林間教育通信(「東大式個別ゼミ」改め「シリウス英語個別塾」)

私立中高一貫校生徒を対象とする英語個別指導塾。小田急線の東林間駅(相模大野と中央林間の隣駅)から徒歩3分。

自然な英語よりも、アウトプットを意識したインプット

2010年11月11日 | 英語学習
前回は英単語三つで言いたいことを表現しなさいと書きました。ちょっと補足しておきます。

>「鎖国していたころの日本人は実は平和で豊かな国だったのだ」ならば、ジャパン、クローズド、ピース・ピース!

ずいぶん無茶苦茶な英語というか、英単語の羅列です。しかし、日本の鎖国について知っている人であれば、これでも理解してもらえはずです。しかし、このようなブロークンな英語表現でも結構難しいのです。なぜかというと、「鎖国」と言う言葉を和訳しようと思ってもなかなかclosedだとかclosed the doorといった易しい言葉が出てこないからです。普通に日本で勉強した人ならば、「えー、うー」とか言って戸惑ってしまうのが普通でしょう。会話(=アウトプット)が難しいというのは、一つにはそういうことがあるんですね。日本の学習環境では、文法を学び例文暗唱をしっかりとやったとしても、なかなか瞬時に適切な英語がでてこないものなのです。


ここで英語学習者さんの議論をもう一度ふりかえってみましょう。

>「There is a cat under the desk.」
と実際の使用場面やその文の現す機能を考慮しない文を音読させても、実際に学習者が英語を話せるようになるとは思えません。

>実際に英語を使用してコミュニケーションを取らせるようにすることが目的だと思います。


要するに、「不自然な英語」ではなく「自然な英語」を学べば、英語でコミュニケーションできるようになるという考え方です。たしかに”For here or to go”レベルの日常的慣用句だとか、「トイレ」の表現などについては、「自然な英語」を学ぶのも良いでしょう。(2010年12月号の『クーリエジャポン』(12月号)では、森巣博が「越境者的ニッポン」でトイレの英語表現の考察をしています。なお、「教授のひとりごと」というブログではくわしい紹介がされています)。

しかし、「英語を話せる」というのは、慣用句やスラングを知っているとかではなく、もうちょっと別のレベルのことを求めているわけですよね? つまり、ちゃんとコミュニケーションをとりたいのですよね? もしそうだとしたら、「自然な英語」を学ぶか否かではないでしょう。一番のポイントは、アウトプットを意識したインプットを積み重ねていくことではないでしょうか

自然な英語をインプットすれば、自然な英語がアウトプットできるという反論があるかもしれません。しかし、文法を体得していない段階で、自然な英語を学ぶことが本当に効率的でしょうか?自然な英語を学ぶことによって文法をインプットできるのでしょうか?たとえば、木村基礎英語の7月号(2010年7月号55頁には次の文章が有ります)。

Where are the boxes with yutaka and stuff like that?

これは私に言わせれば、ちょっと長すぎます。なにしろ7月の段階ですから、まだ中学1年生の一学期ですよ。主語が複数の時はareだけれど単数になるとisになるが曖昧な段階、Whereを使った疑問文が言えない段階、be動詞と一般動詞がまだおぼつかない段階です(※)。それをいきなり、「浴衣とかそんなものがある箱はどこですか」という文章をやってしまうのです。これはちょっと厳しすぎます。どうしても覚えるとなると、「文法を意識しない丸呑込み」になるでしょう。丸呑みの丸暗記では、英文法のインプットはでません。つまり変形練習はできないので、アウトプット能力の向上には全然つながらないのです。だからまずはWhere are the boxes?くらいのシンプルな英文から始めるべきです。シンプルな英文はアウトプットし易いからです。

「自然な英語」は、ある程度基本文法を習得してから頑張ってみましょう。そしてそれをいきなり使いこなそうなどとは思わず、シンプルな英語のアウトプットから始めてみようではないですか。

次回は、私の体験を踏まえ、「文法学習のない語学学習」について考えてみます。


(※)私立上位校の生徒になると頭ではわかっています。しかし、瞬時に英語を言えるわけではありません。ちなみに中2の御三家トップ・レベルの生徒でも、He have とか She going toとかになってしまいました。そのくらいアウトプットは難しいのです。