最近放射光関連の測定に関わることがあった。9月で3件ほど。
放射光というとなにかすごいもの、といったイメージがあるが、幅広い波長域で強力な光を得るものである。特にX線領域で輝度が高いものが得られるのでX線領域でのアプリケーションが多い。
今までの実験室系のX線発生置は制動放射と特性X線の2つがあって、主に特性X線を使ったものばかりである。例えばXRDでは、Cu Kα線(E=8.0keV)を使ったり、XPSではAl Kα線(E=1.5keV)を使ったりと必要なものに合わせて電子ビームを当てる材料を変えて波長(=エネルギー)を変えている。自在に波長を変えられないし、1.234keVのエネルギーがほしいと思ってもそのエネルギーのX線を放射する元素が無いとどうしようもない。
放射光は比較的スペクトル幅の広いX線が得られるため、欲しいX線波長を分光器で取り出し、利用することができる。放射されるエネルギーの殆どを捨てるが、単色化されたX線は実験室のものより1桁から2桁以上明るい光を出す。
放射光の特徴はこの波長を任意に選べるところにもある。X線のエネルギーを5eVごとに変えながら測定するとかもできる。
つまるところ、放射光は波長自由度の高いとても明るいX線源である。
例えばXRDなどでは、ビームを絞っても輝度が非常に高いので、短時間に測定を終わらせることができる。今まで時間的に合理的ではない測定ができるようになったりすることはある。
ただし、影に隠れた部分を透視しながらXRDをするなど、それは無理だろ、といったものはやはり無理である。
非常に長時間かかるので、現実的に不可能なことは可能にできると思うが、不可能をひっくり返す装置ではない。
この点を把握せずに放射光なら測定できるんじゃないか?と期待する人がいるからちょっと困るな。
なんでも二言目には放射光なら測定できるんじゃないの?って。
放射光を直接見ることができた。下は放射光をスリットに通しているところ。輝度が高くてスリットの部分が見えないが、可視光も出ているのかと感慨深い。