メガネレンチに延長パイプをくっつけて溶接した工具を使っていて溶接部から破損したという相談があった。
・そもそも工具にパイプを継ぎ足しての使い方はメーカーが禁止している。
ということで、終わりなのだが、コレだけだと味気ないので解説していく。
調べると工具はS53C(炭素0.53%の炭素鋼)でできており、表面にニッケルクロムめっきがされている。
バイプの材質は不明、溶接に使った溶接棒も不明だが、きっと鉄鋼用のものだろう。
工具の材料S53Cの観点から見ると、冷えた鋼に溶接すると一瞬で温度が上がるところまではいいのだが、周辺に熱がすぐに伝達するため、溶融部やその周辺は相当な速度で冷却され、焼入れされた状態になる。焼入れしたままだとかなり固く、もろくなるのでポキンと行きやすいので、要注意である。
どうしても溶接したい場合は、予めバーナーで加熱しておくと溶接直後からの冷却がゆっくりになり焼入れ状態に成りにくくなるという手法もあります。
常温のまま溶接できる条件としては「焼入れして余り固くならない」が類似の条件になるでしょうか。
めっきについては、ニッケルとクロムなら余り問題にはならないと思いますが、溶融金属の中に均質に溶けるわけではないので、変な金属間化合物を作ったりして脆化しなければいいようにも思いますが、気持ち悪いのでめっきは剥がしてから溶接したほうがいいかもしれません。
溶接直後は一見くっついたように見える状態でも、内部の歪がおおきかったり、硬すぎて脆かったりもあるでしょうから、最後に全体を焼入れ焼戻しして全体の硬さを調整するなどが必要かもしれません。
そもそも、工具を溶接したりして伸ばしちゃダメだよって話だけどね。
探していたらパイプ延長を前提としたかのようなメガネレンチがあった。
https://www.monotaro.com/p/1899/9968/
https://www.monotaro.com/p/1900/0738/
そして、思ったのは、工具の場合破壊するときどのように破壊するかまではメーカーが考えているように思う。
過去にKTCのメガネレンチを壊した経験からすると(おい!)、工具は曲がる。あるところでぐにゃっと。決してポキンとは折れない。
メガネレンチが仮にポキンと折れるとする。折れるまでには、弾性エネルギーで結構なエネルギーが溜まっているはずなので、ポキンといくと破片が溜まった弾性エネルギーを得てすごい勢いで跳んでいくかもしれない。とても危ない。なので、絶対的な硬さ、強度よりは塑性変形するだけの材料の伸び(ねばり)を維持した熱処理をしているはずだ。
特に工具はネジの頭の大きさがわかれば必要なトルクが分かって、そうなると必然的に工具の長さ、働く応力なども決まってくるだろうから、極端に大きな安全率を持っておくようなことはしないように思う。
調べていて面白かったのは、打撃レンチというもの。二面幅40mmとかのネジになるととんでもない長さのレンチが必要になるので叩いて締め付けるのを前提にした工具が存在している。二面幅30mm以上くらいのサイズからありそうです。。
しかし、自分の独断で作ったものが壊れたって、分析に持ってくるものなんでしょうか?(笑)
いや、調べる前にわかるだろって思うけど。。。
不正改造した挙げ句けが人出して、改造した人は「普段溶接はたくさん実施しているので、まさかそんなことになるとは」という状況かと思ってます。
怪我した人がほんとに可哀想。