「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」が、佳境を迎えています。
少なくとも、今後5年間の方向を決める内容が、今議論されています。
7万人余の「退院可能精神障害者」の退院促進を高らかに宣言されたのが、2004年9月でした。
厚生労働省の発表した「精神保健医療福祉の改革ビジョン」でです。
このビジョンは、それまでの入院中心から、住み慣れた地域で暮らせるように目標を設定しました。
受け入れ条件が整えば退院できる社会的入院の患者を約7万人と推計。
受け皿整備を進めて社会的入院を解消すると掲げました。
しかし、具体的な手立てや目標値は示されませんでした。
病床数の減少は、これまでに5年間で、わずか3700床程度にとどまっています。
退院促進支援事業(地域移行支援特別対策事業)の成果も実は1000人に達していません。
厚生労働省がまとめた統計では、実際に退院に結びついたのは800人程度です。
この数字を、どう評価するか…。
今までの、この国の有り様を考えれば、画期的なことかも知れません。
でも、ほとんど何も変わっていないと言って良いと思います。
「改革ビジョン」から5年を経た現在、この評価と今後の具体策が問題となります。
精神科病院や福祉施設の関係者らが集まる「今後の精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」が、その場となっています。
これまでの反省的総括に立って、これからの後半5カ年の方策が検討されています。
その内容(資料と議事録)は、厚労省のホームページで閲覧可能ですし、きちんと申込みさえすれば傍聴可能です。
この会議の席上で、厚生労働省は7月9日、新たな方向を示しました。
2005年に19.6万人だった統合失調症の入院患者数を、2014年までに23%減らして約15万人にするという、数値目標の原案を明らかにしました。
地域の受け入れ態勢が不十分で退院できない「社会的入院」患者を10年間で解消するとした「改革ビジョン」を見直すというものです。
現在の精神病床の入院患者は約32万人です。
入院患者の6割以上を占める統合失調症患者は、1999年から2005年にかけて約1割減っています。
その一方で、認知症患者は高齢化に伴い、4割程度増えています。
同じ精神疾患でも、両者は患者の状態も受け皿対策がまったく異なります。
このため、目標値や対策を分けることにしたというのです。
実は、精神科医療として、認知症患者をどうするかというのは、今回の検討会の大きなテーマでした。
認知症の周辺精神症状が激しくなると、老人科や家庭ではなかなか対応できず、どうしても精神科へ入院という流れがあります。
でも、認知症患者を、精神科でどんどん受け入れていくことが、良いことなのかどうか…。
本来、高齢者医療の枠の中でケアしていくべきで、精神科医療とは違うのではないか?
逆に、激しい精神症状が出た時をはじめ、精神疾患であるのは確かだから、精神科病院が担うべきでは?…と。
この論議は、単なる医学上の線引きの問題ではありません。
入院患者がどんどん減少する中で、空いたベッドを埋めているのが、認知症患者であるという実態があります。
精神科病院経営サイドからすれば、生き残りを賭けた経営戦略の起死回生策として、認知症患者を取り込む必要があるのです。
2004年の「改革ビジョン」は、「退院可能」とされる患者数データが主治医らの主観に基づくなど、客観性にも問題があったとしています。
確かに「社会的入院」は、病状で退院できない患者ではありません。
ヘンな話しですが、入院させている医者には判断できない事柄なのです。
医療スタッフのパターナリズムでは、推し量れない生活力を秘めている長期入院患者は、たくさんいます。
新目標でも、社会的入院をなくしていく方針は維持するそうです。
でも、「退院可能な患者」という指標をやめ、入院患者数のみに着目するとしています。
認知症については、現在正確な有病率データがないため、調査の上、2011年度までに目標値を設けることとしています。
この背景には、退院促進と精神病床削減に反対している日本精神科病院協会のプレッシャーがあります。
このまとめ方には、厚生労働省による、病院経営サイドへの配慮が見え隠れします。
その一方で、世界に類を見ない精神科ベッドの多さを改善し、まがりなりにも「脱施設化」を推し進めなければならない、苦労の後が見られます。
ビジョンは今年9月に折り返し点を迎えます。
検討会が今秋までに報告書をまとめ、後期5年の「改革ビジョン」をつくることとしていますが、どうなるでしょうか?
検討会では非常に厳しい議論が展開されています。
精神障害の当事者と、精神科病院の経営者と、関係専門職種の力関係が、今後の方向を決定します。
非常に先行き不透明であると言わざるを得ません。
それに、この国の政局如何によって、大きく情勢が変わることも考えられます。
政権交代と言うことになると、これまでの精神保健福祉施策の根本から、転換を図られるかも知れません。
ちょっとしばらく、関係者にとっては目が離せない「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」です。
ネットで議事録や資料も、すべて公開されています。
どの立場の誰が何を発言し、誰が何も発言していないか、注目していきたいと思います。
少なくとも、今後5年間の方向を決める内容が、今議論されています。
7万人余の「退院可能精神障害者」の退院促進を高らかに宣言されたのが、2004年9月でした。
厚生労働省の発表した「精神保健医療福祉の改革ビジョン」でです。
このビジョンは、それまでの入院中心から、住み慣れた地域で暮らせるように目標を設定しました。
受け入れ条件が整えば退院できる社会的入院の患者を約7万人と推計。
受け皿整備を進めて社会的入院を解消すると掲げました。
しかし、具体的な手立てや目標値は示されませんでした。
病床数の減少は、これまでに5年間で、わずか3700床程度にとどまっています。
退院促進支援事業(地域移行支援特別対策事業)の成果も実は1000人に達していません。
厚生労働省がまとめた統計では、実際に退院に結びついたのは800人程度です。
この数字を、どう評価するか…。
今までの、この国の有り様を考えれば、画期的なことかも知れません。
でも、ほとんど何も変わっていないと言って良いと思います。
「改革ビジョン」から5年を経た現在、この評価と今後の具体策が問題となります。
精神科病院や福祉施設の関係者らが集まる「今後の精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」が、その場となっています。
これまでの反省的総括に立って、これからの後半5カ年の方策が検討されています。
その内容(資料と議事録)は、厚労省のホームページで閲覧可能ですし、きちんと申込みさえすれば傍聴可能です。
この会議の席上で、厚生労働省は7月9日、新たな方向を示しました。
2005年に19.6万人だった統合失調症の入院患者数を、2014年までに23%減らして約15万人にするという、数値目標の原案を明らかにしました。
地域の受け入れ態勢が不十分で退院できない「社会的入院」患者を10年間で解消するとした「改革ビジョン」を見直すというものです。
現在の精神病床の入院患者は約32万人です。
入院患者の6割以上を占める統合失調症患者は、1999年から2005年にかけて約1割減っています。
その一方で、認知症患者は高齢化に伴い、4割程度増えています。
同じ精神疾患でも、両者は患者の状態も受け皿対策がまったく異なります。
このため、目標値や対策を分けることにしたというのです。
実は、精神科医療として、認知症患者をどうするかというのは、今回の検討会の大きなテーマでした。
認知症の周辺精神症状が激しくなると、老人科や家庭ではなかなか対応できず、どうしても精神科へ入院という流れがあります。
でも、認知症患者を、精神科でどんどん受け入れていくことが、良いことなのかどうか…。
本来、高齢者医療の枠の中でケアしていくべきで、精神科医療とは違うのではないか?
逆に、激しい精神症状が出た時をはじめ、精神疾患であるのは確かだから、精神科病院が担うべきでは?…と。
この論議は、単なる医学上の線引きの問題ではありません。
入院患者がどんどん減少する中で、空いたベッドを埋めているのが、認知症患者であるという実態があります。
精神科病院経営サイドからすれば、生き残りを賭けた経営戦略の起死回生策として、認知症患者を取り込む必要があるのです。
2004年の「改革ビジョン」は、「退院可能」とされる患者数データが主治医らの主観に基づくなど、客観性にも問題があったとしています。
確かに「社会的入院」は、病状で退院できない患者ではありません。
ヘンな話しですが、入院させている医者には判断できない事柄なのです。
医療スタッフのパターナリズムでは、推し量れない生活力を秘めている長期入院患者は、たくさんいます。
新目標でも、社会的入院をなくしていく方針は維持するそうです。
でも、「退院可能な患者」という指標をやめ、入院患者数のみに着目するとしています。
認知症については、現在正確な有病率データがないため、調査の上、2011年度までに目標値を設けることとしています。
この背景には、退院促進と精神病床削減に反対している日本精神科病院協会のプレッシャーがあります。
このまとめ方には、厚生労働省による、病院経営サイドへの配慮が見え隠れします。
その一方で、世界に類を見ない精神科ベッドの多さを改善し、まがりなりにも「脱施設化」を推し進めなければならない、苦労の後が見られます。
ビジョンは今年9月に折り返し点を迎えます。
検討会が今秋までに報告書をまとめ、後期5年の「改革ビジョン」をつくることとしていますが、どうなるでしょうか?
検討会では非常に厳しい議論が展開されています。
精神障害の当事者と、精神科病院の経営者と、関係専門職種の力関係が、今後の方向を決定します。
非常に先行き不透明であると言わざるを得ません。
それに、この国の政局如何によって、大きく情勢が変わることも考えられます。
政権交代と言うことになると、これまでの精神保健福祉施策の根本から、転換を図られるかも知れません。
ちょっとしばらく、関係者にとっては目が離せない「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」です。
ネットで議事録や資料も、すべて公開されています。
どの立場の誰が何を発言し、誰が何も発言していないか、注目していきたいと思います。