京都 洛北の時計師 修理日記

時計修理工房「ヌーベル・パスティーシュ」京都の洛北に展開する時計修理物語。
夜久野高原で営業再開しました。

時計師の京都時間。

2013-11-25 09:15:51 | 日記

今日25日は「北野天満宮」の「市」開催日。
あいにくの雨になってしまいました。日曜日12月1日に予定されている「献茶祭」を控えてお天気が心配になります。

写真は昨日てこずらせてくれた「タイメックス」
薄氷を踏むような神経戦のロンジン「ルドルフ」の対照的な2点。

「昔の時間」
宮本武蔵が柳生の里を訪れた。
武蔵は生け花の鮮やかな切り口から名人の技を理解する。試合を申し込まずそのまま帰っていった伝説があります。
その間30秒!くらいうっとりと眺めたはず。その隙にやっつけられそうだ!

幾つになっても「へなちょこ時計師」
渡されたロンジン。裏ブタの鮮やかさを見てあきらめて修理を中止!したいところだ。その間10秒。

時計業界は「G-SHOCK」以前、以後で大きく時代が変わりました。

私たちが業界入りしたとき一枚の鉄の板を渡される。
真ん中から切り取り2枚の板を作る。一枚には径3センチの丸い穴を開ける。もう一枚はぴったり合うフタを造ります。
雄雌をあわせてストーンと秋の日暮れのように落ちると失格。
ゆっくりと指で押し出して離れるようになるまで何度も泣きながら繰り返して練習します。

その完成品の見本が「ロンジン」
裏ブタを開ける時、オープナーで一箇所正確な場所に当てないと傷をつけるだけで開きません。
また裏ブタを閉める場所が1ミリずれてしまうとリューズの巻真が折れる。
密閉度が高いのだが名人が開けると簡単に開く。
新入りがチェレンジすると裏ブタが傷だらけ、名作は名人を作っていきます。

写真のロンジンは傷が一つもない状態でお預かりした。
電池交換を終え、お客様に戻す。にっこりと笑顔でお渡しできるようになるまで3年はかかる。
カルチェの場合、同じようにピタッとくっつく。それを4本のネジで優しくとめてあるのです。アホの技術者は力いっぱい締めるのでネジをいためる。
ゆっくりと締めて止まったところで肩の力を抜く。それだけで防水機能は発揮できるのです。

カシオG-SHOCKは私たちのそれまでの常識を覆しました。
ケースに鉄板をのせてその間にゴムを何枚かはさみネジで強く締め上げて水を止める構造です。
私たちの初期の頃の鉄板合わせの練習は無駄な時代になった。
この逆転の発想に驚きました。

強く締め過ぎると樹脂で出来たケースは割れる。逆に締める力が弱いと水が入る。
オメガ、ロンジンよりある意味では修理は難しい。かといって修理料金を上げるわけにはいきません。

発売当初は中国製で価格も安く使い捨てお手軽時計。お互い笑顔で対応してきました。
トライアスロン競技用と文字盤に書いてある時計。
実際に競技に参加すると途中で水が入るよ!ユーザーの情報が面白い時代でした。

ところがカシオと同じ発想の「なんちゃって防水時計」が10万円前後で売られる時代に入るとお互いの笑顔は消えます。
「中国製なのにどうして完璧な防水機能をもとめるの?」
「10万円も出したのだからあきらめきれない!」
お互いの思いのすれ違いが大きい。

知人の情報では中国チンタオ市で石油パイプラインが爆発。40人以上が死亡。1万人以上が避難生活を送っているそうです。

時計業界の「鉄板」くりぬき練習など熟練技術を省略して成長した「安物つくり文化」の結果だ!と友人が言う。
悲劇が繰り返される光景を見るのは残念な事だと思います。
日本では「福一」の汚染水漏れも同じ現象なのでしょう。
いまや世界的な人災事故に備える時代になりました。

旋盤作業の「真出し」で鉄に泣かされた話なら何時間でも出来る人が少なくなった。
秋の日。つるべ落としの夕日を見るたびにキューっと昔の失敗を思いだす。

今日は早く帰ってお気に入り「薬師丸ひろこ」さんのドラマを見ましょうかね~!










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