何度か取り上げている「中朝冷戦」ですが、今回は角度を変えて、韓国と中国東北部との経済的な関わりを取り上げてみたいと思います。
なお、このブログは基本的に南北朝鮮が一体化しているという視点に立っていますが、今回は便宜上「韓国」(=比較的経済発展している市場経済の朝鮮)という概念を用いて記事を書きますので、ご了承下さい。
まず、この記事をご覧下さい。
在ハルピン韓国投資企業協議会、朝鮮族村新しい農村建設の推進へ
http://www.searchnavi.com/~hp/chosenzoku/news4/070521-3.htm
--------以下引用--------
ハルピン韓国投資企業協議会が朝鮮族村の新しい農村建設推進に本格的に参入した。 19日午前、在ハルピン韓国投資企業協議会と阿城区阿什河街道城建村は、城建村で姉妹提携を公式締結した.
(中略)
この日、姉妹提携式の挨拶の言葉で宋ハンサン会長は "ハルピンで事業し、地域社会、特に中国で新しい農村建設を積極的に推進しているこの時に、朝鮮族村との協力に期待する"とし "今後、我が同胞がたくさん居住する城建村が、都市に負けず劣らず建設されて行ってほしい."と述べた。
(中略)
この日締結した姉妹提携書の骨子は '今後、在ハルピン韓国投資企業協議会と城建村は新しい農村への発展を支援、農村の人手支援と農産物の直接取引など多様な交流を通じて共同目標を達成すること'であった。
この日、在ハルピン韓国投資企業協議会から城建村に 20匹の種子豚を寄贈し、 CJ(ハルピン)飼料有限公司からは 200kgの高級豚飼料を寄贈した。
この日、城建村では宋ハンサン会長ら在ハルピン韓国投資企業協議会の8人の会員企業代表を '城建村農村経済発展顧問'として招いた。
--------引用以上--------
>在ハルピン韓国投資企業協議会
(中国東北部の地図)
中国東北部で最も重要な都市といえるハルピンに、韓国企業はしっかりと拠点を築いているようです。韓国はウォン高のせいで青息吐息だと言われていますが、この地方への進出意欲は衰えていません。
韓国企業の「中国」進出は、1992年の両国の国交正常化以降、一気に盛んになりました。
もっとも、1998年の通貨危機前後に、韓国企業の撤退が相次ぎます。2001年くらいまで、韓国企業の毎年の事業撤収実績が二桁台で推移していることからもそれがわかります。
そして、韓国経済の不振が、ワールドカップを境に一段落すると、再び対中投資額が増え始めるのです。●こちらのレポートにもあるように、2002年に投資先として米国を抜くと、続く03年もさらに投資額は拡大しています。
そして、その翌年の2004年に、こんな記事が「人民日報」に掲載されます。
東北地方旧工業基地、韓国中小企業が投資に興味
http://j.peopledaily.com.cn/2004/07/12/jp20040712_41220.html
--------以下引用--------
東北地方旧工業基地の振興の加速を目指す中国政府の政策により、多くの韓国中小企業が中国東北地方への投資に大きな興味を示している。
吉林省の長春市では10~12日、「中韓経済貿易交渉会および優良商品博覧会」が開かれ、韓国中小企業100社以上が参加した。企業は自社の優良製品やプロジェクトを携え、現地企業との提携や発展を求めて長春を訪れた。
韓国京畿道安陽市の徳永工程機械株式会社の朴永桓理事は、「東北地方は非常に特殊で潜在力のある土地だと感じる。中国東北地方の市場は広く、労働力は廉価だ。中韓両国はゆったりとした自由な投資環境の中で、中国政府のサポートを受け、共に発展できると信じている。東北地方への投資に自信がある」と話した。
韓国中小企業の責任者の一部は、中国政府が東北旧工業基地の調整と改造の加速に関する政策を提起したことで東北地方に多くのビジネスチャンスが生まれることを認めながらも、東北地方の投資環境と政策への理解不足を理由に様子見の姿勢を示し、中国政府が東北旧工業基地への企業誘致をさらに強化し、投資家のために適切に便宜を図るよう望んでいる。
--------引用以上--------
中国・ロシア・朝鮮の三大勢力がぶつかり合う場所「中国東北部」が、勇躍「潜在力のある土地」として登場するわけです。
この年は、中国の歴史再評価プロジェクトである「東北工程」(詳しくは●こちらのリンク)が一段落して、高句麗も渤海も中国の地方政権であるというメッセージが発せられたばかりです。それにも関わらず、韓国企業の東北部への進出は続き、冒頭に紹介した記事のような状況にまで至るわけです。
ここで、こんなことを思った人がいるのかもしれません。
ブログ主が言うように、朝鮮と中国が対立しているなら、なぜ朝鮮の企業が中国への進出を強め、中国がそれを容認しようとするのだろう?
ここは、重要なところです。単純に割り切れないところがあるので、少しずつ考えを述べます。
まず、頭に置いていただきたいのは、韓国だろうとどこだろうと、中国という国は、他国からの投資がなければもたない「脆弱な経済」の国であるということです。
それが端的に現れているのは、貿易依存度の高さです。中国経済が貿易に頼っている割合は、2005年には輸出入それぞれ34.2%、29.6%となっています。加工貿易国であると定義され、国際競争力うんぬんと喧伝される我が日本でさえ、わずか10%です(●こちらのデータを参照)。
しかし、そのための設備投資をやるような原資もノウハウも中国にはありません。だから、世界中から金を呼び込まなければいけないのです。
こんな事を言うと、「韓国企業って●こんなアホなことばっかりしているのに、頼りになるのかよ?」というひともいるかも知れませんが、それでもまだ中国よりは技術力(みたいなもの)があります。それに、なんだかんだ言って韓国の工業製品はアメリカやヨーロッパでそれなりのシェアを獲得してはいます。一応工業国だと認識すべきでしょう。
そうは言っても、このブログが論じている東北部というのは、投資のインセンティブ(誘引力)が低い場所です。理由は簡単で、近くに北朝鮮がいるからです。原子力発電所の近くにマイホームを持ちたがる人があまりいないのと同じように、どうしてもリスクの少ない沿岸部に比べると企業は二の足を踏むようです。
しかし、コキントウ政権は、以前も紹介したように、この「東北部旧工業基地」の振興を新たな経済成長の起爆剤にしようと考えています。他の地域で、「安価な労働力を売る」という最大の魅力が薄れてきていることが大きな原因です。
●こちらのリンクをご覧頂けると雰囲気が掴めると思いますが、沿岸部の便利な場所では中国人労働力もかなり高く付くのが現状のようです。
それと引換え、中国東北部はまだ人件費がそれほど高くありません。満州国の時代に整備されたインフラ、特に鉄道が非常にしっかりしており、大連や旅順のような海外への輸出港もあります。また、これら二つの港が手狭になれば、北朝鮮の清津(チョンジン)港や、ロシアのナホトカ港、ウラジオストク港を利用することも可能です。
だからこそ、ここに投資してくれる存在が必要なのです。それが、朝鮮族という同胞を持つ韓国企業だったというわけです。
もちろん、あまりにも韓国企業の進出が進めば、中国にとっては、韓国のカネによって東北部を「征服」されてしまう可能性もあるわけです。企業が進出するどころか、冒頭の記事にあった「新しい農村」などというものを作られて、知らない内に朝鮮族の人口を増やされれば、相対的に漢民族の影響力が下がることになります。当然、こういう集落には北朝鮮の工作員も潜入するでしょう。
それにも関わらず、韓国企業の投資がなければ維持していけないのが今の東北部なのです。
もっとも、少し見方を変えると、これは「朝鮮」の側にとっては、命取りになりかねない要素でもあります。
なぜなら、東北部における韓国企業の投下資本というのは、韓国に取ってみれば人質のようなものだからです。
中国のようなランドパワー(大陸国家)の戦略というのは、自国領の奥深くまで敵を誘い込み、補給線が伸びきったところで逆襲するというものです。
具体例は歴史上たくさんあります。ロシアを攻めたナポレオン、ソ連を攻撃したナチスドイツ、南京の国民党を攻撃した帝国陸軍(蒋介石はあっさり南京を蜂起して重慶に逃亡)、全てこの手でやられています。初めは局地戦で大勝したにも関わらず、最後には惨めな敗退をしているのです。
これを経済の世界に置き換えれば、ランドパワーであるは初めは沿岸部を開放して投資を引きつけ、それが後戻りできない段階まで達した、あるいは相互依存を相当程度深めた段階で、一気に反撃に転じるのです。
以前紹介した●サハリンのガス田におけるロシアの卑劣なやり口もそうですし、戦前の中国における「日貨排斥運動」もそうです。
そして、韓国はもう後戻りできない段階に突入しています。以下の記事を見るとよくわかります。
中国居住の韓国人 70万名に
http://www.searchnavi.com/~hp/chosenzoku/news4/070511-6.htm
--------以下引用--------
中国の改革開放と 1998年韓国の IMF危機をきっかけに、中国に群がって来始めた韓国人が、現在 70万人にのぼるものと集計された。
韓国人は当初、東北3省と山東省を中心に生活の基盤を求めていたが、現在は中国全域に分布し、新彊ウルムチにまで韓国人社会が形成されている。
中国 30の省、直轄市、自治区に散らばって暮している韓国人 70万人余りは、韓国の一つの中小都市の人口にあたる規模で、在中国韓国人会は “現在、中国に居住している外国人の中で韓国人の数が最も多く、韓国人は毎年 6万~7万人ずつ増加している”とし “来年 8月の北京オリンピックをきっかけに、中国に進出する韓国人はさらに増加して約 100万人に至るものと予想される”と伝えた。
(中略)
1991年、黒龍江省韓国留学生1号としてハルピンの土を踏んだ金ジェユン(39歳)さんは、黒龍江中医学大学で中国医学の学士、修士、博士の学位を取得し、去年、中国の医師資格証試験に合格、現在、ハルピンに病院を設立している。 金ジェユンさんは中国で自分の最も貴重な青春時代を過ごしたといい、むしろ今は韓国の生活に適応する自信がないと言いながら、新朝鮮族として暮したいとその意志を明らかにしている。
--------引用以上--------
韓国のみならず、北朝鮮も引きずり込まれているようです。
瀋陽市政府、北朝鮮と IT共同研究開発を予定
http://www.searchnavi.com/~hp/chosenzoku/news4/070511.htm
--------以下引用--------
北京、上海等に続き、中国内の重要な IT産業基地として生まれかわるため、近年、その発展テンポを急いでいる瀋陽市政府が、北朝鮮と合作して瀋陽に IT(情報技術)共同研究開発基地を設立する予定だと、遼寧朝鮮文報が報道した。
瀋陽市科学局対外科学技術交流センター(主任・金鮮一)は去年 7月、市政府の指示精神に従って、北朝鮮科学院とソフトウェア共同開発協力提携書を締結、北朝鮮の IT人力を大量に招いてソフトウェアを共同開発する事とした。
北朝鮮の招聘人員は統一的に瀋北新区蒲河新城に立てられた '瀋陽東北亜ソフトウェア・アウトソーシング連盟'の開発団地に入居することになる。 これまで民間企業が北朝鮮の IT人力を招いた事例はあるが、政府次元の両国の IT 共同研究協力事例は今度が初めてだ。
金鮮一主任によれば、今月中旬、北朝鮮科学院から第一陣として IT人力 14人を派遣、 徐々にその数が増える。 現在、瀋陽の IT企業等には北朝鮮の IT人力 85人が使われているという。
--------引用以上-------
これらは全て中国の「人質」となる可能性があるわけです。
そういう視点から見てみると、北朝鮮の核開発というのは、全く違う顔を見せてくるのです。
そうです。日本が満州国を建国し、大陸派遣軍を送ったように、朝鮮は北の核兵器によって、東北部の権益を維持しようとしているのではないか、ということです。
私は最前の記事で、中国と朝鮮の開戦は絵空事ではなく現実の危機だと言いましたが、もう少し複眼的な説明が必要でした。ここで、改めて中国東北部を舞台に繰り広げられている「中朝冷戦」について、一つの仮説を立ててみます。
まず、朝鮮側は清王朝の時代や日本統治時代、満州国時代を通じて一貫して東北部に移民を送り出しており、それが現在の朝鮮族200万の基礎になっています。
それを足がかりにして、朝鮮はこの地域の支配に着手した、と考えるとわかりやすいです。だから、韓国も北朝鮮も「渤海」「高句麗」を自国史として教えているのです。もちろん、朝鮮人特有の自我肥大傾向も影響はしています。
時は過ぎ、冷戦時代は米ソの対立を受けて半分「出来レース」のような対立をしていた南北朝鮮は、冷戦後連携して東北部に攻撃をしかけます。一方は「狂気の軍事独裁国家」を装って核開発を行い、他方は「躍進するアジアの虎」として、東北部にカネを注ぎ込む。韓国の経済危機はあったものの、その後息を吹き返し、「朝鮮」は東北部への圧力を強めていきました。
あくまで想像ですが、このようなアプローチには、アメリカの黙認もしくは消極的な支援があったのかもしれません。もしコケても全て金正日のせいにしてしまえばいいのであり、アメリカにはリスクが少ない「中国封じ」だからです。
中国の「東北工程」は、このような朝鮮側の攻撃に対抗するものだったと考える余地があります。もちろん、中国の領土拡張意欲(というか、首都からなるべく国境線を遠ざけようとするランドパワーの習性)も無視できません。しかし、中国からすれば「殺らなければ殺られる」という危機感があったように思うのです。
そして今、中国としては、いざというとき直接侵略に転じて、キムジョンイルを武力で除去できるようにし向けているわけです。先だってお伝えした、白頭山付近の空港建設や三本の中朝間高速道路がそれです。
ここまでの手を見ると、北朝鮮が核兵器を開発したとはいえ、中国の方が一歩上に立っているというのが私の印象です。今後動くとすれば、朝鮮側でしょう。●冬季アジア大会で、韓国選手が「白頭山は我が領土」というプラカードを掲げた事件は有名ですが、あそこまでやるということは、朝鮮側が相当追いつめられているということです。
もっとも、中国も東北部は虎の子の土地、上海万博の後を睨めば唯一と言っていい発展の余地のある場所です。ここを本当の紛争地帯にすることは望んでいないだろうし、資本主義の朝鮮を利用して儲けておきたいという考えもあるはずです。何より、北の核攻撃(北京なら十分届く)を怖れているはずです。
日本としては、こういう状況を、中国封じの一手段としておおいに活用すべきでしょう。そのための方法は、●こちらの記事と●その追記に記してあります。
間違っても、中国東北部に大規模な設備投資や、人間の移住など行ってはいけません。盛大に罠にはまるのは、韓国だけで十分です。
なお、このブログは基本的に南北朝鮮が一体化しているという視点に立っていますが、今回は便宜上「韓国」(=比較的経済発展している市場経済の朝鮮)という概念を用いて記事を書きますので、ご了承下さい。
まず、この記事をご覧下さい。
在ハルピン韓国投資企業協議会、朝鮮族村新しい農村建設の推進へ
http://www.searchnavi.com/~hp/chosenzoku/news4/070521-3.htm
--------以下引用--------
ハルピン韓国投資企業協議会が朝鮮族村の新しい農村建設推進に本格的に参入した。 19日午前、在ハルピン韓国投資企業協議会と阿城区阿什河街道城建村は、城建村で姉妹提携を公式締結した.
(中略)
この日、姉妹提携式の挨拶の言葉で宋ハンサン会長は "ハルピンで事業し、地域社会、特に中国で新しい農村建設を積極的に推進しているこの時に、朝鮮族村との協力に期待する"とし "今後、我が同胞がたくさん居住する城建村が、都市に負けず劣らず建設されて行ってほしい."と述べた。
(中略)
この日締結した姉妹提携書の骨子は '今後、在ハルピン韓国投資企業協議会と城建村は新しい農村への発展を支援、農村の人手支援と農産物の直接取引など多様な交流を通じて共同目標を達成すること'であった。
この日、在ハルピン韓国投資企業協議会から城建村に 20匹の種子豚を寄贈し、 CJ(ハルピン)飼料有限公司からは 200kgの高級豚飼料を寄贈した。
この日、城建村では宋ハンサン会長ら在ハルピン韓国投資企業協議会の8人の会員企業代表を '城建村農村経済発展顧問'として招いた。
--------引用以上--------
>在ハルピン韓国投資企業協議会
(中国東北部の地図)
中国東北部で最も重要な都市といえるハルピンに、韓国企業はしっかりと拠点を築いているようです。韓国はウォン高のせいで青息吐息だと言われていますが、この地方への進出意欲は衰えていません。
韓国企業の「中国」進出は、1992年の両国の国交正常化以降、一気に盛んになりました。
もっとも、1998年の通貨危機前後に、韓国企業の撤退が相次ぎます。2001年くらいまで、韓国企業の毎年の事業撤収実績が二桁台で推移していることからもそれがわかります。
そして、韓国経済の不振が、ワールドカップを境に一段落すると、再び対中投資額が増え始めるのです。●こちらのレポートにもあるように、2002年に投資先として米国を抜くと、続く03年もさらに投資額は拡大しています。
そして、その翌年の2004年に、こんな記事が「人民日報」に掲載されます。
東北地方旧工業基地、韓国中小企業が投資に興味
http://j.peopledaily.com.cn/2004/07/12/jp20040712_41220.html
--------以下引用--------
東北地方旧工業基地の振興の加速を目指す中国政府の政策により、多くの韓国中小企業が中国東北地方への投資に大きな興味を示している。
吉林省の長春市では10~12日、「中韓経済貿易交渉会および優良商品博覧会」が開かれ、韓国中小企業100社以上が参加した。企業は自社の優良製品やプロジェクトを携え、現地企業との提携や発展を求めて長春を訪れた。
韓国京畿道安陽市の徳永工程機械株式会社の朴永桓理事は、「東北地方は非常に特殊で潜在力のある土地だと感じる。中国東北地方の市場は広く、労働力は廉価だ。中韓両国はゆったりとした自由な投資環境の中で、中国政府のサポートを受け、共に発展できると信じている。東北地方への投資に自信がある」と話した。
韓国中小企業の責任者の一部は、中国政府が東北旧工業基地の調整と改造の加速に関する政策を提起したことで東北地方に多くのビジネスチャンスが生まれることを認めながらも、東北地方の投資環境と政策への理解不足を理由に様子見の姿勢を示し、中国政府が東北旧工業基地への企業誘致をさらに強化し、投資家のために適切に便宜を図るよう望んでいる。
--------引用以上--------
中国・ロシア・朝鮮の三大勢力がぶつかり合う場所「中国東北部」が、勇躍「潜在力のある土地」として登場するわけです。
この年は、中国の歴史再評価プロジェクトである「東北工程」(詳しくは●こちらのリンク)が一段落して、高句麗も渤海も中国の地方政権であるというメッセージが発せられたばかりです。それにも関わらず、韓国企業の東北部への進出は続き、冒頭に紹介した記事のような状況にまで至るわけです。
ここで、こんなことを思った人がいるのかもしれません。
ブログ主が言うように、朝鮮と中国が対立しているなら、なぜ朝鮮の企業が中国への進出を強め、中国がそれを容認しようとするのだろう?
ここは、重要なところです。単純に割り切れないところがあるので、少しずつ考えを述べます。
まず、頭に置いていただきたいのは、韓国だろうとどこだろうと、中国という国は、他国からの投資がなければもたない「脆弱な経済」の国であるということです。
それが端的に現れているのは、貿易依存度の高さです。中国経済が貿易に頼っている割合は、2005年には輸出入それぞれ34.2%、29.6%となっています。加工貿易国であると定義され、国際競争力うんぬんと喧伝される我が日本でさえ、わずか10%です(●こちらのデータを参照)。
しかし、そのための設備投資をやるような原資もノウハウも中国にはありません。だから、世界中から金を呼び込まなければいけないのです。
こんな事を言うと、「韓国企業って●こんなアホなことばっかりしているのに、頼りになるのかよ?」というひともいるかも知れませんが、それでもまだ中国よりは技術力(みたいなもの)があります。それに、なんだかんだ言って韓国の工業製品はアメリカやヨーロッパでそれなりのシェアを獲得してはいます。一応工業国だと認識すべきでしょう。
そうは言っても、このブログが論じている東北部というのは、投資のインセンティブ(誘引力)が低い場所です。理由は簡単で、近くに北朝鮮がいるからです。原子力発電所の近くにマイホームを持ちたがる人があまりいないのと同じように、どうしてもリスクの少ない沿岸部に比べると企業は二の足を踏むようです。
しかし、コキントウ政権は、以前も紹介したように、この「東北部旧工業基地」の振興を新たな経済成長の起爆剤にしようと考えています。他の地域で、「安価な労働力を売る」という最大の魅力が薄れてきていることが大きな原因です。
●こちらのリンクをご覧頂けると雰囲気が掴めると思いますが、沿岸部の便利な場所では中国人労働力もかなり高く付くのが現状のようです。
それと引換え、中国東北部はまだ人件費がそれほど高くありません。満州国の時代に整備されたインフラ、特に鉄道が非常にしっかりしており、大連や旅順のような海外への輸出港もあります。また、これら二つの港が手狭になれば、北朝鮮の清津(チョンジン)港や、ロシアのナホトカ港、ウラジオストク港を利用することも可能です。
だからこそ、ここに投資してくれる存在が必要なのです。それが、朝鮮族という同胞を持つ韓国企業だったというわけです。
もちろん、あまりにも韓国企業の進出が進めば、中国にとっては、韓国のカネによって東北部を「征服」されてしまう可能性もあるわけです。企業が進出するどころか、冒頭の記事にあった「新しい農村」などというものを作られて、知らない内に朝鮮族の人口を増やされれば、相対的に漢民族の影響力が下がることになります。当然、こういう集落には北朝鮮の工作員も潜入するでしょう。
それにも関わらず、韓国企業の投資がなければ維持していけないのが今の東北部なのです。
もっとも、少し見方を変えると、これは「朝鮮」の側にとっては、命取りになりかねない要素でもあります。
なぜなら、東北部における韓国企業の投下資本というのは、韓国に取ってみれば人質のようなものだからです。
中国のようなランドパワー(大陸国家)の戦略というのは、自国領の奥深くまで敵を誘い込み、補給線が伸びきったところで逆襲するというものです。
具体例は歴史上たくさんあります。ロシアを攻めたナポレオン、ソ連を攻撃したナチスドイツ、南京の国民党を攻撃した帝国陸軍(蒋介石はあっさり南京を蜂起して重慶に逃亡)、全てこの手でやられています。初めは局地戦で大勝したにも関わらず、最後には惨めな敗退をしているのです。
これを経済の世界に置き換えれば、ランドパワーであるは初めは沿岸部を開放して投資を引きつけ、それが後戻りできない段階まで達した、あるいは相互依存を相当程度深めた段階で、一気に反撃に転じるのです。
以前紹介した●サハリンのガス田におけるロシアの卑劣なやり口もそうですし、戦前の中国における「日貨排斥運動」もそうです。
そして、韓国はもう後戻りできない段階に突入しています。以下の記事を見るとよくわかります。
中国居住の韓国人 70万名に
http://www.searchnavi.com/~hp/chosenzoku/news4/070511-6.htm
--------以下引用--------
中国の改革開放と 1998年韓国の IMF危機をきっかけに、中国に群がって来始めた韓国人が、現在 70万人にのぼるものと集計された。
韓国人は当初、東北3省と山東省を中心に生活の基盤を求めていたが、現在は中国全域に分布し、新彊ウルムチにまで韓国人社会が形成されている。
中国 30の省、直轄市、自治区に散らばって暮している韓国人 70万人余りは、韓国の一つの中小都市の人口にあたる規模で、在中国韓国人会は “現在、中国に居住している外国人の中で韓国人の数が最も多く、韓国人は毎年 6万~7万人ずつ増加している”とし “来年 8月の北京オリンピックをきっかけに、中国に進出する韓国人はさらに増加して約 100万人に至るものと予想される”と伝えた。
(中略)
1991年、黒龍江省韓国留学生1号としてハルピンの土を踏んだ金ジェユン(39歳)さんは、黒龍江中医学大学で中国医学の学士、修士、博士の学位を取得し、去年、中国の医師資格証試験に合格、現在、ハルピンに病院を設立している。 金ジェユンさんは中国で自分の最も貴重な青春時代を過ごしたといい、むしろ今は韓国の生活に適応する自信がないと言いながら、新朝鮮族として暮したいとその意志を明らかにしている。
--------引用以上--------
韓国のみならず、北朝鮮も引きずり込まれているようです。
瀋陽市政府、北朝鮮と IT共同研究開発を予定
http://www.searchnavi.com/~hp/chosenzoku/news4/070511.htm
--------以下引用--------
北京、上海等に続き、中国内の重要な IT産業基地として生まれかわるため、近年、その発展テンポを急いでいる瀋陽市政府が、北朝鮮と合作して瀋陽に IT(情報技術)共同研究開発基地を設立する予定だと、遼寧朝鮮文報が報道した。
瀋陽市科学局対外科学技術交流センター(主任・金鮮一)は去年 7月、市政府の指示精神に従って、北朝鮮科学院とソフトウェア共同開発協力提携書を締結、北朝鮮の IT人力を大量に招いてソフトウェアを共同開発する事とした。
北朝鮮の招聘人員は統一的に瀋北新区蒲河新城に立てられた '瀋陽東北亜ソフトウェア・アウトソーシング連盟'の開発団地に入居することになる。 これまで民間企業が北朝鮮の IT人力を招いた事例はあるが、政府次元の両国の IT 共同研究協力事例は今度が初めてだ。
金鮮一主任によれば、今月中旬、北朝鮮科学院から第一陣として IT人力 14人を派遣、 徐々にその数が増える。 現在、瀋陽の IT企業等には北朝鮮の IT人力 85人が使われているという。
--------引用以上-------
これらは全て中国の「人質」となる可能性があるわけです。
そういう視点から見てみると、北朝鮮の核開発というのは、全く違う顔を見せてくるのです。
そうです。日本が満州国を建国し、大陸派遣軍を送ったように、朝鮮は北の核兵器によって、東北部の権益を維持しようとしているのではないか、ということです。
私は最前の記事で、中国と朝鮮の開戦は絵空事ではなく現実の危機だと言いましたが、もう少し複眼的な説明が必要でした。ここで、改めて中国東北部を舞台に繰り広げられている「中朝冷戦」について、一つの仮説を立ててみます。
まず、朝鮮側は清王朝の時代や日本統治時代、満州国時代を通じて一貫して東北部に移民を送り出しており、それが現在の朝鮮族200万の基礎になっています。
それを足がかりにして、朝鮮はこの地域の支配に着手した、と考えるとわかりやすいです。だから、韓国も北朝鮮も「渤海」「高句麗」を自国史として教えているのです。もちろん、朝鮮人特有の自我肥大傾向も影響はしています。
時は過ぎ、冷戦時代は米ソの対立を受けて半分「出来レース」のような対立をしていた南北朝鮮は、冷戦後連携して東北部に攻撃をしかけます。一方は「狂気の軍事独裁国家」を装って核開発を行い、他方は「躍進するアジアの虎」として、東北部にカネを注ぎ込む。韓国の経済危機はあったものの、その後息を吹き返し、「朝鮮」は東北部への圧力を強めていきました。
あくまで想像ですが、このようなアプローチには、アメリカの黙認もしくは消極的な支援があったのかもしれません。もしコケても全て金正日のせいにしてしまえばいいのであり、アメリカにはリスクが少ない「中国封じ」だからです。
中国の「東北工程」は、このような朝鮮側の攻撃に対抗するものだったと考える余地があります。もちろん、中国の領土拡張意欲(というか、首都からなるべく国境線を遠ざけようとするランドパワーの習性)も無視できません。しかし、中国からすれば「殺らなければ殺られる」という危機感があったように思うのです。
そして今、中国としては、いざというとき直接侵略に転じて、キムジョンイルを武力で除去できるようにし向けているわけです。先だってお伝えした、白頭山付近の空港建設や三本の中朝間高速道路がそれです。
ここまでの手を見ると、北朝鮮が核兵器を開発したとはいえ、中国の方が一歩上に立っているというのが私の印象です。今後動くとすれば、朝鮮側でしょう。●冬季アジア大会で、韓国選手が「白頭山は我が領土」というプラカードを掲げた事件は有名ですが、あそこまでやるということは、朝鮮側が相当追いつめられているということです。
もっとも、中国も東北部は虎の子の土地、上海万博の後を睨めば唯一と言っていい発展の余地のある場所です。ここを本当の紛争地帯にすることは望んでいないだろうし、資本主義の朝鮮を利用して儲けておきたいという考えもあるはずです。何より、北の核攻撃(北京なら十分届く)を怖れているはずです。
日本としては、こういう状況を、中国封じの一手段としておおいに活用すべきでしょう。そのための方法は、●こちらの記事と●その追記に記してあります。
間違っても、中国東北部に大規模な設備投資や、人間の移住など行ってはいけません。盛大に罠にはまるのは、韓国だけで十分です。