PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

専門職大学院という場所

2009年12月26日 13時38分28秒 | 専門職大学院
僕の勤務先の大学での所属は、大学院です。
大学院と言っても、研究大学院とは異なる「専門職大学院」。

法科大学院とか、教職大学院とかありますよね。
それと同じように、社会人を対象とした専門職大学院。
わが国では唯一の、福祉領域の専門職大学院です。

通常の研究大学院は、修士課程や博士課程に分かれています。
主に研究がメインですから、研究者養成のカリキュラムです。
調査方法や統計分析の方法論が、前半では叩き込まれます。
自身のテーマに沿った、ひとつの論文を書き上げるために、2年、3年を費やします。

これに対し、専門職大学院は、質の高い専門職養成がミッションです。
カリキュラムも、専門職としてのポテンシャルやスキルアップを目指した構成になっています。
極めて実践的ですし、少しでも現場で役立つ授業であることが大前提です。

期間も、平日日中の授業を基本として1年間と短い設定です。
現職を続けながらの、週末夜間を中心とした2年間の長期履修制度もありますが。
1年間で最低30単位を取得すると、専門職修士という学位が得られます。

入学する人は、実に千差万別です。
多くは福祉の領域で仕事をしてきた、現職のソーシャルワーカーたちです。
でも、そうでない人たちも、たくさんいます。

自分の仕事に行き詰まりを感じて、改めて福祉を学び直したいと入学してきた人。
自分の職場に嫌気がさして、転職して新たな人生の一歩を踏み出すために来た人。
職場の研修制度を利用し、休職して徹底的に学ぶことを選択して来た人。
定年退職を目前に、自分がしてきたことを整理するために、というベテラン組もいます。

一方で、異なる領域から、福祉を学びたいという一心で入学する人もいます。
保健医療領域から、福祉を学ばなきゃと一念発起して入学した看護師や作業療法士。
福祉とはまったく無縁の業界から、福祉への転進を図って通うことを決意した人。
定年後の残りの人生を、暮らす街の福祉ボランティア活動に捧げたいという元企業戦士もいます。
一般企業ではなく福祉分野での就職を視野に入れて進学してきた、他学部からの新卒学生もいます。

ちなみに、今年度の院生たちの平均年齢は、41.5歳。
毎年、22歳の学部新卒から、70代後半の後期高齢者までいます。

本当に多種多様な老若男女の集合体で、生きてきた過程も様々です。
唯一共通しているのは、「福祉を学びたい」という一点です。
しかも、研究者としてではなく、それぞれの現場の実践者として…。

ゴールの明確な、そのモチベーションの高さが、専門職大学院の宝だと思います。
多様な人生体験をもつ人々の、経験知という力が、この類いまれな共同体を形成しています。

教員にとっても、毎日がとても刺激的です。
教員も、うかうかはしていられません。
もしかすると、教員が一番学ばせてもらっているのかも知れません。

僕は、この仕事に就けて、幸せだと思っています。
この場所で、この仲間たちと、自分にできることを、精一杯果たしていきたいと思っています。

お出かけゼミ

2009年12月25日 09時22分41秒 | 専門職大学院
※映画『精神』のワンシーン。このひとは…。




今年の授業も、いよいよ終わりました。
僕の担当するゼミは、今年はやたら、あちこちを徘徊していました。

ゼミ員の総意というよりも、担当教員の趣味と志向性によるところ大ですが。
去年1年、ほとんど外出することもなかったので、フラストレーションが溜まってたというか…。
同僚の児童領域のゼミが、しょっちゅうゼミで出かけているのを見て、羨ましくなって。
今年は「書を捨てよ、街に出よう!」と…。(ちょっと古い?)

それでも、ゼミ員にとっては、なかなか得難い体験だったようで。
色々たくさん刺戟を受け、自身の経験と照らして、考えることも多かったようです。


今年、ゼミのみんなと出かけてみたのは、以下のところです。


①精神科家族会「むさしの会」10周年(国立精神・神経センター病院、5月23日)

 記念講演の高橋清久さん(藍野大学学長)には、昔から色々とお世話になっています。
 10周年記念パーティーに参加し、ゼミ員各自、いろんなご家族とお話しさせて頂きました。
 これが縁で、「家族支援」をテーマとするゼミ員のひとりは、以降毎月の例会に参加させてもらっています。


②日本精神保健福祉士協会第45回全国大会(静岡、6月13日~14日)

 僕にとっては、2000年東京大会以来の大会参加でした。
 大会プログラムで一番議論が白熱したのは、総会議事でしょうね。
 夜は、懇親会には出ないで、ゼミ員たちと居酒屋へ。
 深夜まで、静岡の繁華街のカラオケスナックで、腹がよじれるほど笑い転げていました。


③映画「精神」鑑賞(渋谷イメージフォーラム、6月20日)

 これは、なんというか…、スゴイ映画でしたね。
 情緒的な演出を極力排すると、こういうモザイク無しドキュメンタリーになるんでしょうね。
 PSWの仕事をしている人にとっては、極めて日常的な風景でしょうが。
 撮影後、編集に1年以上かけているようですが、エンドで知る事実は悲しい…。


④映画「降りていく生き方」上映会+べてるの家講演会(立教大学、7月4日)

 この映画については、原案・脚本の森田貴英さんや製作・上映に携わっている人の想いは、わかるんですが…。
 メッセージが前面に直截に出過ぎてて、表層的で自己完結型のプロパガンダ映画になってしまいましたね。
 もっともっと、他者の心の琴線に届く、深い言葉で作って欲しいと思います(辛口批評でゴメンナサイ)。
 向谷地生良さんにお会いできて、初めて話せたのは光栄でした。


⑤精神保健従事者団体懇談会・精神保健フォーラム(日本教育会館、7月11日)

 久しぶりに開催されたフォーラムでしたが、参加者が少なく淋しかったですね。
 以前、京都や横浜で行ったフォーラムは、たしか1000人くらい参加していたような…。
 話されているシンポジウムテーマは、どれもビビッドで大事な課題なんですが。
 精神医療保健福祉にかかわる、従来型のソーシャルアクションの衰退が顕著であることを実感した日でした。


⑥第31回日本アルコール関連問題学会(池袋メトロポリタン、7月18日)

 メインシンポジウムでは、猪野亜朗さんが光っていたと思います。
 病院で、地域で、ずっとアルコール医療を継続してきた言葉は、控えめでも重いです。
 やはり学会は、地道な臨床現場の実践や研究の取り組みの交流の場であって欲しいと思います。
 「Change!」という大会テーマが、妙に軽すぎて、現場から遊離しているようで気になりました。


⑦第52回日本病院・地域精神医学会総会(和歌山市民会館、9月18日~19日)

 和歌山まで遠征しましたが、地域性や広報の遅れもあってか、参加者が少なく淋しかったですね。
 僕は分科会の座長をしましたが、質疑も散漫で、討論は深まりに欠けるものでした。
 蛸壺的実践報告のオンパレードで、十分な検証がされてないからでしょうか。
 夜間集会から居酒屋へ突入した40数名が、深夜まで口角泡飛ばしていたのが「病地」らしいのかも。


⑧日本精神衛生学会第25回大会(国立看護大学校、11月14日~15日)

 昼休みまで賑やかなイベントもあり、「感情労働」のシンポジウムも面白かったです。
 「ひきこもり」のシンポジストの二神能基さんとお昼をご一緒し、たくさん刺激を頂きました。
 東京から秋田に移って、ユニークなデイケアを展開している水野淳一郎さんと、久しぶりに話せました。
 大林宣彦監督の特別講演は、含蓄に富み、映画好きにはたまらない話しでした。


⑨クラブハウスはばたき施設見学(12月3日)

 この前も記事にしましたが、楽しく考えさせられる、あっという間の3時間でした。
 クラブハウスの運営は、障害者自立支援法下でとても困難な状況に置かれています。
 JHC板橋が中心になって、今クラブハウスモデルの作業所等の全国調査を行っているそうです。
 こういった活動が、どれだけ展開できるかで、この国の地域精神保健福祉は変わってくると思います。


⑩救護施設あかつき+国立精神・神経センター施設見学(12月17日)

 救護施設というと、かつては行き先のない生保受給者の終末施設とイメージされていました。
 しかし、あかつきは早くから地域移行に向けた取り組みを展開し、居宅支援を手厚く展開しています。
 スタッフの意識と取り組み姿勢により、利用者の脱施設化はいくらでも可能性が開けてくる好例と言えます。
 一方、国立精神・神経センターでは、保護室を含めた急性期閉鎖病棟や医療観察法病棟、デイケアや作業療法棟を見学しました。
 広大なキャンパスをぐるりと一周するだけで、結局3時間半かかりました。
 異なる位相の精神保健福祉の現場を一度に見て、ゼミ員は目一杯の情報量に、考えさせられることが多かったようです。
 小平駅前の居酒屋で、アフターミーティングを兼ねた忘年会を行い、感想を述べ合って頭の中の整理をしました。


以上、今年は合計10カ所、ゼミのみんなで出かけたことになります。


交通費や参加費等で、ゼミ員にとっては、結構な負担になってしまったかも知れません。
大学から一応「ゼミ費」がでる(年額2万円上限)のですが、交通費にも足りません。
ちなみに、引率教員の交通費・参加費は、どこからも出ないので自己負担です。


それでも、教室の座学では得られない、リアルな精神保健福祉の様々な側面に触れられたのは成果と考えています。
振り返りに十分な時間をあてられず、消化不良の感があるのが、気になるところですが。
非日常的な強烈な印象を残す外出の意味が、それぞれの中で熟成するのには、時間も必要でしょう。


来年は、どんな「お出かけゼミ」をしようかと、今からわくわくしています。

障がい者制度改革推進本部の設置

2009年12月16日 09時00分40秒 | 精神保健福祉情報
12月15日、「障がい者制度改革推進本部」の第1回会合が開かれました。
民主党政権がマニフェストに掲げていた、障害者自立支援法廃案に向けた改革が始まります。
応益負担の見直しに止まらず、この国の障害者政策全般が見直されることになります。
目指されている「障害者総合福祉法」(仮称?)は、どのような内容になっていくのでしょうか?

「障がい者制度改革推進本部」は、全閣僚で構成されます。
鳩山由紀夫首相を本部長とし、平野博文官房長官と福島瑞穂特命担当相が副本部長だそうです。
これにより、従来の「障害者施策推進本部」は廃止されました。

政権交代に伴う、衣替えだけでは意味がありません。
今回は、この本部の下部組織に「障がい者制度改革推進会議」を設置するとしています。
委員の半数以上を、障害者や障害者団体幹部とするそうです。
関係専門職団体や学識経験者がほとんどを占めていた従来と、大きな差異です。
当事者が自身の政策作りに直接発言し、新たな障害者福祉サービスの体系を検討することになります。

国連の障害者権利条約(2008年発効)への批准が、大きな目標となります。
「推進会議」を担当する内閣府参与には、車椅子を使用する東俊裕弁護士が今後就任するそうです。
障害者権利条約を検討した国連特別委員会で、日本の政府代表団顧問を務めた人ですね。
世界では、当事者の、当事者による、当事者のための障害者施策決定が当たり前です。

"Nothing about us without us ! "(私たち抜きに私たちのことを決めるな)
条約交渉過程で、何回となく繰り返された当事者たちの言葉が、ようやくこの国でも、当たり前になる予感がします。
我が身に置き換えて考えてみれば、当然の要求でしょう。
日本人は「お上が決めたこと」に、あまりにも従順すぎると言えるでしょう。

ちなみに、鳩山総理は「推進本部の『障がい』の害はひらがなで、このこと自体意味がある。」と述べたそうです。
国の法律に準拠して、未だ「障害者」という表記が一般的ですが、今後変わっていくのでしょう。
もう既にかなりの自治体が、個々の条例で「障がい者」の表記を採用しています。
僕自身は「障がい者」と表記することで免罪符を得たかのような風潮には、違和感を感じてしまいますが…。

言葉は、時代と共に変化し、今は当たり前の言葉が死語になっていきます。
「精神分裂病」が「統合失調症」に変わったように、呼称変更は大きな変化を及ぼします。
当事者の置かれた状況は何も変わってない、という評価も当然ありますが。
少なくとも病名告知は格段に進み、心理教育も確実に進みました。
言葉を通じて思考し、イメージが形成される以上、やはり言葉は大事にせねばなりません。
「推進会議」を通じての、当事者自身による新しい言葉の創出を、期待したいと思います。

社会人たちの選択

2009年12月13日 01時39分44秒 | 専門職大学院

今日の東京は、ポカポカ陽気。

昨日と最高気温が10度も違うので、ビックリです。

マフラーをしていると、汗ばむくらいで…。



今日は、大学院の入試説明会。

老若男女、ちょうど40名の方々が参加してくれました。

入試管理委員長としては、うれしい限りです。



若い学部の学生もいれば、かなり高齢のリタイア組の方もいます。

皆さんの前で、この大学院が目指しているものやカリキュラムコース等について、説明を約40分しました。

こちらをまっすぐに見つめている、真剣な眼差しに、僕なりに気持ちを込めて向き合いながら…。



約2時間ほどの全体説明会のあと、個別相談会です。

社会人の人は、やはり現実的、具体的です。

今の仕事を続けながら、どれだけ単位を履修できるのか…。



社会人向けのリカレント教育と言っても、受験生にはそれぞれの生活があります。

家事と、仕事と、勉学を、果たして本当に両立できるのか…。

不安があって当然、むしろ、その現実的な検討があってこそ本物です。



このうち、何人の人が受験に至るのかは、わかりません。

それでも、あえて厳しいタイトな日々を選択した現職の院生たちは、大きな力を発揮するはずです。

目標と使命を持っての、困難な状況での学びは、人を変え成長させます。



その人の、将来の人生を担保することはできないけれども、

教員として、一人ひとりに、真剣に向き合っていかなければ…。

改めて、自分が就いた仕事の意味を考えた日でした。





※画像は、秋の暖かな日差しに包まれたキャンパスの中庭。

紅葉と枯れ葉に彩られた、この小さなキャンパスを、僕はとても美しいと思います。

10000ヒット記念!

2009年12月10日 11時28分58秒 | ブログのこと


ようこそ「PSW研究室」へ!

おかげさまで、訪問者累計1万人、ページビュー累計2万人を突破しました~!

しかも、12月8日、敬愛するジョン・レノンの命日に…。

ご訪問の皆様、いつも、ありがとうございます。

日頃のご愛顧に感謝申し上げます。

<(_ _)>


このブログ、今年4月1日に開設しました。

一番多いときで、7月の10回更新。

少ないときは、5月の2回だけ更新。

6月には、とうとう1回も更新できませんでした。

なかなか、記事を書くプライベートな時間が取れなくて…。

いつも、きまぐれな更新ですみません。

m(_ _)m


それでも、1日に50人から、多いときには100人超の人が訪れてくれています。

たいして、面白くもない、堅めの記事が多いのに…。

それでも、訪ねて頂けているのは、やはり関係業界の方々だからでしょうか?

自分なりに色々発信できれば…とは考えていますが、何かの参考にはなっていますかね?

(?_?)


こんなページでも、何か検索してると、ヒットすることがあるようで。

「ブログ、やってるでしょう?」

どこぞの会議の折に、突然そんな風に尋ねられることが、最近、たまにあります。

僕を知っているこの業界の人には、本当にバレバレのようで…。

匿名でやっていても、あまり意味がないような…。

(^_^;)


でも、もちろん知り合いばかりが、訪問して下さっている訳ではないので。

1万人ヒット記念に、顔写真を公開です。

これでも結構、シャイな部分もあり、いささか恥ずかしいのですが…。

ある人から「ブログはアピールの場だから、自分の画像とか、もっと載せるもの」とも言われ…。

まるで秘密の日記ということでもないので、まぁ、いいか~、と自分を納得させて…。

(*^_^*)


改めて、皆様、はじめまして、「龍龍」です。

こんな顔しています(照)。

これからも、気まぐれ更新が続くかと思いますが、よろしくお願い致します。

<(_ _)>



※画像は、COMBOHの丹羽さんに撮っていただいたものです。

 今夏の「リカバリー全国フォーラム2009」の時ですね。

 もう、はるか昔のような気もしますが(笑)。


福祉のエビデンス

2009年12月08日 09時21分54秒 | PSWのお仕事

先週「EBSCプログラム評価法研究会」に参加しました。
文部科学省の研究費による研究班の、年1回の研究成果報告会です。

ごくごく少人数の集まりだと思っていたのですが、あにはからんや。
寒い冬の平日の夜にも関わらず、60人くらい集まりました。
この領域での取り組みについて、関心が高まっているようです。
18時スタートの会議は、討論佳境の中、21時半に終わりました。

EBSCというのは、Evidence-Based Social Care の略です。
「(科学的)根拠に基づくソーシャルケア(サービス)」と、訳せば良いでしょうか。

EBM(evidence-based medicine, 根拠に基づいた医療)とか、
EBP(evidence-based practice, 根拠に基づいた実践)とか、最近やたら耳にしません?

世はまさに、「EB」流行り。
どの領域でも、結果(アウトカム)と根拠(エビデンス)が求められています。

当然と言えば、当然です。
当たり前と言えば、当たり前です。
誰しも、結果の伴わない治療なんて受けたくないし。
根拠のない治療なんて、危なっかしい民間療法と区別がつきません。

でも、数値で結果を求められても、難しい分野があるのは事実です。
医療分野で言えば、精神科の領域が、目に見える数値化がやはり難しいです。
福祉分野で言えば、ソーシャルワークの結果と根拠を示すのも難しいです。
このふたつが交わる、精神保健福祉に関わるPSWの仕事は、なおさら難しいです。

従来は、臨床実践経験に基づく知と技の集積が、根拠とされてきました。
今でも、やはり先輩の体験に基づく言語化された経験知の伝授が、主な教育方法です。
体験に基づく1対1のスーパーヴィジョン(SV)が、後進育成の主な方法になっています。

もちろん、対人援助サービスを生業とする以上、自身を訓練するのは当たり前です。
専門職とて、ひとりの人間ですから、生きてきた過程により、固有の価値観や心理的反応があります。
他者のケアに当たる前に、少しでも自己覚知を深めることが、どうしても必要です。
自分にはどんなもろさ、弱さがあり、他者にどんな反応をしがちなのか、何を注意しなければいけないのか…。
専門職としての、個人の学習・内省と訓練は、絶対に必要です。

これまでも、ソーシャルワーカーは専門職としての不断の自己検証は重ねてきています。
クライエントが課題を解決し、力をつけ、満足することは、専門職として励みにもなります。
でも、残念ながら、全く赤の他人の他者や社会には、それだけでは伝わりません。

象徴的なのが、政権交代した新しい政府による、行政刷新会議の事業仕分けでした。
多くの方がテレビで、あの仕分けの現場を目にしたはずです。
小泉内閣時代の新自由主義とはまた異なる位相での、結果と根拠が求められています。
若者自立塾が「廃止」という結論に至った時、僕はちょっと愕然としてしまいました。
もっぱら費用対効果の観点から、結果と根拠を示せと言われても…。
「地域移行支援特別対策事業」の退院実績数を、思わず考えてしまいました。

結果が求められています。
根拠が求められています。
PSWは、どのように根拠と結果を示せるのでしょう?

自らの仕事の結果と根拠を、数値で示すことには、多くのPSWが違和感を感じるはずです。
ソーシャルワーク実践の中核にある、社会福祉の理念や価値が、ないがしろにされる危惧が生じます。
クライエントの生き方や人生の意味が、数字にされてしまう不安を感じて、当然だと思います。

一人ひとりの人生に向き合う現場の実践と、エビデンスを追求する研究の視点には、まだまだ著しい乖離があります。
でも、お互いがそっぽを向いているだけでは、旧態依然たる社会福祉の枠に止まるだけです。

実践家は、より客観的に研究者の目を意識して、
研究者は、より現場の事情や背景を理解して、
相互に情報を提供し、成果を流通させ、切磋琢磨しながら、結果と根拠を導き出すことはできないでしょうか。

EBSCが、ソーシャルワークの現場実践と社会福祉の研究に、架橋する取り組みになればと願っています。
研究班の最終年度に向けて、来年は忙しくなりそうです。
(^_^;)


★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆


「文科省EBSCプログラム評価法研究班研究会 2009年研究成果報告会」

2009年12月4日(金)18:00~21:30

○開会挨拶
  大橋謙策(日本社会事業大学学長)
○研究班報告会
座長:佐藤 久夫(日本社会事業大学)、福井 里江(東京学芸大学)

① EBSCプログラム評価研究の意義と目的:今年度までの到達点と今後の研究活動について
  大島 巌
② 障害者支援分野:障害者就労移行支援プログラム
  小佐々典靖、佐藤久夫
③ 精神保健福祉分野:精神障害者退院促進支援プログラム
  道明章乃、古屋龍太
④ 若者自立支援分野:ひきこもり・ニートへの就労支援プログラム
  山下英三郎、原田郁大
⑤ 高齢者支援分野:認知症高齢者環境作りプログラム
  児玉桂子
⑥ 児童福祉分野:被虐待児回復・援助者支援プログラム
  藤岡孝志
⑦ 学校における啓発教育分野:メンタルヘルスリテラシープログラム
  篁宗一、李載徳
⑧ 福祉分野における横断的なアウトカム指標研究
  吉田光爾
⑨ 総括討論
  指定発言:贄川信幸

○主催:文部科学省EBSCプログラム評価法研究班
 共催:日本社会事業大学社会事業研究所社会福祉政策・プログラム評価部門
 共催:文科省大学院GP・福祉サービスのプログラム評価研究者育成プロジェクト



※画像は、一橋大学の国立西キャンパス。
 記事内容とは、全く関係ありません。

クラブハウスはばたき

2009年12月04日 04時14分42秒 | 専門職大学院
今日は、小平市のクラブハウスはばたきに行って来ました。

JHC板橋サンマリーナに次いで、日本で2番目にできたクラブハウスです。

僕の前職の病院でのつながりもあり、大学の講義に出張講演に来てもらったりしています。

今回お邪魔したのは、ゼミ員らと計9名、雨の中傘さして出かけました。

(`∇´ゞ



着いてすぐ、オリエンテーション。

はばたきがNHKの福祉ネットワークで取り上げられた時のビデオを見て、

世界クラブハウス連盟の基準や過渡的雇用についてレクチャーを受け、

パソコンの並ぶ事務ユニットで、仕事の流れやマニュアルを教えてもらい、

その後、階下でメンバー・スタッフの方と、珈琲や紅茶をいただきながら懇談、意見交換しました。


クラブハウスはばたきに至る、小平市での地域精神保健福祉活動の流れ、

メンバーとスタッフのパートナーシップの具体例、

障害者自立支援法と、拡らないクラブハウスの課題、

色んなプロジェクトやミーティングの重要性や実際の流れ、

世界300数十ヶ所のクラブハウスとの共通点や少し違うところ…。

あっという間に3時間近くが経ちました。

(o^∀^o)



しかし、なんか、もったいないな…、と思ってしまいます。

せっかく、これだけ示唆に富む実践を継続しているのに、まだまだ知られていません。

当事者にとってはもちろんですが、専門職にとって多くのヒントを含んだ活動なのに。

ぜひ、積極的に情報発信して欲しいなと思います。

あ…、「して欲しい」などと他力本願ではパートナーシップに反するか…?

f^_^;

なんとか一緒に、その取り組みを発信していくプランを練っていければと思います。



クラブハウスはばたきの皆さん、ありがとうございました~♪

(^∀^)ノ

リアルなブログ

2009年12月01日 03時56分33秒 | ブログのこと
このブログを始めて、今日で8ヵ月になります。

最初は、まったく匿名でこっそりやっていくつもりでしたが。

日々の仕事のことも記していくとなると、なかなかそうもいかず…。

さりとて、まるでオフィシャルな形のブログでは、面白みに欠ける感じもして。

相変わらず中途半端な形でやってますが、読んだ人にはバレバレのようで…。

最近では、来年4月の一周年をもって、名前も公開して公式なものにしてしまおうかと考えています。

それでも、私的なことや個人的な愚痴は記していくと思いますけどね。

人は仕事だけで生きている訳ではないし、役割期待された言動だけでは生きられないし。

昨今流行りのワークライフバランスじゃないですけど、仕事と私的な時間の割り振りって大事です。

生真面目な情報発信だけでは、人の心には届かないし、自己開示されていない言葉は伝わらないし響かないでしょう。

ネット上で見知らぬ人に自分の姿を示していくのは、リスクも伴いますが、得られるリターンもあるはずです。

一方的なメディアに終わらせず、コミュニケーションツールにするためには、顔と名前の同一性は大事な要素でしょうし。

ともすればバーチャルなイメージのアバターが闊歩しているネット世界だからこそ、リアルさは必要だと思っています。

ここに綴っている事柄は、残念ながらリアルなこの国の出来事ですしね。



たいして記事の更新もできていないこのブログに、毎日50人もの人が覗きに来てくれています。

PV数を見る限り、訪ねて来てくれた人は、皆さん2ページ以上に目を通してくれています。

ちゃんとお礼も述べたいので、10000ヒットしたら、恥ずかしながら記念に顔も出そうかと…。

顔出して、一気に訪問者が減ったりしたら、悲しいけど…(笑)。

どうか、末永いおつき合いのほど、お願いします。

(=゜-゜)(=。_。)