フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

新しい明日

2006年03月14日 11時09分45秒 | 最終章 エターナル
カズトは、何度も何度も優しいキスをした。
そして、そっと唇を離すと、頬を寄せた。
「……あの、さ、今夜、したいんだけど」
「胎教に良くないからダメ!」
カズトは、口をへの字に曲げると「即答かよ!」と笑った。

「じゃ、行ってくるよ」
彼は靴箱の上に置いてあったバッグを掴むと、お腹の赤ちゃんにも「行ってくる」とキスをして、大学に出掛けた。


私は踏ん張っていた足の力が抜けて、その場に座り込んでしまった。
「あ、あれ?」
昨日散々泣いたばかりでもう涙なんか残っていないはずなのに、温かい涙が頬を伝った。
涙を袖で拭っていたら、立爪のリングがガリッと眉に当たった。
「痛っ!」
慌てて、リングを外すと、箱にしまった。

「学生の身で100万円は無理だから。これはそんなに高くないけど、いつか本当に高いの買ってやるよ」
カズトが照れながらくれた婚約指輪を、私もいつの日か心を痛める事無く、笑って着けられる日が来る……
そして、いつの日かカズトを心から誰よりも愛せる日が来る……
そのためにも頑張ろうと、そっと箱を机の隅にしまった。


掃除や洗濯をしながら忙しく過ごしていると、あっという間に11時になっていた。
「いっけない!」
捲くっていた袖を伸ばして、結わえていた髪を解すと、急いでドライヤーで髪を整えた。
それから忙しなくコンピューターを立ち上げて、路線を検索し、時間を調べた。
「もう出掛けないと……」

トモが京都に遊びに行くから「見送りに行くね」と約束したのが、1週間前の今日。
「モトカレから貰った金で豪遊してやるの!」
堕胎手術をしたトモは、あれから気持ちを切り替えようと、表面上は元気に振舞っていた。
でも、赤ちゃんがいる今の私には、痛いほどトモの気持ちが分かっていた。
なんの力にもなって上げられないかもしれないけど、トモがそうしてくれたように、黙って私も彼女を見届けようと思っていた。

いざ、出掛けようとして、ハタと動きが止まった。
着ていこうと候補に挙げた服をベッドに並べて、「どうしよう……」と困惑してしまった。
どれを見ても、マタニティ……
「う~ん」

しょうがない……
ニンプなんだもん!堂々とニンプしよう!!


私は黒のジャンスカをストンと着ると、急いでバッグを肩に掛け、小走りに駅を目指した。

夢にも思っていなかった明日が待っているとも知らずに……




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