マリリンの映画日記

エッセイスト瀧澤陽子の映画ブログです!新作映画からオールドムービーまで幅広く綴っております。

『クヒオ大佐』

2009年09月19日 | 映画
 結婚詐欺師・クヒオ大佐が逮捕された時の新聞を見て、大笑いした記憶がある。

 もちろん、クヒオ大佐は実在の人物である。逮捕された年が1984年。20年間も女性を騙し続けた大胆不敵な日本人詐欺師であった。

 名前はジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐。米軍特殊部隊パイロット、父親はハワイのカメカメハ大王の末裔、お母さんはエリザベス女王の妹の夫のいとこ(なんだかわけわかんないが)、映画には出てこなかったが、実際の報道では、りんごの銘柄ジョナゴールドの生産者とも嘘はったりを吹いていた。


 この事件が強烈に印象に残っているのも、実際のクヒオ大佐の顔である。アメリカ人に成り済ますために「つけ鼻」をして、『愛と青春の旅立ち』のリチャード・ギアみたいな軍服に身を包んでいる。しかし、その顔は、テレビ番組の「オレたちひょうきん族」でたけしさんがやっていた赤ら顔のタケちゃんマンにそっくりだったからだ。

 どう見てもアメリカ人には見えないヘンチクリンな顔でよく女を騙せたな!とガハガハ笑っていた。

 この事件のその後がどうなったかが気になってはいたものの、月日が経つうちに、いつの間にか忘れてしまっていた。が、今回、映画化されると聞き、私は見るのが楽しみで、真っ先に試写を見て来た。

 堺雅人演じるクヒオ大佐は実物よりもずっとハンサムだったが、クヒオ大佐はかくして女を騙し続けたのかという、巧妙でいてどこか陳腐な手口がはっきりと分かった。

 セコイ、狭い自分の部屋で、あたかも戦闘機に乗っているかのように演出し、バックミュージックをかけ「イスラエル上空からだ」と、女に電話するシーンは圧巻である。大爆笑ものだ。

 だが、「僕は人がやって欲しいと思うことをやってあげただけだ」
こんなセリフだったと思うが、作品の終盤に出てくる。これが、クヒオ大佐の犯罪へのエクスキューズなのだが、なんとなくしんみりしてくる。そして時々挿入されるクヒオ大佐の子供の頃の生い立ちシーンにも涙が滲む。


 そうこうしているうちに、被害に合う弁当屋の女主人の松雪泰子や博物館学芸員の満島ひかりが、なぜクヒオ大佐に騙されてしまったのかが、妙に納得できてしまうのだ。

 あの実物のタケちゃんマンそっくりのクヒオ大佐にも、きっと憎めない男の可愛さと哀愁があったのだろう。

 それにしても、女というのは「結婚」という言葉に実に弱い動物であることを、がっつりと証明してくれた作品でもある。

10月10日から公開

クヒオ大佐公式

監督 : 吉田大八
出演 : 堺雅人 、 松雪泰子 、 満島ひかり 、 中村優子 、 新井浩文 、 児嶋一哉 、 安藤サクラ 、 内野聖陽



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