乙一のジャンル分け不能の作品集。
ホラーテイストの作品、しんみりした作品、新本格風の作品等、雑多なジャンルの短編11本が収められている。
よくもここまで違ったテーストの作品を書けるものだ。それが素直な読後の感想である。
悲劇的な作品もあれば喜劇的な作品もあるし、ホラーテーストも作品もあれば、泣かせる作品もある。本格ミステリのような正当ミステリもあれば、バカミスとしか言いようのない作品まで様々だ。
乙一が天才かどうかはともかく、この発想の豊かさは凡人には到底なしえるものではないであろう。
例えば本作品集の白眉にして紛れもない傑作、「SEVEN ROOMS」。
その設定はゲームチックであるものの、姿の見えない殺戮者の存在が不気味でおそろしいし、死を前にしての局限化の恐怖を描いていて圧倒的なものがある。
深読みすれば、不条理とそれに抵抗する人間の強さにまで迫っているようにすら感じられてならない。特にラストの姉の笑いなどはそのことを端的に示すシーンではないかと思ってしまう。
それでいて泣かせも入っているからたまらない。ラスト付近の姉弟のシーンはせつなさ満面だ。特に姉は自分のことを生まれたときから知っているのだ、と感じる弟のモノローグには胸を締め付けられるものがある。
これ一作でも多様な要素が盛り込まれていて驚くばかりだ。
他にもいろいろな作品があって飽きさせない。
例えば「陽だまりの詩」などはラスト付近が切なく泣きそうになってしまった。
生み出されたことへの恨みを抱きながら、それでも愛を悟る感情、そして喪失感の中から浮かんでくる生きていることの意味、美しいラストがいつまでも胸に残る傑作である。
他にもバカバカしいというほかにない「血液を探せ!」。
独特の冷ややかな叙情を感じさせる「冷たい森の白い家」。
飄々とした雰囲気ながら、どこか悲しげな「落ちる飛行機の中で」
怪談チックなのに、あまりに情景描写の美しい「むかし夕日の公園で」などなど。
とにかく乙一の良さを、そして才能を味わうには最適の作品ではないだろうか。何はともあれお勧めである。
最後に苦言というか、疑問に思ったこと。
僕はこの作品を文庫版の方で僕は手にしたわけなのだけど、果たしてハードカバーで一巻本だった作品を分冊にする必然性はあるのだろうか。このくらいの分量ならば充分に文庫一冊に収まるだろうに。
「GOTH」のときも感じたが、乙一は売れるからという理由で分冊にしているのだとしたら、非常に露骨で腹立たしいと僕は感じる。
学生にファンが多そうなだけに、もう少し彼らの金銭面を考えてやるべきなのではないかな、と非常にまっとうなことを思ってしまった。
評価:★★★★★(満点は★★★★★)
両方読みましたが1の方が面白かったです!
特に「陽だまりの詩」が切ないですけど好きです!泣いてしまいました/ _ ; 『ZOO』の映画も観ましたが、「陽だまりの詩」はアニメでとても合っていました!
全部のお話の中で断トツで恐ろしいのが「SEVEN ROOMS」です。怖過ぎて読み進めるのが躊躇われるくらいでした(^_^;)ラストもすごく辛過ぎました。本当に自分がその立場になったらどうしようと怖かったです。とても印象に残っています。
「血液を探せ」は何だか笑ってしまいました(^ ^)
乙一さん若い時にデビューされましたが、本当に才能ありますね!発想がスゴイですね!
無名時代のころから注目してたし、同い年なので一方的に親近感を持っている作家です。
『陽だまりの詩』いいですね。抒情的で、どこかせつなくて。
「ZOO」の映画は僕も見ましたが、『陽だまりの詩』は確かに合ってましたね。あの世界観は実写で出すのは大変だろうな、と思うから、アニメの方でよかったと思います。
『SEVEN ROOMS』もおもしろいです。姉ちゃんの高笑いが妙に印象に残ってます。もちろん殺人鬼はこわいし。
『血液を探せ』みたいなコメディもおもしろいです。この人はちょくちょく笑いを入れることもありますが、結構面白い人だと思います。
本当にいろんなテイストを出せます。
乙一の作品は、別のペンネームを使って書いてる作品も含めて、なるべく追っていきたいな、って思えるレベルの作家だと思ってます。
乙一さん、本当にスゴイですね(^ ^)
別の名前でも作品書かれているんですね。
知りませんでした!他の名前で書かれている作品も気になります!また「乙一」で書く作品とは違うんですか?いいのがあれば教えて下さい!
読書メーターというのがある事を知らずにこの間、こちらのブログから知り、登録してみました(*^_^*)
もっと早くから知っていたら今まで読んだ本の感想いっぱい書けたのになぁと思いました。再読したり、これから読む物を自分の記録として残していきたいなと思っています!
またそちらでも参考にさせてもらいます!
よろしくお願いします♪
乙一はミステリ全般、前者は恋愛小説向け、後者は幻想風の話でつかっている印象があります。僕の主観ですが。
別名義なら中田永一名義の『百瀬、こっちを向いて』がいいんじゃないか、って思いました。
読書メーターはじめてたんですね。お気に入りに追加しました。
僕は最近は結構サボってますが、読書メーター使いこなせば結構おもしろいと思いますよ。
やはり名前を変えるからには作風違うのかなと思ってましたが、それぞれ使い分けされてる感じなんですね!『百瀬、こっちを向いて』チェックしてみますね♪恋愛小説も好きなので楽しみです!ありがとうございます(*^_^*)
読書メーター、お気に入り登録して頂き、ありがとうございます☆全然qwer0987さんみたいにすごい感想書けないし、本も少ししか読めてないのに申し訳ないです。でも嬉しいです♪読書メーターの方にメッセージ送らせてもらいました!まだ読書メーターの使い方よくわかってないのですが、これから少しずつ感想書いていこうと思います!よろしくお願いします★
恋愛小説は苦手ですが、すんなり入っていけるいい作品です。
楽しめるといいですね。
読書メーターは結構サボり気味で、使いこなす気がなかったので、たった今メッセージ機能に気づいたくらいです。すみません、気づかなくて。こんな機能あったんですね。
ぼちぼちマイペースでやっていくのでお願いします。