前半で私が演奏するのは、まずは連弾です。
ルロイ・アンダーソンソン(1908〜1975)の管弦楽曲の連弾編曲から3曲です。
アンダーソンはアメリカの作曲家で、今年没後50年の記念イヤーに当たります。
軽快で楽しくユーモアに溢れた曲をたくさん作っています。
ハーバード大学修士、ニューイングランド音楽院で学び、言語学者でもあったようです。
今回は、中でもよく演奏される楽しい曲を3曲選びました。
ワルツィング・キャット
1950年作曲。
邦題は「踊る仔猫」で、ネコが駆け回る様子を表しています。
猫の鳴き声を模した音、ピアノでは出しにくですが、そういう音や、ピョンピョン飛び跳ねる様子を描き、最後は犬に吠えられて逃げ出します。
シンコペーテッド・クロック
1945年作曲。
ちょっと調子はずれな時計を表しています。
時計の音をウッドブロックで演奏しますが、時々リズムが乱れることでコミカルでユーモラスな感じを表現しています。
タイプライター
1950年作曲。
実際のタイプライターで一緒に演奏されることもよくあるようですが、タイプライターのキーをタイプする音や、行末までタイプしたことを示すチーンという音や紙を固定するシリンダーを先頭に戻す時に出る音などを打楽器で入れることもあります。
今回の演奏でも、ベルやウッドブロック、トライアングル、ギロ、カウベルなどを使って楽しく演奏しようと思っています。
芥川也寸志の24の前奏曲
芥川也寸志(1925〜1989)は作曲家であり指揮者でもありました。
芥川龍之介の三男です。
今年生誕100年記念で、曲集を取り上げてみようと思いました。
[大バッハ(J.S.バッハ)にならって、ハ長調から出発し、同名調をともないながら5度ずつ上り、24曲で5度圏をひとめぐりする。
曲名も大バッハにあやかって「24の前奏曲」。
おたなたちも24曲を通じて、その楽しみを子供達と共有できるような音楽にしようと努めた。(一部抜粋)]
と、楽譜の初めに記載されています。
1979年作曲。
ショパンの黒鍵エチュード
ショパン(1810〜1849)は、練習曲を27曲作っています。作品10が12曲、作品25が12曲、遺作が3曲です。
1929年、19歳でワルシャワ音楽院を卒業したショパンは、ウィーンへ旅行した際に思いがけず2回の演奏会を開くことができました。
ウィーンの聴衆の多くを魅了することができましたが、当時、叩きつけるような派手な演奏が普通だったウィーンでは、ショパンの繊細な音は、弱々しいとか頼りないとか評する人もいて、勉強が足らないと感じたショパンは、練習曲の作曲を始めました。
ピアノの性能が良くなって表現の可能性が広がっていた頃で、ショパンのピアノ奏法はリストでさえ最初は理解できなかったほど型破りで、技術的に大変難しかったようです。
しかし、ショパンのこのピアノ奏法がピアノの新たな魅力を引き出し、この後の時代の発展へとつながるのです。
作品10の12曲は、1829〜1832年に作られ、リストに献呈されています。
第5番変ト長調「黒鍵」は1839年作曲。
ショパン自身はこの曲を、「黒鍵で弾く以外には、あまり意味がない」と語ったとか。
右手は和音で弾く一ヶ所だけに白鍵を弾く以外は全て黒鍵です。