笑うかどには福きたる

日常生活で見たこと、聞いたこと、感じたことを牧歌的にのんびりと書いています。

「がんばっても報われない社会が待っている」東大の入学式で語られたこと  ~備忘録として

2019年04月27日 15時37分04秒 | お仕事関連

4月12日、東大入学式の上野千鶴子さんの祝辞全文です。
東大女子だけでなく、人口の半分を占めるあらゆる女性たちへのメッセージであると思っています。
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「がんばっても報われない社会が待っている」東大の入学式で語られたこと【全文】
4/12(金) 19:02配信

ご入学おめでとうございます。あなたたちは激烈な競争を勝ち抜いてこの場に来ることができました。
その選抜試験が公正なものであることをあなたたちは疑っておられないと思います。もし不公正であれば、怒りが湧くでしょう。
が、しかし、昨年、東京医科大不正入試問題が発覚し、女子学生と浪人生に差別があることが判明しました。

文科省が全国81の医科大・医学部の全数調査を実施したところ、女子学生の入りにくさ、すなわち女子学生の合格率に対する男子学生の合格率は平均1.2倍と出ました。
問題の東医大は1.29、最高が順天堂大の1.67、上位には昭和大、日本大、慶応大などの私学が並んでいます。1.0よりも低い、すなわち女子学生の方が入りやすい大学には鳥取大、島根大、徳島大、弘前大などの地方国立大医学部が並んでいます。

ちなみに東京大学理科3類は1.03、平均よりは低いですが1.0よりは高い、この数字をどう読み解けばよいでしょうか。統計は大事です、それをもとに考察が成り立つのですから。
女子学生が男子学生より合格しにくいのは、男子受験生の成績の方がよいからでしょうか?
全国医学部調査結果を公表した文科省の担当者が、こんなコメントを述べています。「男子優位の学部、学科は他に見当たらず、理工系も文系も女子が優位な場合が多い」。
ということは、医学部を除く他学部では、女子の入りにくさは1以下であること、医学部が1を越えていることには、なんらかの説明が要ることを意味します。
事実、各種のデータが、女子受験生の偏差値の方が男子受験生より高いことを証明しています。
まず第1に女子学生は浪人を避けるために余裕を持って受験先を決める傾向があります。
第2に東京大学入学者の女性比率は長期にわたって「2割の壁」を越えません。今年度に至っては18.1%と前年度を下回りました。

統計的には偏差値の正規分布に男女差はありませんから、男子学生以上に優秀な女子学生が東大を受験していることになります。
第3に、4年制大学進学率そのものに性別によるギャップがあります。2016年度の学校基本調査によれば4年制大学進学率は男子55.6%、女子48.2%と7ポイントもの差があります。
この差は成績の差ではありません。「息子は大学まで、娘は短大まで」でよいと考える親の性差別の結果です。

最近ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさんが日本を訪れて「女子教育」の必要性を訴えました。それはパキスタンにとっては重要だが、日本には無関係でしょうか。
「どうせ女の子だし」「しょせん女の子だから」と水をかけ、足を引っ張ることを、aspirationのcooling down、すなわち意欲の冷却効果と言います。

マララさんのお父さんは、「どうやって娘を育てたか」と訊かれて、「娘の翼を折らないようにしてきた」と答えました。そのとおり、多くの娘たちは、子どもなら誰でも持っている翼を折られてきたのです。

そうやって東大に頑張って進学した男女学生を待っているのは、どんな環境でしょうか。
他大学との合コン(合同コンパ)で東大の男子学生はもてます。
東大の女子学生からはこんな話を聞きました。「キミ、どこの大学?」と訊かれたら、「東京、の、大学...」と答えるのだそうです。なぜかといえば「東大」といえば、ひかれるから、だそうです。
なぜ男子学生は東大生であることに誇りが持てるのに、女子学生は答えに躊躇するのでしょうか。
なぜなら、男性の価値と成績のよさは一致しているのに、女性の価値と成績のよさとのあいだには、ねじれがあるからです。

女子は子どものときから「かわいい」ことを期待されます。ところで「かわいい」とはどんな価値でしょうか?

愛される、選ばれる、守ってもらえる価値には、相手を絶対におびやかさないという保証が含まれています。だから女子は、自分が成績がいいことや、東大生であることを隠そうとするのです。
東大工学部と大学院の男子学生5人が、私大の女子学生を集団で性的に凌辱した事件がありました。加害者の男子学生は3人が退学、2人が停学処分を受けました。

この事件をモデルにして姫野カオルコさんという作家が『彼女は頭が悪いから』という小説を書き、昨年それをテーマに学内でシンポジウムが開かれました。
「彼女は頭が悪いから」というのは、取り調べの過程で、実際に加害者の男子学生が口にしたコトバだそうです。この作品を読めば、東大の男子学生が社会からどんな目で見られているかがわかります。
東大には今でも東大女子が実質的に入れず、他大学の女子のみに参加を認める男子サークルがあると聞きました。
わたしが学生だった半世紀前にも同じようなサークルがありました。それが半世紀後の今日も続いているとは驚きです。

この3月に東京大学男女共同参画担当理事・副学長名で、女子学生排除は「東大憲章」が唱える平等の理念に反すると警告を発しました。
これまであなたたちが過ごしてきた学校は、タテマエ平等の社会でした。偏差値競争に男女別はありません。
ですが、大学に入る時点ですでに隠れた性差別が始まっています。社会に出れば、もっとあからさまな性差別が横行しています。東京大学もまた、残念ながらその例のひとつです。
学部においておよそ20%の女子学生比率は、大学院になると修士課程で25%、博士課程で30.7%になります。
その先、研究職となると、助教の女性比率は18.2、准教授で11.6、教授職で7.8%と低下します。これは国会議員の女性比率より低い数字です。
女性学部長・研究科長は15人のうち1人、歴代総長には女性はいません。

こういうことを研究する学問が40年前に生まれました。女性学という学問です。のちにジェンダー研究と呼ばれるようになりました。
私が学生だったころ、女性学という学問はこの世にありませんでした。なかったから、作りました。
女性学は大学の外で生まれて、大学の中に参入しました。4半世紀前、私が東京大学に赴任したとき、私は文学部で3人目の女性教員でした。そして女性学を教壇で教える立場に立ちました。
女性学を始めてみたら、世の中は解かれていない謎だらけでした。

どうして男は仕事で女は家事、って決まっているの?主婦ってなあに、何する人?ナプキンやタンポンがなかった時代には、月経用品は何を使っていたの?日本の歴史に同性愛者はいたの?
...誰も調べたことがなかったから、先行研究というものがありません。ですから何をやってもその分野のパイオニア、第1人者になれたのです。

今日東京大学では、主婦の研究でも、少女マンガの研究でもセクシュアリティの研究でも学位がとれますが、それは私たちが新しい分野に取り組んで、闘ってきたからです。そして私を突き動かしてきたのは、あくことなき好奇心と、社会の不公正に対する怒りでした。
学問にもベンチャーがあります。衰退していく学問に対して、あたらしく勃興していく学問があります。

女性学はベンチャーでした。女性学にかぎらず、環境学、情報学、障害学などさまざまな新しい分野が生まれました。時代の変化がそれを求めたからです。
言っておきますが、東京大学は変化と多様性に拓かれた大学です。わたしのような者を採用し、この場に立たせたことがその証です。

東大には、国立大学初の在日韓国人教授、姜尚中さんもいましたし、国立大学初の高卒の教授、安藤忠雄さんもいました。また盲ろうあ三重の障害者である教授、福島智さんもいらっしゃいます。
あなたたちは選抜されてここに来ました。東大生ひとりあたりにかかる国費負担は年間500万円と言われています。これから4年間すばらしい教育学習環境があなたたちを待っています。
そのすばらしさは、ここで教えた経験のある私が請け合います。

あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。
ですが、冒頭で不正入試に触れたとおり、がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています。
そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。
あなたたちが今日「がんばったら報われる」と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。

世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと...たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。

あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。
恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。
そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。
女性学を生んだのはフェミニズムという女性運動ですが、フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です。

あなた方を待ち受けているのは、これまでのセオリーが当てはまらない、予測不可能な未知の世界です。
これまであなた方は正解のある知を求めてきました。
これからあなた方を待っているのは、正解のない問いに満ちた世界です。
学内に多様性がなぜ必要かと言えば、新しい価値とはシステムとシステムのあいだ、異文化が摩擦するところに生まれるからです。

学内にとどまる必要はありません。東大には海外留学や国際交流、国内の地域課題の解決に関わる活動をサポートする仕組みもあります。未知を求めて、よその世界にも飛び出してください。
異文化を怖れる必要はありません。人間が生きているところでなら、どこでも生きていけます。
あなた方には、東大ブランドがまったく通用しない世界でも、どんな環境でも、どんな世界でも、たとえ難民になってでも、生きていける知を身につけてもらいたい。

大学で学ぶ価値とは、すでにある知を身につけることではなく、これまで誰も見たことのない知を生み出すための知を身に付けることだと、わたしは確信しています。
知を生み出す知を、メタ知識といいます。そのメタ知識を学生に身につけてもらうことこそが、大学の使命です。

ようこそ、東京大学へ。
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「新卒一括採用が否定されるのは、もはや時間の問題かもしれない」、ことについて

2019年04月26日 17時19分09秒 | お仕事関連
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■「キャリア採用の定着を」 経済同友会代表幹事に就く桜田氏 日本経済新聞 2019/4/26

(略)
――企業の人材採用はどう考えますか。

「新卒一括採用という世界で珍しい制度は、創造的な国や元気な若者をつくる面からみてマイナスに働いているかもしれない。新卒採用の解禁時期を決めるといったルールがなくなっていくのは時間の問題だろう」
「学生の一律採用を全面否定はしないが、通年採用やキャリア採用などいろいろなやり方があっていい。特に失敗した経験を持つ人材は貴重だ。悔しい思いや反省が次のステップにつながる」
(略)
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■新卒一括採用「やめた方がいい」 同友会次期代表幹事 朝日デジタル 2019/4/26

 経済同友会の次期代表幹事の桜田謙悟氏(63)が朝日新聞などのインタビューに応じ、日本の雇用慣行となっている就職活動のルールを前提とした新卒一括採用制度について、「個別企業の問題だが、やめた方がいい。原則はキャリア(中途)採用であるべきだ」と語った。経団連も中途採用を増やす方針を打ち出しており、採用の多様化が進む可能性がある
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少し前からメディアに載りはじめたこれらの発言。
その前に話題になった「大学教育を実務教育にシフトすべし、職能に結び付かない人文系の学問(学科)は淘汰すべし」の流れの延長にある気もします。

でも制度改革を待って人材が育つのを待ってる暇はない、待つ時間もない、と経済界は考えたのだと思います。「力のある人を外からどんどん入れるしかないの、そのくらい、時代の流れが速いんだから」、ということなのでしょう。
もちろんそれだけではないでしょうけれど、くだんの「新卒一括採用の否定」の根っこの"ひとつ"でもあるように感じます。

だからと言って企業側がすぐにでも中途採用重視の欧米型キャリア採用にしよう! と一気に傾くとも思えませんが、大手企業からこの傾向がどんどん進むことはもう間違いないのでしょう。力のある学生もこの傾向を歓迎すると思いますし、在学中に難関の国家資格を取得する学生も増えるでしょう。経験を積んだ20代の転職も活発になるはずです。
国としても「企業活動が活発なのは国としても大歓迎!」と言う観点で反対するでもなく、かといって賛成するでもなく、なんとなく「日本版キャリア採用」みたいな玉虫色の採用方法に変化(進化?)していく気がします。
となると、仕事に直結しない趣味的人文系に進んだかつての私のような学生には、就職と言う場面でかなり厳しい未来が来ることは間違いなさそうです。なにも考えずに「とりあえず大学卒業して、さあ就活ぅ~」なんていってたら、時給のバイトくらいしか就ける仕事はないかもしれません。いやコンビニやファーストフードでも自動化による省力化が進むご時世ですから、時給のバイトにすら就けないかもしれません。

手に職(スキル・専門性)が重視される社会。
それでもそのスキルが陳腐化する速度はこれまで以上に速い。。
機械化されることで、職自体のパイもどんどん小さくなっていく。。

どんなスキル(専門性)を身に付ければ、安心できるのか。
どんな会社に入れれば、安心できるのか。

大変な世の中になりそうだけど、そもそも"白無垢"の学卒者が企業にウィルカムで迎えられていたのは日本くらいのものだそうなので、キャリア採用こそ「あるべき就職の仕方なのよ」と言われれば、それに合わせていくしかないということなのでしょう。

これからは白無垢ポテンシャル(可能性)だけで就職できる時代ではなく、それを一度体現してみて(それが具体的なキャリアになる)、その結果をもとに再生・修正を加えてスキルを磨き、そこから「キャリア採用」に臨む、というルートこそ尊重すべき、ということなのでしょうかね。

でも、現実どうなんでしょうか。
自分の価値観やスキルをしっかり持った"中途採用者"をウェルカムと迎えたい企業が多くなるとは(今の時点で)正直とても思えないのです。キャリア採用者の待遇をどう上げるか、まで記事では踏み込んでいませんよね。
経済界のこういう発言は、あくまでも"今"即戦力として使える中途採用者、優秀な部品、というニュアンスを感じてしまうのは否めないのです。
そして、今優秀でも10年後20年後もその優秀さが継続する保証はありません。継続させるのが「自己責任」といわれる可能性だってあるのです。

いずれにせよ、これからの学生の就職活動は、卒業間近に考えるものではなく、高校、大学への進学時点で意識すべきことになることは確かでしょう。ただね自分がイチローや藤井聡太七段じゃなければ「自分はこれだ」と決めなくてもいい、と私は思うのです。だって世の中はどんどん変わるのだから。

大切なことは、「何に関わっている自分が好きか」ということが意識できるかどうか。
子供時代の「こういう感じが好き」って気持ちは、人生の「根っこ」になれるように感じます。
で、この根っこが多分自分の「職」に繋がっていくのだと私には思えるのです。

ほんと、これからの学生は大変だわ。。。
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新元号は「令和」なり

2019年04月02日 21時02分16秒 | 日々雑記
4月1日の昼休みにこのニュースを聞いた私たち。

「令」といえば、辞令・命令・号令・指令・・・・・・と瞬時にそんな文字を思い浮かべてしまいましたです(^_^;)だってサラリーマンだし、先月辞令くらって転勤した同僚いるし。。。

しかも後に付く文字が「和」。"和をもって尊しだ、命令には従うように"と。をぃをぃ、そういう時代になっちゃうの? って気分になりました。←被害妄想
もちろんそんなことはまったくなく、万葉集からの言葉、ということで、それはそれは情緒深い歌の文章が由来のようです。

「初春の令月 気淑風和 (以下略)」

もともと「令」の文字には「(すがた形の)良きもの」という意味もあるそうで、「ご令嬢」の「令」なんてのがそれでしょうか。

まぁ、「かたち良く、和する」時代、ということなのでしょう。
「和」については、外国人労働者の増加や多様な働き方、LGBTを含めた多様な生き方、と「和する」事柄には事欠かなさそうだし。。
そんな裏メッセージも含まれているのかなぁ、なんてことも感じます。

ところで、Reiwaのアクセントをどこに置くか、ということについては、頭の「Re」だそうですが、個人的にはノーアクセントの平読みがいいな、と感じます。「平和」と同じアクセントでいいと思うのよ。(なんで誰も言わないかなぁ)

「平成」は天皇陛下の崩御による改元で、決して「おめでたいスタート」ではなかったけれど、今回は生前譲位の明るいムードの中でのスタート。今の時代に合っていると思う。

5月1日からの数十年が、より良く、和せる時代でありますようにと、いち日本人として願うばかりです。
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