笑うかどには福きたる

日常生活で見たこと、聞いたこと、感じたことを牧歌的にのんびりと書いています。

文庫版「マークスの山」読了

2006年11月04日 12時25分47秒 | 読書
単行本とは全く別物、との評判どおり、本当に違いました(笑)。上巻ではあまりの違い振りに失望し、後半ではその違いに納得させられ、一気に読みましたが。

単行本は、水沢裕之と真知子の時間軸で、世の中の深い部分でじわじわと物語が進みます。
文庫本は、殺人事件を追う合田雄一郎刑事を中心とした警察捜査の時間軸で、ぐいぐいと物語が進みます。
だから文庫本での水沢と真知子のありようは、みもフタもないほど「異常者とその女」扱いなのです。
単行本ファンの私としては、上巻を読みながら「違うのに! 水沢は(確かに異常は異常だけど)本当はこんな風に異常なだけのヤツじゃない」と唸っていました。
単行本の水沢は凶暴な子供で、子供ゆえに、真知子の大人の愛情を必要とした犯罪者だったのに。。これじゃ。。と。しかも全体のテンポが容赦なく速い。なんなんだろう、この速さは?と思ったところでくだんの「時間軸の違い」に気づいたわけです。
「マークスの山」が完全な刑事小説になった。これが文庫本「マークスの山」なのか、と。
高村先生、お見事です。

後で知ったのですが、高村薫という作家は、文庫化に当たり全面改訂をすることで有名なのだそうです。
だから今回の私などはまさに、高村作品文庫化初体験、だったわけですね(笑)ご多分に漏れずたしかにショックでした。
じゃあ、単行本と文庫本のどっちの「マークスの山」が好きか、と聞かれたら私は断然単行本!と答えると思うのです。
北岳の山頂に、なぜ水沢が真知子のサンダルとセーターを持って行ったのか、単行本を読めば、痛いほどそれが分かるのです。そしてそれがこの作品の名作たる所以、と確信しているからです。

なんか久しぶりに単行本を引っ張り出したい気分になってます。
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