臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

一首を切り裂く(018:準備・其のⅡ・できるだけ色のなまえをつくっておくね)

2011年11月01日 | 題詠blog短歌
(藤田美香)
○  春がくる準備その一できるだけ色のなまえをつくっておくね

 「できるだけ色のなまえをつくっておくね」とは仰いますが、私・鳥羽省三の知り得る範囲内でも、赤・青・緑・黄色・白といった「色のなまえ」以外に、次のような「色のなまえ」が在るんですよ!
 それ以外の「色のなまえ」を作ったとしても、肝心要の「色」そのものにも限りがありますから、貴女のなさろうとしていることは、「春がくる準備」としては、全く無用なことではありませんか?
 赤系統━━━━━鴇色、茜色、ワインレッド、カーマイン、ボルドー、マゼンタ、牡丹色、蘇芳色
 オレンジ系統━━肌色、黄丹、蜜柑色、柿色、クローム・オレンジ、キャロット、杏子色、小麦色
 黄色系統━━━━アイボリー(象牙色)、クリーム、刈安色、支子色、山吹色、カーキ、ゴールド(金色)、レモン・イエロー(檸檬色)
 茶系統━━━━━ベージュ(白茶)、栗色、鳶色、チョコレート色、団十郎色、ココア色、キャメル(駱駝色)、コーヒー、
 緑系統━━━━━萌葱色、鶯色、ビリヤード、青磁色、ターコイズ・グリーン、エメラルド・グリーン、オリーブ、モス・グリーン
 青系統━━━━━新橋色、シアン、スカイブルー、ターコイズ・ブルー、浅葱色、藍色、インディゴ、納戸色
 紫系統━━━━━ウィスタリア(藤色)、パンジー、江戸紫、京紫、モーブ、ラベンダー、ライラック、二藍
 白・灰・黒系統━スノー・ホワイト(純白)、鉛白、乳白色、シルバー・グレイ(銀鼠)、チャコール・グレイ、アイボリー・ブラック(漆黒)
 〔返〕  春が来る準備その二 出来るだけ明るい絵具を買っておいてね    鳥羽省三
      春が来る準備その三 出来るだけ大きなキャンバス張っておいてね
      春が来る準備その四 出来るだけ景色の良いとこ見つけておいてね
      春が来る準備その五 お昼にはハムかつサンドのお弁当だね


(akari)
○  桜舞う季節に向けて準備中 我がうちにある種子を育てる

 「桜」の季節には「桜」以外の花は目立ちませんから、「我がうちにある種子を育てる」のは、季節をもう少し先にずらす方が宜しいかと思います。
 〔返〕  桜舞う季節に向けて確保中 ブルーシート及び酒好きな人   鳥羽省三
 

(髭彦)
○  万端の準備整へ臨むこと乏しかりけむ吾が人生に

 「吾」は「吾が人生に」於いて「万端の準備整へ臨むこと乏しかりけむ」と悔恨の情に浸るのは、髭彦さんならずとも、何方でも同じようなことかと思われますし、かく申す私などは、この頃、日夜、この思いに囚われて、体重が一ヶ月で四キログラムも落ちてしまいました。
 これも亦、終活の一環でありましょうか?
 〔返〕  日の暮れて道なほ遠し帰らむと思へど帰るべき故地も無し   鳥羽省三


(ほたる)
○  わたくしが壊れてしまわないように別れる準備しているなんて

 一首の意は、「『わたくしが壊れてしまわないように別れる準備しているなんて』、私はちっとも思わなかったわ?それにしても、なんて優しい主人なんでしょう!」というところでありましょうか?
 それとも、「『わたくしが壊れてしまわないように別れる準備しているなんて』、私は少しも気付かなかったわ?それにしても、なんて優しい上司なんでしょう!」というところでありましょうか?
 そのいずれの場合にしても、遊び慣れた中年男が相手の女性に引導を渡す時の、あまりに常套的な手管であるに過ぎません。
 それなのに、愚かな女性は、感激の涙を流して慰謝料も碌々取らずに身を退いてしまうのである。
 作品の出来栄えとしては、まだまだのレベルにありましょう。
 いっその事、「ほたるんのこと壊してしまわないように別れ支度をしているなんて」と、もう少し塩らしく、可愛らしくお詠みになったらいかがでありましょうか?
  〔返〕  私はちっとやそっとで壊れません準備万端お誘い歓迎   鳥羽省三


(音波)
○  ヤクルトを5本パックで買いこんだ明日も生きる準備だこれは

 「ヤクルトを5本パックで買いこんだ」にしろ、配達付きでたかだか五百円程度のことでありましょう。
 それなのに、「明日も生きる準備だこれは」とは、身振りがあまりにも大袈裟過ぎましょう。
 本作の作者・音波さんは、目下失職中でありましょうか?
 〔返〕  ヤクルトは買った日に呑む飲料で買い溜めしてはいけませんこと   鳥羽省三


(砂乃)
○  珈琲と煙草の香りの準備室体育教師の怒声の響く

 体育科教師以外の教師は、「体育科準備室」のことを密かに“蛸部屋”と呼んでいるとの事である。
 「怒声が響く」とか「珈琲と煙草の香り」が満ちている程度だったら救いがありますが、ある県のある高校に於いては、女子の教育実習生に対するセクハラ行為が行われたり、マリファナの香りが立ち込めていた、という噂もありました。
 〔返〕  十人に一人の教師が馬鹿者で他の九人大迷惑だ   鳥羽省三


(稲生あきら)
○  いつ何時閻魔に会ってもいいようにきちんと二枚準備しておく

 「二枚舌」を「きちんと準備しておく」と仰るのでありましょうが、「閻魔」様が、貴方の為に「準備しておく」“舌切除システム”は、最新式の改良型ですから、「二枚」でも「三枚」でも、まるごと抜かれてしまいますよ。
 〔返〕  いつ何時「いざ、鎌倉!」か分りません新しいパンツを穿いときなさい   鳥羽省三


(酒井景二朗)
○  青春は準備不足のままに來て何も殘さず過ぎ去りにけり

 本作の作者の仰る「青春」とは、主として“年齢”としての「青春」であり、「青春」特有の実質を伴ったものではありません。
 “遅れ花”という言葉も在りますから、酒井景二朗さんにとっての真実の「青春」はこれからなのかも知れません。
 いつ何時「青春」が襲来しても、決して立ち遅れることが無いように準備をお忘れ無く。
 〔返〕  明日にでも「いざ、鎌倉!」が襲来す! 愛馬を肥やせ! 刃を研け!   鳥羽省三


(たろ)
○  からからと 食餌の準備聞き付けて 我は我はと群がる毛玉

 「食餌の準備」をしているのを「からからと」「聞き付けて」、「我は我はと群がる」とは、何と言う“食い意地”の張った「毛玉」でありましょうか?
 その「毛玉」とは、比叡山の悪法師たちの陰毛を集めて作った「毛玉」に違いありません。
 だとしたら、お腹を満たした後で何をするか判りませんから、業火で焼いてしまいましょう。
 〔返〕  たろたろと地獄の業火が燃え盛る毛玉悪玉みんな焼いちゃえ   鳥羽省三