フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

無償の愛

2006年03月20日 16時08分19秒 | 最終章 エターナル
トオル君はきっと怒ってる。
振り返りもせずに戸を閉めたトオル君の姿に、傷付く資格なんてないと思っても涙が出た。

私は声を押し殺して泣いていた。
時折、隣りでトオル君が寝返りを打つ音にびくっとしながら……

私はカズトとトオル君のことを同じように愛していると思っていた。


でも、分かってしまった。

カズトにホテルで抱かれた日……
私は、強く目を瞑り……
トオル君に抱かれていた。

カズトはきっともう気付いている。
知ってて、それでも彼は夫婦と言う絆を精一杯築こうとしている。

私も赤ちゃんのために、頑張ってもっとカズトを愛そうと思った。
トオル君よりも……


残酷な私……
残酷なカズト……

私は、カズトの妹にはなれても、恋人にはなれない。
それでも、もうカズトはこの赤ちゃんのようにかけがえのないヒトなんだ。


そっと涙を拭った時、静かに襖が開いた。
「さっきはごめん……。つい、かっとなって」
トオル君が私の枕元に座った。
「そこまで、体に負担を掛けても、あいつの元に帰りたいんだね」

違うよ。
私はもうあなたにこの体に触れて欲しくなかったの……
何度も、何度も、私はあなたの側にいる資格がないと思い知らされるのがつらいから、逃げたの。

全ての想いを飲み込んで、私は頷いた。

「そうか。君は片岡をやっぱり愛しているのか……」

住む世界が違うトオル君。
トオル君には絶対相応しい女性が現われるから。
だから、私のことはもう忘れて……
そして、そのまま私の想いに気付かないでいて……
私はさっき危うく「YES」と答えてしまいそうになった、身の程知らずな自分を恥じた。


「……うん」
「そうか」
トオル君は優しく私の頭を撫でると、部屋へ戻っていった。

トオル君……
トオル君……
あなたにはキラキラとした未来が……、私とは違う未来がある……

私はあなたを愛しているって言わない
あなたを心から愛しているから……



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君を帰さない

2006年03月20日 11時33分46秒 | 最終章 エターナル
気付くとトオル君に体を支えられていた。

「帰らなくちゃ……。私……」

足がもつれて、一歩が踏み出せない。
「君は……」
トオル君の声が頭の上から辛うじて聞こえてくる。

「落ち着いて」
抱きしめてくれるトオル君の温もりが伝わってきた。
「大丈夫だから」
「え?!」
「過労だって」
「……か、ろ…う?」
乱れた思考は、すぐには言葉の意味すら取れなかった。
「そう、過労だ」
「……過労」
体中の力が抜けて、トオル君の支え無しでは立てなくなってしまっていた。

「新幹線はまだ出ているから帰れなくもないけど……」
トオル君の腕が一瞬強く私を抱きしめた。
「帰したくない」
そう言うと、更に私を抱きしめる腕に力を込めた。

だけど、彼は腕を解くと、私の両手をそっと握った。
「……嘘だよ。帰ろう」

トオル君に手を引かれて部屋に戻った。
さっきまで温かかった私達の手はすっかり冷えていた。


部屋に戻ると、既に食事は下げられ、奥の和室には代わりに2組の布団が敷かれていて、私は体が硬直した。

トオル君は、服に着替えると「タクシーを呼ぶから、君も着替えてて」と部屋を出ようとした。
私は、丁度バッグから造血剤を取り出し、飲もうとしているところだった。
トオル君は、私の手を咄嗟に掴むと薬を手に取り、「貧血気味なの?」と尋ねた。

私が頷くと、彼はそのままそこに座り込み、考え始めた。
「ハルナ、お腹は?大丈夫?」
トオル君の手がお腹に伸びてきた。
それを私は両手でお腹を抑えると、「大丈夫!」と逃げた。

「ハルナ!」
トオル君はちょっとムッとしていた。
「だって……」
「……分かった。やっぱり、君を帰さない」
「え?!」

驚く私の隙をついて彼はお腹を触ると、「また、張ってるじゃないか」と怒った。
そして、やおら立ち上がると、隣りの和室に入っていって、1組のお布団をズルズルと引き摺ってきた。

「君はここ。僕はあっちの部屋で寝るから。今日は安静にするんだ」
そう言うと、彼は隣りの部屋に行きピシャリと戸を閉めてしまったんだ。



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