「さぁさぁ、お前達はソロソロ学校に行きなさい」
ご主人に促されて、子供達はしぶしぶ僕の頬に「お兄ちゃんに、祝福を……」とキスをすると学校に出掛けて行った。
夫人も「ほら、遅刻しますよ」と言って、彼らを見送りに玄関へと向かった。
みっともなく泣いてしまった事で僕は恥かしかったけれど、そのお蔭で心は凪いでいた。
主人は僕の前にコーヒーを置くと、「飲みませんか?」と勧めた。
「Dr.フジエダ。大丈夫ですか?」
彼の言葉に僕は驚き、突然立ち上がると椅子をガターンと倒してしまっていた。
僕は昨日名乗っていないはずだ……
しかも、最近はCEOとしての責務が多く、僕を「ドクター」と呼ぶ者はいない。
「あなたは……何者だ?!」
「あなたこそ、どうしてここに?ワシントンでAMH社とC&H社のCEOになられた後、入院したと聞きましたが……」
「聞いた?」
彼は肩を竦めると、
「あなたはご自分が自覚している以上に有名だと言うことを知らなくてはいけませんよ」
と笑った。
「でも、あなたは今、僕を『ドクター』と……」
「ああ!」
彼はクスリと笑うと、「あなたはご存知ないかもしれないが、私も奇蹟の生き残り組みなんですよ」と両手を合わせ、額に当て話を続けた。
「あなたはまだ11歳になるかならないかで、研究所のチーフになられた。が、私は、全くの門外漢であなたにお目通りすら適わなかった……」
彼の思い掛けない告白に僕は言葉を失った。
「あの事件で生き残ったのは、300人中あなたと私を含めて53人……。
あれから、あなたは研究所の経営再建にも参画し、立ち直らないだろうと思われた所の経営危機を不動産のセキュリタリゼーション、株式の発行等あらゆる経営手法で立て直し、翌年には黒字化させた……」
そして、それが契機となって僕はAMH社の赤字経営の建て直しの為に、CEOとして招聘されたことを思い出し、運命の不可思議を感じていた。
彼は、コーヒーの最後の一口をすすると、
「それに、書類を持ってピクニックする人はいませんよ。
不自然だったから、あなたを良く良く見て思い出したわけなんです」と笑った。
その時、バラバラと頭上をヘリコプターの飛ぶ音が聞こえた。
「どうやら、お迎えが来たようですね」
「え?!」
なんのことかと、僕が訝しがっていると、突然、聞き覚えのある大きな声が、拡声器を通して上空から降って来た。
「トール!あなたは既に包囲されています!!
私が行く前に勝手に退院してしまうなんて!!
今度こそ、社に戻ってもらいますよ!!!」
怒ると美しいクイーンイングリッシュが独逸訛りになってしまうハインツは、声の限りに叫んでいた。
僕ははぁ~と溜息を吐くと、思わず愚痴を零していた。
「……頼むよ、ハインツ。僕は犯罪者じゃないんだから……」
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夫人も「ほら、遅刻しますよ」と言って、彼らを見送りに玄関へと向かった。
みっともなく泣いてしまった事で僕は恥かしかったけれど、そのお蔭で心は凪いでいた。
主人は僕の前にコーヒーを置くと、「飲みませんか?」と勧めた。
「Dr.フジエダ。大丈夫ですか?」
彼の言葉に僕は驚き、突然立ち上がると椅子をガターンと倒してしまっていた。
僕は昨日名乗っていないはずだ……
しかも、最近はCEOとしての責務が多く、僕を「ドクター」と呼ぶ者はいない。
「あなたは……何者だ?!」
「あなたこそ、どうしてここに?ワシントンでAMH社とC&H社のCEOになられた後、入院したと聞きましたが……」
「聞いた?」
彼は肩を竦めると、
「あなたはご自分が自覚している以上に有名だと言うことを知らなくてはいけませんよ」
と笑った。
「でも、あなたは今、僕を『ドクター』と……」
「ああ!」
彼はクスリと笑うと、「あなたはご存知ないかもしれないが、私も奇蹟の生き残り組みなんですよ」と両手を合わせ、額に当て話を続けた。
「あなたはまだ11歳になるかならないかで、研究所のチーフになられた。が、私は、全くの門外漢であなたにお目通りすら適わなかった……」
彼の思い掛けない告白に僕は言葉を失った。
「あの事件で生き残ったのは、300人中あなたと私を含めて53人……。
あれから、あなたは研究所の経営再建にも参画し、立ち直らないだろうと思われた所の経営危機を不動産のセキュリタリゼーション、株式の発行等あらゆる経営手法で立て直し、翌年には黒字化させた……」
そして、それが契機となって僕はAMH社の赤字経営の建て直しの為に、CEOとして招聘されたことを思い出し、運命の不可思議を感じていた。
彼は、コーヒーの最後の一口をすすると、
「それに、書類を持ってピクニックする人はいませんよ。
不自然だったから、あなたを良く良く見て思い出したわけなんです」と笑った。
その時、バラバラと頭上をヘリコプターの飛ぶ音が聞こえた。
「どうやら、お迎えが来たようですね」
「え?!」
なんのことかと、僕が訝しがっていると、突然、聞き覚えのある大きな声が、拡声器を通して上空から降って来た。
「トール!あなたは既に包囲されています!!
私が行く前に勝手に退院してしまうなんて!!
今度こそ、社に戻ってもらいますよ!!!」
怒ると美しいクイーンイングリッシュが独逸訛りになってしまうハインツは、声の限りに叫んでいた。
僕ははぁ~と溜息を吐くと、思わず愚痴を零していた。
「……頼むよ、ハインツ。僕は犯罪者じゃないんだから……」
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