早めにやっとけ

2009年08月19日 18時02分00秒 | B地点 おかか

 



オムイ外伝シリーズ 第五部(人情濃厚篇) 第16話


「オムイ! 年貢の納め時だな!」
「むッ、追忍か!」
「……よかろう。相手をしてやる」
「闘いの要諦は肉体ではなく精神だということを、思い知らせてやろう」
「笑わせるな。さあ、かかってこい!」
「……そろそろ夏休みも終わりだな」
「ん? それがどうした!? 大人には関係ないわ!」
「そうかな? つらい思い出がある筈だ……」
「……うッ」
「宿題の提出直前には、地獄の苦しみを味わったろう?」
「い、言うなーッ!」
「思い出せ! 観察日記の苦しみを!」
「ううッ」
「計算ドリルのつらさを!」
「あああッ」
「自由研究ッ!」
「ぐはッ」
「読書感想文ーーッ!!」
「ぐはあああーーーーッ」
「あ、ああああ……」
「ああ……」
ガクッ
「ふっ」
「他愛ない……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


安寧と英雄

2009年08月19日 17時36分00秒 | B地点 おむ

 

 

「そいつ」はいつも、空からやってくる。
みかけは、ネコジャラシにそっくりだ。見分けがつかない。
だが、植物ではない。超小型の兵器なのだ。

遙か彼方の銀河系から、異星人が送り込んでくるのだ……。
「そいつ」がひとたび起動すれば、地球上の生物は、ほんの数週間で絶滅してしまう。
私はふとしたことから、この恐るべき兵器の秘密を知った。

だから必死で、「そいつ」を破壊した。
だが最近は、おむの奴にまかせている。
今の人類の科学では、「そいつ」の正体を解明することは、できないだろう。

だから、カメラの若造にも知らせていない。
おむの奴にも、何も知らせていない。

知らせても、かえってパニックに陥るだけだからな。
「そいつ」が空からやってくると、おむの奴は、喜々として破壊する。

しくじることはない。奴にとっては、気晴らしの遊びに過ぎないのだ。
地球の命運は、この一匹の猫に懸かっているわけだ。

考えてみれば恐ろしいことだが……。
しかし、平和とか安寧とかいうものは、そもそも本質的に、そのように危ういものなのかもしれん。
今日も、いつものように、「そいつ」がやってきた。
そして、いつものように、おむの奴が、「そいつ」を破壊した。

こうして、今日も、地球は無事だった。
この秘密を知っているのは、私だけなのだ……。