君の名は

2009年08月23日 17時30分00秒 | B地点 その他

 

 

「おむさん、こんにちは」

「あ、新人君じゃないか。元気かい?」
「そうだ、まだ君の呼び名を決めてなかったねえ」
「うん。かっこいい名前を付けてよ」
「いや実は、おかか先生に命名を頼んであるんだ」

「えっ、先生に?」
「わーい、楽しみだなあ」

「先生は教養があるから、きっと立派な名前を付けてくれるよ」
「やあ! お揃いだな!」
「おっ。噂をすれば影だ」
「ふふ。名前を考えたぞ」
「命名、シンジ。シンジ君!」
「わー! かっこいいなあ!」
「おかか先生、どうもありがとうっ」
「シンジ君! いい名前でよかったねえ」

「うん!」
―― 30分後

「ねえ先生。シンジ君、とっても喜んでましたね」

「うむ」
「シンジ君という名前は、もちろん例のアニメから取ったんでしょ?」

「ん~?」
「何だそりゃ?」
「えっ!?」
「そんなもん知らんぞ」
「ええっ」
「……じゃ、命名の由来は何ですか?」
「新人だからだ。シンジンだから、シンジ」
「わっはっは~!」
「ダ、ダジャレだったんですか……」
「ダジャレのどこが悪い? シンジ! いい名前じゃないか!」
「……シンジ君には、命名の由来を言わないほうがいいかも」
「ん~? どうしてだ?」

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「しかし、残暑が厳しいな」

2009年08月22日 17時42分00秒 | B地点 おむ

 



オムイ外伝シリーズ 第三部(武芸帳篇) 第35話


抜け忍オムイは、公儀の放つ追っ手と闘いながら、今日も諸国をさすらうのだった……。
「……すっかり秋草が茂ったな」
「もう夏も終わりだ」
「しかし、残暑が厳しいな……!」
「どこか涼しい所に移動しよう」
「上の方に行ってみるか……」
「む、ここがいい」
「眺めもいいぞ」
さて、ちょうどその頃。

追忍は、公儀隠密の隠れ家にいた。
手裏剣と爆薬を補充するために、戻っていたのである。
これが爆薬である。

「ふっふっふ……」
「この大量の爆薬で、オムイを木っ端微塵にしてくれるわ!」
「は~っはっは~!」
「……しかし、残暑が厳しいな」
「まさか、この暑さで爆薬が自然発火するなんてことは……」
「……ふふ。いや、いくらなんでも、そんなことはあるまい」
ところが、そんなことがあったのである。

「おわっ!? ば、爆薬に火がーッ!」
ちゅど~ん
「むッ!? 何だあれは?」
どどどど~~~ん
「……花火か?」
「ぐはーーーッ」
「た~まや~ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


若さでないなら何なのか

2009年08月21日 16時41分00秒 | B地点 おむ

 

 

「ねえ、おかか先生」
「何かね?」
「先生は恋愛の達人でしょっ?」
「おいおい、何を言い出すんだ」
「ね、そうなんでしょ?」
「ははは、まあ年相応に経験は積んでるよ」
「……プロポーズしたこと、ありますか?」
「はっはっは、あるともさ」
「か~っ! うらやましいなあああ!」
「ねぇねぇ、どんなプロポーズだったんですかぁ~?」
「ん~」
「そ、それが、その……」
「もったいぶらずに、教えて下さいよぅ!」
「……それがな、私の悪いクセでな」
「ダジャレでプロポーズしてしまったんだ……」
「ええっ! ダジャレでプロポーズ!?」
「い、一体どんなプロポーズだったんですか?」
「こんなだったよ……」

「えっ?」
「……ケ」
「ケツ!」
「ケツコンして下さい!」
ズコー
「そ、そりゃ、いくら何でも……」
「私も若かったんだよ」
「いや先生、若いとか若くないとか、そういう問題じゃないでしょ……」
「……」

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


早めにやっとけ

2009年08月19日 18時02分00秒 | B地点 おかか

 



オムイ外伝シリーズ 第五部(人情濃厚篇) 第16話


「オムイ! 年貢の納め時だな!」
「むッ、追忍か!」
「……よかろう。相手をしてやる」
「闘いの要諦は肉体ではなく精神だということを、思い知らせてやろう」
「笑わせるな。さあ、かかってこい!」
「……そろそろ夏休みも終わりだな」
「ん? それがどうした!? 大人には関係ないわ!」
「そうかな? つらい思い出がある筈だ……」
「……うッ」
「宿題の提出直前には、地獄の苦しみを味わったろう?」
「い、言うなーッ!」
「思い出せ! 観察日記の苦しみを!」
「ううッ」
「計算ドリルのつらさを!」
「あああッ」
「自由研究ッ!」
「ぐはッ」
「読書感想文ーーッ!!」
「ぐはあああーーーーッ」
「あ、ああああ……」
「ああ……」
ガクッ
「ふっ」
「他愛ない……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


安寧と英雄

2009年08月19日 17時36分00秒 | B地点 おむ

 

 

「そいつ」はいつも、空からやってくる。
みかけは、ネコジャラシにそっくりだ。見分けがつかない。
だが、植物ではない。超小型の兵器なのだ。

遙か彼方の銀河系から、異星人が送り込んでくるのだ……。
「そいつ」がひとたび起動すれば、地球上の生物は、ほんの数週間で絶滅してしまう。
私はふとしたことから、この恐るべき兵器の秘密を知った。

だから必死で、「そいつ」を破壊した。
だが最近は、おむの奴にまかせている。
今の人類の科学では、「そいつ」の正体を解明することは、できないだろう。

だから、カメラの若造にも知らせていない。
おむの奴にも、何も知らせていない。

知らせても、かえってパニックに陥るだけだからな。
「そいつ」が空からやってくると、おむの奴は、喜々として破壊する。

しくじることはない。奴にとっては、気晴らしの遊びに過ぎないのだ。
地球の命運は、この一匹の猫に懸かっているわけだ。

考えてみれば恐ろしいことだが……。
しかし、平和とか安寧とかいうものは、そもそも本質的に、そのように危ういものなのかもしれん。
今日も、いつものように、「そいつ」がやってきた。
そして、いつものように、おむの奴が、「そいつ」を破壊した。

こうして、今日も、地球は無事だった。
この秘密を知っているのは、私だけなのだ……。