フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

引き寄せる手

2006年03月25日 00時04分34秒 | 最終章 エターナル
夜景が自慢のホテルでの披露宴が始まった。
招待客は東京の夜景を堪能しつつ、ホテル自慢の料理に舌鼓を打ち、会話に花を咲かせていた。
そうした中、司会進行も滞りなく進み、披露宴は終始和やかな雰囲気に包まれていた。

「ご夫婦で……」
「ご新婦様には……」
「お若い二人が……」
「夫として、妻として……」

祝福のスピーチを聞く度に、私はカズトの妻になるのだと言う責任の重さを強く意識し始めていた。
次第に冷たい汗が体を伝い、音と言う音が遠のいて行く。

タイミング良く、花嫁のお色直しを告げる司会の言葉にほっとし、介添さんに付き添われて席を立った。
「少し、横になって来いよ」
ヒソヒソ声で、体を気遣ってくれるカズトの優しさにそっと笑顔を返した。

あの日の電話以来、ずっと何かを言いたそうにしていたトモの横を会釈しながら通り過ぎ、足早に控え室を目指した。

控え室に入るなり、お色直しのドレスを着ている私の顔を見ながら、介添さんが心配そうに声を掛けてきた。

「まぁ……。大丈夫ですか?お顔が真っ青ですよ」
「……大丈夫です。でも……、5分だけ、横になってもいいですか?」

私はコルセットを緩め、ハイヒールを脱ぐと、予め持ち込まれていたベッドに横になった。
「妻……かぁ」
今日は、精神的にちょっと不安定かもしれない。
「妻」と言う司会や参列者さんからの言葉に、心が動揺する。

じんわりと滲む涙を慌てて拭いていると、突然、控え室に流れているクラシック音楽が耳に入ってきて、私は飛び起きた。

「美しく青きドナウ……」
堪らず涙が溢れ出た。

「トオル君……トオル君……」
小さな声で呟き泣いていると、目の前にすっと白いハンカチが差し出された。
まさか人がいたなんて……。
聞かれただろうか……。

ドキドキしながらも、「有り難うございます」とお礼を言い、何とかこの場をやり過ごそうと、ハンカチに手を伸ばした瞬間、その手は私の手を強く握り締めた。

「泣き虫で嘘つきな花嫁さん……。このワルツに想い出でもあるの?」

その聞き覚えのある声に驚き、顔を上げた。

「ト、トオル君!どうしてここに……」
息が止り、言葉が喉の奥に引っ掛かる。
「アメリカに帰るって……」

トオル君は、片膝をつき、私の手を取ると真剣な眼差しで手の甲にキスをした。
「君を取り戻しに来た」
トオル君の言葉に驚き、強く首を振ると、私は手を引こうと力を込めた。
だけど、彼はより強い力で私の手を握り締め、決して離してはくれなかった。

私は、泣きながらトオル君の指をひとつひとつ離し、解こうとした。
「だ、だめだよ。トオル君……。私と、トオル君は、きっと結ばれない運命だったんだよ」

トオル君は、迷いの無い強い瞳で私を見つめると、両手で私の手を包み込んでしまっていた。
「僕は、そう言う運命と死に物狂いで戦うつもりだ。僕はもう絶対に君を諦めない。
君が『YES』と言うまで、何度でも言うよ。
……僕と結婚して欲しい」




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