臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

一首を切り裂く(018:準備・其のⅣ・右腕をあかるいほうに這わせてねむる)

2011年11月02日 | 題詠blog短歌
(花夢)
○  生きてゆく準備のように右腕をあかるいほうに這わせてねむる

 大半の生物には、“向日性”という「あかるいほう」を好む性質がありますが、もはや熟女の段階に達した本作の作者・花夢さんが、今更「右腕をあかるいほうに這わせて」眠ったとしても、これ以上「右腕」が伸びる筈もありませんし、仮に伸びたとしても、それは「生きてゆく準備」の足しにもならないものと判断されます。
 とは言え、一種の就眠儀式のようにして、「右腕をあかるいほうに這わせてねむる」時に、当事者の花夢さんが、「私はこうして『生きてゆく準備』をしているんだな!」と思ったとしても、それには何の不思議も無く、むしろ、“心の自然的な働き”とも言えましょう。
 かかる点にご注目なさってこの一首を詠んだのであれば、本作は花夢さんの久々の傑作と申せましょう。
 〔返〕  生きて行く準備の一つであればこそアクエリアスを飲むこともある   鳥羽省三


(逢)
○  冷えているアクエリアスを飲みほして涙をつくる準備はできた

 「涙」は人間の体内から排出される排出物に過ぎませんから、「涙をつくる準備」として「冷えているアクエリアスを飲み」乾す必要は無いかと存じ上げますが、いかがでありましょうか?
 〔返〕  冷えているアクエリアスも飲み干した箱根山坂一気に駈けむ   鳥羽省三


(じゃこ)
○  人よりも準備に多少手こずっているだけやからニートて呼ぶな

 我が国は、内閣府の「青少年の就労に関する研究会」の中間報告に於いて、「若年無業者」を「学校に通学せず、独身で、収入を伴う仕事をしていない15~34歳の個人」と定義している。
 また、「ニート」とは、上記の「若年無業者」のうちの「非求職型および非希望型」、つまり「就職したいが就職活動していない」または「就職したくない」者としており、日本で「ニート」というと大抵はこの意味で用いられるのが一般的である。
 本作の作者・じゃこさんの言い分をそのまま信じるとしたら、彼は「人よりも準備に多少手こずっているだけやから」、「若年無業者」とは言えても、「ニート」とは言えないかも知れません。
 とは言え、「若年無業者」でありながら、「人よりも準備に多少手こずっているだけやからニートと呼ぶな」とは、あまりにも世間知らずで手前勝手な申し分である。
 [彼」を「ニート」と「呼ぶ」ことが出来なかったとしたならば、私たち平均的な勤労者は、誰のことを「ニート」と呼べばいいのでありましょうか?
 〔返〕  出汁じゃこはお湯に入れられ出汁採られ娑婆の役無くなれば捨てられ   鳥羽省三


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