マリリンの映画日記

エッセイスト瀧澤陽子の映画ブログです!新作映画からオールドムービーまで幅広く綴っております。

『白い巨塔』~映画解説作品③

2009年06月17日 | 映画
 山崎豊子原作、山本薩夫監督作品。大学病院の権力闘争で裏技と裏金を使い、教授の座を手に入れる財前教授を田宮二郎が演じている。

まさに「医は算術なり」、患者よりも自分の出世という大学病院の医師のあり方にメスを入れ、見事に抉り出した社会派の傑作だ。この作品は最近、唐沢寿明主演でテレビドラマ化され、かなりの視聴率を取った番組なので、若いファンにも浸透していると思う。

私の子供の頃、田宮二郎は超ハンサムな銀幕の大スターだった。『白い巨塔』の財前役では『太陽がいっぱい』のアラン・ドロンを彷彿させるほど、コケティッシュで悪魔的な素晴らしい演技をしている。

今東光原作の『悪名シリーズ』では勝新太郎とコンビを組み、調子のいい口八丁手八丁の軽いチンピラ役は、もしかしたら田宮二郎の不世出の作品だったのではないだろうか。とにかく素晴らしかった。

今の日本映画にはこんな上手い役者さんが少なくなっているようで、残念でならない。1978年、俳優としても着々と実績を残していた田宮二郎が、自宅で散弾銃自殺をしたというニュースを聞いた時にはびっくりだった。

当時、私は夕刊紙の記者をしていたので、そのニュースをいち早くキャッチできた。自殺の原因はM資金なる謎のお金の流れに巻き込まれたということらしい。

銀幕の大スターの非業の死に驚き、大スターというのは大スターであるがゆえに普通の死に方はしないのものだと痛感した。

日本では夭折した日活の大スター・赤木圭一郎。ハリウッドではマリリン・モンローとジェームス・ディーンが頭に浮かんでいた。

福祉センター上映会のたくさんの視聴者の方たちと、この作品を一緒に見ていて、あまりにも綺麗で薄命だった田宮二郎の人生を思い出し、感慨無量になっていた。




【監督】山本薩夫
【出演】田宮二郎、東野英治郎、田村高廣、 船越英二
 1966年 日本