僕は散乱した書類を掻き集め、封筒に仕舞うとコートをはおった。
封筒を小脇に抱え、マジックのキャップを取り、エラープリントの書類を引き寄せるとその裏に
「お大事に」とだけ書いて、僕はケッチャムの家を後にした。
辺りは夕暮れ時になっていたが、さすがにあの家で一夜を過ごす気にはなれず、雑木林を走り抜け、町を目指した。
ここから一番近い町は、2時間も歩けば着くはずだ。
しかし、1時間も歩かないうちに辺りはすっかり暗くなり、街燈もない道は漆黒の闇に包まれた。
黒い雲は月を深くそのヴェールの中に隠し、僕は真っ暗闇の中に取り残された。
退院したての弱った体を夜の冷気が包み込み、体温を容赦なく奪っていく……。
そう言えば、今朝は朝から何も食べていなかったっけ……
コートの襟を立てて、闇の中、街を目指した。
いい加減、疲れて足が折れた頃、一陣の風がさぁっと道脇の草原を渡り、あの日のハルナの声を連れてきた。
「トオル君と出会わなかったら、こんな世界があるなんて知らなかったよ」
……僕もだよ。ハルナ
君に会わなかったら、僕はきっと温もりを知らなかった。
闇の中をずっとあのまま彷徨っていたのかもしれない。
独りだった。
君に出会うまで、僕はいつも独りだったんだ。
歩くのに疲れて、膝を抱えて座っていた時、月の光が温かく僕の辺りを照らした。
その時、突然、白い小さな花々が闇の中から浮かび上がり、僕を囲むように優しく揺れていた。
「ハルナ……」
君のところに戻りたい。
君が僕の手を引いて歩いてくれたあのフラワーガーデンに……
僕は再び立ち上がり、月の光に導かれながら街を目指した。
↑「いま、会いにゆきます」で有名な♪アルファポリスです
↑私のお薦めのブログ、探してみてね♪
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黒い雲は月を深くそのヴェールの中に隠し、僕は真っ暗闇の中に取り残された。
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君に会わなかったら、僕はきっと温もりを知らなかった。
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独りだった。
君に出会うまで、僕はいつも独りだったんだ。
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その時、突然、白い小さな花々が闇の中から浮かび上がり、僕を囲むように優しく揺れていた。
「ハルナ……」
君のところに戻りたい。
君が僕の手を引いて歩いてくれたあのフラワーガーデンに……
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