日々の記録

ほどよく書いてきます。

放射光施設

2021年10月04日 00時17分48秒 | 光り物

最近放射光関連の測定に関わることがあった。9月で3件ほど。

放射光というとなにかすごいもの、といったイメージがあるが、幅広い波長域で強力な光を得るものである。特にX線領域で輝度が高いものが得られるのでX線領域でのアプリケーションが多い。

今までの実験室系のX線発生置は制動放射と特性X線の2つがあって、主に特性X線を使ったものばかりである。例えばXRDでは、Cu Kα線(E=8.0keV)を使ったり、XPSではAl Kα線(E=1.5keV)を使ったりと必要なものに合わせて電子ビームを当てる材料を変えて波長(=エネルギー)を変えている。自在に波長を変えられないし、1.234keVのエネルギーがほしいと思ってもそのエネルギーのX線を放射する元素が無いとどうしようもない。

放射光は比較的スペクトル幅の広いX線が得られるため、欲しいX線波長を分光器で取り出し、利用することができる。放射されるエネルギーの殆どを捨てるが、単色化されたX線は実験室のものより1桁から2桁以上明るい光を出す。

放射光の特徴はこの波長を任意に選べるところにもある。X線のエネルギーを5eVごとに変えながら測定するとかもできる。

 

つまるところ、放射光は波長自由度の高いとても明るいX線源である。

 

例えばXRDなどでは、ビームを絞っても輝度が非常に高いので、短時間に測定を終わらせることができる。今まで時間的に合理的ではない測定ができるようになったりすることはある。
ただし、影に隠れた部分を透視しながらXRDをするなど、それは無理だろ、といったものはやはり無理である。
非常に長時間かかるので、現実的に不可能なことは可能にできると思うが、不可能をひっくり返す装置ではない。
この点を把握せずに放射光なら測定できるんじゃないか?と期待する人がいるからちょっと困るな。

なんでも二言目には放射光なら測定できるんじゃないの?って。

 

放射光を直接見ることができた。下は放射光をスリットに通しているところ。輝度が高くてスリットの部分が見えないが、可視光も出ているのかと感慨深い。

コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ワクチン接種その後 | トップ | 子供が生まれて1年 »

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2021-10-06 20:59:20
えっ? SPring-8に行ったの?

羨ましいぞ! (^o^)
返信する
Unknown (いち)
2021-10-07 00:14:47
名前忘れた。コメントは私です。(^_^;)

そういえば、岡崎にも分子科学研究所の地下に直径10mぐらいの小型シンクロトロンの放射光施設があるね。

一般公開の日に見学に行ったことがあるよ。
返信する
Unknown (いち)
2021-10-11 00:33:18
近年、瀬戸市の知の拠点あいちに周長72mのシンクロトロン放射光施設が出来たみたいですね。(^^)
返信する
AichiSRです (まこち)
2021-10-18 00:56:08
これ瀬戸市のほうです。瀬戸と豊田と長久手にまたがっているかな。
SPring-8には学生時代に行きましたが、大変でした。
返信する
Unknown (いち)
2021-10-22 23:37:08
やはりそうでしたか。
あそこは産業利用が多い施設らしいですね。
一度聞きたかったんですけど、真空紫外やX線を使う場合、シンクロトロン本体から窓ガラスを通して使えないような気がするのですが、そうすると試料を真空引きして直接に暴露する必要があると思うんだけど、考えすぎ?
何が言いたかというと、もし真空操作を間違えてシンクロトロン本体に空気が侵入しちゃうと、とんでもなく面倒なことになりそうな気がして。
考えすぎですかね。(汗)
返信する
Unknown (いち)
2021-10-22 23:45:47
そういえば、重力波探査の「かぐら」が大失敗で完成できる見込みがないとか。

日本・・・大丈夫なのか?
返信する

コメントを投稿

光り物」カテゴリの最新記事