トオル君は、無理して窓の外を見ているみたいだった。
そして、私はそんなトオル君の横顔をずっと見ていた。
車内販売をする声が背後から聞こえた時、静かな車内で私のお腹がぐ~っと鳴る音が響いた。
慌ててお腹を抑える私の目とトオル君の目が合った。
くすくすと笑い声が周囲から聞こえて、真っ赤になっている私の顔をじっと見つめながら、
「それも、赤ちゃん?」
と、トオル君はチロンと横目に聞いてくる。
「イジワル……」
トオル君は手を挙げて、幕の内弁当を二つ買ってくれた。
朝、軽くつまんだ程度の食事しかしていなかった私は、蓋を開けると直ぐに卵焼きを頬張った。
すると、トオル君が箸でチョンと私のお弁当箱に卵焼きを入れてくれた。
次に、エビフライを頬張ると、エビフライが隣りからお引越してくる……
トオル君の気遣いが嬉しくて、お弁当を食べているトオル君をそっと見た。
「みんながとても心配してたよ。君の食が細いってね。……そうは、見えないけどね」
トオル君に言われて気付いた。
確かに、今まで食べれなかったのが嘘みたいに、トオル君の側ではハムスター並に食べていた。
トオル君は沢庵を箸で摘み口に運ぶと、静かに噛んでいた。
相変わらず音が出ない見事な神業だ。
私は、彼の隣りで相変わらずコリコリと音を立てて、沢庵を食べていた。
物凄い勢いで田園風景を走り抜ける新幹線の中で、私たちの時間が静かに流れていた。
トオル君の態度も、最初に比べると幾分和らいでいた。
良かった……
手の方もこの間より良くなっているみたいで、動きもスムーズになっている。
すると、突然、トオル君の手が止まった。
「僕の手は食べられないよ」
「ち、違うもん!私そこまで食いしん坊じゃない!!」
トオル君がようやくちょっと笑ってくれた。
それだけで、もう涙が出そうになる……
慌てて、目頭を抑えた。
「僕達は、どうやら皆川さんにハメられたみたいだね」
トオル君の言葉に顔を上げた。
「あの日、君に去られてから、僕は君の家に行ったんだ。そうしたら、君はもう片岡と暮らしていると君のお母さんに聞いた……」
トオル君は殆ど手を付けていないお弁当に蓋をすると、
「凄くショックだったし、途方に暮れたよ」
と話を続けた。
「帰ろうとした時、皆川さんに会ったんだ。
一緒に、喫茶店に入って、僕がハルナに会いたいと思っている事を話した……。
それで、今までの経緯をどこまで話したらいいのか話しあぐねていると、彼女は『全て知っている』と言ったんだ。
『明日、品川に来て。ハルナに会わせてあげる』ってね」
それが、まさかこうして2人で新幹線に乗る事になるなんて……
「君は皆川さんと京都に行っていることになってる」
驚いて顔を上げる私に、意外な事実を話し始めた。
「彼女は、君が結婚してしまう前に、本当は高3の修学旅行で行くはずだったこの京都旅行をプレゼントしようと、君のお母さんと密かに打ち合わせて、驚かせるつもりだったらしい……」
その言葉に私ははっとした。
「じゃぁ、あのバッグは……」
「そう、君の荷物が一式入っている」
私は、慌ててバッグを降ろし、ジッパーを開けた。
「宿は、皆川さんが2泊3日で既に予約済みだ」
2泊3日の言葉に私は動揺しながら、トオル君の顔を見た。
「このまま、京都で折り返すか、それとも降りるか。
君が決めるといい……」
彼は帰りの切符を私の手に握らせると、両手で私の手を強く握り締めた。
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そして、私はそんなトオル君の横顔をずっと見ていた。
車内販売をする声が背後から聞こえた時、静かな車内で私のお腹がぐ~っと鳴る音が響いた。
慌ててお腹を抑える私の目とトオル君の目が合った。
くすくすと笑い声が周囲から聞こえて、真っ赤になっている私の顔をじっと見つめながら、
「それも、赤ちゃん?」
と、トオル君はチロンと横目に聞いてくる。
「イジワル……」
トオル君は手を挙げて、幕の内弁当を二つ買ってくれた。
朝、軽くつまんだ程度の食事しかしていなかった私は、蓋を開けると直ぐに卵焼きを頬張った。
すると、トオル君が箸でチョンと私のお弁当箱に卵焼きを入れてくれた。
次に、エビフライを頬張ると、エビフライが隣りからお引越してくる……
トオル君の気遣いが嬉しくて、お弁当を食べているトオル君をそっと見た。
「みんながとても心配してたよ。君の食が細いってね。……そうは、見えないけどね」
トオル君に言われて気付いた。
確かに、今まで食べれなかったのが嘘みたいに、トオル君の側ではハムスター並に食べていた。
トオル君は沢庵を箸で摘み口に運ぶと、静かに噛んでいた。
相変わらず音が出ない見事な神業だ。
私は、彼の隣りで相変わらずコリコリと音を立てて、沢庵を食べていた。
物凄い勢いで田園風景を走り抜ける新幹線の中で、私たちの時間が静かに流れていた。
トオル君の態度も、最初に比べると幾分和らいでいた。
良かった……
手の方もこの間より良くなっているみたいで、動きもスムーズになっている。
すると、突然、トオル君の手が止まった。
「僕の手は食べられないよ」
「ち、違うもん!私そこまで食いしん坊じゃない!!」
トオル君がようやくちょっと笑ってくれた。
それだけで、もう涙が出そうになる……
慌てて、目頭を抑えた。
「僕達は、どうやら皆川さんにハメられたみたいだね」
トオル君の言葉に顔を上げた。
「あの日、君に去られてから、僕は君の家に行ったんだ。そうしたら、君はもう片岡と暮らしていると君のお母さんに聞いた……」
トオル君は殆ど手を付けていないお弁当に蓋をすると、
「凄くショックだったし、途方に暮れたよ」
と話を続けた。
「帰ろうとした時、皆川さんに会ったんだ。
一緒に、喫茶店に入って、僕がハルナに会いたいと思っている事を話した……。
それで、今までの経緯をどこまで話したらいいのか話しあぐねていると、彼女は『全て知っている』と言ったんだ。
『明日、品川に来て。ハルナに会わせてあげる』ってね」
それが、まさかこうして2人で新幹線に乗る事になるなんて……
「君は皆川さんと京都に行っていることになってる」
驚いて顔を上げる私に、意外な事実を話し始めた。
「彼女は、君が結婚してしまう前に、本当は高3の修学旅行で行くはずだったこの京都旅行をプレゼントしようと、君のお母さんと密かに打ち合わせて、驚かせるつもりだったらしい……」
その言葉に私ははっとした。
「じゃぁ、あのバッグは……」
「そう、君の荷物が一式入っている」
私は、慌ててバッグを降ろし、ジッパーを開けた。
「宿は、皆川さんが2泊3日で既に予約済みだ」
2泊3日の言葉に私は動揺しながら、トオル君の顔を見た。
「このまま、京都で折り返すか、それとも降りるか。
君が決めるといい……」
彼は帰りの切符を私の手に握らせると、両手で私の手を強く握り締めた。
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