PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

大晦日の京都にて…

2012年12月31日 18時58分50秒 | 日々の雑記

 

大晦日ですね。
いよいよ2012年も、余すところわずか。
皆さんの今年は、どんな年だったでしょう?

僕の2012年は、やたら忙しくなった年でした。
ひたすら走り続けた1年だったと言って良いと思います。
限られた24時間の中で、自身のタイムマネジメントが問われた年でした。

締め切りが守れないのは、今に始まったことではないのですが。
今年は、なかなか一人でパソコンに向かう時間が取れなくて。
あちこちの締め切りを破り、たくさんの人にご迷惑をおかけしました。

いろいろ役割が増えてしまったのが、やはり辛いところです。
学内でも、学外でも、会議が増えてしまって、スケジュール調整が大変です。
あっちこっちへの移動だけでも、なんか疲れてしまいます。

それでも僕は、昨年よりは、はるかに元気です。
今年は、自分なりの希望や目標がハッキリあるからでしょう。
昨年2011年は、身も心も本当にボロボロの年でしたけど。

今、京都の実家に来ています。
持参したノートパソコンで、ただただ一日中原稿を書いています。
老いた母とふたり、ゆっくり新しい年を迎えたいと思います。

どうぞ、良いお年を…とご挨拶したいところですが。
残念ながら、訃報が飛び込んで来ました。
谷中輝雄さんが亡くなられたようです。

病院PSWを辞めて、やどかりの里を立ち上げ、社会復帰施設のモデルを創りました。
日本PSW協会の理事長や、全国精神障害者社会復帰施設協会の会長も歴任されました。
大学で教鞭を執りながら、精神保健福祉士養成校協会の会長もお務めでした。

そのご経歴と軌跡から、アクティブでエネルギッシュな印象が、どうしても強い方ですが。
熱いハートを秘めながら、とても静かに、穏やかな笑みを浮かべて話す方でした。
精神障害を有する方の「ごく当たり前の生活」を、ずっと追求していた方でした。

何も無かった時代のこの国で、茨の道を切り拓いてきた、偉大なPSWのひとりです。
巨星墜つ…、思わずそんな言葉が脳裏をよぎります。
生前のご厚誼とご指導に感謝しつつ…、合掌。
 


たかが一票、されど一票。

2012年12月16日 08時15分49秒 | 精神保健福祉情報

おはようございます。
日曜日だというのに、夜明け前から活動を開始している龍龍です。

今日は衆議院選挙の日ですね。
東京は、都知事選も重なっています。
もう、午前7時から、投票が始まっています。
僕もこのあと、仕事に出る前に、近くの小学校に行ってきます。

それにしても、今回の選挙…。
ミニ政党乱立で、何がなんだかわからないですね。
キャスティングボートを握る「第三極」は、本当に誕生するのでしょうか?
僕は学生時代「第三極」を提唱して、第一極、第二極の人たちに随分睨まれました(笑)。

何も期待できなくて、投票になんて行く気になれない人が、多いんでしょうけど。
無投票棄権は、最大多数政党に白紙委任するってことになりますしね。
無効票投票は、結局は多数政党を利することになり、自己満足以下にしかならないし。
けっして幻想を追い求めることなく、保険も設定せず、選択するしかないんでしょうね。

それにしても、何を争点にして選んで良いのかわからない場合。
どうしても、イメージが優先されるのは、仕方ないんでしょうけど。
自分(たち)の立場・視座・価値による選択基準を立てるしかないですね。

ここでは、ソーシャルワーカーの立場から、選択のための情報を掲載しておきます。
福祉分野・障害者領域から発せられた、政党に対する公開質問状です。
今さら掲載しても遅いのでしょうけど、今から投票に行く人には参考になるかも?

ひとつは、日本精神保健福祉士協会をはじめとした、介護・福祉系団体の質問状。
以下の11団体が連名で尋ね、各政党が回答を寄せています。

社団法人日本社会福祉士会
社団法人日本社会福祉士養成校協会
社団法人日本介護福祉士会
社団法人日本介護福祉士養成施設協会
社団法人日本精神保健福祉士協会
一般社団法人日本精神保健福祉士養成校協会
公益社団法人日本医療社会福祉協会
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会
社団法人日本社会福祉教育学校連盟
日本介護福祉学会
日本地域福祉学会

もう一つは、障害当事者団体を中心とした「日本障害者協議会(JD)」の質問状。
日本精神保健福祉士協会をはじめとした専門職団体も含め61団体が、加盟しています。
国際障害者年を契機として発足した、横断的な組織ですね。
今後の障害者施策を問う、大事な質問に、各政党が回答しています。

それぞれ各項目をざっと見ても、政党によりかなりニュアンスは異なります。
各政党とも「いいこと」を書いてますが、その価値基準はだいぶ違いますね。
触れてないこと、書かれていないことの、行間を読むことが重要と言えるかも?

各政党とも「生活保護」についての姿勢を示しており、大きな論点になります。
一方、公約では「障害者施策」については、ほとんど触れられていません。
これに対して、日本精神保健福祉士協会は「協会見解」を出しています。

いずれもネット上で既に発信されていることではありますが、
以下にアクセス情報を貼り付けておきます、まだ見てない方はご覧ください。
できれば、投票に行く前に!(笑)


■福祉・介護関係11団体による国政政党への公開質問に対する回答
http://www.jascsw.jp/koukaishitsumon/kaito.html

■日本障害者協議会(JD)による国政政党への公開質問に対する回答
http://www.jdnet.gr.jp/report/12_11/121130.html

 

★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ 

■社会保障政策に係る各政党の政権公約に関する見解

2012年12月10日
社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
 
現在、衆議院総選挙に向けて各政党から政権公約が公表されている。
本協会は、精神保健福祉の専門職団体の立場から、この間の生活保護をはじめとする社会保障制度を巡る政策動向に注目し見解を公表し、要望を行ってきた。

社会保障政策に係る政権公約に着目すると、いくつかの政党において本協会としては看過できない事項が含まれているため、本協会としての見解をここに表明する。

 1.社会保障制度における「自助」「自立」を第一とする考え方について

社会保障制度は、日本国憲法が掲げる基本的人権を具体的に保障するための制度であり、国家の責任、すなわち「公助」として等しく国民に提供されなければならない。
たとえば、社会保障・財政に関して「『自助』、『自立』を第一に、『共助』、『公助』を組み合わせ、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度を目指す」として自助や自立を優先する公約は、社会保障の圧倒的な後退を意味するものであり、障害者や生活困窮者など社会的弱者の排除にもつながる問題である。
社会保障制度は、憲法に規定された生存権保障における国家責任を果たすべく、『公助』を第一に考えるべきである。

 2.生活保護制度の見直しに係る考え方について

多くの政党では、生活保護制度の見直しを掲げているが、特に生活保護の給付水準引き下げや、給付の有期制導入の検討を掲げることは、最低限度の生活保障よりも財政目的の引き締め政策であると考えられる。
本協会は、保護基準の引き下げが、国民の生活水準の低下を招くことにほかならないという危機意識を有しており、むしろ、最低生活基準以下の生活を余儀なくされている人びとに対する社会保障制度のありようを、生活保護制度の課題として見直すことが必要であると考える。
また、ケースワーカーの民間委託や成功報酬制の導入検討は、国民の健康で文化的な最低限度の生活を保障する国の責任の放棄ともいえ、現在も指摘されている漏給の存在に対する認識不足のまま、生活保護の保護抑制政策を推進する姿勢には反対である。

 3.障害者政策に係る公約について

前回の衆議院総選挙の際には障害者政策が争点の一つとされていたが、今回の各政党の政権公約では、具体的な政策を掲げている政党が少ない。
少なくとも、障害者権利条約の批准の条件の一つと考えられる「障害を理由とする差別の禁止に関する法律」の制定を掲げるよう要望するとともに、未だに社会的入院を余儀なくされている精神障害者への地域移行支援の推進及び地域生活支援体制構築のための、具体的な障害者施策の検討を強く求めたい。

以上

 

※画像は、茗荷谷で食べた「バクダン丼」。

  多数政党入り乱れての今回の選挙とは、関係ありません。


ソーシャルワーク国際定義の改訂作業

2012年12月01日 10時29分56秒 | PSWのお仕事

今、仙台に向かう新幹線の中です。
明日まで「日本精神保健福祉士協会基幹研修Ⅰin宮城」にお邪魔します。

はやて・はやぶさに乗れなくて、やまびこでのんびり各駅停車の旅になりました。
一昨日からあまり寝てないので、眠ってしまおうかとも思ったのですが。
この際、更新がなかなかできていないブログに充てることにしました。



昨夜は、社会福祉専門職団体協議会の国際委員会がありました。
「社専協」って言っても、あまり馴染みがないですよね?
日本のソーシャルワーク4組織で構成する、専門職能団体の連絡協議会です。
国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)の日本国代表団体になっています。

国際組織のことなど、現場にいるワーカーにとっては、まるで雲の上の話ですが。
結構、今、とても大きなことが進行しています。
「ソーシャルワークの国際定義」が見直されようとしています。

一番大きな影響を受けるのは、専門職の養成教育をする学校側でしょうか?
これまで学生に伝えてきたことが、ガラッと変わることになります。
福祉現場の実践家にとっても、少なからず影響はあるでしょう。
自分たちワーカーの定義が、変わってくるのですから。
やはり、言葉は人々の意識を変え、新しい枠組みの社会を構成しますから。

現行の「ソーシャルワーク国際定義」は、よく目にする次のものです。

「ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め、人間関係における問題解決を図り、人びとのエンパワーメントと解放を促していく。
ソーシャルワークは、人間の行動と社会システムに関する理論を利用して、人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。
人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である。」

これが、ガラッと変わることになります。
現在、提案されている定義案は、下記の三つです。
「人と環境の接点に介入する」という有名な言葉はなくなるでしょう。
ソーシャルアクション、ソーシャルチェンジが前面に出てきていることが特徴です。

背景には、もちろん国ごとの文化や政治状況があります。
当たり前のように欧米を中心としてきた、グローバル化への反発もあります。
西洋の概念が、どこの国でも共有されるはずもなく、ローカルな定義も必要です。
ソーシャルワークの定義のはずなのに、ワーカーの定義になってしまっていることや、
定義を学習することが優先され、思考停止に陥りがちな問題もあります。

詳しくは、日本精神保健福祉士協会のホームページをご覧ください。
片岡信之さんが訳してくれたものや、大塚淳子さんがまとめた経過の要約も載っています。

国内4協会それぞれが、本年末まで会員からの意見を求めることになっています。
それを年明けから「社専協」で集約し、討議検討していく予定です。
日本国のソーシャルワーカーとしての意見表明をしていかねばなりません。




あ…、雪です。
もうすぐ、仙台。
宮城の皆さん、よろしくお願い致します。


☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★


<現定義>
国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)のソーシャルワークの定義 (2000.7.27)

ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め、人間関係における問題解決を図り、人びとのエンパワーメントと解放を促していく。ソーシャルワークは、人間の行動と社会システムに関する理論を利用して、人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である。

定義  第1案(IFSW事務局とNicolai Paulsen作成)
ソーシャルワークは、能力開発・人権・責任ある市民性に基づいた社会的に公正でインクルーシブなシステム、および個人・家族・集団・共同体などにとって公平な社会を促進するものである。ソーシャルワークの知識によって、実践家は、人々や共同体と協働し、その持続可能な相互依存をサポートすることができる。ソーシャルワーク専門職は、十分な資源と知識をもって相互依存する人々や共同体は自らの福利について最善の決定をすることを理解している。

定義  第2案(ラテンアメリカ地域作成)
ソーシャルワークは、その専門職的活動が置かれた様々な社会・歴史的状況において、社会的諸主体間およびその国家との関係の領域にある専門職である。
それは、社会変革という見地から、生活の物質的・社会的再生産に関わる社会的実践と社会・教育的アクションを展開する。それは、人権と社会正義の達成をめざし、自律、参加、市民性の擁護を強化することによって、民主主義に、そして社会的不平等との闘いに傾倒する。

定義  第3案(IASSWのVishanthie Sewpaul氏作成)
ソーシャルワーク専門職は、文脈依存的である(置かれた状況によって形が変わる)ものの、社会の安定、調和、結束、および人々のエンパワメントと解放を促進するとともに、社会の変革を促すものである。社会正義、人権と人々の権利、集団的責任、参加、持続可能な発展、相互依存、および多様性の尊重(そこでは「害をなさないこと」と人間の尊厳の尊重が重要となる)が、ソーシャルワークの中心的原則である。広範な社会科学の理論、実践、一連の社会・心理・教育的戦略、および土着の知識を利用して、ソーシャルワークは、人々や組織が生活上の諸問題に取り組み、福利を増進するように働きかける。


☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★


「ソーシャルワークの世界定義」改訂作業の進捗状況に係る情報提供とお願い

2012年7月にスウェーデン・ストックホルムにおいて開催された2012年国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)総会におきまして、ソーシャルワークの世界定義(世界定義)に関する改訂3案と解説に係る資料が提示されました。

社会福祉専門職団体協議会(社専協)では、国際委員会が当該資料を翻訳し、代表者会議にて確認いたしましたので、構成員の皆さまに情報提供させていただきます。
なお、IFSWアジア太平洋地域のジョン・アン会長が作成した世界定義案も掲載しています。

今後の改訂作業において、現在の3案とは異なる世界定義案が提示される可能性もあります。

しかしながら、この間の進捗状況とその過程で浮かびあがった課題や国際的情勢を視野に入れて、日本あるいはアジア太平洋地域におけるソーシャルワークの課題や現状に引きつけ、最終的な改訂案が提示される時に向けて、現時点で提示されている世界定義案を多くの構成員にお読みいただき、ご意見等がございましたら、本協会事務局までお寄せください。

お寄せいただいたご意見等は社専協としてIFSWに意見提案する際の参考資料とさせていただきます。

【以上、日本精神保健福祉士協会のホームページより】