアでは二〇〇七年に下院選挙、〇八年に大統領選挙が予定されており、〇四年秋のウクライナ大統領選挙に合わせて起きた「オレンジ革命」のような政権転覆の動きが起きることを強く警戒している。プーチン政権は、ウクライナには外国の資金が流入し、外国人が多数協力したとみており、これらの新法導入は、ロシアでの“革命再来”の阻止を念頭に置いたものであることは間違いない。(中略)
エホ・マスクブイの著名な評論家ブントマン氏は、これらの新法導入の動きは「政権側がいかに現在の統治システムに自信を持てず、おびえているかを示している」と指摘した。
Sankei Web 1/23朝刊
(引用以上)
・・・ロシアを非難する外国人って、私も見事に該当しますね(笑)。
日本国憲法でも、外国人に入国する自由というのは認められていません。最高裁判例は、日本にいた外国人の再入国も憲法上保障されていないといっています。(●こちらのまとめを参照)なぜなら、安全保障などの観点から、いかなる外国人を入国させるかは、国際慣習法上国が自由に決めていいからです。
しかし、それにしても、「ロシアを非難」って・・・どこまで行けば非難なんでしょうかね。これでは、当局が好き勝手に外国人を選別できることになりそうです。
ロシアが、ここまで焦っている理由は、上の引用にもあるように、ウクライナで西欧寄りの民主的な政権が出来てしまったことです。
日教組の先生でなくても、民主的なことの何がいけないのか?・・・と思うでしょう。それは、ロシアという国をよく分かっていないということです。
地政学(geopolitics)という学問領域があります。その基本は、ある国の政治決定は、地球上の地理的条件によって決まるという考えです。(興味がある方は、是非●このサイトをご覧ください)
この地政学によると、ロシアは、典型的な「ランドパワー」です。ランドパワーというのは、要するに陸軍国です。ランドパワーの考え方は、以下のようにまとめられます。
まず、国境線を首都からなるべく遠ざけようとする傾向があります。
イメージが湧かない方は、少し前の東ヨーロッパを思い出してください。みんなソ連(ロシア)の衛星国だったはずです。あれは、ナポレオンやヒトラーのような奴がロシアを陸づたいに攻めるときの「盾」だったのです。
そのために国境線が長大になり、必然的に防衛のための軍事費が膨大になる傾向にあります。
地理の授業でもよく出てくる「面積が世界一」であるロシアの軍事費は、世界で2番目です。ちなみに、GDPは16番目で、オランダ(面積は九州と同じ大きさ)よりも下です。これは、別に無理してやっているわけではありません。そうせざるを得ないのです。
そんな巨大ランドパワーの国が、死ぬほど怖いことが二つあります。
一つは、「隣接地域を他の強大な国に取られること」です。
ウクライナの場合、陸の国境というより、「黒海」です。

上の画像の真ん中が黒海ですが、北岸が一部を除いてウクライナ(UKRAINE)領であることがわかります。そして、黒海の東はじには「コーカサス地方」があり、ここはカスピ海油田からのパイプラインが通っています。(地図上のBAKUは油田の町)ロシアがほぼ独占している石油利権です。
もし黒海に、アメリカのよう強国の空母や原子力潜水艦が出てきたら、どうなるでしょう?カスピ海油田だけではありません。ロシアの首都モスクワさえも危険にさらされます。
そして、もう一つは「民主化」です。
他民族国家を力でまとめ上げている国で民主化をしたら、どうなるかわかりますか?
各民族が好き勝手に言いたいことを言い始めるに決まっています。そうでなくても、普通の国民が生活の向上を求め始めたら、軍事費を削減して民政に使わざるを得なくなります。そうなれば、もうランドパワーは空中分解してしまうでしょう。
ロシアだって選挙をやっているじゃないか、という人は、表面しか見えていません。前回の記事でも書きましたが、ロシアには言論の自由や結社の自由がありません。1998年には、政権を厳しく追及したガリーナ・ストロボイトワという政治運動家が自宅で暗殺されるという事件が起こりました。政治家が暗殺されるなど、他の先進国ではまずありません。プーチン大統領が圧倒的支持で選ばれているのは、そういう「目に見えない力」のおかげなのです。
しかも、どこの国でも民主化は「経済の自由化」を連れてきます。そうなると、その国は必ず金持ちの資本主義国(アメリカやドイツ)の影響下に入ってしまい、二度とランドパワーの言うことなど聞きません。ユーシチェンコ大統領が、透明な市場経済システムの確立を公約にしているのも、間違いなくそういう狙いがあります。軍事力で弱い奴から絞り取るという、ランドパワーのお得意の戦術が使えなくなってしまうのです。
そこで、巨大ランドパワーが生き残るための作戦は、
「隣国を、自分に服従するミニ独裁国家にしておくこと」
これしかありません。実際、ウクライナは2004年の、いわゆる「オレンジ革命」の前までは、クラフチュク、クチマというソビエト共産党出身の独裁政治家が大統領だったのです。それが、いまやアメリカやドイツの子分です。
ロシアはかなりの危機感を持っています。●ウクライナへの天然ガス供給をストップした事件も、金の問題などではなく、西欧寄りになったウクライナを締め上げるための圧力と見て間違いありません。ウクライナ側が挑発するような行動、例えば、アメリカから武器を購入するなどしたら、最悪の場合戦争が起こります。
そこまで行かなくても、ウクライナの政府高官を、濡れ衣を着せて社会的に抹殺したり、事故に見せかけて殺すくらいはやりかねません。日本人の感覚では信じられないでしょうが、それがランドパワーというものなのです。
引用した記事も、「対ウクライナ」、ひいては「対西ヨーロッパ」、もしかすると「対アメリカ」の軍事作戦の、氷山の一角なのではないか。そう思って間違いないでしょう。
なんですって?
日本はウクライナでなくて良かった?
安心してもらっては困ります。すぐ近くに、言論の自由もなく、軍事費を伸ばし続け、民主化する気など毛ほどもないまま、少数民族を弾圧し続けている巨大ランドパワーがいるではありませんか!!その国は、60年間もの間にわたり、「自分に服従するミニ独裁国家」を、朝鮮半島の北側に生きながらえさせています。ロシアと、行動パターンが何もかも一緒です。
日本まで「ランドパワー」の手に落ちてしまってはいけません。ロシアとウクライナの「戦争」は、日本にも多くの教訓を与えてくれるはずです。これからも、このブログではロシア(やウクライナ)の様子について、折に触れて紹介していきたいと思います。
以前、私は●最も大切な自由は「表現の自由」だという記事を書きました。その自由とは少しそれますが、関係のありそうなニュースがあったので紹介しておきます。
(以下引用)
露下院がNGO規制強化法案を可決、開設を許可制に
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20051223i515.htm?from=main5
【モスクワ=五十嵐弘一】ロシア下院は23日、民間活動団体(NGO)に対する規制を強化する法案を賛成357、反対20、棄権7の賛成多数で可決した。
上院が可決し、プーチン大統領が署名すれば発効する。プーチン政権は、ウクライナなどで相次いだ政変で、外国からの支援を受けたNGOが大きな役割を果たしたとみており、規制強化は、ロシアでの政変発生の封じ込めが狙いとみられる。
法案では、これまで登録だけを義務付けてきたNGOの開設を、外国NGOをのぞき、当局の審査が必要となる許可制に変更。そして、NGO設立の目的が、「ロシアの主権、政治的独立、領土保全や国益に反する」場合、露当局は登録を拒否できると規定している。
NGO団体側は「極めてあいまいな表現だ。当局者の恣意(しい)的解釈が可能で、政権が気に入らないNGOを禁止することが容易となる」と反発。また、米国も「民主社会の発展にNGOは重要」(ライス国務長官)と懸念を示している。
(引用以上)
都合の悪い者はもみ消してしまえ、という全体主義国家の匂いが強烈に漂ってきますね。
ロシアというのは、ほとんど言論弾圧国家だと言うことができます。●こちらのURLなどが参考になります。●テレビ局を全て国家が掌握しているなどという信じられない話もあるようですね。
そもそも、テレビのようなマスメディアを、言論の自由の主体と見るのはかなり無理があると言えます。テレビというのは、メディアの中では最も設備投資がかさみます。そうだとすると、どうしてもスポンサーが必要になり、その方面からの圧力に弱くなるのです。
さらに、電波は有限だということで、様々な法的規制が課せられるのが普通です。そうなると、今度は国家によるコントロールが及ぶことにもなるわけです。
マスメディアの存在がかえって言論統制をしやすくするということも言えそうです。ロシアの例は、テレビ局が言論統制に屈しやすいという、非常に分かりやすい例だと思います。
そこで、今度はNGOの既成です。これは、「結社の自由」(日本国憲法では21条にある)の規制です。しかも、許可制というのは、原則として禁止するという意味ですから、相当強力な規制です。
結社の自由は、弱い立場の人間が団結して、お互いに支え合うという点で、表現の自由に似た側面、すなわち、「自己実現」「自己統治」に役立つ機能があります。
日教組や共産党や社民党や、もろもろの「市民」団体も、束になることでお互い励まし合って自分の意見や思想を形成しているのです。彼らも日本国民には違いありませんから、そういう結社を作っておかしな主張をする自由はあるのです。
国家の安全を守るという側面はあるものの、ロシアのやっていることは個別具体的な対処を捨てて、自由そのものを殺すという人権擁護法案と類似の性格があるということは忘れてはなりません。
私が前回の憲法の話で述べた理屈からすると、ロシアは次に海外への(からの)インターネット接続に規制を課したり、プロバイダを許可制にしたりするでしょう。私がプーチン大統領だったらそうします。
プーチンの面の皮がいくら厚くても、国内でチェチェン人テロリストどころか、人質まで一緒に毒ガスで殺している超人権侵害国家(●こちらのリンクに記事が出ています)だということは国際的に知られてしまっているので、さすがに「人権擁護法」という名前がついた法律は作れないでしょう。しかし、似たようなものは作る可能性があります。今回のNGO許可制も、その端緒であると見るべきです。
日本にとっては、ロシアは極東での「隣国」でもあります。かの国の国内動向についても、今後の進展を注意深く見守りたいと思います。
(以下引用)
露下院がNGO規制強化法案を可決、開設を許可制に
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20051223i515.htm?from=main5
【モスクワ=五十嵐弘一】ロシア下院は23日、民間活動団体(NGO)に対する規制を強化する法案を賛成357、反対20、棄権7の賛成多数で可決した。
上院が可決し、プーチン大統領が署名すれば発効する。プーチン政権は、ウクライナなどで相次いだ政変で、外国からの支援を受けたNGOが大きな役割を果たしたとみており、規制強化は、ロシアでの政変発生の封じ込めが狙いとみられる。
法案では、これまで登録だけを義務付けてきたNGOの開設を、外国NGOをのぞき、当局の審査が必要となる許可制に変更。そして、NGO設立の目的が、「ロシアの主権、政治的独立、領土保全や国益に反する」場合、露当局は登録を拒否できると規定している。
NGO団体側は「極めてあいまいな表現だ。当局者の恣意(しい)的解釈が可能で、政権が気に入らないNGOを禁止することが容易となる」と反発。また、米国も「民主社会の発展にNGOは重要」(ライス国務長官)と懸念を示している。
(引用以上)
都合の悪い者はもみ消してしまえ、という全体主義国家の匂いが強烈に漂ってきますね。
ロシアというのは、ほとんど言論弾圧国家だと言うことができます。●こちらのURLなどが参考になります。●テレビ局を全て国家が掌握しているなどという信じられない話もあるようですね。
そもそも、テレビのようなマスメディアを、言論の自由の主体と見るのはかなり無理があると言えます。テレビというのは、メディアの中では最も設備投資がかさみます。そうだとすると、どうしてもスポンサーが必要になり、その方面からの圧力に弱くなるのです。
さらに、電波は有限だということで、様々な法的規制が課せられるのが普通です。そうなると、今度は国家によるコントロールが及ぶことにもなるわけです。
マスメディアの存在がかえって言論統制をしやすくするということも言えそうです。ロシアの例は、テレビ局が言論統制に屈しやすいという、非常に分かりやすい例だと思います。
そこで、今度はNGOの既成です。これは、「結社の自由」(日本国憲法では21条にある)の規制です。しかも、許可制というのは、原則として禁止するという意味ですから、相当強力な規制です。
結社の自由は、弱い立場の人間が団結して、お互いに支え合うという点で、表現の自由に似た側面、すなわち、「自己実現」「自己統治」に役立つ機能があります。
日教組や共産党や社民党や、もろもろの「市民」団体も、束になることでお互い励まし合って自分の意見や思想を形成しているのです。彼らも日本国民には違いありませんから、そういう結社を作っておかしな主張をする自由はあるのです。
国家の安全を守るという側面はあるものの、ロシアのやっていることは個別具体的な対処を捨てて、自由そのものを殺すという人権擁護法案と類似の性格があるということは忘れてはなりません。
私が前回の憲法の話で述べた理屈からすると、ロシアは次に海外への(からの)インターネット接続に規制を課したり、プロバイダを許可制にしたりするでしょう。私がプーチン大統領だったらそうします。
プーチンの面の皮がいくら厚くても、国内でチェチェン人テロリストどころか、人質まで一緒に毒ガスで殺している超人権侵害国家(●こちらのリンクに記事が出ています)だということは国際的に知られてしまっているので、さすがに「人権擁護法」という名前がついた法律は作れないでしょう。しかし、似たようなものは作る可能性があります。今回のNGO許可制も、その端緒であると見るべきです。
日本にとっては、ロシアは極東での「隣国」でもあります。かの国の国内動向についても、今後の進展を注意深く見守りたいと思います。







