フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

咲かせたい花

2006年02月13日 21時36分21秒 | 第12章 逡巡編
この美しい花を咲かせたい
乱れるのなら・・・・・・泣くのなら・・・・・
このオレの腕の中で・・・・・・
そう祈りながらハルナの白い肌にオレの証しを刻み付けたかった。


オレは無造作に服を脱ぎ捨てると、体を隠す気力も無く波間にゆれる小鳥のようなハルナを抱き寄せた。

「怖い・・・・・・」

初めて彼女の口から恐怖が漏れた。

「大丈夫だよ。あの時は、ごめんな・・・・・・。
本当はあんな風に抱きたかったんじゃ・・・・・ない」

オレはハルナを慰める手を止め、彼女にキスをすると、甘い蜜の中にゆっくりと体を沈めた。

ハルナはつらそうに眉根を寄せると、体を弓形にしながらオレを受け入れた。

肩に、足に、手に、汗が流れ落ちる・・・・・・。

ハルナの口から甘い吐息が漏れ、オレの動きに反応し、乱れる。
そんな彼女が愛しくて、もっと泣かせてみたくなる。

「もっと、奥へ・・・・・・いい?」
ハルナは首を横に振ったが、構わず更に奥へと貫いた。

オレは彼女の小さな悲鳴を唇で吸った。
彼女の瞑った目からはみるみる涙が溢れてきた。

やり過ぎたかと一瞬ひやりとしたが、ハルナの細い腕はオレの背中にしがみつき離さなかった。
ほっとして、ハルナの揺れる胸を手で包み込むと、ゆっくりとオレは体を動かし始めた。
そして、まだ、十分に男の体に慣れていないハルナの体が壊れないよう優しくリズムを刻んだ。

暫くして、ハルナの口から初めて甘く切ない声が吐息に混じって洩れ始めていた。



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酔いしれて

2006年02月13日 15時35分36秒 | 第12章 逡巡編
ハルナの首筋にキスをしながら、彼女の胸を愛撫していた手を徐々に下へと這わせていった。
気付かれないように下着を脱がそうとして、失敗。
ハルナは恥かしそうに、足を閉じてしまった。

ヤレヤレ・・・・・・と、苦笑いしつつ、膝頭に手を添えると、ゆっくりと開き、その片足にキスをした。

そのまま指を滑らせ、何とか下着を脱がせることに成功したが、
「恥かしい・・・・・・」
と、ハルナはまた足を閉じようとする。

オレは慌てて、両手で押し開き、急いで唇を下へと滑らせ、花の中心を捕らえた。
ハルナの体が大きくうねり、「いや!いや!!」と喘ぎながら、上へ上へと腰をくねらせる。

いい加減、悪戯したい欲望に駆られ、殊更に大きな音を立ててハルナを貪った。

「いやっ!」
ハルナの体がぐんっと突っ張り、上へと大きく上体を反らせた。


ゴン!

と言う鈍い音がしたので、オレは慌てて上体を起こした。


「バカだなぁ。逃げるからだよ・・・・・・。大丈夫か?」
ハルナはベッドの木枠に頭をぶつけてその痛みで半泣き状態だった。
オレは笑いを堪えながら、彼女の腰に手を当てるとそのまま下へ引き下げた。

「よしよし・・・・・・」
そう言いつつ、ハルナにキスをして頭を擦りながら、彼女がそれに気を取られているうちに、今度はもう片方の指を花の中心に這わせ、更にその中へと滑らせていった。

ハルナの体が大きく弓なりになったかと思うと、ビクビクと震えた。
彼女の体は今にも溶けそうなほどに、しどけなく開かれていた。

オレは溢れ出す甘い蜜の滴りに翻弄され、ハルナの妖しくも美しい肢体に酔いしれていた。



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鍔迫り合い

2006年02月13日 10時00分48秒 | 第12章 逡巡編
ハルナにもっと触れたくて、感じさせて上げたくてオレは何度も挑んだ。
しかし、ハルナはなかなか体を預けてはくれない。

「お~い!頼むから、これ以上焦らさないでくれ!」
いい加減焦れてオレの方が音を上げた。
「そ、んなつもり・・・・・・ないも・・・・・・」
ハルナは声を詰まらせながら抗議した。
「だって、だって、かずに・・・・・・カズトが、『こんなにささやかな胸じゃ、ちっとも欲情しない』ってゆーから・・・・・・」

「ぷっ!」

オレは思わず噴き出していた。
あー、確かにオレ、そんなこと言ったっけか。

だけど、あれは自分に歯止めをかけるつもりで口からデマカセを言った訳で、あの時の言葉をまさかハルナがその通り受け止めていたとは・・・・・・。

「どうして笑うの?!」
ハルナは更に涙目になってオレを責めた。


「あ、いや。可愛いなぁとか思ってさ・・・・・・。
大丈夫!十分、ヨクジョーさせて貰ってマス」
そう言うと、ハルナの手首を掴み、ベッドの上に押さえつけると、長くてエロいキスをした。

最初は驚いて抵抗していたが、ハルナの体からは徐々に力が抜け、乱れたガウンが花のように開いた。
その時を逃さずオレは一気にガウンを剥ぎ取り、ちゃっかり体重をかけて、全身でハルナの抵抗を封じた。

「ずるい・・・・・・」
そう呟きながらも、やがてハルナは観念したようで、ぎこちなくオレの背中に手を回すと必死でキスに応え始めた。


キス、上手くなったよな・・・・・・。
改めてハルナの「女」の顔に狂喜する。

小鳥のように小さな息を弾ませながら、ハルナは、「カズトの、エッチ・・・・・・」と呟き、顔を火照らせた。


「これからもっとエッチなことがしたいんだけど・・・・・・」

耳元で囁くオレの言葉に、ハルナの体がぴくんと揺れた。



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夜を紡ぐ恋人達

2006年02月12日 22時13分38秒 | 第12章 逡巡編
長い夜になる・・・・・・。
そんな予感にオレの体が震えた。


顔は確かにオコチャマと見間違えることもありそうなベビーフェイスだが、この体は淫らなまでに「女」だ。
ハルナは着痩せする体型なのだと、この間、脱がしてみて初めて知った。
そして、今、それを改めて手にする悦びをオレは噛み締めていた。

しかし、その肝心のハルナは「恥かしい・・・・・・」と言っては、オレの指先を震える手で掴み阻んだ。
頑ななその手にキスをしながら、そっとガウンを開くと、数日前に降った雪のように真っ白な肌が露わになってきた。

柔らかな膨らみの先にある桜色の乳房に唇をあてがうとゆっくりと吸った。
微かにハルナの口から甘い吐息が漏れ、オレの唇から逃れようとするかのように体を捩らせる。

オレは仕方なく諦めて、もう一方の小刻みに震える乳房に手を這わせ愛撫した。
しかし、それすらも拒むようにハルナは体を捩らせる。


一抹の不安がオレを臆病にする。


「ハルナ・・・・・・。もしかして、怖い?」
ハルナは黙って首を振る。

「じゃぁ・・・・・・、恥かしい?」
今度は、潤んだ目でじっとオレの目を見つめ返した。

それか。

オレはほっとして、「んじゃ、やめるのやーめた」と笑い、ハルナは「そんな・・・・・・」と小さな悲鳴を上げ、瞳を潤ませた。

オレは胸を覆い隠していたハルナの手を少し強引に開き、音を立てながらキスの雨を降らせた。

ベッドの中でハルナの体が軽く弾み、くすぐったいと抵抗する。


それでも止めようとしないオレの頭を両腕で包むと、その胸の間に押さえつけた。
そこで、漸くオレは思惑通り彼女の胸を両手に収めることが出来、愛撫を始めた。

慌てたハルナは、両手をオレの手の下に滑り込ませようと格闘する。


恥かしがりにもホドがある・・・・・・。
少しだけ罰を与えようか・・・・・・と言った悪戯心が首をもたげたが、辛うじて耐えた。


オレ達の夜は始まったばかりなのだから・・・・・・。


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見つめ合う瞳

2006年02月12日 09時57分42秒 | 第12章 逡巡編
「お、女の子は色々準備があるんだから、30分で、なんて無理だよ」
ハルナは泣きじゃくりながらオレの胸を叩いた。
「う・・・・・・ん、そっかぁ。ごめんなぁ、せっかちで・・・・・・」
オレはハルナの腰に腕を回すと、強く抱きしめた。

それでさっき出れなかったのかと、早とちりした自分を笑った。

「だけど、オレが入ってから準備すればいいじゃん・・・・・・」
ハルナは、はっとした顔で「そっか・・・・・・」と1人頷いていた。
「待ちきれなくてシャワー浴びるなんてさ。ハルナのスケベ~」
「ち、違うもん!!!」
真っ赤になる彼女のうろたえ振りが可愛くて唇を啄ばんだ。

「じゃ、オレ、ちょっとフロントに行って来るよ」
「え!?なんで?」
「ドア、閉まっちゃったからさ。お前のことだからカードキーは中なんだろ?」
ハルナは真っ青になって、後ろを振り返りドアノブをガチャガチャと回し始めた。

「外からはカードキーがないと、開かねーんだよ」
オレはハルナのデコを指で弾くと、「こっから動くなよ」ともう一度キスをした。


オレはエレベーターの中で飛び上がりたい気持ちを押さえて、フロントまで走った。

スペアキーを貰い、部屋まで全速力で走った。
全てのことが夢のようで実感もなく、だけど嬉しくて仕方なかった。

そして、所在無くドアにもたれ掛かるハルナの前に立ち、彼女を抱きしめキスをすると、そのままキーを差し込んだ。

ドアを開け、ハルナを抱きしめたままヨチヨチとペンギン歩きをすると、ハルナが「変だよ。この歩き方」と恥かしそうに笑う。

オレ達はそのままベッドに倒れこむと、笑いながらお互いの瞳を見つめあいキスをした。

「かずにぃ・・・・・・」
オレは咄嗟にハルナの唇に指を立てた。
「頼むから、『かずにぃ』は止めてくれ。なんか、妹をヤッちゃうみたいで萎える・・・・・・」

困惑顔のハルナの頬を撫でながら、瞳を見つめた。
「カズトでいいよ」
「カズ・・・・・・ト?」
「まぁ、それでいっか」
「カズト?」
「うん?」
「この間、凄く恐くて、凄く痛かったの・・・・・・だから・・・・・・」

ハルナは思い出していた。
だけど、それでもオレを許して受け入れようとしてくれていたのか。

オレは、彼女が壊れてしまわないようそっと背中に手を回すと、
「ごめんな。今度は優しくするよ・・・・・・」
と、抱き寄せた。


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開かれた扉

2006年02月11日 22時46分45秒 | 第12章 逡巡編
オレは息を震わせながら、部屋のチャイムを押した。
ハルナが中から鍵を開けてくれることを祈り、数秒待った。

・・・・・・頼む!開けてくれ!

胃がキリキリと痛み出す。
だが、中から鍵が開く気配は無かった。

これで最後だと自分に言い聞かせ、2度目のチャイムを鳴らした。
・・・・・・長い沈黙が流れたが、それでも扉が開くことは無かった・・・・・・。

頼む、ハルナ!ここを開けてくれ!
そして、オレにチャンスをくれ!

扉に額を付け目を瞑ると、知らず知らずのうちに呟いていた。

「頼む!頼む!!頼む!!!」

しかし、返って来たのは無言の拒絶だった。


オレは、もう笑うしかないと言った感じで「ははっ」と自嘲すると、重い足を引き摺って地下駐車場に通じるエレベーターに向かった。

そうだよな。
オレがあいつに付けてしまった心の傷を考えれば、これが当たり前だ。
あいつがまた以前のようにオレに接するようになったからと言って、オレを受け入れてくれるかと言えば、それはまた別の問題なのかもしれない。


だけど・・・・・・。


オレはエレベーターに乗り込むと、壁にもたれ掛かりそのままずるずると床にしゃがみ込んだ。

「やべっ・・・・・・」
なんか、らしくねぇけど、・・・・・・泣けてきた。

もう、永遠にあいつはオレを許して、受け入れてくれることはないような気がした。





だが、エレベーターの扉が後数センチで閉まるというところで、不意にオレはあいつの声が聞こえたような気がして、慌てて立ち上がり、今にも閉まりそうな扉をガッと抑えた。

エレベータの扉は開かれ、再びハルナへと通じる道を開けた。

「ハルナ!」

オレは、気のせいかもしれないが、何故だかお前が待ってくれてるような気がして、部屋を目指して走っていた。


オレが再びチャイムに手を伸ばしたその時、真っ白なガウンを羽織り、髪から水滴を滴らせながら、ハルナは慌てて部屋から飛び出してきた。

オレは驚きのあまり、チャイムを押そうとした手を「よ、よぉ?!」上げると、ハルナはポロポロと大粒の涙を流した。

そして、

「かずにぃのばか!!」

そう叫びながら、その華奢な体でオレを抱きしめたんだ。



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戻れない道

2006年02月11日 18時59分49秒 | 第12章 逡巡編
ホテルの中にある店に文庫本が売ってあったので手に取り、さして興味も惹かれなかったが時間潰しの為に買った。
ラウンジのソファに腰掛けると早速パラパラとページを捲り、そして1頁目に目を落とした。

だが、何度読んでも肝心の一行目が頭に入らない。
何度も何度もチャレンジしてみたところで溜息を吐き、腕時計を見た。

しかし、レストランを出てまだ5分と経っていなかった。

そこでもう一度気合を入れ直して本の一行目を読もうと集中した。
だが、やはり集中できず腕時計に目を落とす。

秒針は気忙しく動いていたが、長針の方はさっき見た時から1分も経っていない。

部屋に行くまでの30分がとてつもなく長い時間に感じられた。
「何やってんだよ、オレは・・・・・・」
本をぽんと手前のテーブルに放り投げると、両手で顔を覆い、上下に強く擦った。
こうすると脳まで酸素が行き渡り、落ち着くような気がする。

だが、心臓は正直だ。
「うるせぇよ・・・・・・」
自分の胸をドンと叩くと、ソファにもたれ掛かり、天井を仰ぎ見た。
天井にはまるでテレビで観たシスティーナ礼拝堂のような美しい天井画が描かれていた。

その絵の中のハルナに良く似た天使が柔らかな微笑をオレに投げ掛け、慈悲の手を差し延べているかのような錯覚を覚えた。

もしかしたら、あの時の選択は間違いだったのではないだろうか。
あいつはあの天使のように遠く手の届かない侵さざるべき聖域だったのではないか・・・・・・。
そーいや北尾も言っていたな。
侵さざる神聖な美少女だと・・・・・・。


オレは無意識にホテルの吹き抜けより更に先の何かを見ようと目を凝らしていた。




ピピピピピピ・・・・・・


30分経過を告げる腕時計のアラーム音にはっと我に還った。


ぼやけていた視点が天使の目線と交わった。
オレは祈るような気持ちで呟いていた。

「オレにチャンスをくれ」

オレは両足を踏ん張って立ち上がると、二度とは戻れない道を再び歩き始めた。



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2枚のカード

2006年02月10日 11時22分09秒 | 第12章 逡巡編
オフクロ達は夕飯の支度があるとかなんとかで、話し合いが終わると早々にホテルが用意したハイヤーで帰っていった。

オレとハルナは披露宴に出される予定のディナーを体験するためにホテルに残った。
やや暗めに落とされた照明の中、オレ達は美しい夜景が見えると言う窓際のテーブルに通された。

大きなグラスの中では、真っ赤な蝋燭に灯された炎がゆらゆらと揺らめき、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
ハルナは居住まいを正すと、「緊張しちゃうね」と肩をすくめた。

鮮魚のカルパッチョという前菜が出されるや、ハルナは両手を合わせ、目をキラキラと輝かせた。

「すごーい!綺麗だね~」
「式当日は殆ど食えないらしいから今のうち食っとけよ」

新しい皿が運ばれて来る度にはしゃぐハルナを見て、結婚式を挙げることにして良かったと心から思った。

美味しそうに食事を頬張るハルナとは逆に、オレは殆ど食事に手を付けられないでいた。
ハルナに退学のことを聞きたかったが、こんなに嬉しそうに食っているヤツの顔を曇らせたくない・・・・・・。
オレは聞きたい気持ちをワインと一緒に飲み下した。


そのこととは別にオレの心を曇らせるもうひとつの要因がこのオレの中にある。
食事が終わりに近づくにつれ手が汗ばみ、心臓がざわざわと騒ぎ出す。

大きく息を吸い、オレがポケットに手を忍ばせた時、食事を下げるウェイターが、

「お食事はお口に合いませんでしたでしょうか?」

と、不安げに質問をしてきた。

「あ、いや。美味しかったよ。・・・・・・今日はちょっと、腹の具合が良く無くてね」
オレは笑いながら、「あ、すみません。これももう下げて下さい」と謝罪した。

「かずにぃ、大丈夫?殆ど、手を付けてなかったけど・・・・・・」
心配そうな目をしながらハルナは食事をする手を置いた。

空になった皿をウェイターが下げ、彼女の前にはデザートのアイスクリームが置かれた。

「食べれないんだったら、何か他のものをお願いしようよ」
ハルナはウェイターからメニューを取り寄せると、
「ほら、お粥みたいなのもあるよ」
と、オレにメニューを差し出した。

オレは開かれたメニューを閉じるとナプキンをテーブルの上に置いた。
「かずにぃ?」
「・・・・・・お前が食べたい」
「え?!」

ハルナは目を見開くと、手に持っていたスプーンを床に落とした。
オレはポケットに入っていた2枚のカードをテーブルの上に置いくと、呆然としているハルナの目の前にすっと滑らせた。

「この番号の部屋を予約してある・・・・・・。お前は先に行って休んでて。30分したらオレも行く。さっきの答えがOKなら、中から鍵を開けてくれ。ダメだったら・・・・・・」

考えたくも無い回答だが・・・・・・。

「もし、ダメだったら、絶対に開けるな。・・・・・・オレは車の中で寝る。明日の朝には部屋に迎えに行くよ」

それだけ言うと、ドロドロに溶けたアイスクリームをじっと見つめているハルナを置いてオレはレストランを後にした。




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受難の花婿

2006年02月09日 21時39分29秒 | 第12章 逡巡編
女三人寄れば姦しい(かしましい)とは正にこのことだ。


テーブルに飾る花
椅子を飾る布キレ
食事
テーブルクロス
司会者
音響&照明
介添え
招待状
席札etc・・・


次々とテンポ良く出される課題を女共が嬉々としてこなして行く様はさながらプリティ・ウーマンだ。
オレはソファに体を沈め、リチャード・ギア宜しく「適当に決めてくれ」と手を回転させる。

ほぼオフクロとハルナの母親の希望が反映された披露宴プランが出揃った頃、入社6年目だと言う中堅ホテルマンが電卓を弾き出す。

「端数は当ホテルでサービスさせて頂きますとして・・・・・・」

有り難うございますと二人の母親は頭を下げる。

「487万円でございます」

オレは危うく口に含んだばかりのコーヒーを噴き出しそうになった。

よ、よんひゃくはちじゅうななまんえん!!


どこにそんなカネがあるんだよ!と口をパクパクさせながら立ち上がるオレを、オフクロはキッ!と睨みつけ、
「それで宜しくお願いします・・・・・・」
と、きっぱりとした口調で答えると、深々と頭を下げた。


オレはハルナとオバサンがトイレと言って中座した時、オフクロの肘を突付き、小声で話し掛けた。

(オフクロ、幾らなんでも487万円は高すぎだって!)
(安いくらいよ!3月と言ったら急過ぎてどこも埋まってるのよ!夜の挙式でも出来るだけマシよ。男だったら文句言わないの!!)
(でも・・・・・・それに、オフクロに悪いよ)
(・・・・・・何が?)
(金、出させるなんてさ)
(いつ出すっていったのよ)
(へ?今・・・・・・)

「出世払いに決まってるでしょー!しっかり勉強して、とっとといい医者になって、老後の資金、宜しくね!!」





・・・・・・オレはオフクロの底ヂカラを見たような気がした。



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野望

2006年02月08日 23時57分46秒 | 第12章 逡巡編
手を開いて制止するベルボーイの手前で車は止った。

冷や汗を拭いながら車から降り、回転扉の向こう側から出てきたホテルの従業員に謝った。
「いえ、お客様がご無事で何よりでした」
・・・・・・危なかった。


ともあれ、車を地下駐車場に入れると熟睡しているハルナを「着いたぞ」と揺り起こした。
オレはハヤル気持ちを抑え切れず、半分夢の中のハルナを抱き抱えると、全速力でホテルの中を駆け抜けていた。

息を弾ませながらフロントに立ち、キレイなお姉さんに「いらっしゃいませ」と祝福の微笑を投げ掛けられたその時だった。

「和人!遅かったじゃない!」
にこやかに手を振りながら声を掛けてきた中年オバサン二人にオレはギョッとなった。
「お、オフクロに(ハルナの)おばさん?!何で、こ、ここに?!」
「決まってるじゃない。ハルナちゃんに頼んでお前をここに連れ出してきて貰ったのよぉ」









・・・・・・オレの野望は瞬殺された。







それから、オフクロは何か喋りながらオレの腕を引っ掴んで説教部屋へと連行した。
だが、脱力し切ったオレの耳にはオフクロの声なんか届きゃしなかった。

「だいたい、あんたがしっかりしないからハルナちゃんが退学するハメに・・・・・・」

放心状態のオレだったが、耳だけは、「退学」の二文字を聞き逃さなかった。
「ちょっと、待て!オフクロ、『退学』って何だよ!」
「・・・・・・あんた、ハルナちゃんから聞いてなかったの?」

オレは首を横に振ると、オフクロの両肩に手を置いて、真剣に尋ねた。

「タイガクッて、学校を辞める事だよな?!」
「それ以外の何の意味があるのよ」
「・・・・・・聞いてない、ンですけど・・・・・・」
「だからね、これくらいしてあげたって罰が当たんないわよ」
「はっ?!何の話だよ?????」

常々思うが女ってのは何でこう話が噛み合わない生き物なんだ?!
自分勝手なことをつらつら喋りながら話しの落としドコロをつけて、無理矢理相槌を打たせる戦法にオレは数々の疑問を抱きつつも、頷いていた。

だが、この「退学」については話は別だ。
「ハルナが退学って・・・・・・」

そういい掛けた時、説教部屋の目の前にある白いカーテンがすっと開き、中からは真っ白な服に身を包んだハルナが恥かしそうに裾を持ちながら出てきた。

あの肩に掛かる位だった髪が上に上げられ、しかも真っ白な花まで持って、薄いヒラヒラの長い布を頭に乗っけている・・・・・・。

「どう、・・・・・・かな?」
ハルナははにかみながら手元の真っ白な花で顔を隠した。


オレは世界一呆けた顔でハルナに見惚れていた。
そして、「はぁっ!!」と忘れていた呼吸を始めると、この服が「ウェディングドレス」と呼ばれるシロモノであることを思い出した。


「かずにぃ?似合うかな?」
不安そうな顔でゆっくりと一週するハルナの初々しい花嫁姿を見て、オレは思ったんだ。

・・・・・・自己破産しちゃいけねぇ!って。




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