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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

10月15日・ミシェル・フーコーの知の考古学

2014-10-15 | 思想
10月15日は、ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェが生まれた日(1844年)だが、フランスの哲学者ミシェル・フーコーの誕生日でもある。

ミシェル・フーコーは1926年、フランス西部のポワチエで生まれた。父親は外科医だった。高等師範に進んだミシェルは、エリートとして期待される肩の荷の重さや、同性愛者である自分の性的傾向、また、大学教員の資格試験に落第したショックなどから、22歳と24歳のとき、二度自殺未遂を起こした。
フランス共産党に入党し、26歳のとき、高等師範学校の教師となった。
それから大学の心理学教室の助手をへて、フーコーは29歳で、スウェーデンのウプサラにあるフランス会館の館長となった。その地で、後に『狂気の歴史』としてまとまることになる代表作を執筆。
40歳のときに発表した 『言葉と物』は、その重厚で難解な内容にもかかわらず学生たちによく読まれ、ベストセラーとなった。
その後、ヴァンセンヌ実験大学、コレージュ・ド・フランスの教授を務めた後、1984年6月、後天性免疫不全症候群(AIDS)のため没した。57歳だった。

20代の終わりごろ、自分には構造主義のマイブームがあって、言語学のソシュールとか、人類学のレヴィ=ストロース、それからこのミシェル・フーコーの本などを一時期つぎつぎと読んだ。半分は知的なファッション、衒学趣味だったと思う。
構造主義はいずれも自分には読み通すのがむずかい本ばかりだったけれど、それでも、なかでもいちばん親しんだのがフーコーだった。『狂気の歴史』には脱帽した。『言葉と物』など一時買い集めたフーコー本はみんななくなってしまったけれど、彼が43歳のとき書いた『知の考古学』だけはいまでももっていて、ときどき拾い読みする。

「地球は丸い、あるいは種は進化する、といった断定は、コペルニクスの前と後、ダーウィンの前と後では、同一の言語を構成しない。」
「『夢は欲望を実現する』という文は、たしかに数世紀を通じて繰り返し言われうる。が、この文は、プラトンにおいてとフロイトにおいては、およそ同一の言語ではない。」(いずれも中村雄二郎訳『知の考古学』河出書房新社)
こうした記述は、自分にとっては、とても新鮮だった。これこそ、まさに、歴史でなく、歴史学が必要である理由である。
たとえば、いま自分たちは紫式部や松尾芭蕉だとか古人の書いたものを読んで、わかった気になっているが、じつはそれが書かれたときには、まったくちがった意識で書かれていたはずなので、そうした文言を書かれたときの意味の通りに理解するためには、その当時の時代状況や書き手の状況などをよく知る「知の考古学」が必要になってきますよ、というのである。

時代小説やテレビの時代劇などを見ると、現代的な意識と倫理観をもった現代人が、ちょんまげを結い、昔の着物を着て歩いている感じで、べつにそれに文句はないけれど、ああいうものを見るたび、自分はフーコーを思いだす。
(2014年10月15日)



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