フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

テイクオフ

2006年03月04日 20時59分33秒 | 第13章 思愛編
バラバラと爆音を立てながら、ヘリコプターは「ドイツのアウトバーン並に広かったですね」と後にハインツが評した道路へと着陸した。

GPS機能を使い、キンケイドを締め上げることで僕の居場所の特定に成功したハインツは、組織のネットワークを駆使して、
「ご夫妻の連絡先を探し出し、『朝にはお迎えに伺いますから、彼を引き止めておいてください!!』と連絡を取る事に成功しましたよ」
と後日胸をそびやかした。

ともあれ、ケッチャムを弔う訪問は、彼の記事を手に入れると言う思いも掛けないお土産付きで幕を閉じた。

「泊めて頂いて有り難うございました。……それから、子供達に宜しくお伝え下さい」
人の良いご夫妻はニコニコ笑いながら僕と交互に握手を交わした。
「また、是非遊びに来て下さい。子供達も喜びます」
「ええ、喜んで!ええっと……」
「ハリー・バリー」です。
「ハリー・バリー!」
「Dr.フジエダもたまには休息を」
「今回の入院で随分休めました」
僕が笑いながら肩を竦めると、ハリー・バリーは
「こちらの休息ですよ」
と、自身の胸を指差して僕に目配せした。


僕が手を振りながらヘリコプターに乗り込むと、ヘリコプターはその機体をユラユラと揺らしながら空へと上がって行った。

遠ざかる二人の影が、一瞬、父さんと母さんの影と重なり、はっとして目を擦った。
「錯覚か……」

いつの日か僕たち親子もハリー・バリー家のように
「お前は拾われてきた子だったんだよ」
「だけど、君は私の子供だよ」
と、心から笑って打ち明けあう日が来るのだろうか?



帰りのヘリコプターの中で、
「しかし、良かったですよ」
ハインツがほぉ~~~っと胸を撫で下ろす様子に、僕は首を傾げた。
「何が?」
「いえ、ケッチャム家のトーマスと言えば、有名な男色家で、それが原因で放校になったと聞いていましたから……。
これで、トールが『妖しの道』にデビューされたらどうしようかと昨晩は不安でしたよ。
でも、あなたの無事なお姿に安堵致しました」
と、言っている彼の目が急に点になり、真っ赤になったかと思うと、突然、咳払いを始めた。

彼の目線を辿り、僕もぎょっとした。

首筋に数箇所のキスマーク……。

右のが、Mrs.ケッチャム……。
左のが、トーマス・ケッチャム……。

僕は慌てて、「昨日は蚊が多くてね」と襟のボタンをきっちり締めて取り繕った。
ハインツは疑いの眼差しで「コホン!冬に飛ぶとは随分、根性のある蚊だったようですね」と僕の顔をじとーっと見つめ返していた。



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