マイナビ女子オープン会場で購入し、先崎八段の揮毫をいただきました。
文章にまったく無駄がない。簡潔ということとはまた違う。書かなくてはならないことをすべて、決められた字数の中に書き込んだ、ということでしょうか。プロ棋士がプロの現場をリアルに書くことへのためらいも滲み出ている。河口七段「対局日誌」の、いまとなってはのどかな空気とは距離があるような。
まえがきの「深夜に及ぶ取材が終わると、いつも私はぐったりしていた」、そして「(原稿を)編集部まで持っていき、開放感に溢れた状態で、そば屋で昼酒を飲んだ」という記述に、書くことへの恐ろしい負荷があったことを感じ取れます。
しかし、たとえば、
「いいなあ広瀬君は」と誰かがいった。「いつもこうやって勝っちゃうんだ」
とか、いう控え室の会話や、
「中村は脇息にもたれ、ライオンが休むような格好で考えている」
といったフレーズの品の良さ。これは観戦記者には書けない。プロ棋士だからこそ書ける文章でしょう。まったく、素晴らしい本だと思います。これからも、先崎八段にはこういう文章を書いてもらいたい。ファンとしての気持ちです。
…220ページ「△5五角と突いたのが急所で」は「△5五歩」の誤り? 編集部はきちんと校正しなくては。