PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

実務家教員の賞味期限

2012年07月24日 01時15分52秒 | 大学という場所

僕は今から4年前、大学の教員になりました。
我が国で唯一の福祉専門職大学院の、実務家教員として。
たまたま公募採用の話があって、応募したら通ってしまいました。
もちろん競争はありましたし、よく採用されたなと今でも思います。

「実務家教員」というのは、専門職大学院に特有の教員です。
法科大学院に弁護士が、教職大学院に教諭が採用されるのと一緒です。
苦しい研究生活を経て、立派な論文を書いてきた研究者の方と異なり、
現場の実務を担ってきた教員を、社会人大学院の教育に活かそうというものです。

それなりに臨床経験を重ねてきた、自分のプライドもあったつもりです。
むしろ、現場を体験してきた者だからこそ、伝えられるものもあると思っていました。
「実務家」としての体験を強みに、大学という舞台でできることをやろうと思いました。
しかし、大学に入職早々に、そんなちっぽけなプライドは打ち砕かれました。

採用されて一番最初の、4月の新任教員歓迎会でのことでした。
当時の大橋謙策学長から、強烈な一言を頂きました。
「実務家教員の賞味期限は、せいぜい3年だからな。まぁ、せいぜい頑張ってくれ!」
…どうリアクションして良いかわからず、もう笑うしかありませんでした。

僕の以前にも、もちろん専門職大学院に実務家教員はいた訳で。
その方に聞いたら、やはり同様のことを言われたそうです。
ただ、その時は「賞味期限は5年」と宣告されていたそうで…。
「僕は3年って言われちゃいましたよ~」と一緒に笑い合い、慰められました。

大橋さんのお人柄をご存知の方なら、おわかりでしょうが。
いくつになってもお元気で、アグレッシブで、厳しい毒舌を吐かれる方です。
自身の狭い実務経験に慢心することなく、大学教員として精進せよと、
採用を決めた学長として、精一杯のエールを不器用に贈って頂いたと、今は考えています。

そんな僕も、いつの間にか大学教員5年目となりました。
賞味期限3年は既に過ぎ、ぎりぎりの5年目を迎えることになりました。
もう、いい加減に腐り始め、食えたもんじゃないという期限なのかも知れません。
社会人大学院の教員として、自身の力量が問われる年を迎えています。

僕なりに、この4年間、今の仕事に精一杯取り組んできたつもりですが、
まだまだ、大学の教員としては、歳だけ食ったヒヨコでしかありません。
今は学長も退かれた大橋さんに、そのうちいつか、尋ねてみたいことがあります。
「僕、賞味期限、過ぎちゃいましたけど、どうでしょう?…まだ、食えますかね?」

(^_^;)



※画像は、今年の正月出張の際に、紀伊田辺で食べた「かぶら寿司」。
 「味の本陣栄」のカウンターで、店主にお勧めを聞いて、食べました。
 初めてでしたが、鮮度もよくて、こちらはとても美味でした。
 あ、記事本文とは、まったく関係ありませんが。

PSW求人情報(15)

2012年07月20日 16時15分56秒 | PSWのお仕事

30度以上の猛暑が続いていましたが、今日は涼しいですね。
今日は、このあと、実習巡回指導に出かけてきます。

巡回先は、僕の古巣の、国立精神・神経医療研究センターです。
夜は、国分寺界隈の居酒屋さんで懇親会です。
懐かしい相談室のPSWたちや、実習学生たちとの飲み会です。
美女たちに囲まれて相好を崩している男がいたら、それが僕です。

さて、求人情報です。
この病院、いまPSWを公募しています。
常勤と非常勤と、それぞれ採用するらしいです。
公募期間が短いですが、お考えの方は参考にしてください。

以前、この病院の「PSW求人情報」を何回か、このブログに載せたら、
「よほど人が定着していないのでは?」とのコメントを頂きました。
誤解があったようなので、僕もコメントさせて頂きましたが。
定着してないんじゃなくて、増員の一途を辿っているんですね。

僕が、一番病院で忙しかった頃、この病院の相談室は5名体制でした。
それも、精神科以外のMSWが2名いたので、PSWとしては3名でした。
僕が4年前に退職する時点で、相談室は10名体制に倍増していました。
夢の二桁台になって以降も、ワーカーの増員は続いているわけです。
現在は、非常勤も含め15名体制になってるのではないでしょうか?

なお、以下の募集要項内容、間違っていないとは思いますが。
念のため、公募のホームページ先を貼り付けておきます。
各自でチェックの上、お考えください。
http://www.ncnp.go.jp/recruit/hospital_122.html

それでは、行ってまいります♪

★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ 

独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院
医療福祉相談室 常勤職員・非常勤職員
医療社会事業専門員(精神保健福祉士・ソーシャルワーカー)の募集について

1.職名及び募集人数
(1)常勤職員  医療社会事業専門員(ソーシャルワーカー) 1名
※精神保健福祉士の資格をお持ちの方
(2)非常勤職員 医療社会事業専門員(ソーシャルワーカー) 若干名
※精神保健福祉士あるいは、精神保健福祉士と社会福祉士の資格をお持ちの方

2.職務内容
(1)常勤職員医療観察法病棟及び司法福祉分野での業務、当センターにおける精神科、神経内科、その他の診療科などでの医療福祉相談、退院援助等のソーシャルワーカー業務
(2)非常勤職員当センターにおける精神科、神経内科、その他の診療科などでの医療福祉相談、退院援助等のソーシャルワーカー業務

3.応募資格
精神保健福祉士あるいは、精神保健福祉士と社会福祉士の資格をお持ちの方
常勤職員は、医療観察法制度、司法精神保健福祉分野に興味と情熱のある方。

4.採用予定年月
常勤職員・非常勤職員とも  平成24年10月1日を予定

5.雇用期間
(1)常勤職員 任期なし。
(2)非常勤職員 平成25年3月31日まで(3年度まで更新可能)

6.応募方法
以下の書類を提出締切日までに書類送付先までご送付下さい。
(常勤職員・非常勤職員共通)
(1)履歴書(写真貼付)
(2)志望動機等 1,600字以内(なるべくA4サイズ1枚に収めて)。
(3)精神保健福祉士資格登録証(写) 社会福祉士資格登録証(写)

7.応募書類提出締切日
平成24年8月3日(金) (当日必着)

8.選考方法書類審査および面接
第一次選考(書類審査) → 第二次選考(面接試験)
第二次選考日は 8月30日(木)を予定(第一次選考合格者に連絡) 

9.待遇等
「常勤職員」
身 分:独立行政法人職員(常勤職員) ※6ヶ月間は試用期間です。
給 与:【基本給】 経験年数により加算があります。
【諸手当】特殊業務手当(10,000円)、地域手当(基本給の12%)、通勤手当(最大月額55,000円まで)、扶養手当、住居手当などセンター給与規程により支給
【昇 給】 1月1日
【賞 与】 6月及び12月 合計3.95ヶ月分(平成23年度実績)
【退職手当】有
勤務時間:月曜日~金曜日の週5日、1日8:30~17:15で勤務
休  日:土曜日、日曜日、祝祭日、年末年始(12/29~1/3)
休  暇:年次有給休暇、忌引、産前産後休暇等
保 険 等:厚生労働省第二共済組合加入(医療保険・年金)、雇用保険、労災保険加入

「非常勤職員」
身  分:独立行政法人職員(非常勤職員)※3ヶ月間は試用期間です。
給  与:時間給1,230円、通勤手当、賞与支給
勤務時間:月曜日~金曜日のうち週4日、1日8:30~17:15で勤務曜日は調整可能
休  日:土曜日、日曜日、祝祭日、年末年始(12/29~1/3)
休  暇:(有給)年次有給休暇(6ヶ月勤務後に10日)、忌引等(無給)子護休暇等
保 険 等:社会保険(医療保険、年金)、雇用保険、労災保険加入

10.書類送付先
〒187-8551 東京都小平市小川東町4-1-1
国立精神・神経医療研究センター人事課 人事係宛
応募書類に「常勤職員 医療社会事業専門員(ソーシャルワーカー)応募書類」
あるいは、「非常勤職員 医療社会事業専門員(ソーシャルワーカー)応募書類」
とお書き下さい。
または、いずれでもよいという場合は、「常勤・非常勤職員 医療社会事業専門員(ソーシャルワーカー)応募書類」とお書きください。)
TEL:042-341-2711(内線2115)

11.お問い合わせ先
〒187-8551 東京都小平市小川東町4-1-1
独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 医療福祉相談室
漆畑眞人042-341-2711(内線3395)e-mail urushi@ncnp.go.jp
三澤孝夫042-341-2711(内線6768)e-mail misawa@ncnp.go.jp

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター ホームページ
http://www.ncnp.go.jp/hospital/index.html


精神障害をめぐる法制度のゆくえ

2012年07月13日 00時21分10秒 | PSWのお仕事

ひとつの時代に生きていると、その時代の物事の捉え方が当たり前になります。
しかし、少し年代が下ると、かつての常識はどんどん非常識になっていきます。
専門職と自称する人の、物事の捉え方も、どんどん古びたものになっていきます。

かつて、この国に、精神障害をもつ方々が自分の意思で入院する制度はありませんでした。
1987年の精神保健法により「任意入院」ができるまで、すべて強制入院でした。
精神疾患を有する方が、自分で精神病院に入院するなどと、考えられていなかったのです。

実際に「任意入院」制度を導入する際、精神病院の職員がもっとも心配していました。
自分の意思で入院し、自分の意思で退院できる制度なんて作ったら、
患者たちはみんな離院するか退院して、社会は大混乱に陥ると真面目に語っていました。

結果がどうであったかは、ご存じの通りです。
今や入院患者の3分の2は「任意入院」で、当たり前の入院形態になっています。
必要な時に、病院は患者が自ら使うもの、という意識が当たり前になりつつあります。

時代意識が、その時々の制度を形作っているのは確かです。
一方で、制度がその時々の時代意識を作っているのも確かです。
制度はいったん定着すると、人々の意識を形成し、その時代の「常識」を作ります。

その時代に生きていると、その時の制度が当たり前のものに思われます。
数多の問題が生じていても、制度がそうだから仕方ないと諦めがちになります。
問題意識は徐々に鈍麻し、本来あるべき姿への追求は忘れられがちです。

でも、制度を作り、維持しているのは、その時代の人々です。
法律を新しくするには、政治家や中央官僚の判断が大きく影響しますが、
制度の実体を形成しているのは現場であり、従事者の声が制度を変える力になります。

今ある法律や制度が、絶対的なものではありません。
むしろ、様々な矛盾を抱えた、とても危うい存在です。
歴史を経れば、とんでもない制度の時代だったと笑い草になるかも知れません。

法律は変えられます。
多くの声が挙がれば、制度は変えられます。
意識が制度を変え、制度が新しい意識を形成していきます。

問題は、その変えるべき姿を、人々がきちんと語りイメージできているかということ。
矛盾や問題を語るだけでなく、代わる制度の姿を具体的に示せるかということ。
画餅に帰さない、現実的な未来の姿を、時代のミッションとして描けるかということ。

精神障害にかかわる法制度は、どのように変革していくべきなのか。
今何が一番問題で、どのように制度改革が進もうとしているのか。
今ある精神保健福祉法と障害者自立支援法を、どうしていけばよいのか。

今回、そんなことを考える、雑誌の特集をひとつ組みました。
法律や制度を扱う特集って、どうしても地味で、あまり売れないのですが。
PSWにとってはとても大事な課題だと思うので、ぜひお読み頂ければと思います。


★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ 

「精神医療」No.67(第4次)
『精神障害をめぐる法制度のゆくえ~精神保健福祉法、障害者自立支援法』
編集:『精神医療』編集委員会
責任編集:岩尾俊一郎+古屋龍太

◆巻頭言
現実とのせめぎ合いから生みだされる「精神障害と法」の弁証法的関係
岩尾俊一郎

◆特集:精神障害をめぐる法制度のゆくえ~精神保健福祉法、障害者自立支援法◆
○座談会
精神障害法の望まれる姿
池原毅和、石毛子、北野誠一、高木俊介、岩尾俊一郎、古屋龍太

○精神保健福祉法から医療法へ~精神医療改革のために
伊藤哲寛

○精神保健福祉法をどう変えるのか~権利擁護の観点から
竹端寛

○当事者の人権確保の観点から
関口明彦

○これからのためにも、あまり立派でなくても、過去を知る
立岩真也

○精神障害のある人の自己実現が可能な社会をめざして
大塚淳子

○総合福祉法は精神障害をいかに位置づけようとしたのか
三田優子

◆コラム・連載

○視点~29:福島県相双地区における地域精神保健福祉活動の展開
須藤康宏

○〈互酬性・アニミズム・トーテミズム〉3人類の共同性のルーツ 2)アニミズム
森山公夫

○東日本大震災の支援者支援~支援者であり被災者である人達を支えるということ
高橋葉子

○引き抜きにくい釘34:神経症の系譜4
塚本千秋

○雲に梯10:命アルアイヤ
久場政博

◆書評
○『認知症ケアの知好楽~神経心理学からスピリチュアルケアまで』(山崎英樹著)
阿保順子

○『精神科臨床倫理第4版』
(シドニー・ブロック、ステファン・A・グリーン著、水野・藤井・村上・菅原監訳)
浅野弘毅

○『精神医療の光と影』(高木俊介著)
横田泉

◆編集後記
古屋龍太

批評社刊、2012年7月11日発行、定価:1700円+税
ISBN978-4-8265-0562-8 C3047


※上記座談会の出席者の石毛さんの本名は「えいこ」さんで金篇に英語の英と書きます。
 ブログの入力編集画面ではちゃんと表示されているのですが、環境依存文字のようで、
 どうしても上のようになってしまいます。お許しください。
 

ケアマネジャーの国家資格化?

2012年07月10日 22時40分19秒 | 精神保健福祉情報

「ケアマネジャー」は、日本では「介護支援専門員」の呼び名として定着しています。
介護保険制度の中で、高齢者への様々な支援メニューを進捗管理する人をさします。

ケアマネ資格保有者は、現在54万6千に達しています。
(実際に現場に従事しているのは、14~15万人と言われています)

毎年10月に試験は実施され、第1回は合格率50%弱でした。
(僕は、1997年に、石原慎太郎都知事名の登録証明書を受け取りました)

2007年度からは、5年毎に所定の研修を受けての登録更新制度が導入されました。
(僕は、この受講ができなかったので、2009年に失効しています)

ケアマネの供給過剰もあり年々減り、直近では15%まで合格率は低下しています。
(今だったら、受かりませんかね?)

その「ケアマネさん」をめぐって、今、物議を醸す動きが出てきています。

ことの発端は、3月28日から始まった「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」での発言です。
5月31日、日本介護支援専門員協会の木村隆次会長が、大きな花火をぶち上げました。
「ケアマネ資格を国家資格化するべき」との提起です。

詳しくは、ネット上のニュースで検索かけると出てくると思いますが。
木村さんの主張(協会の主張?)を要約すると、こんな感じでしょうか?

介護保険制度だけでなく、日本の社会保障の中できちんとケアマネジメントをできるケアマネジャーを作るべき。
ケアマネジャーが介護・医療・保健・障害領域を横断的に担当できるよう、ケアマネを国家資格化するべき。
現在の任用資格を国家資格とし、ケアマネジャーを大学で養成する「大学養成コース」を取り入れるべき。
ケアマネジメントの評価指標の確立が必要であり、54万人のケアマネ合格者に有効期限を設けるべき。

そして、国家資格取得に向けてのイメージまで提示しています。

ケアマネの質を担保していくために、現在の「医療・介護・福祉の国家資格者&5年以上の現場経験者」というハードルではなく、国家試験というハードルを設ける。
1)新ケアマネジャー、2)移行期の新ケアマネジャー、3)現任ケアマネジャー、の3つに国家試験を受けさせ、ふるいにかけて標準化を図る。

1)新ケアマネジャーは…
4年間(約1800時間)の大学養成課程の卒業者のみに受験資格を絞る。
その後、国家試験を経て、資格取得後1年間の実習(インターン)を課す。
その上で、初めて保険適用の仕事ができるようにする。

2)移行期間のケアマネジャーは…
受験資格を法定資格者に限定する。
受講試験も現行の60問から200問に見直した試験を実施する。
その後、130時間の研修に加え、認知症や医療に関する研修などを課す。
1年間のインターンを実施した後、保険適用の仕事ができるようにする。

3)現任のケアマネジャーは…
国家試験を課し、受験資格として「一定期間・程度の実務経験等」を要件とする。
3年の実務経験とスーパーバイザーとして30件の実績を持つことを例とする。
受験要件の細部については、検討会で議論して結論を得る。

木村さんは、その他にも会員へのアンケート調査を踏まえ、独立事業所の定義や、地域事業所との連携義務付け、施設ケアマネの人員基準見直し等の課題を提起しています。

この検討会は、文字通り「今後のケアマネをどうするか?」を討議する場です。
厚生労働省の検討会ですから、この場での結論は、今後の制度見直しに反映されます。

「質にピンキリあるケアマネの、キリの部分をどうするか?」が課題になっています。
木村会長さんの提起も、なんとかケアマネの質を担保したいという思いからでしょう。

でも、検討会の場での、他の委員からの反応は冷ややかでした。
「どうして国家資格化しなければいけないのか、その根拠がわからない」
「これ以上、国家資格を増やして、どうするの?」という発言もありました。

「ケアマネの能力を評価する方法を確立するべき」
「能力の評価、成果の評価がポイントになる」
「ケアマネジメント能力、連携能力、自立生活支援能力が必要」
「マネジメントかコーディネートか、責任と権限が不明確」
検討会で既に出ている他委員の意見と、かなり異なる相での提起であったことは確かです。

「ケアマネの質の担保」を図るために「国家資格化」するというのは、確かに唐突です。
資格は、職種を制度に位置づけるためにありますが、ケアマネは既に制度化されています。
最低限の知識を有していること位しか、国家試験を行っても担保できません。
「国家資格」というものに、過剰な幻想を煽ることは避けたいものです。
精神保健福祉士の国家資格化運動に一応かかわって来た立場から、そう思います。

そもそもケアマネジメントは、精神障害者の脱施設化を推し進める中で開発されました。
多様なニーズを有する方へ、多様な資源を投下して、在宅生活を支援する手法です。
本来はソーシャルワークの一手法として位置づけられています。
日本では、すっかり高齢者の介護プランを立てる人というイメージになってしまいましたが。

もし、今後「ケアマネ国家資格化」運動が展開されるとしたら…。
ソーシャルワーカーの福祉専門職団体が「反対」にまわる可能性はあるでしょうね。
ソーシャルワークの一手法であるケアマネジメントが、独立国家資格になるとなったら…。
「軒先を貸して母屋を取られた」ような感覚になるのではないでしょうか?
(そういった古い元祖・本家意識で反対というのも、困ったものですが)

目くじらを立てて反対するほどのことはないと、現状では僕は思っています。
しばらくは、ウォッチング(様子見)で良いのでしょうけど。
どれだけ周知されているのか、いささか気になるので、ちょこっと記事にしてみました。

皆さんもどうぞご一緒に、今後の動きをモニターしておいてください。


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■「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する検討会」構成員メンバー

池端幸彦  日本慢性期医療協会常任理事
加藤昌之  さわやか福祉財団政策提言プロジェクトリーダー
木村隆次  日本介護支援専門員協会会長・日本薬剤師会常務理事
小山秀夫  兵庫県立大学教授
齊藤訓子  日本看護協会常任理事
佐藤 保  日本歯科医師会常務理事
高杉敬久  日本医師会常任理事
田中 滋  慶応義塾大学大学院教授:座長
筒井孝子  国立保健医療科学院統括研究官
東内京一  埼玉県和光市長寿あんしん課長
中村春基  日本作業療法士協会会長
野中 猛  日本福祉大学教授
橋下泰子  大正大学名誉教授
畠山仁美  日本介護福祉士会常任理事
藤井賢一郎 日本社会事業大学専門職大学院准教授
堀田聡子  労働政策研究・研修機構研究員
桝田和平  全国老人福祉施設協議会介護保険事業経営委員会委員長
水村美穂子 東京都青梅市地域包括支援センターすえひろセンター長
山際 淳  民間介護事業推進委員会代表委員
山田和彦  全国老人保健施設協会会長
山村 睦  日本社会福祉士会会長


■現行「ケアマネ」資格の概要

介護支援専門員として登録・任用されるには都道府県の実施する「介護支援専門員実務研修」を受講する必要があります。
研修を受講するためには「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格することが必要です。
受験資格を得るには、三つのルートがあります。

1)下記の法定資格などで5年以上の実務経験がある者。
社会福祉士
精神保健福祉士
介護福祉士
医師
歯科医師
薬剤師
保健師
助産師
看護師
准看護師
理学療法士
作業療法士
視能訓練士
義肢装具士
歯科衛生士
言語聴覚士
あん摩マッサージ指圧師
はり師
きゅう師
柔道整復師
栄養士(管理栄養士を含む。)

2)相談援助業務に従事する者で社会福祉主事任用資格、訪問介護員養成研修2級課程に相当する研修を修了した者

3)上記の資格または研修修了の資格がない場合は、所定の福祉施設での介護等に従事した期間が10年以上の者



※画像は、東京ドームシティの観覧車。
 もちろん、本文の内容には一切関係ありません。

生活保護「不正受給疑惑」問題への見解

2012年07月04日 14時24分52秒 | PSWのお仕事

高額所得の有名芸人の親御さんが、生活保護を受給していると、
ネット上で4月以降報道され、民法上の「扶養義務」が問題になりました。

どこから、そのようなプライベートなことが報道の発端になったのか知りませんが、
いつのまにか「生活保護不正受給」と、ツイッター等でも批判が集中しました。

国会議員が、厚労省の担当課長に調査を依頼したと、ブログでアピールしたり、
別の議員が、国会で取り上げ質問するとか、マスコミを通じて批判しました。

5月には、地上波のテレビ番組でも「不正受給疑惑」が取り上げられるようになり、
5月末には、さらに別の芸人の親御さんの生保受給も報道され、拡大しました。

挙げ句の果てに厚労大臣が、制度見直しを示唆するなどエスカレートしていきます。
「社会保障と税の一体改革」の裏側で、スケープゴート化していったように思えます。

これらの一連の動きに対して、生活保護問題全国対策会議等が緊急声明を発表し、
制度の理解を欠いた、安直な生活保護の切り詰め論議に警鐘を鳴らしています。

加熱する報道を通して、「不正受給疑惑」が際限なく拡がっていきました。
この問題は、PSWが関与するクライエントたちの「後ろめたさ」に飛び火しています。

現に生保を受給している方々が、影響を受けて不利益を被っていないか、懸念されました。
PSW協会の理事や支部を中心に、電話聴き取りによる実態把握が取り組まれました。

去る7月2日、社団法人日本精神保健福祉士協会は「見解」を公表しました。
生活保護抑制の風潮に抗し、現行「生活保護制度の堅持」を訴えるものです。

高額所得の人気お笑い芸人だから、今回の問題は耳目を集め批判も集中したのでしょう。
でも、制度が締め付けられたら、不利益を一番被るのは、無名の市井に生きる市民です。

一芸人の芸能ネタが、この国のセーフティネットの根幹を揺るがすようになるとは…。
改めて、ネット社会でつぶやく「民意」「世論」の威力と怖さを感じます。


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2012年7月2日

生活保護制度を巡るこの間の動向に関する見解
―国民の健康で文化的な最低限度の生活を保障する生活保護制度の堅持を―

社団法人日本精神保健福祉士協会
会長 柏木一惠

本協会は精神障害者の権利擁護と社会的復権、および国民の精神保健福祉の向上に携わる専門職能団体として、昨今の生活保護制度を巡る一連の動向に対し、以下に問題点の指摘を含め見解を表明する。

生活保護に関しては、昨年度から社会保障審議会などで、生活保護受給者および保護費急増を背景とした制度の見直し等に係る検討が行われている。
その最中で国会における議員の質疑応答に端を発し浮上した有名芸人の母親の生活保護受給に対し、当初マスコミが行った制度誤認を含む過熱報道により、生活保護制度や受給者全般に問題があるかの如き世論が形成されつつある。
さらには、小宮山厚生労働大臣が議論の手続きも経ずに、扶養問題を含めた制度見直しに言及するなど、被保護・要保護者一人ひとりの尊厳を脅かし、当然として受給する権利を有する方々および現在受給している方々に深刻な影響をおよぼす事態が生じている。

本協会はこれらのことを憂慮し、本年5月より構成員に呼びかけ、各地での生活保護に関し一連の報道等による影響に関する情報を収集中である。
現段階では、自治体による明らかな引き締め策は見られないものの、被保護者の方々の中には不安の増大や、いわれのない罪悪感を覚え閉じこもりがちになる等の影響が出ていることが確認されている。
今後も引き続き情報集約に努め、生活保護制度の活用や制度上の支援が必要な方々への更なる支援の充実化を求め、改めて具体的な提言等を行う予定である。

現段階で、本協会が特に指摘したい問題点は、以下の3点である。

1.2007 年北海道滝川市における不正受給事件を契機に、厚生労働省の通知により、被保護者が通院医療機関の変更や移送費の制限を迫られたことは記憶に新しい。
精神障害のある方の多くは、医療関係者との信頼関係の元に通院を継続することが安定した地域生活を送る上で極めて重要であるにもかかわらず、当時、必要な移送費が支給されなかった事実を受け、本協会は要望書を提出した経過がある。
この時、厚生労働省は通知を出し直した経緯もある。
今回もきわめて稀でかつ法律上では不正受給とは言えない事例を一般化し、生活保護の抑制を図るという構図が垣間見え、障害のある方々を支援する専門職の団体として、この国の福祉のありように対する危機感を抱かざるをえない。

2.我が国においては、憲法第25 条で健康で文化的な最低限度の生活を送る権利が一人ひとりの国民に認められているにもかかわらず、最後のセーフティネットである生活保護制度すら利用できずに、餓死や孤立死などの事態を引き起こしている。
また生活保護受給の背景には、何よりも長引く景気の低迷、そして雇用の不安定や年金、医療など他の社会保障制度の脆弱さがあることも明らかである。
生活保護制度のみをことさら強く問題視し、生活保護基準引き下げの根拠に社会保障制度として位置付けの異なる年金制度の基準額との比較を持ちだす等、暮らしや生命や権利を護るための議論ではなく、専ら費用抑制の観点から安易な議論がなされていることに強く警鐘を鳴らしたい。

3.特に障害のある成人にとって、親や家族から独立して生活するための社会的基盤となる所得保障制度の確立は長年の要望課題である。
しかし、無年金問題等の未解決課題を含め未だ整備されないままに経過している。
加えて、我が国は家族構造が大きく変化している現代にあって尚、家族内扶養の価値観や道徳観が極めて重い社会であり、社会的ケアに委ねられないまま、障害のある人とその家族が追い詰められた結果の不幸な事件は後を絶たない。
国が果たすべき公的責任による国民の生活を守る権利としての社会保障を家族に負わせ続けることは、障害のある人たちの権利保障の運動にも逆行するものであり、断じて許されない。

なお、国においては国民の生活を第一に考え、社会保障を確実なものとするための政治および政権運営を期待する。
また、報道関係各位には正確な知識と情報に基づく報道をお願いしたい。

以上

【問い合わせ】
社団法人日本精神保健福祉士協会(大塚、木太)
〒160-0015 東京都新宿区大京町23-3
四谷オーキッドビル7F
TEL.03-5366-3152 FAX.03-5366-2993
E-mail:office@japsw.or.jp



※画像は高尾両界橋近くのトンネル。
 本文の内容とは一切関係ありません。