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た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

涯(はて)

2020年04月01日 | 写真とことば

人類が道を切り開いてきた、と思うのは奢りである。

おそらく、人より先に道があった。

獣が成したか、

自然の起伏か。

限られた道が、

限られた行き先とともに。

 

人類は新たな道を造ることに熱中した。

まるで整形手術を施すように、

それで見栄えをよくしたかのように。

やがて人は去り

道が残った。

 

道を踏み外す、という言葉の真意を

今一度深く考えるべき時が来た。

 

 

 

 

※写真は修那羅石仏群入口

 

 

 

 


新年の挨拶に代えて

2020年01月21日 | 写真とことば

1月20日、短編脱稿。

今回は手書きで仕上げたので、こちらに載せることができない。

気がつけば年が明け、仕事に追われ、喉を痛め、こちらの更新を一カ月も滞ってしまった。

かつて、こういうときは適当な俳句を詠んで誤魔化していたが、からっぽの頭からは言葉一つ出てこない。

頭は新しく買い替えることもできない。だましだまし使い続けるしかない。

呑んべえの知人は相変わらず呑んべえである。誘われても行く元気がない。

寝る前にうつ伏せになって腰を振ると、背中の凝りがほぐれることがわかった。

体の心配ばかり増えた。詰まらないことである。

短編脱稿。

ほとんど、生きる手ごたえのために。

 

 

 


上高地とW・ウェストン

2019年09月18日 | 写真とことば

上高地を歩く。河童橋から徳沢を過ぎる。

行けども行けども人が多い。人の背中を見て歩き続ける。木立の向こうは透き通った綺麗な川である。穢れたものや愚かなものは一切流しそうにない川である。ましてや人間の手など浸してほしくないだろう。川原に猿がいた。猿も人間に見飽きたのか、行列が通っても知らんぷりである。

この辺りで引き返すことに決めた。

上高地にはウェストン碑がある。

日本アルプスをこよなく愛した彼は、イギリスに帰国してのち、彼のもとを訪ねた日本人に対し、上高地のことを矢継ぎ早に尋ねたという。そして最後に、「上高地にホテルが建つというのは本当か」と尋ねた。

その通りだという答えを受け取ると、彼は背を向けて窓の外を眺め、静かに涙を浮かべたという。

彼の胸中は、語られていない。 

 


少年と海

2019年09月09日 | 写真とことば

「海が見たい」と少年は思った。

家族と海に来て、少年はその希いを実現した。

少年よ。

「大志」という言葉をまだ君は知らない。

世界の途方もない広がりについて考えるすべもない。

今もほら、波打ち際の、浮かんでは消える水泡に君は見とれるばかりである。

少年よ。

こうべを上げよ。

君が知るべき大海の輪郭は

もっともっと先にある。

君の本当に見たかった風景は

もっともっと、果てにある。