PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

「精神医療」誌で精神国賠の特集号

2021年10月31日 08時38分45秒 | 出版案内

第5次「精神医療」編集委員の古屋です。

編集責任を担った第3号が刊行されました。

「特集:精神医療国家賠償請求訴訟―その背景と現段階」です。

精神国賠をめぐって、初めての本が出来上がりました。

 

本来は、10月20日発刊予定だったのですが。

諸々の事情により、少し刊行が遅れてしまい、大変お待たせしました。

精神国賠の提訴に至る経過、法理論構成、課題が、この1冊で分かります。

精神国賠をどのように考えるか、多様な立場の方々に執筆していただきました。

 

まず、冒頭の座談会では、精神国賠原告の伊藤さん、家族の野村さん、

ジャーナリストの織田さん、精神国賠研代表の東谷さん。

弁護士では、精神国賠の原告弁護団の長谷川敬介さん。

同じく弁護士で、ハンセン病国賠訴訟弁護団の八尋光秀さん。

ジャーナリストで、神奈川精神医療人権センターの佐藤光展さん。

精神保健福祉士としては、北海道十勝の門屋充郎さん。

当事者では、東京で「精神障害当事者会ポルケ」を主宰の山田悠平さん。

精神科医としては、責任編集を一緒に担当した多摩あおば病院の中島直さん。

精神科看護では、今は訪問看護に取り組む有我譲慶さん。

 

とても贅沢な顔ぶれで、それぞれの切り口に唸らされます。

その他の特集以外の記事や連載も、例によって盛り沢山です。

お忙しい中、執筆にご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。

願わくば、多くの方に手に取り目を通していただきたい1冊です。

(自身の巻頭言は、ちょっと力が入り過ぎかもと反省していますが)

 

精神医療(第5次)第3号

「特集:精神医療国家賠償請求訴訟―その背景と現段階」

責任編集:古屋龍太・中島直

 

【 巻頭言 】

○精神医療国家賠償請求訴訟が問う国家の不作為

-問われる精神医療政策の歴史、この国のかたちと私たち-

古屋龍太

【 特集 】精神医療国家賠償請求訴訟-その背景と現段階-

○座談会:精神医療国家賠償請求訴訟の位置と意義-ここまでとこれから-

伊藤時男・織田淳太郎・野村忠良・東谷幸政・古屋龍太

○精神国賠原告弁護団の立場から

長谷川敬祐

○ハンセン病国賠訴訟の場合

八尋光秀

○患者たちはもう黙っていない!!

精神医療ユーザーが創る精神医療の未来

佐藤光展

○国賠 そこまでいかなければならなかった日本の精神医療

~きわめて私的な体験をもとに精神保健福祉士として考える~

門屋充郎

○問われるべき人権と精神医療

~個人の内面化と社会の規範化を見据えて~

山田悠平

○精神医療国家賠償請求-意義、臨床との関連、疑念-

中島 直

○尊厳なき精神医療政策が生む人生被害

有我譲慶

 

【 視点63 】

○精神医療に期待されるヤングケアラーへの対応

森田久美子

【 視点 】精神現象論の展開〈14〉

○私たちは〈時代の子〉(3)

森山公夫

【 連載エッセイ 】バンダのバリエーション〈3〉

○やや節操をかいたバンダ(その 3)

塚本千秋

【 連載 】リエゾン精神看護事例検討会〈3〉

○コロナ禍におけるコンサルテーション

-covid19クラスターを体験して-

山崎陽子・中安隆志

【 リレー連載 】精神医療人権センターから〈3〉

○大阪精神医療人権センターから

藤原理枝

【 書評 】

○岡村正幸編著(ミネルヴァ書房)

『精神保健福祉システムの再構築 非拘束社会の地平』

國重智宏

【 紹介 】

○古屋龍太・大島巌編著(ミネルヴァ書房)

『精神科病院と地域支援者をつなぐ みんなの退院促進プログラム

~実践マニュアル&戦略ガイドライン』

添田雅宏

【 投稿 】

○三枚橋病院私史

~歴史と向かい合い、検証し、語り継ぐために~(前編)

中田 駿

 

○編集後記

中島 直

 

編集:第 5 次『精神医療』編集委員会

https://www.facebook.com/seishiniryou05/

発行:M.C.MUSE Inc.

https://www.mcmuse.co.jp/psychiatric/

価格:1,870円(税抜価格1,700円)

ISBN:978-4-904110-26-3

 

※全国の書店、Amazonや楽天等のネットから注文できます。

※定期購読(1年単位)ご希望の方は、下記事務局にご連絡ください。

 第5次『精神医療』編集委員会事務局 Mail:tachikawa-ss@nifty.com


第4次『精神医療』のバックナンバー

2021年08月07日 17時34分23秒 | 出版案内

精神医療編集委員の古屋です。

この場で、第4次『精神医療』最終号と第5次『精神医療』創刊号のご紹介をしましたが。

合わせて、第4次『精神医療』のバックナンバーの紹介もさせていただきます。

 

なお第4次『精神医療』については、もちろん今もネットを介して購入できますが。

ネット販売は運営会社の取り分が大きく、出版社の収益を圧迫しています。

(今は、アマゾンも日本にちゃんと税金を払うようになりましたけど)

発行元の批評社のホームページを見ると、過去の内容や在庫状況もわかります。

⇒ 批評社 : [雑誌]精神医療 (hihyosya.co.jp)

 

また、編集委員会の事務局に、直接注文・直接配送も可能です。

各号ともだいたい在庫は揃っていますので、以下の連絡先にご一報ください。

代金は、到着後に郵便振替用紙での後払いになります。

〒190-0022東京都立川市錦町3-1-33 

にしの木クリニック内「精神医療」編集委員会

メール:tachikawa-ss@nifty.com

 

※画像は第95号(特集:PSWの〈終焉〉)の表紙。

 いろいろ物議を醸したこの号は、雑誌としては異例の増刷となりました。

第4次『精神医療』第90号~99号総目次

各号定価1,870円(本体価格1,700円+税)

 

■第90号(2018年4月)

特集◉少年法改悪に反対する

木村一優+高岡 健[責任編集]

[巻頭言]少年は守られなければならない(木村一優)

[鼎談]少年法適用年齢引下げをめぐって (川村百合+芹沢俊介+[司会]高岡健)

成年年齢引き下げと少年司法(岩本朗)

児童精神医学の観点から「18歳問題」を考える(富田拓)

少年刑法犯の動向と少年法の改正論議――少年法の改正はいま必要なのか ?(土井隆義)

少年法適用年齢引き下げに関する一考察(山田麻紗子)

少年法適用年齢について考える――精神鑑定の経験から(木村一優)

少年法適用年齢をめぐる法的・刑事政策的問題 (武内謙治)

[コラム+連載+書評]

[視点―51]障害者の権利に関する条約の今(関口明彦)

[連載 異域の花咲くほとりに 6]妄想について(2)(菊池孝)

[連載 神経症への一視角 3]神経症から不安障害へ――神経症の軽症うつ病への取り込み(1)(上野豪志)

[連載 2]精神現象論の展開(2)(森山公夫)

[コラム]「教える」ことのためらい(近田真美子)

[紹介]『ハイパーアクティブ:ADHD の歴史はどう動いたか』マシュー・スミス著、石坂好樹・花島綾子・村上晶郎訳[星和書店刊](高岡健)

[投稿] 発達障害における「グレーゾーン問題」に関する私見(石井卓)

[編集後記](高岡健)

 

■第91号(2018年7月)

特集◉働くことの意義と支援を問う

大塚淳子+古屋龍太[責任編集]

[巻頭言]真に多様な働き方が実現できる社会づくりに向けて(大塚淳子)

[座談会]働くことの意義と支援を問う――就労支援の商業化の中で(藤井克徳+平野方紹+大塚淳子+[司会]古屋龍太)

障害者就労支援制度における A 型事業の課題と可能性を考える(久保寺一男)

大量解雇問題から今、思うこと(多田伸志+武内陽子)

基本的人権と労働の権利の意義を問う(中村敏彦)

障害福祉サービスの就労支援と就労の意義(森克彦)

私たちは「誰のために」「何のための」支援をするのか(山本美紀子)

精神障害者の就労支援と精神医療の相互支援について――実際にどのような連携が可能か(西尾雅明)

[コラム+連載+書評]

[視点 52]生活保護引下げからこの国の姿を見る(永瀬恵美子)

[連載 異域の花咲くほとりに 7]人格障害について(菊池孝)

[連載 神経症への一視角 4]神経症から不安障害へ――神経症の軽症うつ病への取り込み(2)(上野豪志)

[連載 3]精神現象論の展開(3)(森山公夫)

[コラム]今、高等学校で求められる支援(富島喜揮)

[書評]『社会的入院から地域へ――精神障害のある人々のピアサポート活動』加藤真規子著[現代書館刊](砂道大介+桑野祐次)

[紹介]『私たちの津久井やまゆり園事件――障害者とともに〈共生社会〉の明日へ』堀利和編著[社会評論社刊](高岡健)

[編集後記](古屋龍太)

 

■第92号(2018年10月)

特集◉拘束

阿保順子+中島 直[責任編集]

[巻頭言]拘束と医療(阿保順子)

[座談会]精神科病院における拘束(長谷川利夫、岡崎伸郎、阿保順子、[司会]中島直)

患者中心の精神医療をめざして(加藤真規子)

隔離・拘束を最小化するための 4つの視点(竹端寛)

拘束と実践(中島直)

高度急性期医療の場での抑制しない看護へのチャレンジ(小藤幹恵)

身体拘束を限りなくゼロに近づけるために――介護・福祉の視点から(石川秀也)

拘束――迷う判断と目標のあり方(有本慶子)

[コラム+連載+書評]

[視点 53]入院患者の権利を守るために、本当に必要なこと――日精協「アドボケーターガイドライン」のまやかしを越えて(原昌平)

[連載 異域の花咲くほとりに 8]精神療法と精神分析について(菊池孝)

[連載 神経症への一視角 5]神経症から不安障害へ――当事者の視点から疾患概念を再考する(上野豪志)

[連載]精神現象論の展開 4(森山公夫)

[コラム]クライエントの希望に沿った支援を継続するために(知名純子)

[書評]『あたらしい狂気の歴史――精神病理の哲学』小泉義之著[青土社刊](浅野弘毅)

[紹介]『保安処分構想と医療観察法体制――日本精神保健福祉士協会の関わりをめぐっ

て』桶澤吉彦著[生活書院刊](高木俊介)

[編集後記](中島直)

 

■第93号(2019年1月)

特集◉拘束旧優性保護法と現代

高岡 健+犬飼直子+岡崎伸郎[責任編集]

[巻頭言]優生思想のゆくえ(高岡健)

旧優生保護法─―被害者が声を上げることが社会を変える力(新里宏二)

障害を持つ女性の立場から(安積遊歩)

優生保護法被害の謝罪と賠償、そして検証と再発防止について(桐原尚之)

優生思想と日本の精神医療(高岡健)

優生保護法から母体保護法への改正の経緯――法改正に至る背景と経過、そして今後の課題(朝日俊弘)

[インタビュー①]旧優生保護法と精神医療(岡田靖雄+[聞き手]太田順一郎)

[インタビュー②]旧優生保護法と社会(市野川容孝+[聞き手]犬飼直子)

[コラム+連載+書評]

[視点 54]国連恣意的拘禁作業部会への個人通報について(山本眞理)

[コラム]入院の痛みと日常的管理処遇(篠原由利子)

[連載 異域の花咲くほとりに 9]倫理について(菊池孝)

[連載 神経症への一視角 6]神経症から不安障害へ――当事者の視点から疾患概念を再考する(上野豪志)

[連載]精神現象論の展開 5(森山公夫)

[書評]『永遠の道は曲りくねる』宮内勝典著[河出書房新社刊](阿保順子)

[特別集中連載 1]袴田巌さんの主治医になって(中島直)

[編集後記](岡崎伸郎)

 

■第94号(2019年4月)

特集◉措置入院

太田順一郎+中島 直+岡崎伸郎[責任編集]

[巻頭言]措置入院(太田順一郎)

[座談会]措置入院(平田豊明、中島直、大塚淳子、太田順一郎)

精神保健福祉法の医療基本法(仮称)への統合的解消と治療同意の意味(池原毅和)

措置入院者の退院後支援――医療機関の精神保健福祉士の立場で(澤野文彦)

新たな保安処分推進派イデオローグの誕生を論評する(富田三樹生)

措置入院制度の現状について(瀬戸秀文)

精神障害者の退院後支援について(田所淳子)

[コラム+連載+書評]

[視点 55]この国から看護が消滅してしまう――「特定行為に係る看護師の研修制度」がもたらすもの(東修)

[連載 異域の花咲くほとりに 10]インフォームド ・ コンセントについて(菊池孝)

[連載 神経症への一視角 7]神経症から不安障害へ――当事者の視点から対処行動を自己治療として見直す(上野豪志)

[連載 6]精神現象論の展開 6(森山公夫)

[コラム]精神障害者の死に場所をめぐり思うこと(木村亜希子)

[紹介]『「当たり前」をひっくり返す―バザーリア・ニイリエ・フレイルが奏でた「革命」』竹端寛著[現代書館刊](大塚淳子)

[特別集中連載 2]袴田巌さんの主治医になって(中島直)

編集後記(中島直)

 

■第95号(2019,7)

特集◉ PSW の終焉─精神保健福祉士の現在

古屋龍太+西澤利明+大塚淳子[責任編集]

[巻頭言]PSW の〈終焉〉――精神保健福祉士はMHSW として未来を拓く ?(古屋龍太)

[座談会]精神保健福祉士の現在――ソーシャルワークの危機(大野和男+藤井達也+西澤利朗+相川章子+[司会]古屋龍太)

PSW の終焉と MHSW の到来――未完の社会的復権と、“social” の岐路(吉池毅志)

業務ではなく、ソーシャルワーク実践を!――業務指針への批判(井上牧子)

PSW が PSW でなくなる時(富島喜揮)

2017年改正法案に対する日本精神保健福祉士協会の関与の所為とその妥当性について(樋澤吉彦)

PSW の拠るべき価値を振り返る――見過ごされてきた社会のありようを問い続ける専門職として(鶴田啓洋)

PSW の新たなステージを前に(鈴木詩子)

PSW の価値――職業倫理とは何だったのか(桐原尚之)

精神保健福祉士は変革者になれるか(原昌平)

精神保健福祉士に期待する、社会正義を貫くソーシャルワーク専門職へ(小川忍)

[コラム+連載+書評]

[視点 56] 障害者雇用水増し問題を考える――その背景と今後の課題(増田一世)

[連載 異域の花咲くほとりに 11]家族について(菊池孝)

[連載 神経症への一視角 8]神経症から不安障害へ――統合失調症に対する隔離・拘禁の反照としての不安障害のスティグマ(上野豪志)

[連載 7]精神現象論の展開(7)(森山公夫)

[コラム]8年が経過した被災地で思うこと――普通に生活(作業)をすることが元気

につながる(香山明美)

[紹介]『急性期病院で実現した身体抑制のない看護―金沢大学附属病院で続く挑戦』小藤幹恵編[日本看護協会出版会刊](東修)

[特別集中連載 3]袴田巌さんの主治医になって[第 3回](中島直)

[編集後記](大塚淳子)

 

■第96号(2019年10月)

特集◉医療観察法~改めて中身を問う

中島 直+岡崎伸郎[責任編集]

[巻頭言] やはり、医療観察法は廃止するしかない(中島直)

[座談会] 医療観察法~改めて中身を問う(池原毅和 + 稲村義輝 + 中島直 +[司会]太田順一郎)

医療観察法と精神保健福祉法の根本問題 刑事手続と治療提供を再考する(吉岡隆一)

医療観察法再考――刑務所敷地内「指定入院医療機関」設置計画に寄せて(伊藤哲寛)

医療観察法をめぐる裁判所の判断(池田直樹)

医療観察法における「社会復帰」の意味について――『本法における医療』継続の担保措置としての『本法における医療』」の継続的提供状態としての「社会復帰」(樋澤吉彦)

協力医活動から見た医療観察制度の問題(大久保圭策)

医療観察法と人権をめぐる現場から(有我譲慶)

[コラム+連載+書評]

[視点 57] 再び個別精神科病院の情報公開を !――630調査変更後の状況(木村朋子)

[連載 異域の花咲くほとりに 12] 積み残した問題、姉歯先生の思い出そして異域の花(菊池孝)

[連載 8] 精神現象論の展開(8)(森山公夫)

[コラム]入院依頼を通じて感じる地域支援の質(新井山克徳)

[書評]『なぜ、日本の精神医療は暴走するのか』佐藤光展著[講談社刊](氏家靖浩)

[紹介]『急性期治療を再考する』統合失調症のひろば編集部編[日本評論社刊](高木俊介)

[特別集中連載 4] 袴田巌さんの主治医になって 最終回(中島直)

[編集後記](岡崎伸郎)

 

■第97号(2020年1月)

特集◉医療保護入院――制度の廃止に向けて

古屋龍太+太田順一郎[責任編集]

[巻頭言]医療保護入院の廃止に向けて――日本特有の強制入院制度を「やむを得ない」で終わらせないために(古屋龍太)

[座談会]医療保護入院をめぐって――矛盾の巣窟の強制入院制度(八尋光秀 + 竹端寛 + 太田順一郎 +[司会]古屋龍太)

医療保護入院問題の原点に立ち帰ること(岡崎伸郎)

医療保護入院制度廃止に向けた国連人権メカニズムを活用した当事者団体の取り組みについて(山田悠平)

医療保護入院制度を廃止しなければならない理由(姜文江)

医療保護入院制度を家族の立場から考える(岡田久実子)

権利擁護の視点から医療保護入院を再考する(西川健一)

諸外国における強制入院制度とわが国の医療保護入院――イギリス、韓国、台湾との比較を中心に(塩満卓)

精神衛生法下の同意入院と現行医療保護入院――ケア義務からの「解放」という論点(後藤基行)

[コラム+連載+書評]

[視点 58]精神病院は変わったのか――630調査から見える現代精神医療の構造的問題(生島直人 + 栗田篤志)

[コラム]支援者の名前――2020年代の現場に向けて(福冨律)

[連載 9]精神現象論の展開 9(森山公夫)

[短期集中連載 1]私たちは何をしてきたのか――イタリア精神病院廃絶運動と我が国の精神病院改革運動(富田三樹生)

[書評]『いかにして抹殺の〈思想〉は引き寄せられたか――相模原殺傷事件と戦争・優生思想・精神医学』高岡健著[ヘウレーカ刊](早苗麻子)

[投稿]ヘタレ医者 人生の後半戦で頑張る(星野征光)

[編集後記](太田順一郎)

 

■第98号(2020年4月)

特集◉漂流する精神看護――専門職としての精神看護師の存在理由

阿保順子+佐原美智子+近田真美子[責任編集]

[巻頭言]漂流する精神看護――専門職としての精神看護師の存在理由(阿保順子)

[座談会]精神看護の現場とはどこか、現場で看護師は必要か(永井優子+小林將元+大迫晋[司会]=近田真美子+佐原美智子+阿保順子)

精神科の専門性こそが問われている(稲村茂)

看護師の主体性と精神看護師のアイデンティティ――援助関係と感情活用(宮本眞巳)

精神科訪問看護に必要な看護の要素と看護師の存在意義(山本智之)

専門分化されてゆく看護――精神看護の専門性を考える(東修)

精神看護はどこへ向かうべきか、戻るべきか(那須典政)

[インタビュー]言いたい放題:精神看護者はどんな形で存在していくのか(柴田恭亮 +[聞き手]阿保順子+佐原美智子)

[コラム+連載+書評]

[視点 59]日精協が提案する「精神科医療安全士」や CVPPP は、精神科臨床における暴力の未然防止に効果は期待できない(岡田実)

[連載 9]精神現象論の展開 10(森山公夫)

[短期集中連載 2]私たちは何をしてきたのか――イタリア精神病院廃絶運動と我が国の精神病院改革運動(富田三樹生)

[コラム]その道を全うするために(池田朋広)

[書評]『精神障害のある人の就労定着支援――当事者の希望からうまれた技法』天野聖子著・多摩棕櫚亭協会編著 [中央法規](添田雅宏)

[投稿]旧優生保護法でのハンセン病への優生手術に関する岡田靖雄氏の言及に対する違和感(松浦武夫)

[編集後記](近田真美子)

 

■第99号(2020年7月)

特集◉精神医療改革運動・精神障害者当事者運動のバトンをつなぐ

高木俊介+古屋龍太[責任編集]

[巻頭言]バトンをつなぐために(高木俊介)

[座談会]精神医療改革運動・精神障害者当事者運動のバトンをつなぐ(尾上浩二+小田原孝+山本深雪+渡邊乾+竹端寛+古屋龍太+[司会]高木俊介)

当事者研究をあるべき場所に(熊谷晋一郎)

運動のバトンの細分化とその行方――後期近代、解放、不安 、ショッピングモールなどの観点から(渡邉琢)

変革と継承――精神障害者の当事者運動から見出せる活路(桐原尚之)

精神医療改革運動とバトンと精神科病院(中島直)

特別支援学校における性教育の今日的課題――知的障害児・者の性に着目して(門下祐子)

ソーシャルワーク復興への光芒を探る――「ソーシャルワーカー」のソーシャルワーカーとしての解放を目指して…(中島康晴)

[コラム+連載+書評]

[視点 60]障害者権利条約パラレルレポート(佐藤久夫)

[連載 11]精神現象論の展開 11(森山公夫)

[短期集中連載 3]私たちは何をしてきたのか――イタリア精神病院廃絶運動と我が国の精神病院改革運動(富田三樹生)

[コラム]左中間にて(熊谷彰人)

[書評]『精神医療のゆらぎとひらめき』横田泉著[日本評論社刊](駒田健一)

[紹介]『まずはケアの話から始めよう』山崎勢津子著[ゆみる出版刊](中越章乃)

[投稿]遺言能力の精神鑑定について(西山詮 + 窪田彰 + 一瀬邦弘)

[編集後記](古屋龍太)

 


『みんなの退院促進プログラム』(ミネルヴァ書房)

2021年07月25日 20時12分30秒 | 出版案内

本を1冊、紹介させてください。

緊急事態宣言のさなか、2021年1月にミネルヴァ書房から刊行していただきました。

『精神科病院と地域支援者をつなぐ みんなの退院促進プログラム―実施マニュアルと戦略ガイドライン』という本です。

(ちょっと、タイトル、長いですけど)

 

僕と大島巌さんの編著という形になっていますが、執筆者総数は、実に23名。

2007年以来継続してきた、日本社会事業大学の「タイソク研究会」の成果物です。

プログラム評価を使って、退院促進・地域移行支援の方法をまとめたものです。

13年間かかって、やっと一般書店に並ぶ書籍の形にまとまりました。

 

内容は、下記の目次をご覧いただければ、少し伝わるかと思います。

実際の支援の経験知から明らかになった「効果的支援要素」を柱に据えています。

科研費を得て、研究班メンバーと各地の実践者の長年の取組を、可視化したものです。

各現場からの「コラム」が、各実践者の熱いメッセージを伝えてくれます。

 

編者としての思いは、下記の「はじめに」に記した通りです。

ミクロな個別支援と、病院・地域を変えていくメゾレベルの実践、精神医療政策を問うマクロなソーシャルアクションとしての精神国賠は、僕の中では一つのものです。

この国で、精神科病院からの脱施設化を図る方策を、自分なりに追求してきました。

今も各地で格闘しながら、地域移行に取組む方々に、読んでいただければ幸いです。

 

はじめに

日本は、世界一精神科病床の多い、精神科病院大国です。長年にわたる国の入院医療中心の隔離収容政策によって、多数の長期入院患者が生み出されました。本来であれば、短期の入院治療で済んだかもしれない方々が、精神科病院の中で歳を重ねてきています。大切な人生の時間の大半を、閉鎖的な精神科病棟の中で過ごすことになった方々は、もっと早くから地域で当たりまえに普通に暮らすことができたはずです。

もちろん、多くの地域や病院で、これまでも長期入院者の退院に向けた取り組みが、地道に行われてきました。国も21世紀に入ってからは「入院医療中心から地域生活中心へ」と政策のかじを切り、地域移行・地域定着の支援体制を作ってきました。それでも、具体的な支援を進めるための手順は示されず、各地の実践者は、一人ひとりの支援を通して、手探りで方法を模索するしかありませんでした。いつの間にかさらに10年、20年と時を経て、入院患者はさらに高齢化し、今や年間2万2千人を超える方々が精神科病棟の中で亡くなる事態に至っています。この悲しい現実を、私たちは理不尽に思い、なんとか変えたいと考えてきました。

本書は、長期にわたり精神科病院に入院している人々が、退院して地域で生活できるようにするためには何が必要かを、プログラム理論の観点からまとめたものです。ご本人が早期に退院して、地域で安定したより良い生活を実現するためには、支援者がどのような取り組みをすればよいのかを、「実施マニュアル」化しました。また、病院や地域と行政が、支援ネットワークを形成し連携・協働していくために、圏域によって異なるステージごとの特性にそった組織づくりと活動の指針となる、「戦略ガイドライン」を示しています。

ここに記されているのは、退院促進・地域移行に携わる各地の実践者の知恵を集積した、「効果的な退院促進・地域移行・地域定着支援のプログラム」(効果的モデル)の提案です。障害者総合支援法を中心とした既存の「制度モデル」を超えて、「みんなの退院促進」を実践していく足がかりになればと願っています。そして、現在、国がめざしている「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」を具体化し、地域共生社会を現実のものとする各地のプラン作成のヒントにもなれば幸いです。

2020年11月1日

                     執筆者を代表して 古屋龍太

目次

 

□はじめに

□本書のめざすもの

 

■第I部:長期入院患者の退院促進とは?

□第1章 背景を知る―精神科病院から退院できない!

1 退院促進と地域移行

2 日本特有の歴史的背景

3 なぜ退院ができないのでしょう?

コラム1 「継続は力なり」~秘めた想いを実現するために~

コラム2 病院管理者の立場から見た退院支援

 

□第2章 支援の現状―退院促進から地域移行・地域定着支援へ

1 退院促進支援事業の開始

2 地域移行支援特別対策事業の展開

3 個別給付化の影響―─訪問調査を踏まえて

4 地域移行支援・地域定着支援の現状と課題

5 「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の展開

コラム3 退院促進~地域移行・支援に関わって―和歌山県紀南地域の場合

コラム4 居住サポート事業と連動した地域移行支援―広島県三原市の場合

 

□第3章 効果的な支援のために―支援のモデルとそれを支える理論の話

1 効果的モデルとプログラムとは?──制度モデルとのちがい

2 統合型プログラムとは?──病院と地域と行政

3 プログラムのゴールとは?──支援の基本理念

4 プログラム理論の詳細

5 効果的支援要素とは?──支援の道しるべ

コラム5 病棟での取り組み、看護師への退院支援意欲の喚起

コラム6 病院PSWの皆さんへ―今病院でできること

 

□第4章 段階ごとに考えよう―地域移行のステージ

1 各期のねらいと達成定義

2 開拓期(0期)

3 萌芽期(1期)

4 形成期(2期)

5 発展期(3期)

コラム7 退院後の恢復への地平―「地域共生社会づくり」から切り拓く

コラム8 ピアから求める地域移行・定着支援―「きた風と太陽」のようであってほしい

 

■第II部:実施マニュアル

□第5章 効果的支援要素とプログラムの進め方―マニュアルとワークシートの使い方

A領域 協働支援チームの形成

B領域 病院内広報とモチベーションサポート

C領域 関係づくりとケースマネジメント

D領域 具体的な退院準備

E領域 退院後の継続的支援

F領域 退院促進の目標設定

コラム9 病院と地域機関が一体化して退院支援をしていくために

コラム10 行政・地域・病院がチームとなっておこなう退院支援

 

■第III部:戦略ガイドライン

□第6章 地域の実情に応じた取り組み

1 開拓期(0期)―個別支援から「支援の核」形成を目指す

2 萌芽期(1期)―「支援の核」の実践が組織内に波及することを目指す

3 形成期(2期)―多機関が組織として協働する事例を目指す

4 発展期(3期)―行政の積極的な参画で効果的実践を目指す

コラム11 開拓期の苦悩、課題、展望

コラム12 地域移行をすすめることは、地域の課題

 

□第7章 現場で効果的実践を実現するためのツール

1 全体構想シート

2 基本計画シート

3 期ごとのシート活用例

コラム13 生活支援って何だろう?

コラム14 「私が人生の主役」になるために―支援者ができること

 

■第Ⅳ部:資料編

1.戦略シート

 ①全体構想シート

 ②基本計画シート

2.地域移行支援情報シート

3.病棟における退院支援計画・経過一覧表

4.用語解説

 

おわりに

引用・参考文献

索引

執筆者一覧

 

出版社 ‏ : ‎ ミネルヴァ書房

発売日 ‏ : ‎ 2021/1/19

単行本 ‏ : ‎ 176ページ(ソフトカバー)

ISBN-10 ‏ : ‎ 4623089541

ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4623089543

税込価格 : 2,640円


第5次『精神医療』新創刊

2021年07月21日 05時41分11秒 | 出版案内

前々回の記事で『精神医療改革事典』について、ご紹介しました。

第4次「精神医療」誌の第100号として、総特集したものです。

この号をもって、50年間発行されてきた「精神医療」誌はいったん「休刊」となりました。

 

「精神医療」誌は、1970年に東大精神科医師連合の機関誌として、出発しました。

書店やネットでも買えますが、出版社が編集発行する、一般の商業誌とは異なります。

また、学会や協会等の組織が発行母体の、機関誌とも異なります。

適切な表現かわかりませんが、いわば、精神医療業界の「同人誌」にあたります。

同人誌が、半世紀にもわたって刊行され続ける例は、かなり珍しいことです。

精神医療改革を志す、多種多様な人びとによって、編集発行されてきました。

 

医療関係誌には珍しく、製薬会社の広告は一切掲載しない方針を堅持しています。

基本的に、依頼した書き手も座談会出席者も、原稿料の支払いはありません。

そうやって、ギリギリの経営状態のまま刊行を続け、今日に至っています。

発行部数も年々減少し、利潤も得られないため、出版元も変遷してきています。

 

既に、初期の編集委員の多くは鬼籍に入り、顔ぶれは新陳代謝して来ています。

当初は精神科医がほとんどでしたが、その後コメディカル職種が増えて来ています。

これまでずっと、精神医療改革運動を象徴するメディアとして、特異な位置を占めてきました。

そして、経た昨年2020年、第4次「精神医療」は100号で休刊となりました。

第1次創刊号から、ちょうど50年、一つの時代の〈終焉〉を象徴する出来事といえるでしょう。

 

第1次(1970年~1971年:通巻1~6号)発行:精神医療編集委員会

第2次(1971年~1978年:通巻7~29号)刊行:岩崎学術出版

第3次(1979年~1991年:通巻30~76号)刊行:悠久書房

第4次(1992年~2020年:1号~100号:通巻77号~175号)刊行:批評社

第5次(2021年~:1号~/通巻176号)刊行:M.C.MUSE

※通巻ナンバーと号数が合いませんが、ダブルカウントされているものや、カウントされていない臨時増刊特集号も結構あります。

 

でも、あくまでも今回も「休刊」であって「終巻」ではありません。

対面参集しての会議もできない中で、新しい発行元を探しての継続を模索してきました。

第4次最終号の「精神医療改革事典」と並行して、第5次創刊の準備を重ねてきました。

第5次創刊号の詳しい目次内容は、以下をご覧ください。

 

コロナ特集の創刊号ですが、精神医療国家賠償請求訴訟についても、書かせていただきました。

精神国賠研の成り立ちから、原告の紹介、第1次提訴の訴状の内容、精神医療政策の歴史への問いなど。

現在、出版物として公刊されている報告としては、一番詳しく精神国賠を解説しています。

ぜひ、お手にとってご一読いただければ幸いです。

なお、第3号:精神国賠特集企画についても、現在進行中です(10月20日刊行予定)。

 

第5次『精神医療』創刊号

責任編集:岡崎伸郎・近田真美子

特集「コロナという名の試練―精神保健医療福祉はどう挑むか」

 

【創刊の辞】

第5次『精神医療』創刊の辞

/岡崎伸郎(本誌編集委員長)

【巻頭言】

コロナという名の試練―精神保健医療福祉はどう挑むか―

/近田真美子(本誌編集委員)

【座談会】

コロナという名の試練―精神保健医療福祉はどう挑むか

齋藤正彦(東京都立松沢病院院長)

増田一世(やどかりの里理事長)

立岩真也(立命館大学教授)

近田真美子(司会/本誌編集委員)

【特集】コロナという名の試練―精神保健医療福祉はどう挑むか―

精神科病院はコロナ禍から何を学べるか?

/田口寿子(神奈川県立精神医療センター)

コロナという名の試練-精神保健医療福祉はどう挑むか-介護・福祉の現場から

/山崎英樹(いずみの杜診療所)

コロナ禍の精神看護学実習

/近田真美子(福井医療大学・本誌編集委員)

コロナ禍における「不登校」「ひきこもり」から見えてくる社会の構造的問題

/西村秀明(前・宇部フロンティア大学)

精神医療改革運動からテレストリアルのケアをめぐる〈政治〉へ―イタリアでバザーリアとコロナが教えてくれたこと

/松嶋健(広島大学)

資料: 精神科病院における新型コロナ感染の状況(2021年2月16日時点)報道・病院報等より把握できたもの

/有我譲慶

【視点61】

日本初の精神医療国家賠償請求訴訟の行方―第1次提訴に至る経過と訴えの概要―

/古屋龍太(日本社会事業大学・精神医療国家賠償請求訴訟研究会事務局長)

【連載】

精神現象論の展開<12> 私たちは<時代の子>

森山公夫(陽和病院)

【連載】

リエゾン精神看護事例検討会<1> 救急搬送された自殺未遂患者への継続介入

/武田美恵子(精神看護専門看護師)・村本好孝(株式会社ここから代表取締役)

【連載エッセイ】

バンダのバリエーション<1> やや節操をかいたバンダ(その1)

/塚本千秋(岡山大学)

【リレー連載】:精神医療人権センターから<1>

神奈川精神医療人権センター(KP)とは

/藤井哲也(KP 会長)・佐藤光展(KP Web 編集長)・中村マミコ(KP 事務局長・芸術文化担当)・堀合悠一郎(KP 調査・研究担当)・ピンクわかめちゃん(KP Web 制作・調査担当)・堀合研二郎(KP 広報担当)

【コラム】

温故知新 小林信子さんのいた時代~国際人権へ

/木村朋子(にしの木クリニック)

【書評】

『精神保健医療のゆくえ―制度とその周辺―』岡崎伸郎著

/熊倉陽介(東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野)

【紹介】

杉林稔著『精神科臨床の自由 -記述・暦・病跡学』精神科医、尊いものを仰ぐ

/塩飽耕規

【次号予告】

第2号特集:精神科医療における権利擁護(アドボケイト)

【バックナンバー案内】

第4次「精神医療」第85号~第99号(批評社刊)特集と目次

【編集後記】

近田真美子

 

出版社 ‏ : ‎ M.C.MUSE Inc.(有)エム・シー・ミューズ

発売日 ‏ : ‎ 2021/4/20

単行本 ‏ : ‎ 128ページ

ISBN-10 ‏ : ‎ 4904110242

ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4904110249

定価 ‏ : ‎ 1870円(税抜価格1700円)


『精神医療改革事典』の紹介

2021年07月01日 05時25分02秒 | 出版案内

今日は『精神医療改革事典』の紹介をさせてください。

雑誌の「精神医療」第4次100号記念総特集として、編集されたものです。

 

従来の精神医学系の辞典とは、大きく性格と構成が異なります。

精神疾患や診断・治療法に関わることは、ほとんど取り上げられていません。

「精神医学」という学問について、解説する辞典ではないからです。

「精神医療」という臨床実践の場で、語られてきた言葉を集めています。

 

専門職が、学会や協会で激しく議論してきた事柄が、取り上げられています。

歴史の暗部ともいえる、精神科病院の不祥事事件等も、多く取り上げています。

立場によって、今も歴史的な評価が割れる政治的な事柄も、収載するようにしました。

一貫しているのは、精神医療は極めて社会的な出来事であるという視点でしょう。

 

ここに収載されている言葉は、今日までの日本の精神医療のリアルを映す鏡でもあります。

多くの人が忘れ去り、語り継がれてもいない、過去の出来事もありますが。

一方で、現在に至るまで何も変わっていない事柄も、たくさん含まれています。

そして、もしかすると未来に至るまで、この国で残り続ける問題も含まれています。

 

そういった意味では、これは「精神医療未改革事典」なのかも知れません。

もちろん、その時々に「改革」を目指す試みは重ねられてきました。

その時代の限界はあったにせよ、それぞれの現場で静かな戦いが繰り広げられてきました。

なんとか精神医療を変えようと、時代状況と抗い続けた人びとの記録とも言えそうです。

 

この本は、昔も今も精神医療改革を追求してきた、62名の執筆陣によって書かれました。

「あ:ICJ勧告」に始まり、「わ:Y問題」に終わる、全268項目。

誌面の都合から、うち79は参照項目とし、解説は189項目に絞らざるを得ませんでした。

割愛せざるを得なかった項目も多々ありますが、およそ類書の無い事典にはなりました。

 

僕が執筆させていただいた項目は、以下の15項目です。

①岩倉病院問題

②クラーク勧告

③クリティカルパス

④国立犀潟病院問題

⑤障害者総合支援法

⑥精神科医全国共闘会議(プシ共闘)

⑦精神科病棟転換型居住系施設

⑧精神障害者福祉法

⑨精神保健福祉士(法)

⑩全国精神障害者家族会連合会(全家連)

⑪多機能型精神科診療所

⑫地域移行支援

⑬日本病院・地域精神医学会

⑭ピアサポート

⑮保護者制度

 

上記の中には、世代的にいうと、僕が書くべきではなかった項目も含まれています。

本来は、その出来事にリアルに関わっていた方に、執筆いただければ良かったのですが。

精神医療改革運動を牽引しながら、すでに鬼籍に入った方も多く、果たせませんでした。

執筆を辞退される方もあり、力不足は承知の上で書かざるを得なかった項目もあります。

その事柄をその時代に担っていた方々からすれば、苦笑・失笑ものの記述でしょうが。

その点は、浅学非才の若輩の管見をご海容いただくしかない心境です。

 

現に精神医療に関わる方は、どれくらいの項目をリアルタイムでご存じでしょうか?

ほとんどの項目をリアルに体験している方は、もう古希を超えている方々でしょう。

いわゆる「団塊の世代」と呼ばれる、1947年~1949年生まれの70代の方々ですね。

還暦過ぎの60代の方でも、「聞いたことはある」範囲のことも多いかも知れません。

ましてや50代の方々は、よほど関心が無いと、知らないことの方が多いでしょうね。

40代以下の方々は、「初めて聞いた」ということが圧倒的に多いのではないでしょうか。

 

精神保健福祉士を目指す学生は、精神医療史の勉強も一応してきていると思います。

下記の用語のうち、どれだけ知っているでしょうか?

たぶん、現在の法律に載っている制度やサービスの用語は、目にしているでしょうが。

まじめに受験勉強をしていても、およそ聞いたこともない事柄も多いでしょう。

国家試験では取り上げられない、教科書にも載らない、歴史的な事柄なので当たり前です。

それだけ、国家が必要とする専門職の知識は、保守に偏重しているということですね。

でも本当は、未来を担う若い世代にこそ、知っておいてほしい事実ではあります。

 

「温故知新」の言葉通り、古いものの中に、新しい知見が秘められていることがあります。

歴史を軽んじ笑う者は、結局同じような過ちを繰り返すことにもなるでしょう。

歴史から「何をしなければいけないのか」を考え具体化を図ることも大事でしょうが。

少なくとも、「何をしてはいけないのか」を歴史から学ぶことが大切でしょう。

 

綺麗事だけでは済まない、この国の精神医療の歴史的経緯と現実を、まずは知るために。

改革が志向されながらも、未解決のまま放置されている事柄と課題を、押さえるために。

そして、現行法に縛られない発想で、精神医療の抜本的変革の方途を、考えるために。

ぜひ手に取って、どこからでもいいから、読んでみて欲しい、1冊です。

 

『精神医療改革事典』収載項目(五十音順)

※以下の収載項目のうち「⇒」が付くものは、参照先項目を示す。

 

ICJ(国際法律家委員会)勧告

ICD⇒操作的診断基準

赤堀裁判⇒島田事件

赤レンガ⇒東京大学精神科医師連合

アウトリーチ⇒ACT

ACT

アサイラム(asylum)

アドボケイト

Eクリニック問題⇒多機能型精神科診療所

医局解体闘争

池田小学校事件

石巻事件⇒少年法

いじめ

移送制度

イソミタールインタビュー⇒島田事件

イタリア精神科医療改革

一般入院⇒自由入院

医療観察法⇒心神喪失者等医療観察法

医療法施行規則⇒施設外収容禁止条項

医療法特例

医療保護入院

岩倉病院問題

インシュリンショック療法

インスティチューショナリズム

院内公衆電話⇒行動制限

インフォームド・コンセント

宇都宮病院問題

うつ病

臺(うてな)人体実験

SST

大阪教育大学附属池田小学校事件⇒池田小学校事件

大阪精神医療人権センター

オープンダイアローグ

オープンドア方式⇒開放化運動

オレム・アンダーウッド・モデル

オレム看護論⇒オレム・アンダーウッド・モデル

介護保険

開放化運動

開放療法⇒開放化運動

解離

鍵と鉄格子

画一処遇⇒開放化運動

隔離

学級崩壊

学校崩壊⇒学級崩壊

金沢学会

髪の花

烏山病院問題⇒生活療法

仮退院⇒精神衛生法・精神保健法・精神保健福祉法

看護師

患者クラブ活動

患者使役

岐阜大学胎児人体実験

境界例

共同作業所

京都大学精神科評議会

薬漬け⇒多剤処方

クラーク勧告

クリティカルパス

クロザピン

経済措置

K氏問題⇒岩倉病院問題

刑法改「正」・保安処分に反対する百人委員会⇒保安処分

欠格条項

ケネディ教書

権限委譲(県から市町村)

向精神薬

行動制限

公認心理師法

国際法律家委員会勧告⇒ICJ勧告

国民優生法

国立犀潟病院問題

国連ケア原則(「精神病者の保護及び精神保健ケアの改善の

ための原則」)

こころのケアチーム⇒災害精神医療・DPAT

5疾病・5事業

個人情報保護法

個別看護

コメディカル

災害精神医療

相模原事件

作業療法

作業療法士⇒作業療法

三枚橋病院

敷地内グループホーム⇒病棟転換型居住系施設

死刑制度

自己決定権

自殺

自殺予防総合対策⇒自殺

施設外収容禁止条項

施設コンフリクト⇒施設等建設反対運動

施設症⇒インスティチューソナリズム

施設等建設反対運動

私宅監置

自動車運転

自閉スペクトラム症⇒発達障害

島田事件

社会生活技能訓練⇒SST

社会的入院

十全会病院⇒精神科病院不祥事

重度かつ慢性

自由入院

就労支援

就労移行支援⇒就労支援

就労継続支援⇒就労支援

就労定着支援⇒就労支援

障害構造モデル⇒障害構造論

障害構造論

障害者基本法

障害者虐待防止法

障害者権利条約

障害者自立支援法⇒障害者総合支援法

障害者総合支援法

少年法

処遇困難者専門病棟

自立支援医療(精神通院医療)

新規抗精神病薬⇒向精神薬

新宿バス放火事件⇒保安処分

心神喪失者等医療観察法

身体拘束

人体実験

新谷訴訟⇒自動車運転

心理教育(psychoeducation)

診療看護師⇒看護師

診療報酬

スーパー救急

ストレスチェック制度

生活療法

生活臨床

精神医療国家賠償請求訴訟

精神医療人権センター

精神医療審査会

精神衛生実態調査

精神衛生法(体制)

精神科医全国共闘会議

精神科看護

精神科救急⇒スーパー救急

精神科デイケア

精神科特例⇒医療法特例

精神科七者懇談会

精神科認定看護師⇒精神科看護

精神科病院情報公開―630調査を中心に

精神科病院不祥事

精神科病棟転換型居住系施設

精神看護学⇒精神科看護

精神看護専門看護師

精神鑑定

精神外科

精神CNS⇒精神看護専門看護師

精神障害者権利主張センター・絆⇒精神障害者運動

精神障害者社会復帰施設(法定)

精神障害者福祉法

精神障害者保健福祉手帳

精神病質(psychopathy, psychopathic personality)

精神分裂病呼称変更

精神保健指定医

精神保健従事者団体懇談会

精神保健福祉士

精神保健福祉法

精神保健法

精神療養病棟

成年後見制度

説明と同意⇒インフォームド・コンセント

1968年革命

全国学園闘争

全国精神障害者家族会連合会

全国精神障害者地域生活支援協議会(ami)

全国「精神病」者集団⇒日本の精神障害者運動

全国青年医師連合

全国大学医学部医局解体闘争⇒医局解体闘争

操作的診断基準

相談支援専門員

措置入院

退院後生活環境相談員

退院促進

代弁者制度⇒アドボケイト

多機能型精神科診療所

多剤処方

脱施設化

地域移行支援

地域医療計画

地域精神医学会

地域包括ケアシステム

地域保健法

チーム医療(の推進に関する検討会議)

中間施設

長期在院

治療共同体

治療抵抗性⇒クロザピン、重度かつ慢性

通院医療費公費負担制度⇒自立支援医療

通信面会の自由⇒行動制限

DSM⇒操作的診断基準

DPAT(「こころのケアチーム」も含む)

鉄格子⇒鍵と鉄格子

電気けいれん療法(ECT)⇒電撃療法

電撃療法

電子カルテ

同意入院

東京地業研

東京都精神医療人権センター

登校拒否

当事者活動⇒ピアサポート

東大精神科医師連合

東北精神科医療従事者交流集会

特定行為研修制度

トリエステ⇒イタリア精神医療改革

日本児童青年精神医学会

日本精神科看護協会⇒精神科看護

日本精神科病院協会

日本精神神経学会

日本精神神経学会専門医

日本精神神経科診療所協会

日本精神病理学会

日本精神病理・精神療法学会⇒日本精神病理学会

日本の精神障害者運動

日本病院・地域精神医学会

日本臨床心理学会

任意入院⇒精神保健法

認知症

認知症呼称変更⇒認知症

脳生検⇒台人体実験

ノーマライゼーション

野田事件

パーソナリティ障害⇒精神病質

バザーリア法⇒イタリア精神医療改革

パターナリズム

発達障害

発達障害者支援法⇒発達障害

バンクーバーの地域精神医療と福祉

阪神淡路大震災

反精神医学

ピアサポート

ピアスタッフ⇒ピアサポート

東日本大震災と精神保健活動

ひきこもり

病棟転換型居住系施設⇒精神科病棟転換型居住系施設

貧困

不登校⇒登校拒否

べてるの家

ベルギー精神医療改革

保安処分

包括的暴力防止プログラム(CVPPP)

訪問看護

ボーダーライン⇒境界例

北全病院事件

北陽病院事件

保健師助産師看護師

保健所法改正⇒地域保健法

保護義務者⇒保護者制度

保護室

保護者制度

ホスピタリズム⇒インスティチューショナリズム

母体保護法

みちのくフォーラム⇒東北精神科医療従事者交流集会

無痙攣電撃療法⇒電撃療法

無認可共同作業所⇒共同作業所

やどかりの里

大和川病院事件

優生保護法

抑制⇒身体拘束

ライシャワー事件

リーガルモデルとメディカルモデル

臨床心理士⇒公認心理師法

労働安全衛生法⇒ストレスチェック制度

630患者調査⇒精神科病院情報公開

ロボトミー⇒精神外科

ワイアット裁判

Y問題

 

『精神医療100号:精神医療改革事典』

編集:第4次「精神医療」編集委員会

2020年12月25日、批評社より刊行

定価1,700円+税、156頁

ISBN:978-4-8265-0719-6

 


『精神障害者の地域移行支援』(中央法規)

2015年03月29日 14時05分42秒 | 出版案内

昨日、久しぶりの記事更新をしたばかりですが。

重ねて、書籍のご案内をさせて頂きます。

この度、中央法規から『精神障害者の地域移行支援』という本を出版しました。

 

批評社から刊行の『精神科病院脱施設化論』と同様に、博士論文をベースにしたものです。

やたら冗長になってしまった論文のうち、直接的支援にかかわるミクロ~メゾレベルの内容を収載しました。

精神科病棟での実践研究、効果的プログラム評価の研究、病院・地域連携パスの提案、等の内容となっています。

地域移行支援の現場で使えるノウハウやツールを紹介するよう、心がけたつもりです。

補章として、精神科病棟転換型居住系施設について触れています。

全体の構成の中ではやや異質ですが、とても大切な課題と考えたからです。

目次内容は、下記をご覧ください。

 

地域の支援機関では、今どうしても計画相談に力が注がれ、地域移行支援が後回しになっている状況がありますが。

病院と地域が同じ方向を向いて、なんとか集中的な取り組みが展開できないものかと考えています。

長期入院されている方々の退院・地域移行支援に、関心をお持ちの方にお読み頂ければ幸いです。

そして、各地の新しい試みや取り組みについて、ご教示願えると本当にありがたいです。

どうぞ、よろしくお願い致します。

 

☆ ― ☆ ― ☆ ― ☆ ― ☆ ― ☆ ― ☆ ― ☆ ― ☆ ― ☆ ― ☆ ― ☆

 

精神障害者の地域移行支援

~退院環境調整ガイドラインと病院・地域統合型包括的連携クリニカルパス

古屋龍太 著

中央法規 刊

 

目次

推薦のことば:門屋充郎

推薦のことば:高橋清久

◆序章:研究の背景と目的、全体構成               

第1節 研究の社会的背景

第2節 研究の目的と意義、方法

1.研究の目的

2.研究の意義

3.研究の構成と研究方法

第3節 倫理的配慮

第4節 分析の視点

1.退院後生活環境調整のアプローチ

2.退院後生活環境のツール

3.効果的な地域移行支援プログラム要素

4.連携協働のためのクリニカルパス

◆第Ⅰ章(病院編)退院支援プログラム開発と退院環境調整ガイドライン、支援ツールの開発 

緒言

第1節 研究の背景と目的

1.国立精神・神経センター病院の概要

2.多数の長期入院患者の入院する社会復帰病棟の概要

3.退院促進研究班の構成

4.研究の目的

5.研究の方法

6.実践研究の概要

第2節 モデル病棟における取組みの経過

1.チームアプローチと退院コーディネーター

2.退院準備プログラムの試行

3.モデル病棟におけるグループワークの展開

4.家族への心理社会的支援

5.不動産業者との連携による住居資源の開発

6.ケア会議による本人主体の支援体制の構築

7.退院後の継続的支援体制

8.退院支援プログラムのバリエーション

第3節 モデル病棟の変化と退院患者の転帰

1.PSWの病棟専従配置による変化

2.入院患者の変化

3.家族の変化

4.スタッフ側の変化

5.入院病棟の変化

6.退院患者の転帰

第4節 モデル病棟の実践から見えてきたこと

1.退院準備プログラムの評価

2.グループワーク・プログラム

3.PSWによるケアマネジメント

4.スタッフの意識と姿勢の変化

5.長期入院患者の退院

第5節 地域移行コーディネート・ガイドラインの提起

1.長期入院患者の退院を促進する要因

2.地域移行支援におけるケアマネジメント

3.対象:すべての長期入院患者

4.目的:自由な生活とリカバリーの実現

5.目標:リアルインパクトゴール

6.課題:リフレーミング思考

7.方法:連携チームアプローチ

8.手段:ツールの活用

9.手順:個別のケアマネジメント展開

10.視点の転換と意識改革

第6節 退院環境評価票の開発

1.環境の中の個人をとらえる視点

2.項目と基準

(1)退院環境評価票開発の経緯

(2)退院環境評価の項目

(3)退院環境評価の基準

(4)5施設における試行調査

(5)環境評価のためのアンカーポイント

(6)退院環境評価票による退院支援の評価

3.退院環境評価の可能性と限界

第7節 退院準備チェックリストの開発

1.開発の背景と目的

2.退院準備チェックリスト作成の方法と工夫

3.退院準備チェックリストの使用による効果

第8節 当事者が活用する退院支援のためのツール開発

1.生活準備チェックリスト

2.退院準備カレンダー・退院準備リスト等

3.社会資源ガイドブックの発行

4.地域生活支援ニーズ評価尺度

第9節 退院支援にかかわる今後の課題

1.施設症を超える当たり前の実践

2.ツール開発の成果と課題

3.残された課題

4.本研究の限界

◆第Ⅱ章(地域編)効果的な支援要素に基づく地域移行支援プログラムの開発

緒言

第1節 地域移行支援特別対策事業から個別給付化へ

1.一連の地域移行支援事業の流れ

2.地域移行推進員の業務と手順

3.個別給付化の概要

第2節 個別給付化後の地域移行支援事業の変化と評価

1.研究の概要

2.結果

3.考察

4.結論

第3節 長期入院患者の脱施設化を進める効果的な支援要素

1.インパクト理論によるアウトカム・ゴール設定

2.地域移行支援サービス提供体制の構築

3.地域移行を進める効果的支援要素の活用

4.効果的支援要素の形成評価

第4節 結論

1.現行制度の個別給付化の影響

2.地域移行を進める効果的支援要素

◆第Ⅲ章(連携編)病院と地域の包括的連携パスによる統合型地域移行支援アプローチの構築

緒言

第1節 研究の背景と課題、目的と方法

1.研究の背景と課題

2.研究の目的

3.研究の方法

第2節 精神科医療におけるクリニカルパスの意義

1.クリニカルパスの日本への浸透

2.クリニカルパスの精神科医療導入への抵抗と意義

3.精神科における地域連携パスへの危惧と可能性

第3節 病院・地域統合型包括的地域移行支援方策の提起

1.包括的地域移行支援連携クリニカルパスによる支援の流れ

2.地域移行パスのステージごとの支援ガイドライン

3.地域連携パスの位置づけ

第4節 結論

◆終章:結論

第1節 地域移行支援ソーシャルワークの戦略へ

第2節 本研究の成果

第3節 本研究の限界

◆補章:精神科病棟転換型居住系施設をめぐる議論の背景と経過

第1節 精神科病棟転換型居住系施設をめぐる議論の背景と経過

第2節 検討会報告書の概要と精神科病院の構造改革

第3節 関係者の反応と意見

第4節 考察ー病棟転換型居住系施設構想への評価と提案

第5節 結論

文献等一覧

索引

あとがき

著者略歴

 

出版元:中央法規出版、価格:3,672円(税込)、判型:A5判上製265頁、ISBN:978-4-8058-5138-8、初版発行:2015年3月25日

中央法規ホームページ→  http://www.chuohoki.co.jp/products/welfare/5138/

 


『精神科病院脱施設化論』(批評社)

2015年03月29日 11時41分09秒 | 出版案内

このブログの記事更新が、ずっと止まってしまっていて失礼しました。

数多の業務や諸事に紛れ、自身のブログは後回しにせざるを得ませんでした。

この度、ようやく一つ、3年がかりの大きな宿題が終わりました。

『精神科病院脱施設化論』という本を、3月10日、批評社から出版することができました。

 

昨年3月に最終提出した、博士学位請求論文の一部を、一冊の本としてまとめたものです。

2012年に一念発起して、論文全体の骨子を考え、執筆を始めました。

これまでに取り組んできた、調査データや報告がベースにあったとは言え、2年かかりました。

5人の審査委員の先生方に、厳しいダメ出しを頂きながら、何回も書き直しました。

 

結局、最終的にはA4版で370頁、約60万字に及ぶ長大な論文となりました。

そのままでは、どこの出版社も引き受けてもらえないため、全体を2分冊にしました。

メゾ~マクロレベルの主に政策にかかわる部分を、この『精神科病院脱施設化論』に収めました。

ミクロ~メゾレベルの直接的支援にかかわる部分を、別に『精神障害者の地域移行支援』として中央法規から出版しました。

この切り分け執筆が、思ったより難作業で、結局出版するまでにまた1年間かかりました。

 

内容は、以下の目次をご覧ください。

これまでに取り組んできた事柄を、自分なりには精一杯まとめたつもりですが。

論述の甘さなど自覚する課題も多く、種々のご意見・ご教示を頂ければと思います。

脱施設化=地域移行支援に関心を持つ全ての方々に、お読み頂ければ幸いです。

 

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精神科病院脱施設化論――長期在院患者の歴史と現況、地域移行支援の理念と課題

古屋龍太著

批評社刊

目次

推薦の言葉――「社会的入院」を終わらせるために 佐藤久夫

はじめに

◆序章:長期在院精神障害者の脱施設化にかかわる研究の背景と目的

第1節 研究の社会的背景

第2節 研究の目的と意義
1. 退院促進・地域移行支援にかかわる先行研究
2. 研究の目的
3. 研究の意義

第3節 研究の方法
1. 各章の構成と目的・研究方法
2. 用語の定義

第4節 倫理的配慮

第5節 分析の視点

序章【注】

◆第1章(歴史編):長期在院精神障害者に関わる日本の隔離収容政策の歴史的経緯と背景

緒 言

第1節 研究の課題と目的・方法
1. 研究の背景と課題
2. 研究の目的と意義
3. 研究の方法

第2節 精神障害者「入院促進」政策の歴史と背景
1. 日本の近代化と精神病者監護法・精神病院法の制定
2. 精神衛生法(1950年)による隔離収容政策の展開
3. 高度経済成長政策による精神障害者隔離収容入院促進

第3節 精神科医療における「社会復帰」活動の歴史と背景
1. 精神病院における社会復帰活動の萌芽
2. 報徳会宇都宮病院事件(1984年)と国際的な批判
3. 精神保健法(1987年)による入院形態の変更
4. 精神保健法の一部改正(1993年)と長期在院患者の滞留化

第4節 「精神障害者福祉」施策の歴史と背景
1. 精神障害者福祉法試案(1980年)による終末施設構想
2. 障害者基本法(1993年)制定による「精神障害者」の誕生
3. 精神保健福祉法の制定(1995年)による精神障害者福祉の出発
4. 居宅生活支援の誕生と「改革のグランドデザイン」(2004年)
5. 障害者自立支援法の制定と精神保健福祉法の一部改正(2005年)

第5節 長期在院精神障害者に対する「退院促進」事業の歴史
1. 精神障害者退院促進支援事業の始まり(2000年?)
2. 精神障害者地域移行支援特別対策事業(2008年?)
3. 地域移行・地域定着支援とアウトリーチ支援へ(2010年?)

第6節 諸外国における精神保健医療改革
1. 北米における精神保健医療改革
2. イギリスにおける精神保健医療改革
3. イタリアにおける精神保健医療改革
4. 日本との比較における精神保健医療改革の可能性

第7節 考察
1. 日本の隔離収容入院医療政策
2. 高齢化が進む長期在院精神障害者

第8節 結論

第1章【注】

◆第2章(理論編):長期在院精神障害者の現況と退院阻害要因、地域移行支援の理念

緒 言

第1節 長期在院精神障害者の現況
1. 精神科病院における長期在院精神障害者の現況
2. 長期在院精神障害者の定義
3. 「受入条件が整えば退院可能な患者群」の数
4. 長期在院化する精神疾患を有する知的障害者
5. 救護施設における脱施設化の現況と課題

第2節 長期在院精神障害者の退院を阻害する要因
1. 退院を阻害する個体要因と環境要因の複合
2. 患者に起因する退院阻害要因:退院できない患者
3. 家族に起因する退院阻害要因:退院を拒む家族
4. 病院に起因する退院阻害要因:施設症化した病院
5. 地域に起因する退院阻害要因:貧困な地域
6. 行政に起因する退院阻害要因:不作為の国家
7. 退院阻害要因の除去

第3節 長期在院精神障害者に対する地域移行支援事業所の取り組み
1. ハウジング・ファーストの取り組み実践
2. モチベーション・サポートの取り組み実践
3. 病院と地域のリンケージシステムの取り組み実践

第4節 長期在院精神障害者に対する精神科病院の取り組み
1. 社会復帰活動として取り組まれた退院支援
2. 病院内システムの変革と退院支援
3. 住居プログラムと連動した退院促進と病院のダウンサイジング
4. 精神障害者退院支援施設

第5節 考察
1. 「施設症」と精神科病院の現実
2. 社会正義と地域移行支援の理念
3. 開かれたトポスにおける生活支援

第6節 結論

第2章【注】

◆第3章(調査編):精神障害者地域移行支援事業の取り組み状況に関する実態調査

緒 言

第1節 研究の背景
1. 地域移行支援事業が精神科病院に与えた影響
2. 一連の地域移行支援事業の退院実績評価

第2節 精神障害者地域移行支援事業所の現状と課題
1. 研究の概要
2. 結果
3. 考察と結論

第3節 都道府県における精神障害者地域移行支援事業の実施状況と課題
1. 都道府県・政令市調査の概要
2. 国統計による全国の地域移行支援事業の実施状況
3. 結果と考察
4. 結論

第4節 長期在院患者及び病棟職員の地域移行に関わる意識の調査
1. 研究の背景と課題
2. 研究の目的と方法
4. 考察――精神科病院職員と入院患者の意識の乖離を中心に
5. 結論

第5節 結論

第3章【注】

◆終章(総合考察):長期在院精神障害者の脱施設化戦略のベクトル

第1節 脱施設化の戦略に向けて

第2節 長期在院精神障害者の脱施設化戦略の前提
1. 脱施設化の目的・目標の共有
2. 隔離収容政策の歴史認識の共有
3. 精神保健医療福祉をめぐる状況認識の共有
4. 基本理念を共有するための論点
5. 共有されるべき行動原理(理念)
6. 専門職の視点と意識の変革

第3節 自治体レベルにおける社会資源整備

第4節 日本国が果たすべき脱施設化政策
1. 長期在院精神障害者の脱施設化を推進する政策
2. 精神科病棟転換型居住施設構想

第5節 本研究の成果と限界

終章【注】

◆資料編

【資料1】「効果的な退院促進支援プログラム全国実情把握調査」ご協力のお願い
【資料2】効果のあがる退院促進支援プログラムに関する施設調査票
【資料3】精神保健福祉士等に対するヒアリング調査概要

初出一覧
引用文献
筆者の関与する本論文にかかわる研究班報告書等

あとがき

出版元:批評社、価格:3200+税円、判型:A5判320ページ上製、ISBN:978-4-8265-0611-3、初版発行年月:2015年3月10日

批評社ホームページ→ http://www.hihyosya.co.jp/ISBN978-4-8265-0611-3.html