PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

ソーシャルワーカーは生活扶助費削減に反対する

2013年02月21日 19時53分51秒 | 精神保健福祉情報

こんばんは、龍龍です。
すっかりブログの更新が間遠になってしまっています。
先月は、とうとう1回しか記事をアップできませんでした。
自転車操業というか、綱渡りのような日々を過ごしています。

この間に、学部生達の授業終了やらPSWの国家試験もありました。
研究班のワークショップやら、研究成果報告会もありました。
国際アンチスティグマ会議もありましたし、いろいろな研修会やら勉強会もありました。
専門職大学院では、卒業のかかった実践・学修報告会がまさに進行中です。
いろいろ書き綴りたい事柄がたくさんあるのですが、今は時間がありません。

全然更新してないブログを訪問して下さっている皆さん、ありがとうございます。
求人情報を寄せて頂きながら、記事でアップすることができないで、すみません。
大学院の授業も間もなく終わりますので、少しずつ発信に取り組みたいと思います。

個人的な事柄だけでなく、この間で精神保健福祉の周辺も動きが急になっています。
今国会上程が予定されている精神保健福祉法の改正も、いよいよ最終局面です。
ソーシャルワークの国際定義のその後も、報告しておかねばならないのですが。
今回は取り急ぎ、生活保護の動向について触れておきます。

PSW協会が10月に出した「生活保護基準切り下げ反対」声明は、前に記事にしました。
今回、PSW協会を含む社専協(社会福祉専門職協議会)が意見をとりまとめました。
本日付で、マスコミ各社にプレスリリースしています。
今後、社専協4団体が共同歩調で、政府・国会への働きかけを展開していく予定です。

デフレの中で国民所得が落ち込む中、生活保護に対する国民感情が悪化しています。
「不正受給」がマスコミで喧伝され、生活保護バッシングが政治を動かしています。
しかし、その多くはイメージで語られており、厳密なデータに基づいていません。
イメージで国民感情の不公平感を扇り、貧困の問題がすり替えられてしまっています。
社会福祉の担い手であるソーシャルワーカーとしては、看過できない事態です。

以下に、その声明を貼り付けておきます。
各団体のウェブサイトも示しておきます。
各地域・各現場での周知をお願いできれば幸いです。


★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

「ソーシャルワーカーは生活扶助費の削減に反対します」

本年1月 29日、政府は生活保護における生活扶助費の削減を盛り込んだ 2013年度予算案を閣議決定し、間もなく国会における予算審議が予定されています。
私たちソーシャルワーカーは、社会福祉分野において、子ども、障がい者、患者、高齢者などが抱える多岐にわたる生活課題の解決に向けた支援を行う専門職として、社会保障制度の根幹をなす生活保護制度の堅持を求めるとともに、生活扶助費の削減には断固反対します。

最低生活基準については、厚生労働省に置かれた社会保障審議会最低生活基準部会において、一般低所得世帯の消費実態と均衡が図られているか検証を行い、本年 1月 18日に報告書をまとめました。
同部会は、検証結果に関する留意事項として、「今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意」するとともに、「生活扶助基準検証の際参照されてきた一般低所得世帯の消費実態については、第1・十分位*の所得分布における動向に留意しつつ、なお今後の検証が必要である」ことを指摘して、生活扶助基準の見直しには慎重に配慮すべきと言及しています。

閣議決定した生活扶助費の削減は、2008年と 2011年における生活扶助に相当する消費品目の消費者物価指数の比較によるデフレ調整分4.78%を根拠の一つとしています。
しかしながら、この消費品目には生活保護受給者では元来支出割合が少ない教養娯楽費(マ
イナス7.3%)などが含まれています。
最低生活費の主要消費品目である食料費はマイナス0.5%、光熱・水道費はマイナス1.2%(2012年との比較においてはプラス2.8%)であることから、削減の明確な根拠はないと言えます。

昨年来の一連の生活保護バッシングは、生活保護受給者の尊厳を深く傷つけることとなりましたが、生活扶助費の削減はそのことに追い打ちをかけることとなります。
また、来年度から予定されている消費税率の引き上げは、社会保障の財源確保を理由としておきながら、保護受給者の消費可能額をさらに減らすこととなり、深刻な矛盾を生み出すこととなります。

問題の所在は、国が定めた最低生活基準以下の生活を強いられている国民が多く存在していることであり、健康で文化的な最低限度の生活を営む国民の権利が保障されていないことを強く訴えます。

2013年2月15日

社団法人日本精神保健福祉士協会
 会長 柏木一惠
公益社団法人日本医療社会福祉協会
 会長 佐原まち子
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会
 会長 岡本民夫
社団法人日本社会福祉士会
 会長 山村 睦

※「第1・十分位」
全世帯を所得階級別に 10等分したうち一番低い層の世帯。
生活保護基準以下の世帯が多く含まれる。

<ウェブサイト>
社団法人日本精神保健福祉士協会:http://www.japsw.or.jp/
公益社団法人日本医療社会福祉協会:http://www.jaswhs.or.jp/
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会:http://www.jasw.jp/
社団法人日本社会福祉士会:http://www.jacsw.or.jp/

 

※画像は、雪景色の東京・四谷駅周辺。1月14日の大雪で、移動も大変でした。