音多歌樂箱 オタカラバコ・音楽療法の待合室

東信濃に生息する看護師×出前音楽療法士ハラサチコの覚書。

有難く拝見しました

2009-07-08 22:36:51 | 看:Nursing
きょう、訪問先で本物の「召集令状」を拝見しました。
見せてくださったのは令状を受け取ったご本人です。

明治生まれのその殿方は、お若い頃から齢百近い現在に至るまでの
さまざまなパーソナルデータ(明細、私信、辞令、写真など)を
きちんと保存していて、サービス終了後にその分厚いファイルを
開き、ひとつひとつに説明を加えながら見せて下さいました。
いずれもご本人の生活史資料としての証になるのはもちろん、
その殿方の在職期間を通して地域行政の歴史を学べるのではないかと
思えるほど貴重な資料でもありました。
その中にあったのが、「令状のとおり一旦職場を離れる」という
辞令と、召集令状でした。私、本物を見たのは初めて。
想像していたよりもシンプルな内容でした(赤くもなかったし)。
感情や事情を排さなければならないような内容だからでしょうか。
ファイルのポケットには、寄せ書き入りの日の丸や軍服写真なども
保存されていました。物言わぬ品ですが、「国策」の恐ろしさや
戦争の愚かさを後世の私たちに伝えてくれているように感じました。

その後に見せてくださったのは、「軍隊除籍通知」、そして
復職の辞令でした。どんな気持ちでその通知を受け取ったのかな…
「それ」が届いたら、家族がいようが仕事があろうが赴かねば
ならない時代を生き抜いてくれたから、今こうしてお行き会いして
いられるんだなぁ、と思ったらグッときてしまいました。

戦後の経済成長やバブル崩壊、そしてこの国の迷走ぶりを
憂う半面、ご自身については一貫して「自己責任」を
ポリシーに暮らしておられる、とても芯の強いお方です。
その殿方の生活から学んだことはたくさんありますが、
「上手な嘘より下手な誠」など、人として当たり前の姿勢を
自ら作った標語で私たち若造に教えてくれたりします。
話題も豊富です。お話が、これまた面白いのなんの。
昨今の政治やニュースも冷静に分析しています(やや辛口)。

ちなみに、戦時中に亡き奥様へ駐屯地から宛てた葉書が何通か
そのファイルから出てきました。
毎年直筆の年賀状(干支の絵入り)を下さる筆まめな殿方のこと、
きっと奥様にもたくさんお便りを出していたのでしょうね。