2005年度作品。イタリア映画。
銃の暴発により視力を失ったミルコは全寮制の盲学校に入学する。その学校の片隅で一台のテープレコーダーを見つけたミルコは、周りのいろいろな音を録音していく。そしてそのことがミルコに新しい世界をもたらしていく。
監督はクリスティアーノ・ボルトーネ。
出演はルカ・カプリオッティ。パオロ・サッサネッリ ら。
本作はきわめてオーソドックスな話である。盲目になった少年が音に関する才能を発揮するという大まかなストーリーを聞けば、どういう感じでストーリーが進むかはある程度のところまでは想像がつくし、実際ほぼ予想した通りの展開を見せていく(デモに関しては予想外だが)。
それでもまったく退屈さを感じなかったのはいくつかの美点があったからだ。
たとえば音に関する扱いなどは目を引く。
音に興味を持つ少年という設定だけにそこで使われる音響効果はどれもなかなかおもしろいものばかりだ。シャワーの音は本当に雨のように聞こえるし、紙の束は人の足音のように聞こえる。
その発想の妙はすぐには思いつかないものばかりで、ユニークであり、非常に興味深いものがあった。
子役の存在感も良い。
たとえば、ミルコが恋人や友人たちと音をつくり上げていく光景は本当に楽しそうで、少年たちの表情が生き生きしているのがよくわかる。それだけに見ているこちらもその姿に共感を覚えることができ、少年が作中いくつかの困難に出くわすたびに、(オーソドックスとは言え)少年たちを応援する気持ちになることができる。
また大人たちも、子供たち同様にそれぞれ存在感を放っている。ミルコを見守る神父の存在など、周囲の大人にも子供を理解する人間がいて、その暖かい視線にこちらも穏やかな心地に浸ることができる。
本作は決して目立つような作品ではない。だがいくつかの美質を持った良作だ。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
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