ここ何週間かずっと悩まされていたことがあるんだけど、ようやく決着がついた。
私は病院でぷらぷらと事務をやって小遣いもらって生活しているのだが、ときどき日本語の話せない患者さんが来ると「リカコを呼べ」ということになって、予約センターや会計窓口や診察室なんかに呼び出されて通訳っぽいことをしている…ということは先日書いた。
難しいことを言われてわからないことも多いので、そういう場に出て行くのはイヤだが、日本に誰も頼る人がいなくて困った挙句に独りで電話をかけたり来院したりしているのだろうから、こんなメチャクチャ英語でも少しでも助けになればと思ってやっている。
外国人の応対をしていて「困るなぁ」と思うのは、うちの病院が全予約制で外来診療を行っていることで、その日の昼過ぎに「怪我シタンダケド、イマスグニドクターニ会エルカ?」と電話がかかってきても、患者さんの希望通りにはなかなかコトを進められない。市の急患診療所があるんだからそこに行ってほしい…と思うのだが、患者さんからすれば医師が1人しかいない診療所よりも60人いる大病院の方が英語が通じる可能性は高いだろうと容易に想像できるわけで、英語が通じたほうが安心感も全然違うはずだ。
で、この人は「皮膚科にかかりたい」と言って電話をかけてきた。話を聞くとこの人はレストランのコックで、どうやら手を火傷したらしいのだが、「皮膚科皮膚科」とうるさいので翌日朝いちばんで皮膚科に来てもらうことにした。で1週間後、また同じ人から「目が痛くなった」と電話がかかってきたので、眼科の予約を受けつけた。
ここまでは「なんでオマエのとこの病院はいつも予約いっぱいと言うばかりで患者を診ないんだ!!」とか英語でまくしたてられる他は、ごく普通のやりとりだった。
このあと、この人が診察室で「ドクターの言っていることがわからない!」と騒いだので、私が呼ばれた。ここで顔を合わせてしまったことがそもそもの間違いだったんだろうなぁ…と今では思っている。
病院にかかってくる電話はまず電話交換手が出て用件を聞いてから院内の職員につながれるが、英語の電話は無条件で私に転送されてくる。次にこの人から電話がかかってきたときは、「ベリー シリアス プロブレム」を抱えていると訴えるので、また病気になったかガイジン!と思って聞いてみると、「周りに助けてくれる人が1人もいないから、どうしようもなくなって以前助けてくれたアナタに電話している。日本語で意味のわからない言葉があるから意味を教えてほしい。」と言う。もう完全に病院にかけてくる用件ではない。
「あなたが病気だったら助けたいと思いますが、そうでないのならここに電話をかけてきても困ります。」
「だから、周りに助けてくれる人がいないからどうしようもなくアナタに電話したと言っている。緊急のことなんだ。」
「……。で、その意味のわからない言葉って何ですか?」
これがまた、クダラナイ言葉なのだ。コニチハ、オセワニナッテマス、チョーシハドーデスカ、ゴリョーショークダサイ、ドーゾオキヲツケテ。どう考えても緊急性が微塵も感じられない。こんな電話が毎日のようにかかってくるようになった。こっちは「もしかしたら今日こそ重病になったか!」と思って応じているので「もっとニホンゴができるようになりたい」なんて用件は大迷惑だ。
「前にもお伝えしましたけど、あなたのおっしゃっていることは明らかに病院に関係がないことです。」
「関係ないかもしれないが、今の自分にはアナタしか頼れる人がいない。アナタは外国語ができる者の1人として、言葉の通じない国で困っている外国人を見て見ぬふりができるのか。今日助けてほしい事柄は紙に書いてあるので電話では説明ができない。仕事が終わったら外で待っているから会ってほしい。」
「ここに電話をかけてくるのはお門違いです。外国人を助けたり日本語を教えたりするNPO法人がいくつもありますので、そちらに問い合わせていただきたいのですが。」
「それをアナタは紹介してくれるのか。いつ?」
いかん、やぶへびだった。
仕事が終わって病院のすぐそばで待ち伏せされるのはコワすぎたので、駅前のショッピングセンターで待っていてもらうことにした。普通のワケわからんオヤジだったら絶対会わないけど、うちの病院にカルテがある患者さんだし、現地の言葉がわからずに困り果てた経験は私にもあるので、ムゲに断ることができなかった。
「どこかでお茶でも」
「早く家に帰って家族に夕飯を作らなければならないので、立ち話で済ませていただけませんか。」
「ニホンジンは親切な人ばかりだが、親しくなりたいとこちらが望んでも返ってくる答えはいつも「時間がない、忙しい」だ。こう言って断る理由を説明してほしい。」
そんなこと言われたって、ガイジンのワガママにいちいちつきあってられるほど暇じゃないからな普通の人は。
「仕事がある人や家庭がある人にあかの他人が「自分のために時間を割け」と言ってもムリです。本当に自分の時間も確保できないほど時間がないんですから。あなたの休日にレッスンをやっているNPO法人がみつかったので資料を持ってきました。「困ったことがあったら相談してください」とも書いてありますので、ここに通ったらいかがですか。」
「僕は日本語学校に行きたいと言っているのではない。アナタに助けてほしいと頼んでいるんだ。困っているときには助けてほしいし、毎週時間を決めて僕に日本語を教えてほしい。」
結局、真意はそこかよ。
「私はフルタイムで仕事をしてますし、家では主婦です。片道1時間半かけて通勤しています。ノータイムという言い訳はずるいとあなたは言いますが、私には会社と家族以外の人を気にかける時間的余裕がありません。国際親善に貢献したい、世界中に友達がほしいと望んで活動している人がちゃんといるのですから、そういう人を探して頼んで下さい。」
もうね、わかってるんですよ、日本語の勉強というのは口実でしかなく、よーするにニホンジンのカノジョがほしいんでしょ?だったら「もう自分は肉体関係なんてどうでもいいから人が本当に困っているときに助けてくれるような精神的なつながりを求めている」とか回りくどいこと言ってんじゃねーよ。
「僕は毎日毎日「日本で友達がほしい」と祈り続けてきた。そうしたら偉大なるアラーの神がアナタを僕の前に遣わしてくれた。だからアナタには僕を助ける義務がある。」
アラーの神に遣わされた覚えなんてねーよ、と言いたかったが、彼らのものの考え方ではそうなのだろう。私は、イスラムはイスラムってだけでだいっ嫌いなのだが、ガイジンと宗教がらみの話をし始めるとメンドクサイので言わなかった。
「あなたは友達がほしいと言って全くお門違いの病院に問い合わせてきました。普通、そんな用事で病院なんかに電話はしないと思います。だから私は、病院に電話してくるほどあなたにはツテがなくて困っているのだと判断しました。だから、困ったときにどこに相談すべきかをあなたに助言したかったし、外国人と仲良くしたいと考えている日本人にあなたを紹介したいと思って今日ここに来ました。私は日本語の仕組みを知らないので外国人に日本語を教えることはできませんし、時間がないので定期的にあなたに会うこともできません。でも、あなたが日本語を学びたいと考えているのは承知しましたので、私のできる範囲であなたを助けることを約束します。」
全くウザイのだこのオヤジ。「約束」とか「誓う」とかそういう言葉を出してきて他人を拘束しようとする。私は腕をつかまれて「約束する」と言うまで放してもらえなかった。そんなことばかりしているから皆に「時間がない」と言って逃げられるのだ。
翌日、また電話がかかってきた。
「アナタが紹介してくれた日本語学校に電話をかけたけど、英語が通じない。僕が参加したいと言っているのを伝えてくれるか。」
外国人を相手にする学校で英語すら通じないとはどういうことだ?と思ったけれど、これは仕方ない。電話した。
で、次の要求。
「日本語学校に行って、説明を一緒に聞いてくれるか。」
なんでここまで?!と思ったが、日本語学校の方からも一緒に来てほしいみたいなことを言われたので、仕方ない、半休を取って行って来た。義理でここまでやってきたけれど、そろそろケジメもつけなければならないし。
「えーっと、リカコさんはこちらの方の奥様ですか?」
「違います。」(即答)
この日本語教室は本当に全く英語が通じないようで、教室についての説明など、もらう資料をすべて私が訳して、記入しなければならなかった。たしかに外国人=英語という考え方はフェアではないので、日本語教室がすべての外国人にとって公平な立場をとっているのは理解できるけど、でも本当にそれで外国人を助けられるのか?
ま、そんなことはおいといて、レッスンについての説明を受けた。「それでは、座っているだけでもいいので参加してください」とヤツは先生に言われた。よし、帰ろう。
「なぜアナタは帰るのか。」
「あなたに日本語教室を紹介しましたので、私の役目はもうこれで終わりです。たくさん勉強してください。」
「今日、仕事が終わったらショッピングセンターで会えるか。」
「すみませんが、今日はあなたのために会社を午前中休んだので残業をしなければなりません。9時過ぎるので会えません。」
「9時過ぎても待ってるから。」
「帰りが遅くなるのは嫌なので会いたくありません。」
「明日は」
「ノー。」
「明後日は、来週は?」
「もうあなたとは会いたくないんです。」
「どうして?僕たちは友達ではなかったのか」
「私はあなたと友達になった覚えはありませんので。」
「約束したじゃないか」
「外国人の生活支援をするNPO法人をあなたに紹介すると約束しました。あなたは病院に電話をかけてくるほど周りに助けてくれるお知り合いがいないそうなので、あなたをこういう人たちに引き合わせるのは自分の使命だと思って今日までやってきました。でも前に言ったとおり、私はあなたと友達になる時間的余裕も精神的余裕もありません。」
「今までアナタは僕が頼むことを何でもニコニコしながら引き受けてくれた。アナタがこんなに親切なのは、僕を好きだからではなかったのか。あなたはただのヘルパーのつもりだったのか。」
「そうですけど。」
ガイジン、逆上。
っていうか、知るかよそんなこと。勝手に勘違いしたそっちが悪い。日本語教室の説明も終わったし、登録用紙の記入も終えていたので、あとのお守りは先生に任せて「仕事抜けてきてますので~」と言って逃げてきた。ガイジン、グッバイ!
が、簡単にサヨナラできると思ったら大間違いで、その後も「友達になった覚えはない。私はあなたと友達になりたいと思わない」ということを何度も説明しなければならなかった。うざい。
そして、先日。
「日本語教室でテキストブックを買って来いと言われた。駅前の三省堂書店に行ったら売り切れだった。店員に、1週間待って取り寄せるか、他の書店で買ってほしいと言われた。N駅とB駅にある三省堂書店には置いてあるそうだ。わざわざ仕事を休んで遠くの知らない街に行って本を探すのは僕にとって時間のムダなので、アナタが行って買ってきてくれるか。駅前のショッピングセンターで会ってお金を払うから。」
このガイジン、何にも学んでないな。
「あなたにとってそれが時間のムダなら、電車代かけておつかいしてまたあなたに会わなければならないコトこそ私にとっては時間のムダです。自分が面倒だからって誰かにやってもらおうなんて、なんて自分勝手なの?それに、ただ漠然とテキストブックと言われても、どの本なのか私にはわかりません。」
で、しばらくたって
「Minna no Nihongo I Honsatsu Roma-ji Ban (Main Textbook Romanized version), 2,625yen, ISBN code: 4-88319-166-4」
「それだけわかっているなら、アマゾンで買ってください。」
「どうしてアナタはそんなに冷たいんだ。べつに僕は無理強いをしてるわけじゃないんだから、そこまでつっけんどんにしなくたっていいじゃないか。アナタはそんなに美人なのに、不機嫌な顔をしていたら台無しだ。頼むから僕のために笑ってくれ。プリーズ!」
誰のせいで不機嫌になってると思ってんだこのクソガイジン!!
だいたい、ニコニコ笑って引き受ければ「あなたが好きよ」ってことになるんじゃないか、お前のものの考え方によると!
好きか他人かの二元論でしか人間関係を考えられないなんて、なんて視野が狭いんだ。
もう、こんなの、ふっきれました。コイツが今後どんなに重病になっても無視します。電話も出ません。「友達ができないのなら僕はパキスタンに帰る!」とか言ってないで本当にさっさと帰ってください。
…ということを独りで悶々と抱え込んでいたのだが、イライラが募って他人にあたるようになってきたので、とうとう彼(←夫)に全部を打ち明けた。あなたの知らないところで他の男性と会ってごめん。
「そいつコワイよ。お前そのうち刺されるよ!気をつけた方がいい!」
「うーん、それはないでしょ。」
「どうして」
「だって、ヤツはイスラム教徒だし。」
「どうしてイスラム教だと「それはない」んだ!!」
「だって、「汝殺すなかれ」とか言うじゃん。あ、それ聖書か。でも大丈夫。イスラムは聖書も尊重するから。」
「お前の言ってることはワケがわからーん!!ヤツら自爆テロとかやってんだぞ!!君を殺して自分も死ぬみたいなコトやらかしてんだぞ!」
「そこまでバカじゃないっしょ?外国で働いてるエリートなんだから。」
と強がっていたのだが、ヤツの仕事が休みで日本語教室があった今日、電話が何度もかかってきた(出てないけど)。
うーん、本当に刺されるか私?
私は病院でぷらぷらと事務をやって小遣いもらって生活しているのだが、ときどき日本語の話せない患者さんが来ると「リカコを呼べ」ということになって、予約センターや会計窓口や診察室なんかに呼び出されて通訳っぽいことをしている…ということは先日書いた。
難しいことを言われてわからないことも多いので、そういう場に出て行くのはイヤだが、日本に誰も頼る人がいなくて困った挙句に独りで電話をかけたり来院したりしているのだろうから、こんなメチャクチャ英語でも少しでも助けになればと思ってやっている。
外国人の応対をしていて「困るなぁ」と思うのは、うちの病院が全予約制で外来診療を行っていることで、その日の昼過ぎに「怪我シタンダケド、イマスグニドクターニ会エルカ?」と電話がかかってきても、患者さんの希望通りにはなかなかコトを進められない。市の急患診療所があるんだからそこに行ってほしい…と思うのだが、患者さんからすれば医師が1人しかいない診療所よりも60人いる大病院の方が英語が通じる可能性は高いだろうと容易に想像できるわけで、英語が通じたほうが安心感も全然違うはずだ。
で、この人は「皮膚科にかかりたい」と言って電話をかけてきた。話を聞くとこの人はレストランのコックで、どうやら手を火傷したらしいのだが、「皮膚科皮膚科」とうるさいので翌日朝いちばんで皮膚科に来てもらうことにした。で1週間後、また同じ人から「目が痛くなった」と電話がかかってきたので、眼科の予約を受けつけた。
ここまでは「なんでオマエのとこの病院はいつも予約いっぱいと言うばかりで患者を診ないんだ!!」とか英語でまくしたてられる他は、ごく普通のやりとりだった。
このあと、この人が診察室で「ドクターの言っていることがわからない!」と騒いだので、私が呼ばれた。ここで顔を合わせてしまったことがそもそもの間違いだったんだろうなぁ…と今では思っている。
病院にかかってくる電話はまず電話交換手が出て用件を聞いてから院内の職員につながれるが、英語の電話は無条件で私に転送されてくる。次にこの人から電話がかかってきたときは、「ベリー シリアス プロブレム」を抱えていると訴えるので、また病気になったかガイジン!と思って聞いてみると、「周りに助けてくれる人が1人もいないから、どうしようもなくなって以前助けてくれたアナタに電話している。日本語で意味のわからない言葉があるから意味を教えてほしい。」と言う。もう完全に病院にかけてくる用件ではない。
「あなたが病気だったら助けたいと思いますが、そうでないのならここに電話をかけてきても困ります。」
「だから、周りに助けてくれる人がいないからどうしようもなくアナタに電話したと言っている。緊急のことなんだ。」
「……。で、その意味のわからない言葉って何ですか?」
これがまた、クダラナイ言葉なのだ。コニチハ、オセワニナッテマス、チョーシハドーデスカ、ゴリョーショークダサイ、ドーゾオキヲツケテ。どう考えても緊急性が微塵も感じられない。こんな電話が毎日のようにかかってくるようになった。こっちは「もしかしたら今日こそ重病になったか!」と思って応じているので「もっとニホンゴができるようになりたい」なんて用件は大迷惑だ。
「前にもお伝えしましたけど、あなたのおっしゃっていることは明らかに病院に関係がないことです。」
「関係ないかもしれないが、今の自分にはアナタしか頼れる人がいない。アナタは外国語ができる者の1人として、言葉の通じない国で困っている外国人を見て見ぬふりができるのか。今日助けてほしい事柄は紙に書いてあるので電話では説明ができない。仕事が終わったら外で待っているから会ってほしい。」
「ここに電話をかけてくるのはお門違いです。外国人を助けたり日本語を教えたりするNPO法人がいくつもありますので、そちらに問い合わせていただきたいのですが。」
「それをアナタは紹介してくれるのか。いつ?」
いかん、やぶへびだった。
仕事が終わって病院のすぐそばで待ち伏せされるのはコワすぎたので、駅前のショッピングセンターで待っていてもらうことにした。普通のワケわからんオヤジだったら絶対会わないけど、うちの病院にカルテがある患者さんだし、現地の言葉がわからずに困り果てた経験は私にもあるので、ムゲに断ることができなかった。
「どこかでお茶でも」
「早く家に帰って家族に夕飯を作らなければならないので、立ち話で済ませていただけませんか。」
「ニホンジンは親切な人ばかりだが、親しくなりたいとこちらが望んでも返ってくる答えはいつも「時間がない、忙しい」だ。こう言って断る理由を説明してほしい。」
そんなこと言われたって、ガイジンのワガママにいちいちつきあってられるほど暇じゃないからな普通の人は。
「仕事がある人や家庭がある人にあかの他人が「自分のために時間を割け」と言ってもムリです。本当に自分の時間も確保できないほど時間がないんですから。あなたの休日にレッスンをやっているNPO法人がみつかったので資料を持ってきました。「困ったことがあったら相談してください」とも書いてありますので、ここに通ったらいかがですか。」
「僕は日本語学校に行きたいと言っているのではない。アナタに助けてほしいと頼んでいるんだ。困っているときには助けてほしいし、毎週時間を決めて僕に日本語を教えてほしい。」
結局、真意はそこかよ。
「私はフルタイムで仕事をしてますし、家では主婦です。片道1時間半かけて通勤しています。ノータイムという言い訳はずるいとあなたは言いますが、私には会社と家族以外の人を気にかける時間的余裕がありません。国際親善に貢献したい、世界中に友達がほしいと望んで活動している人がちゃんといるのですから、そういう人を探して頼んで下さい。」
もうね、わかってるんですよ、日本語の勉強というのは口実でしかなく、よーするにニホンジンのカノジョがほしいんでしょ?だったら「もう自分は肉体関係なんてどうでもいいから人が本当に困っているときに助けてくれるような精神的なつながりを求めている」とか回りくどいこと言ってんじゃねーよ。
「僕は毎日毎日「日本で友達がほしい」と祈り続けてきた。そうしたら偉大なるアラーの神がアナタを僕の前に遣わしてくれた。だからアナタには僕を助ける義務がある。」
アラーの神に遣わされた覚えなんてねーよ、と言いたかったが、彼らのものの考え方ではそうなのだろう。私は、イスラムはイスラムってだけでだいっ嫌いなのだが、ガイジンと宗教がらみの話をし始めるとメンドクサイので言わなかった。
「あなたは友達がほしいと言って全くお門違いの病院に問い合わせてきました。普通、そんな用事で病院なんかに電話はしないと思います。だから私は、病院に電話してくるほどあなたにはツテがなくて困っているのだと判断しました。だから、困ったときにどこに相談すべきかをあなたに助言したかったし、外国人と仲良くしたいと考えている日本人にあなたを紹介したいと思って今日ここに来ました。私は日本語の仕組みを知らないので外国人に日本語を教えることはできませんし、時間がないので定期的にあなたに会うこともできません。でも、あなたが日本語を学びたいと考えているのは承知しましたので、私のできる範囲であなたを助けることを約束します。」
全くウザイのだこのオヤジ。「約束」とか「誓う」とかそういう言葉を出してきて他人を拘束しようとする。私は腕をつかまれて「約束する」と言うまで放してもらえなかった。そんなことばかりしているから皆に「時間がない」と言って逃げられるのだ。
翌日、また電話がかかってきた。
「アナタが紹介してくれた日本語学校に電話をかけたけど、英語が通じない。僕が参加したいと言っているのを伝えてくれるか。」
外国人を相手にする学校で英語すら通じないとはどういうことだ?と思ったけれど、これは仕方ない。電話した。
で、次の要求。
「日本語学校に行って、説明を一緒に聞いてくれるか。」
なんでここまで?!と思ったが、日本語学校の方からも一緒に来てほしいみたいなことを言われたので、仕方ない、半休を取って行って来た。義理でここまでやってきたけれど、そろそろケジメもつけなければならないし。
「えーっと、リカコさんはこちらの方の奥様ですか?」
「違います。」(即答)
この日本語教室は本当に全く英語が通じないようで、教室についての説明など、もらう資料をすべて私が訳して、記入しなければならなかった。たしかに外国人=英語という考え方はフェアではないので、日本語教室がすべての外国人にとって公平な立場をとっているのは理解できるけど、でも本当にそれで外国人を助けられるのか?
ま、そんなことはおいといて、レッスンについての説明を受けた。「それでは、座っているだけでもいいので参加してください」とヤツは先生に言われた。よし、帰ろう。
「なぜアナタは帰るのか。」
「あなたに日本語教室を紹介しましたので、私の役目はもうこれで終わりです。たくさん勉強してください。」
「今日、仕事が終わったらショッピングセンターで会えるか。」
「すみませんが、今日はあなたのために会社を午前中休んだので残業をしなければなりません。9時過ぎるので会えません。」
「9時過ぎても待ってるから。」
「帰りが遅くなるのは嫌なので会いたくありません。」
「明日は」
「ノー。」
「明後日は、来週は?」
「もうあなたとは会いたくないんです。」
「どうして?僕たちは友達ではなかったのか」
「私はあなたと友達になった覚えはありませんので。」
「約束したじゃないか」
「外国人の生活支援をするNPO法人をあなたに紹介すると約束しました。あなたは病院に電話をかけてくるほど周りに助けてくれるお知り合いがいないそうなので、あなたをこういう人たちに引き合わせるのは自分の使命だと思って今日までやってきました。でも前に言ったとおり、私はあなたと友達になる時間的余裕も精神的余裕もありません。」
「今までアナタは僕が頼むことを何でもニコニコしながら引き受けてくれた。アナタがこんなに親切なのは、僕を好きだからではなかったのか。あなたはただのヘルパーのつもりだったのか。」
「そうですけど。」
ガイジン、逆上。
っていうか、知るかよそんなこと。勝手に勘違いしたそっちが悪い。日本語教室の説明も終わったし、登録用紙の記入も終えていたので、あとのお守りは先生に任せて「仕事抜けてきてますので~」と言って逃げてきた。ガイジン、グッバイ!
が、簡単にサヨナラできると思ったら大間違いで、その後も「友達になった覚えはない。私はあなたと友達になりたいと思わない」ということを何度も説明しなければならなかった。うざい。
そして、先日。
「日本語教室でテキストブックを買って来いと言われた。駅前の三省堂書店に行ったら売り切れだった。店員に、1週間待って取り寄せるか、他の書店で買ってほしいと言われた。N駅とB駅にある三省堂書店には置いてあるそうだ。わざわざ仕事を休んで遠くの知らない街に行って本を探すのは僕にとって時間のムダなので、アナタが行って買ってきてくれるか。駅前のショッピングセンターで会ってお金を払うから。」
このガイジン、何にも学んでないな。
「あなたにとってそれが時間のムダなら、電車代かけておつかいしてまたあなたに会わなければならないコトこそ私にとっては時間のムダです。自分が面倒だからって誰かにやってもらおうなんて、なんて自分勝手なの?それに、ただ漠然とテキストブックと言われても、どの本なのか私にはわかりません。」
で、しばらくたって
「Minna no Nihongo I Honsatsu Roma-ji Ban (Main Textbook Romanized version), 2,625yen, ISBN code: 4-88319-166-4」
「それだけわかっているなら、アマゾンで買ってください。」
「どうしてアナタはそんなに冷たいんだ。べつに僕は無理強いをしてるわけじゃないんだから、そこまでつっけんどんにしなくたっていいじゃないか。アナタはそんなに美人なのに、不機嫌な顔をしていたら台無しだ。頼むから僕のために笑ってくれ。プリーズ!」
誰のせいで不機嫌になってると思ってんだこのクソガイジン!!
だいたい、ニコニコ笑って引き受ければ「あなたが好きよ」ってことになるんじゃないか、お前のものの考え方によると!
好きか他人かの二元論でしか人間関係を考えられないなんて、なんて視野が狭いんだ。
もう、こんなの、ふっきれました。コイツが今後どんなに重病になっても無視します。電話も出ません。「友達ができないのなら僕はパキスタンに帰る!」とか言ってないで本当にさっさと帰ってください。
…ということを独りで悶々と抱え込んでいたのだが、イライラが募って他人にあたるようになってきたので、とうとう彼(←夫)に全部を打ち明けた。あなたの知らないところで他の男性と会ってごめん。
「そいつコワイよ。お前そのうち刺されるよ!気をつけた方がいい!」
「うーん、それはないでしょ。」
「どうして」
「だって、ヤツはイスラム教徒だし。」
「どうしてイスラム教だと「それはない」んだ!!」
「だって、「汝殺すなかれ」とか言うじゃん。あ、それ聖書か。でも大丈夫。イスラムは聖書も尊重するから。」
「お前の言ってることはワケがわからーん!!ヤツら自爆テロとかやってんだぞ!!君を殺して自分も死ぬみたいなコトやらかしてんだぞ!」
「そこまでバカじゃないっしょ?外国で働いてるエリートなんだから。」
と強がっていたのだが、ヤツの仕事が休みで日本語教室があった今日、電話が何度もかかってきた(出てないけど)。
うーん、本当に刺されるか私?