トオル君は、それからやっぱり無口になった。
そして、ずっと私の手を握ったまま、窓の外を見ていた。
私はこの前、彼の元を去った時、とっくに決心していたはずだった。
でも、こうして彼の隣りにいるだけで、ぐらぐらと心が揺らぐ。
静かに進む新幹線の中で、私の思いは、赤ちゃんを堕ろそうと病院へ向かった日へと戻っていった。
私は、あの歩道橋の上で、彼だと思ったその影を必死に追い駆けて走った。
でも、そのヒトは別人だったんだ……
そして、あの日の事故をきっかけに、私は赤ちゃんを産む事を決意すると同時に、トオル君への想いを諦めたんだ……
なのに、彼はその歩道橋の上から私を見つけ、追い駆けてくれた……
欄干に手を掛け、コートを翻しながら橋から飛び降り、いとも簡単に不可能を飛び越えて、私の想いを抱きしめてくれたんだ。
途切れた時間が、時空を超えてその接点を見出し、動き始めたような気がして……
体が震えた……
やっぱり、トオル君を愛している自分に気付き……
心が震えた……
その熱い想いが、今も、私の心の中に燻って掻き乱す。
新幹線はあっと言う間に京都駅に滑り込み、私に決断を迫っていた。
トオル君は私の荷物を降ろし、私の肩を抱いてドアへと向かった。
ホームに降りている間も、彼はずっと私の手を握っていた。
降りたばかりの新幹線では清掃が始まり、全ての座席が東京に向けてくるりと方向転換を始めている。
乗車を許可する放送に、私はトオル君の指を解くと、ゆっくりと新幹線のドア口に立った。
トオル君は真っ直ぐに、怖いくらい真っ直ぐに私を見つめていた。
最後ぐらい、笑顔で別れたかった。
彼に笑った顔を思い出して欲しかったから……
だから、私は笑った。
「トオル君、ごめんね。やっぱり、私にはムリ……。ごめんね」
精一杯の笑顔で答えた。
「でも、トオル君に会えて嬉しかった……。一緒に、京都まで来れて、良かった……」
何か言わなくっちゃ……
最後なんだから、もっと違う……
そう、彼が後で思い出しても笑えちゃうくらいの笑顔で楽しい事とか、言わなくちゃ……
「意気地なしのハムスターは東京に帰るね……」
だけど、トオル君は笑っていなかった。
発車を告げる放送が入り、ベルが鳴る……
もう、後ほんの一瞬で、彼は永久に私の視界から消えてしまう……
この苦しみも後数秒で終る……
笑っていよう。
だからこそ、頑張って最後まで笑顔で別れよう。
このベルが鳴り終えたら、私達は終わる……。
私は必死で笑おうと、した。
手を振ろうと右手を挙げた瞬間、不意に彼は私の手を取り、物凄い力でぐいっと引き寄せた。
後ろの方で、ドアの閉まる音がする。
「こんなに泣いているのに、どうして別れられるんだよ!」
トオル君は、私を抱き寄せると、息が止まるくらいきつく抱きしめた。
「……選ばせてなんてあげないよ。君は自分に嘘をつくからね」
そう言って、すっぽりと私を包み込んだ。
私を置き去りにしたまま新幹線はゆっくりとホームを離れ、東京へ戻っていった。
私は彼にしがみつき、まるで子供のように、いつまでも大声をあげて泣きじゃくっていた。
↑「いま、会いにゆきます」で有名な♪アルファポリスです
↑私のお薦めのブログ、探してみてね♪
そして、ずっと私の手を握ったまま、窓の外を見ていた。
私はこの前、彼の元を去った時、とっくに決心していたはずだった。
でも、こうして彼の隣りにいるだけで、ぐらぐらと心が揺らぐ。
静かに進む新幹線の中で、私の思いは、赤ちゃんを堕ろそうと病院へ向かった日へと戻っていった。
私は、あの歩道橋の上で、彼だと思ったその影を必死に追い駆けて走った。
でも、そのヒトは別人だったんだ……
そして、あの日の事故をきっかけに、私は赤ちゃんを産む事を決意すると同時に、トオル君への想いを諦めたんだ……
なのに、彼はその歩道橋の上から私を見つけ、追い駆けてくれた……
欄干に手を掛け、コートを翻しながら橋から飛び降り、いとも簡単に不可能を飛び越えて、私の想いを抱きしめてくれたんだ。
途切れた時間が、時空を超えてその接点を見出し、動き始めたような気がして……
体が震えた……
やっぱり、トオル君を愛している自分に気付き……
心が震えた……
その熱い想いが、今も、私の心の中に燻って掻き乱す。
新幹線はあっと言う間に京都駅に滑り込み、私に決断を迫っていた。
トオル君は私の荷物を降ろし、私の肩を抱いてドアへと向かった。
ホームに降りている間も、彼はずっと私の手を握っていた。
降りたばかりの新幹線では清掃が始まり、全ての座席が東京に向けてくるりと方向転換を始めている。
乗車を許可する放送に、私はトオル君の指を解くと、ゆっくりと新幹線のドア口に立った。
トオル君は真っ直ぐに、怖いくらい真っ直ぐに私を見つめていた。
最後ぐらい、笑顔で別れたかった。
彼に笑った顔を思い出して欲しかったから……
だから、私は笑った。
「トオル君、ごめんね。やっぱり、私にはムリ……。ごめんね」
精一杯の笑顔で答えた。
「でも、トオル君に会えて嬉しかった……。一緒に、京都まで来れて、良かった……」
何か言わなくっちゃ……
最後なんだから、もっと違う……
そう、彼が後で思い出しても笑えちゃうくらいの笑顔で楽しい事とか、言わなくちゃ……
「意気地なしのハムスターは東京に帰るね……」
だけど、トオル君は笑っていなかった。
発車を告げる放送が入り、ベルが鳴る……
もう、後ほんの一瞬で、彼は永久に私の視界から消えてしまう……
この苦しみも後数秒で終る……
笑っていよう。
だからこそ、頑張って最後まで笑顔で別れよう。
このベルが鳴り終えたら、私達は終わる……。
私は必死で笑おうと、した。
手を振ろうと右手を挙げた瞬間、不意に彼は私の手を取り、物凄い力でぐいっと引き寄せた。
後ろの方で、ドアの閉まる音がする。
「こんなに泣いているのに、どうして別れられるんだよ!」
トオル君は、私を抱き寄せると、息が止まるくらいきつく抱きしめた。
「……選ばせてなんてあげないよ。君は自分に嘘をつくからね」
そう言って、すっぽりと私を包み込んだ。
私を置き去りにしたまま新幹線はゆっくりとホームを離れ、東京へ戻っていった。
私は彼にしがみつき、まるで子供のように、いつまでも大声をあげて泣きじゃくっていた。
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