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マスミンのピアノの小部屋

ピアニスト兼ピアノ指導者松尾益民が、ピアノや教育、世の中の出来事など日々感じることを、徒然なるままに綴ります。

J.S.バッハとイタリア協奏曲について

2025-07-03 16:57:56 | 音楽
5日のリサイタルでは、J.S.バッハのイタリア協奏曲で開始します。
J.S.バッハは、1685年3月21日生まれで、1750年7月28日に亡くなりました。
今年は、生誕340年記念の年です。
まぁ350年とかではなくちょっと中途半端と言えばそうですけど、同年生まれのヘンデルとD.スカルラッティも記念イヤーです。
J.S.バッハの家系は音楽家がたくさんいて、一番有名なのがJ.S.バッハなのですが、バロックから古典派の間に彼の息子たちもそこそこ名を残しているので、区別するため、「J.S.」を付けるのです。
この生地では、面倒なので、「バッハ」とのみ記載します。
昔、短大で音楽史を教えていたことがあって、たぶんあまり関心がない学生たちにもわかりやすく興味を持ってもらうために、おもしろい…と言うかへぇ~というような話を織り込んでいました。
最初の奥さんマリア・バルバラはバッハが35歳の時に亡くなるのですが、仕事で家を離れていた間に亡くなって、4人の子どもが残されていました。
翌年、ソプラノ歌手だったアンナ・マグダレーナと再婚するのですが、この2人との結婚で合計20人の子どもが生まれました。
早世した子供も結構いたようです。
人数までは調べていませんけど。
男の子は6人で、そのうち5人が音楽家になったとのこと。
アンナ・マグダレーナは自身がソプラノ歌手だったこともあって、バッハの楽譜の写譜をしたり、いろいろ協力していたそうです。

バッハは、仕事を求めてドイツ国内であちこちに行きますが、ワイマール、ケーテン、ライプツィヒの3か所が主な滞在地で、ライプツィヒが一番長く、最期を迎えた場所でもあります。
ライプツィヒでは毎週のようにカンタータを作曲していたという話は、バッハの多作を語る上ではなるほどと思われることです。
また、バッハは、けっこう怒りっぽかったようでもあります。
そのためあちこちでもめ事を起こした…ようですが、たぶん、こと音楽に関して妥協できなかったのかも…と。
20歳の時に、当時のオルガンの名手だったブクステフーデのオルガンを聴くために、アルンシュタットから北ドイツのリューベックの聖母マリア教会に赴いたのですが、4週間の休暇申請をしていたのに、戻ってきたのは4か月後だったとか。
それだけ魅力的なオルガン演奏だったわけです。
ブクステフーデもバッハを気に入り、自分の娘を嫁に…と勧められたそうですが、バッハよりかなり年上で、好みではなかったので断ったとかという逸話もあります。

バッハの作品数は、1100曲を超える数らしいですが、作品番号として用いられているのは、BWV(Bach Werke verzeichnis)で「バッハ作品目録」です。
バッハの人生20歳ごろからの活動として65歳まで、約45年間にこれだけの作品を生みさせるのは、すごいとしか言いようがありません。
ベートーヴェンがバッハを「小川(Bach)ではなく大海(Meer)」と呼んだのは、なかなか含蓄のある比喩と言われています。
どんな作曲家の作品であっても、それを弾いていると、よくこんな曲が作れるなぁと、尊敬と言うか感心と言うか崇敬と言うか、そんな感情がわいてきます。

バッハは生涯ドイツで暮らしたので、イタリアには行っていませんが、今回演奏する「イタリア協奏曲」は「イタリア趣味による協奏曲」が正式名で、イタリアの太陽や明るさを感じさせる曲となっていますが、「イタリア趣味」というのは、ヴィヴァルディに代表される協奏曲の様式がイタリア的…ということなのでしょう。
協奏曲をチェンバロだけで表現するというこのイタリア協奏曲は、ヴィヴァルディの協奏曲を研究した結果生まれたもので、ブランデンブルク奏曲なども同様です。



好きな曲を弾く

2025-03-06 01:57:31 | 音楽
私がライフワークとして弾こうと思っているピアノ曲は、ショパン、ドビュッシー、プーランクの曲なのですが、ドビュッシー、プーランクについては、一応全曲演奏を目指しています。
ショパンについては、まぁ全部は無理だろうな…ということで、可能な限り、ですね。
…で、好きな作曲家の作品とは言え、全部が好きというわけでもなく、弾きたくないなと思う曲もありますが、それはそれとして、とりあえず取り組むわけです。
すると、弾くときにおもしろいか…という問題にあたるわけで…。
弾いていくうちに、それなりの面白さを発見するのですが、心から幸せだと思って弾いてるわけでもなく、上記3人の作曲家以外でも弾きたい曲はあるし、聴衆受けする曲もあるわけで、毎回、プログラムには頭を悩ませるわけですね。
久しぶりに、ベートーヴェンの27番のソナタを弾くことにして、この2楽章が実はすご~く好きなので、気持も乗るのですね。
それが、自分で思っている以上にこの曲を弾いているときに、幸せだと感じて、そう思える曲を弾けるというのが、また幸せなことだと気が付くわけです。
ベートーヴェンは不得意だと思っているのですが、それでもすご~く好きな曲にベートーヴェンが入っているわけで、まぁ何と言うか…です。
ワルトシュタインの3楽章(2楽章ともいう)と31番の1楽章、それとこの27番の2楽章ですね。
プーランクなら、ノクターンの1番…か。
他にもいろいろありますけど。
…というようなことを、最近思っています。




ドビュッシーの月の光

2023-09-21 01:11:23 | 音楽
9月と言えば、十五夜やお月見、中秋の名月…などという言葉が思い浮かびます。
秋は空気が澄んでいて月も適度な高さがあるため、月がくっきりと夜空に映し出されるようです。
今年の中秋の名月は9月29日だとか…。
というわけで、9月のコンサートと言えば、月に関係する曲…ドビュッシー(1862~1918)の月の光…ということになってしまいます。
23日のミュジカポール・コンサート13では、ラフマニノフの前奏曲集から3曲弾くのですが、時間調整的な必要からもう1曲…と思ったら、月だなぁ…と選んだ曲。

という前置きはさておき、この月の光は、4曲から成るベルガマスク組曲の中の第3曲です。
ベルガマスクとは何ぞや…というのは、なかなか難しいところですが、ドビュッシーがイタリア留学時代に訪れたベルガモ地方の印象から作られたものということで、ベルガマスクだ…と。
ベルガモという町は、幻想的な雰囲気を持つ美しい町とのこと、月の光の曲に、特にそういう雰囲気が反映されているのかもしれません。
ヴェルレーヌの詩に「月の光」があって、この詩を元にドビュッシーも2度にわたって歌曲を作っています。
ベルガモの町はイタリア喜劇に登場する道化師の一つであるアルルカンを生んだ町であり、ヴェルレーヌの詩には、楽しげに歌い踊りながら仮面の下に悲しみや郷愁の念を隠している道化師の姿が映し出されています。
よって、ベルガマスク組曲の月の光にも、そういう情緒が含まれているのかも知れません。
この組曲は、1890年から書き始め、1905年に出版されるまで、詳細は分からないものの、かなり推敲されたようです。
月の光を浴びた幻想的な風景が思い浮かぶような、とても美しい曲です。
私の中のイメージとしては、ターナーの絵「ルツェルン湖の月明かり」のような風景か…。



楽譜を読むということ

2023-08-28 00:47:36 | 音楽
ピアノにしろオーケストラにしろ、いわゆるクラシック音楽と呼ばれる範疇にある音楽の演奏は、楽譜に書かれたことを再現する…ということなので、いかに楽譜をきちんと読むかはとても重要なことです。
楽譜を読む、いわゆる「譜読み」というのは、音の高さや長さや強さなどを読むばかりではなく、作曲者が書いている情報から、どういう演奏をしなければいけないかを読み取ることでもあるわけです。
スラーや休符はつい見落としがちですが、これもきっちり読まないと…なのです。
当たり前ですけど。
それがきっちりできてない人は意外に多い…かも。
生徒さんで、以前習っていた先生から、ショパンの曲で楽譜に指示がなければ自由に弾いていい…と教わったという人がいました。
初めにテンポ表示が書いてある以外、ほぼ何も書かれていない曲で、テンポを自由に変えて弾いたり、あちこちで大袈裟なrit.(リタルダンド だんだん遅く)をしたりするので、それはまずいでしょう…と。
…で、上記の自由に弾いていいという話になるわけで…。
基本的に何も表示がなければ始めた速さで弾くのは当然のことで、その中で、気持ちが高まるとか気分を変えるとか、自然に多少の変化が出る場合もありますけど、明らかに変えるのはおかしいし、フレーズの変わり目ごとにrit.をするのも流れを妨げるし…。
書いてないことを勝手にするのはよくないとお伝えしました。

楽譜を読むというのは本当に難しいことで、まずはどの楽譜を使うかということから始めますが、これが意外に難しいのです。
今では当たり前になっていますが、ベートーヴェンやモーツァルトのソナタなど、原点版で弾くわけで、私が子供の頃に流布していた、いわゆる日本版のソナタアルバムなどは、ロマン派の時代に、時代の要求に合わせてさまざまな表情記号が加えられた楽譜だったのです。
その楽譜で弾くと、時代様式や作曲家の意図を無視した演奏になってしまうのですね。
ショパンの楽譜も、ショパンの友人だったフォンタナが改訂したバージョンもあったりして…。
使う楽譜を決めると、書かれているフレーズを示すスラーやスタカートなどのアーティキュレーションにはかなり気を使います。
日頃から、楽譜に書かれたことをいかに表現するかということにかなり悩みながらピアノに向かっている身としては、気軽に、自由に弾いていいよという先生がいることには大いに驚いた…という話でした。


ドビュッシーのマズルカ

2023-01-13 14:29:34 | 音楽
マズルカと言えば、ショパンを思い浮かべますが、ドビュッシーにも1曲だけマズルカという題名の曲があります。
マズルカは、ポーランドの民族舞踊、舞曲で、3拍子で、2拍目、3拍目にアクセントがある…というのが大まかな概念ですが、ドビュッシーのマズルカにそれはありません。
3拍子ですが、ボロディンやショパンの影響はありつつも、ドビュッシーにとって、1拍を2分割するリズムと3分割するリズムを入れ替わり立ち替わり使うための口実だった…という説があります。
1890年ごろの作曲と言われていますが、1881〜82年という説もあります。
いろいろな経緯があって、ドビュッシーが反対しているにもかかわらず、1903年にアメル社から出版されました。
軽やかに弾けば、2分半くらいの短い曲です。

ちょっと進んで

2022-11-15 01:14:04 | 音楽
今日も練習と作業。
作業はなかなか遅々として進まずですが、
それでもちょっとは進んだか…という感じ。

最近、2台ピアノのコンサートのための練習で、様々な作曲家の作品を弾いていると、音の使い方はやはり時代が新しくなるにつれて複雑になっているし、作曲家それぞれの個性があって、実に面白いな…と。
時代様式も考えつつ弾くわけですが、それにしてもラヴェルの音使いにはホントに苦労させられます。
どこからあの発想が出てくるのか??です。
この音の重ね方や動きはどうやったら思いつくのかなと思うのですが、特に、ラ・ヴァルスはやはり原曲がオーケストラだというのが大きくて、管楽器や弦楽器ではさらっと流せる音が、ピアノだと複雑になって、オケを聞いてみるとあぁそういう流れね…とわかるわけです。
作曲家自身が2台ピアノに編曲していると言っても、やはり原曲はオーケストラなわけで、オーケストラ的な発想で作られていることには変わりがないのです。
初めからピアノ曲として作っていたら、どんな風になっていたのかな…と、考えないでもない…。



サティのピカデリー

2022-10-22 23:50:37 | 音楽
ピカデリーは、元々は、エリック・サティ(1866〜1925)が1901年に作曲したオーケストラ用の曲で、1904年にピアノ曲に編曲され、よく演奏されるようになりました。
最近では、某車のCMで冒頭の部分は頻繁に聞かれますね。
というので、今回、全体を演奏しようと思ったのです。
マーチという副題がついているのはどういう意味かなぁ…と考えるのですが、今一つわからないですね。
ピカデリーというのは、ロンドンのピカデリー・サーカスのことらしく、人通りの多いにぎやかな場所の様子を表しているのかな…と。
ケークウォーク(アメリカの黒人の間に発祥した2拍子の軽快なダンス)のリズムが利用されています。

サティは、フランスノルマンディ地方のオンフルールで生まれ、一時期パリのモンマルトルに暮らしていたこともありました。
モンマルトルのサティが住んでいたアパルトマンには、サティの名前のプレートが貼り付けてあります。
オンフルールは、モネの印象日の出が描かれたル・アーブルと、セーヌ川を挟んで向かい側といえる位置にある街です。

サティの曲は音符が多くなく、一見易しそうに見えるし、耳に馴染みやすいのですが、跳躍やオクターブは意外に弾きにくいですね。
でも、楽しく…です。


ショパンのスケルツォ第1番

2022-10-22 14:14:19 | 音楽
スケルツォという言葉の意味は、冗談とか滑稽な、ですが、器楽曲のタイトルとして使われるスケルツォには、そういう意味はありません。
歴史的には、歌曲から始まったものが、ハイドン、ベートーヴェンなどが交響曲の第3楽章に、メヌエットの代わりに使うようになり、だんだん器楽曲としても定着していきます。
器楽としては、「急速なテンポによるドラマティックな曲」というような意味で使われています。
ショパンは、怒りや絶望の気持ちを折り込んだ曲に、カプリッチォほど軽くなく、ポーランド的でもない曲にスケルツォという言葉を使ったようです。

ショパン(1810〜1849)のスケルツォは4曲あり、今回演奏するのは第1番で、1831年に作曲され、翌年パリにて再び手を加えて完成されました。
激しい憤りを叩きつけるようなffの不協和音に始まり、渦巻く嵐のような音型がつづき、まるで闘争をしているかのような激しい曲想が続き、その後、対照的に、優しくささやくように歌われる中間部が続きます。
伴奏部の音程が広いのも特徴ですが、メロディが非常に美しく、魅力的な部分です。
これは、ポーランドにクリスマスキャロルとして伝わる子守歌がモティーフになっていて、祖国への思いがうかがわれます。
その後、再び嵐の部分が、冒頭より短く繰り返され、勢いを増して情熱的に締めくくられます。

曲の構成としては、やはり若い時の作品だからか、スケルツォでも他の曲でも、もっと後に作られたものに比べるとシンプルで、わかりやすい構成になっています。
ショパンの作品は、同じフレーズでも後で出てくると伴奏形が変わっていたり、メロディが変奏されていたりしますが、この曲は、一部に変化があるだけで、ほぼそのまま繰り返されています。
曲の構成は単純でも、嵐のような激しさは、やはり若い時期に弾くといいのかな…というのを感じますね。
この激しさに、感情的についていけない気がして、なかなか取り上げなかったのですが、これでやっとスケルツォも4曲全部弾くことができました。

エネスクのトッカータ

2022-09-19 23:30:45 | 音楽
24日のミュジカポール・コンサート10で弾く曲は、ドビュッシーの映像第1集の3曲と、エネスクの組曲第2番から、第1曲のトッカータです。
エネスクという作曲家について、以前このブログに記載した時は、「エネスコ」としていましたが、それはフランス語表記で、母国であるルーマニアの表記だと「エネスク」となるようです。
なので、エネスクと表記していきます。
エネスクは、長くフランスにも暮らし、パリのペール=ラシェーズ墓地に埋葬されているので、フランス語表記もありというわけです。
曲については、以前記載したもののほぼコピーになりますが、もう一度…。

ジョルジュ・エネスク(1881~1955)は、10代のころから、ヴァイオリニスト、指揮者として演奏活動を行い、その活動が華々しかったからか、作品の方は陰に隠れていたようです。
ピアノの演奏にも優れていて、この曲を初演したのもエネスコ自身でした。
たぶん、一般的には名前を知らない人の方が多いでしょう。
組曲第2番は、4つの曲から成り、そのうち3曲は音楽雑誌が企画した国際作曲賞に応募するために、1903年に書かれたものです。
トッカータのみが、ルーマニアにいた1901年に作曲されていて、残り3曲とともに「鳴り響く鐘」という題名をつけて応募されたようです。
トッカータは特に、鐘のイメージが豊かな響きの中に上手くとけあっていて、華やかな印象を与え、また心に響くものとなっています。

初めてこの曲を聴いたのは、ピアノ名曲集みたいなCDの中にあって偶然だったのですが、とてもインパクトが強かったのを覚えています。
シャルル・リシャール=アムランのCDに入っていたのを聴いてさらに感動しましたが、ホントにいい曲です。



ショパンの幻想即興曲を

2022-03-10 02:05:58 | 音楽
先日のミュジカポール・コンサートで、ショパンの幻想即興曲を弾いた人がいて、そう言えば私はいつ弾いたかな…と。
2019年の3月10日でした。
この頃は、ほとんど、客席数280のイーグレひめじのあいめっせホールでの開催だったのですが、3月はいろいろ行事があってホールが取れないことがよくあり、この年もダメだったので、地下にある、客席数120のアートホールでの開催でした。
まだコロナの前だったので、シニアの方々がたくさん足を運んでくださっていました。
前の方の席を好んでお座りになるので、動画にたくさん写ってますね。
プロムナード・コンサートを始めたのはこのホールで、お客さまが近くてアットホームな感じも良かったですね。
始めた頃は20人程度のご来場だったのが、このホールでは狭く感じるようになり、広いホールでの開催になりました。
実は、2020年3月もこのホールでの開催で、コロナのためにホールが閉鎖になり、初めてコンサートを中止にしたのでした。
地下であることに加えて、やはり小さいホールですから、何かの折には中止になるリスクがありますね。
散歩がてら気軽にクラシック音楽を…というコンセプトで開催しているプロムナード・コンサートですから、このホールは利用料も安いし、ピッタリだったのですけど、まぁいろいろ変化していくわけです。
音響のいいホールができて今年からは新しいアクリエでの開催になっていますが、4月17日の第60回には、フルコンサートグランドピアノが複数あるというメリットを生かし、2台ピアノの曲もプログラムに組んでいます。
第60回については後でアップしますが、とりあえず幻想即興曲、まぁ大きな破綻もなく弾いていたのでYouTubeで限定公開でアップしました。
大学入学直後にいきなり弾かされて苦労したのですが、その後何度もコンサートなどで弾く機会がありましたね。
その都度新鮮な気持ちで弾くようにはしていますが…。

Chopin幻想即興曲