フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

リング

2006年03月13日 20時59分59秒 | 最終章 エターナル
翌朝、玄関の物音に目が覚め、ベッドから飛び起きた。

カズトは玄関に腰を下ろすと、靴も脱がずそのまま座っていた。
「カズト……」
「……ごめん」
私は黙って頭を振った。
カズトの背中がとても淋しそうに、小さく見えた。

「私も、ごめん」
カズトの背中が微かに震えた。
「でも、でもね。何もなかった。本当だよ……」
「……何で、行ったんだよ」
「ちゃんとお別れを言おうと思って……。
そしたら、トオル君、両手を怪我してて……。
ほっとけなくて、それで……」
「ほっとけよ……。やつのことなんか!」
「……だって、怪我してたんだよ?!」
「でも、相手はトオルだぞ!」

また、険悪なムードになってきた時、カズトが深い溜息を吐いた。

「お前はあいつのことを愛していた……。
そんなヤツと一夜を過ごしたと聞いてオレが傷付かないと思うのか?
逆に、お前が俺の立場だったら、どうなんだよ?」

彼の言葉にきりっと胸が痛んだ。

カズトは何があっても、私だけを愛していると、私以外は愛さないと、人目も憚らず言っていたから……。
カズトの想いに甘えてしまっていた自分の身勝手さに改めて気付かされた。


「服、ごめんな」
彼の優しい言葉に昨日までの凍り付いた恐怖が溶け始めて、温かい涙になった。
「弁償するから……」
「……100万3,980円です」
「はぃぃぃ?あんなのがそんなにするわけねーだろ!」
カズトは笑いながら、私の頭を小突いた。

「精神的に痛かったも……。100万円の慰謝料と、3,980円の損害賠償代です」
私が涙を拭きながら笑うと、「最近のお前はつえーわ」と笑いながら、ポケットからゴソゴソと小さな箱を出し、私の膝に置いた。

「なに?これ?」
「慰謝料分」
「開けてもいい?」
「どーぞ」
箱の中には綺麗な立爪のリングが輝いていた。
「……これ?私に?」
「お前以外の誰に贈るんだよ!」
カズトは苦笑いすると、リングを抜き取り、私の指にはめた。

そして、「残りの損害賠償代は、1日3食分のオレの手料理でどうだ?」
と笑った。
「あ。それは絶対にいらないから」
私もようやく心からの笑みが零れた。



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怒り

2006年03月13日 12時28分55秒 | 最終章 エターナル
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
「あ……私……」
声が震える。
こんなに怒りに満ちたカズトの目を見るのは初めてだった。

……怖い。
さっきまで優しく笑っていたカズトが、今、こんなにも怒っている……
私は目を伏せて、心の動揺を隠した。

「……トオルのところか?」
突然の彼の名前に、私は咄嗟に顔を上げ、カズトと目が合ってしまった。

慌てて目を逸らし、俯いた瞬間、背後で
ガシャーーン!
と、何かが壊れる音がした。

振り向くと、カズトの手に握られていたはずの子機が壁に投げ付けられ、粉々に壊れていた。
足が竦み、恐怖が湧きあがってくる。

カズトは私の腕を乱暴に掴むと、引き摺るようにベッドに押し倒した。
「あいつに抱かれたんだったら、拒むはずだよな!」

カズトは私の上に覆い被さると、服を引き裂き始めた。
「いや!ちが……」
彼の目はさっきまでの穏やかなカズトとはまるで別人だった。

怒りをぶつけるだけの
辱めるためだけの
カズトの手が私を侵蝕する

私は、目を強く瞑り、嗚咽した。

どうして、信じてくれないの?
どうしたら、信じてもらえるの?
トオル君とは何もないって、私はずっと言っているのに。

つらい初めての夜が、私の記憶に鮮明に呼び覚まされてきた。
「……また、犯すの?」
私の小さな呟きに、カズトの手が止まった。

カズトは私の頬すれすれに拳を振り下ろすと、「ちっくしょぉ!!」と叫び、その手をベッドにのめり込ませた。

彼は上着を掴むと、そのまま外に出て行ってしまった。



私は震える体を、ブランケットに包み、自分の部屋に入っていった。
電気を点け、タンスの中の着替えを探した。
指先が震え、洋服を上手く掴む事が出来ない……

ボロボロに引き裂かれた服を脱ぎながら、ポロポロと涙が零れてきた。
カズトに引き裂かれた心が痛い……
あんなに激昂するカズトが怖い……

私は、お腹の赤ちゃんを両手で包み込むと、
「びっくりさせちゃって、ごめんね……」
そう呟きながら、いつまでもいつまでも止る事の無い涙を流していた。



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春の嵐

2006年03月13日 00時19分29秒 | 最終章 エターナル
横浜はここ数日、ずっと晴れていたようで、今日も朝からぽかぽかいいお天気だった。
カズトのベッドのシーツを剥がすと、お布団を「重い~!」と叫びながらベランダに運んだ。
この間、お布団を干した時、「体に障る!」とカズトに叱られたっけ……
「でも、煙草の匂いが染み着いちゃってすごいんだもん!」と、負けずに私は今日も干した。

そして、日がまだ十分高いうちにお布団を仕舞い、シーツを掛けた。
「ふぁ~。お布団ふかふかぁ……」
私は、お布団に突っ伏してうとうとし始めていた。


あの、ホテルの出来事以来、カズトは私を抱いていなかった……

あの日から、ずっと、ギスギスとした気まずい雰囲気が続いたけど、この頃になって、彼はようやく元のやんちゃな笑顔を見せてくれるようになった。
一緒に暮らすようになってから、まだまだぎこちないけど、なんとか心に暖かい春の風がさわさわと流れて来て私はほっとしていた。



いつの間に、寝てしまったんだろう。
人の気配に目覚めると、カズトが帰ってきてベッドの横でバッグを下ろしているところだった。
「アカンボに障るから、布団干すなっつったろー」
笑いながら彼はベッドに膝を着くと私を跨いだ。

私は目を擦りながら、「お帰りなさい……」と笑った。
カズトは、「しかも布団着てねーし。風邪引くぞ!」と布団を引き寄せた。
「大丈夫。私、丈夫だもん!」
「……ゆうこと聞かねぇヤツにはお仕置きが必要だな」
カズトはついさっき、掛けてくれたばかりの布団を引き剥がすと、私の胸に手を這わせた。

私は一気に目が覚めて、抵抗した。
「ダメ!カズト、赤ちゃんが……」
「こないだみたいな、激しいヤツじゃなきゃいいだろ……」
彼はそう言うと、次第に首筋に愛撫をしながら、胸のボタンを外し始めていた。

「でも……。風邪引いちゃうと、赤ちゃんに……」
「だーーーっ!今、お前、丈夫っつったろ?!」
彼がブラのホックに手を掛けた時、電話が鳴った。
「そのまま、服着んなよ!」
指を指しながら、カズトは電話のあるリビングに向かった。

私は「ほぉっ」と安堵の溜息を吐くと、急いで服を着て、リビングのテーブルに招待状を並べ、宛先を書き始めた。
電話をしながら彼は「あ!この!!てめっ!……あ、いや、なんでもない。こっちの話……」と、言いつつも私を睨んだ。

彼は電話を切ると、リビングの椅子にどっかりと腰を下ろし、名簿に目を通しながら
「くっそぉ~!誰だよ!?佐々木っ!」
ブツブツ文句を言いながら住所を書き始めた。
「ぷっ!下手な字……」
思わず笑った私をギロリと睨み、封筒をグシャグシャに丸めたかと思うと、私のおでこに投げ付けた。

……もう、子供なんだから!
気分転換にコーヒーでもいれてあげようと、シンクに立つと、いつの間にかカズトも入ってきて、後ろから抱きしめてきた。
「……さっきの続きやろう」

私が、躊躇していると、また電話が鳴った。
カズトは軽く舌打ちすると、「またかよ!用件は一度で済ませろよな!」と悪態をつきながら、私を抱きしめたまま、目の前の子機を取った。

「はい。片岡です。ああ、どうも……」
どうやら、さっきの人とは違ったようで、カズトの声が穏やかで仰々しい。
「え?!」
そう言うと、一瞬、彼の声の調子が変わった。
「はい……。は……い。伝えておきます」と言って電話を切った。
「どうしたの?カズト、顔色が悪い……」
カズトは、何も言わず、ただじっと子機を見つめていた。
「コーヒー、あっちに置いておくね」
私がカズトの緩んだ腕からスルリと抜けて、台所を出ようとしたとき、彼は静かに怒気を抑えるかのような声で言った。

「……ハルナ、お前、昨日、一体、どこに泊まったんだ?」



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