PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

「心理カウンセラーお断り」の貼り紙

2011年04月14日 09時31分41秒 | 日々の雑記


東日本大震災の被災地を訪れた人から、聞きました。
避難所の入り口に「マスコミお断り」という紙が、貼られているそうです。
一枚の紙を張り出すに至った被災地の方々の想いは、マスコミでは伝えられていません。

被災地の状況について、僕たちは、多くの情報をマスメディアから得ています。
テレビ画面に映し出される、津波の様子や壊滅した街の状況。
そして、住む家や家族を失った被災した方々の、絞り出すような生の声や表情。

画像は、強烈に僕たちに訴えかけ、僕たちの心を揺さぶります。
被災した方々の姿と声が、多くの人々の気持ちを突き動かしているのは事実です。
でも一方で、プライバシーのない避難所の方々は、マスメディアに晒され続けています。

「大変でしたね」「大丈夫ですか」という言葉とともに、マイクとカメラが向けられる。
それは、気遣いの言葉ではあっても、あくまでも報道が目的のものです。
被災地の方の気持ちに寄り添い、そのリカバリーを促すカウンセリングではありません。

多くの避難所の方々が、もう対応にうんざりしているということでしょう。
そして、その貼り紙の横に、もう一枚、新たな貼り紙が加わりました。
「心理カウンセラーお断り」という貼り紙が…。

阪神淡路大震災以降、被災者のPTSD、心のケアが強調されるようになりました。
今回も、多くの心理カウンセリングのボランティアが、現地入りしているようです。
文部科学省も子どもの心のケアのために、千数百人規模のカウンセラー派遣を決めました。

臨床心理士会などが、きちんとコーディネート機能を果たして、派遣する人材をコントロールできていれば、まだ良いのですが。
実際には、善意で現地入りしている人たちが、それぞれ活動しているのが実態です。
そして、残念ながら、その「心理カウンセラー」の質は、実にまちまちです。

勉強途上の学生や院生が、マニュアルだけ片手に、相談を請け負う例も多いようです。
使命感ももちろんあるでしょうが、自身の力量はきちんと見定めて欲しいと思います。
少なくとも、自分の専門職としての腕試しや勉強のために、被災地を使わないで欲しい。

見ず知らずの人に語るということだけで、カタルシスが得られるものではありません。
喪の作業に本当に寄り添うことができなければ、相手をパワーレスにするだけです。
いたずらに悲しみの感情を引き出して、その後のフォローもない支援などあり得ない。

「心理カウンセラー」を名乗るなら、少なくとも相手のためになるかかわりをして欲しい。
被災地の方々自身による、リカバリーが促進されるようなかかわりをして欲しい。
専門職の自己満足や、ましてや事例収集のために、被災地に足を踏み入れるべきではない。

「話せて良かった」「聞いてもらえて良かった」と、穏やかな笑顔を返してもらえるか。
「相談したけど、結局何にもならなかった」というため息で語られるようになるのか。
「心理カウンセラーお断り」という貼り紙は、避難所の方の精一杯の抗議と考えるべきだと思います。

それは、「心理カウンセラー」だけでなく、精神保健福祉士だって一緒です。
専門職づらをしないで、できることをコツコツと地道にやっていくしかありません。
「ソーシャルワーカーお断り」と言うような貼り紙を、貼られることのないように…。


被災地支援に取り組む心理職の方々に、失礼なことを書き連ねたかも知れません。
真摯に「心のケア」に取り組む方々に、不快の念を与えたとしたら、お詫び致します。
どうか他職種と連携しての、継続的な息の長い支援をよろしくお願い致します。


※画像は、差し替えさせて頂きました

※文言を、一部訂正させて頂きました
(→7月1日付「謝罪と訂正と教訓と感謝と」の記事をご覧ください)


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116 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
心理カウンセラーお断りの記事 (Hiro1679)
2011-04-14 13:24:35
良い記事だと思います。書きづらい内容でしょうが、誰のために行動するのかという視点を抜きにしてボランティアは出来ないでしょう。
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事実関係は?? (通りすがりです)
2011-04-14 13:43:43
ツイッター上で、このブログ記事が紹介され拡散しています。まず、本当に「マスコミお断り」の張り紙があったのか?私の知人には大変な思いをして真実の報道に努めようとしているマスコミの知人がいます。部外者の素人が思いつきそうなプライバシー問題についても当然、日々、熟考を重ねた上での取材活動を行っています。全てのマスコミ関係者がそうだとはもちろん思いませんが、ただ、こういった「知人から聞いた・・・」程度にしか聞こえない伝聞情報を流すなら、出所を明らかにすべきだと思います。
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事実関係は??2 (通りすがりです(つづき))
2011-04-14 13:51:01
さらに、「心理カウンセラーお断り」の張り紙は、誰が作ろうとして、その情報を誰から聞いているのですか?
実際に、現地ですでに活動中の方々にとって非常に侮辱的な記事ですよ。文末でお詫びしていれば何を書いてもいいという程度の内容ではないと思います。このままでは、「実際にカウンセラーは現地では迷惑がられている」といった内容の情報が拡散していきますよ。感動的なフィクションから、デマが拡散していった例は過去にもたくさんありますよ。結果的に多くの人を傷つけることになりかねませんよ
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心理カウンセラーは知りませんが (ジャネイロ)
2011-04-14 15:22:34
定期的に被災地で別の分野の支援をしています。

家が残った現地の人たちが中心となって活動している団体のお手伝いをしています。その団体でも、避難所ではマスコミの取材におなかいっぱいであるという話し合いがされていました。同団体では避難所にニーズの聞き取りに行く機会があるのですが、少なくとも複数の避難所でマイクやカメラにかなりセンシティブになっているようです。張り紙があったかは知りません。
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考えさせられる記事でした (RK)
2011-04-14 18:46:05
心理面でのケアが自己満足や事例収集になってはならないというのは、全くその通りだと思います。

ただ善意だけではなく、専門的な技量と覚悟を持った方がボランティアに行くべきだと思いました。
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Unknown (ナキウサギ)
2011-04-14 19:43:04
私はこの心のケア、という言葉に以前から胡散臭さを感じているのですが、一体、お腹一杯食べることもお風呂に入ることも体を伸ばして気兼ねなく寝ることも出来ない人の「心」をケアすることは可能なのでしょうか?

まだ3月だったと思いますが、NHK?で心のケア専門の人が避難所を訪れて・・・というニュースが流れていました。
夫は「こういうことしか出来ない人だっているから」と言っていましたが、納得できませんでした。

せめて仮設に入り、三食自炊で食べられるようになるとか、最低限身体的に満たされないと、心のケアなんか不可能だと私には思えます。その貼り紙が本当にあったかどうかは別として、「心のケア”だけ”しか出来ない人」はまだ用無し、ということではないのでしょうか。
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信じられない (xj)
2011-04-14 23:48:37
あなたは馬鹿だと思います。
協働してやっていかなければならない心理カウンセラーのことを悪しざまにデマを流して、自分の職種に有益に利するような言い方をしている。
あなたには土木作業をお勧めします。
人に物を教える、人の気持ちを理解することは不可能です。
被災地に行って復興を汗を流してやってください。
何の専門性も感じられないブログです。
被災地の人々がどれほど心理的支援を必要としているか、微塵もあなたは感じていない。
こんなに人格的にひどい人を初めて見ました。
明日退職してください。
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明らかに (xj)
2011-04-14 23:52:21
デマなのかどうなのか、きちんと現地に行って写真撮影するなり、そういう責任があるでしょう。
他の心理援助職を貶めて、そんなに楽しいですか?
実名と大学名を明らかにしてください。
このままではあまりにも無責任です。
あなたと一度きちんと話をしたいです。
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真意を読み取れないと… (あか)
2011-04-15 00:27:34
いつもブログ拝見しているものです。たしかに、ブログを読んだ時は「きっと批判が多く書かれるんだろうな」と思ったら…やはりですね。確かに「真摯に頑張っている人にとって侮辱…」とありますが、こんな記事で侮辱と思うなら、そもそもそれは間違いな気がします。だって大切なのは、被災地の方々で、その方々の思いや必要なのは何かでしょ。頑張ってるボランティアの人達はその次でしょ。そのことをこのブログは言っているように感じます。
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被災者のニーズに出来るだけよりそえたら (迷いねこ)
2011-04-15 00:52:51
はりがみの事は知りませんが、
心理カウンセラーに限らず、、、様々なボランティア団体が入っていて、何十回も聞き込み調査をすることになるので、
被災者の人たちが疲弊していると、ボランティアで入った時にお聞きしました。

床に寝ていると、足音もバタバタバタバタ響いてうるさいようです。

臨床心理士、行政書士、弁護士、社会福祉士、精神保健福祉士が、その時、グループを組み、何かする時は2人以上で動きました。

けれど、相談業務にこだわる人や、足音がうるさいと悪いからと、そこの社会資源を拾いにいかないで、結果、ミスもあったようです。

でも被災者の方は、ボランティアの初歩的ミスにも、泣き寝入りというか。。。。クレームを直には入れられず、、、お気の毒でした。

実際、ミスは起こるし誰もが起こす可能性はあります。

名誉や資格にこだわるより、、、そのようなことがないよう、また自己満足で相談業務をしないように、

気をつけたいものですね。。。。


今回ブログは、(こんなことがあったから、、気をつけましょうね)

と言っているだけだと思いますよーー。
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