マリリンの映画日記

エッセイスト瀧澤陽子の映画ブログです!新作映画からオールドムービーまで幅広く綴っております。

映画の看板

2007年02月09日 | 映画
 3月7日発行の創刊女性誌の映画のページに協力をしている。そのために去年から今年にかけて、かなりの試写を見ている。1日3本見ることもある。まるで、大学生の頃みたい。いや、子供の頃も思い出す。

 私がまだ幼稚園の頃、私の家は銭湯の前にあった。今でこそ、銭湯は閑古鳥で不景気だが、その昔、銭湯と言えば庶民の社交の場であった。町内で人が一番集まる場所だったのだ。人が多く行き交うことから、私の家の後側の1スペースに当時の日活映画の看板が立てられていた。石原裕次郎、浜田光男、吉永小百合、和泉雅子、小林旭。ロマンポルノになる前の日活全盛期の頃だった。

 銭湯に来るお客はこの看板を眺めて、今度公開される映画の情報を知った。当時のこの看板は今でいう情報誌の「ぴあ」みたいな感じだった。映画好きにはなくてはならない貴重なものだった。

 看板を貼らせてあげる代わりに、毎月、日活映画館から無料の入場パスがもらえた。だから、私は小さいながらも父に連れられて父の休みの日にはいつも映画館にいた。ここでは洋画も公開され、イギリス、ハマーフィルム全盛の「ドラキュラ」シリーズでは、クリストファー・リーのドラキュラがあまりにも恐くて、おしっこを漏らした記憶もある。

 日活映画館に入ると独特の香りがした。いや、臭いの方が適切か。おしっこと甘辛せんべいが混ざったような妙な臭いだった。でも、それは決して嫌な不快な臭いではなく、人の心を暖かくするような、ホッとするような臭いだった。

「おせんに、アンパン、キャラメル」そんなのどかな時代を思い出す。

 あの頃は3本立て映画が当たり前だったので、「愛と死を見つめて」「二人の銀座」、洋画のちょっとHっぽかった「太陽のはらわた」なんて連ちゃんで見ていた。それでも、楽しかったのは当時のレジャーは映画館しかなかったからだと思う。

 あの時代の映画館の素晴らしさを描いてくれたのが傑作イタリア映画「ニューシネマパラダイス」である。最近DVDを借りてまた見たが、子供の頃の日活の映画館みたいな感じでとても懐かしかった。

 最近、新作試写を見たり、昔の映画を見たり、シネマ狂の私は実に心地いいのだが、やはり寄る年波には勝てない。感性がちょっと鈍くなっている。

 その中でも、特にピカッと光ってくれたのが、3月24日公開の「ホリディ」(UIP映画)。監督は「恋愛適齢期」のナンシー・メイヤーズ。失恋した女性二人(キャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレット)がお互いの家を交換して、そこで新しい自分を発見するといったストーリーだ。キャメロン・ディアスの恋人になるジュード・ロウが最高にいい演技をしてくれる。ジャック・ブラックは「ナチョリブレ、覆面の神様」みたいなぶっ飛んだ役をやってくれるのかと思ったら、これがまたシリアスなマジメ君でちょっと残念だったが。

 この映画は立ち止まって、ちょっと休もうよ、そして自分自身を見つめなおそうよ。そんなことをほのぼのと訴えている。監督のナンシー・メイヤーズの女性を観察する視点はリアルで暖かい。そして、ユーモアも決して忘れていない。





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