臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

島田幸典作『駅程』所収作鑑賞(其の7)

2016年08月12日 | ビーズのつぶやき
○  蔬菜売る露店のひとは客おらぬときに蔬菜をしきり動かす

 私見に拠ると、朝市などで「蔬菜」や魚などの生鮮食品を鬻いでいる露店商は、人いちばい世間智に長けていなければならない。
 一首の意は「朝市などの『露店』で『蔬菜』を『売る』『ひと』の動きを観察してみると、彼ら露店商の『ひと』は、何故か不思議なことに、『蔬菜』を買う『客』が『おらぬ』ときに、『しきり』に売り物の『蔬菜』を『動か』している(が、あれはどうしたことであろう)」といったところでありましょう。
 恐らく彼ら露天商は、「より優先して売らなければならない品(見た目が良くない品とか新鮮味が薄れた品とか)を前面(場合に拠っては後面)に並べたり、萎れるのを防ぐために風入れをする為に『しきり』に『動か』しているのでありましょう。
 そうした人目を憚かる作業は「客」が「おらぬ」時にやらなければならないのであり、「露店のひと」自身もそうした必要な注意を怠ることなくやっているつもりでいるのであるが、本作の作者は、「天知る、地知る、何よりもこの島田幸典様の目が知っている」とばかりに、鋭い観察眼を「露店のひと」の怪しげな動きに注いでいるのである。


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