た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

漠然とした・・・

2016年11月08日 | essay

 

 天気がさっぱりしない。午前中は秋晴れの一日を想像させたが、日が西に傾くと途端に雲行きが怪しくなり、どんよりとした薄墨に街全体が覆われた。

 玄関先に置いた鉢植えのほうき草が、行き交う車が起こすものか、北からわざわざ訪れたものか、妙に湿気を帯びた風にあおられて、ぐるんぐるんと赤い首を回し、あまり愉快そうではない。 

 足元の玄関マットはしばらく目を離したすきに、こんな街中のどこから舞って来たのかというほどの枯葉を被っている。

 アメリカの大統領選挙の結果が、何となく気にかかる。明日には判明するらしい。何が? いったい何が判明するというのか?  中東情勢も気になる。隣国も落ち着かない。地震で被災した南阿蘇のことを思い出す。現在体調を崩している知人の数を数えてみる。家族のこと。自分のこと。

 将来に対する漠然とした不安というものは、こういう日に感じるものなのかもしれない。芥川龍之介に訊いてみたいが、彼はずいぶん以前から土の中である。

 冷めたコーヒーに唇を当てたまま、しばらくじっと見えない何かに目を凝らす。

 

 

  

コメント
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