釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

「ロシアと北朝鮮、西側覇権に「戦略的クーデター」を起こす」

2023-09-30 19:13:15 | 社会
今月10~13日に、ロシア極東のウラジオストクで、第8回東方経済フォーラムが開催された。日本のメディアはいつもの如く、「首脳陣」が参加しなかったことを強調したが、世界の130の国と地域が参加した。373件、総事業規模で3兆8180億ルーブル(5兆7270億円)に上るビジネス関連文書が締結された。プーチン大統領は、全体会合で、2014年から2022年にかけてロシア全国への投資の伸びは13%だった一方、極東地域は39%となり全国と比べて3倍の伸びとなったことや、過去5年間において極東地域のほとんどが地域総生産成長率において国内の上位に入っていることに言及し、極東地域の潜在力についてアピールした。北朝鮮の金正恩総書記も12日〜17日まで極東を訪れていた。以下は、ビルトッテン氏訳の「Russia, North Korea Stage ‘Strategic Coup’ Against Western Hegemony(ロシアと北朝鮮、西側覇権に「戦略的クーデター」を起こす)」だ。寄稿者はブラジルの地政学アナリストペペ・エスコバルPepe Escobarだ。

先週ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムで組まれた情報のサイロを解明するには時間がかかるだろう。北朝鮮の指導者、金正恩がプリモルスキー・クライの隅々まで広がる「装甲」列車に乗ってきた行動も含まれる。

主要テーマはすべて、グローバル・サウス全域で繰り広げられている「ニュー・グレート・ゲーム」の4つの主要なベクトルを反映している。エネルギーとエネルギー資源、製造業と労働力、市場と貿易ルール、そして物流だ。しかしそれらは、現在の文明戦争の微妙なニュアンスを探求することを遥かに超えている。

そこでウラジオストクは提示した…

– 反新植民地主義(アンチ・ネオコロニアリズム)の波に関する真剣な討論が、例えばミャンマー代表団によって行われた; 地政学的にビルマ/ミャンマーは、東南アジアとインド洋への特権的な玄関口として常に分割統治ゲームの対象であり、大英帝国は天然資源をとることしか気にかけていなかった。これが「科学的植民地主義」の本質である。

– 中国、ロシア、インド、イランに適用され、中国とロシアの学者たちによってすでに展開されている文明国家の概念についての真剣な議論。

– 輸送/輸送回廊の相互接続。これには、近い将来のシベリア横断鉄道のアップグレード、ウラル山脈と極東を結ぶ世界で最も交通量の多い鉄道路線であるバイカル横断鉄道の促進、北洋航路の再推進(先月、ロシアの石油タンカー2隻が北極圏を横断して中国へ向けて初めて航行した)、そして国際南北輸送回廊(INTSC)に接続されるチェンナイ・ウラジオストク海峡の開通である。

– ユーラシア共通の決済システムについては、主要パネル{1}の一つ、「大ユーラシア: 代替的な国際・通貨・金融システム形成の機動力」で詳しく議論された。絶え間ないハイブリッド戦争の中で道具化された「不良の通貨」に対して、新たな決済通貨を設定するという巨大な挑戦である。別のパネルでは、来年のBRICSとEAEUの合同サミットがタイムリーに開催される可能性が喚起された。

金正恩列車に乗り込め


金正恩のロシア極東への列車の旅の発端は、フォーラムと時を同じくして、2014年のマイダンの頃から計画されていた、見事な戦略的クーデターである。

習近平はちょうど10年前、アスタナで、そしてジャカルタで「新シルクロード」を発表した。北朝鮮は、やがて中国の包括的な外交政策コンセプトとなるこの広大な汎ユーラシア・プロジェクトに統合される予定はなかった。

当時の北朝鮮{2}は、オバマ政権であった米国に敵対しており、北京は心配する見物人に過ぎなかった。モスクワはもちろん、朝鮮半島の平和を常に重視しており、特に2014年の地政学的優先課題はドンバスとシリア/イランであった。モスクワにとってアジア太平洋で戦争が起きることは許されないことだった。

プーチンの戦略は、ショイグ国防相を北京とイスラマバードに派遣し、事態を沈静化させることだった。パキスタンは当時、平壌の核武装を支援していた。同時に、プーチン自身が金正恩に接触し、「ソウルが支援する米国に攻撃されるようなことがあれば、われわれが支援する」という重大な保証を提示した。さらに良いことに、プーチンは習近平自身にも保証をさせるよう説得したのだ。

平壌が問題を起こさない限り、モスクワと北京は平壌に協力する、という単純な命令だった。

平壌がミサイル発射実験を続けても、嵐の前の静けさのようなものが訪れた。そのため、金正恩の考え方は何年もかけて変化し、ロシアと中国が同盟国であると確信するようになったのである。

北朝鮮のユーラシアへの地理経済的統合は、ウラジオストクで開催された以前の東方経済フォーラムで真剣に議論された。その中には、南北を極東、シベリア、さらに広いユーラシア大陸と結ぶ朝鮮半島縦断鉄道の可能性も含まれていた。

したがって金正恩は、大きなユーラシアの全体像を見始め、EAEU、SCO、BRIとの緊密な連携によって平壌が地政学的にどのような恩恵を受け始めることができるかを理解し始めた。

戦略的外交とはこのように機能するものだ。10年間投資した後、装甲列車が沿海州を走り続けることで、すべてのピースが所定の位置に収まる。

ロシア、中国、北朝鮮の三角形の観点から見れば、西側諸国は砂場で泣く幼児のような集団に成り下がっても不思議ではない。中国と北朝鮮に対抗する覇権国家のちっぽけな日米韓の軸など、ロシア極東と隣接するアジア太平洋軍事地区としての新しい役割を果たす北朝鮮と比べれば冗談のようなものだ。

もちろん、ミサイル防衛、レーダー、港湾、飛行場などの軍事的統合が行われるだろう。しかし、その過程で重要なベクトルとなるのは地理経済的な統合である。これからの制裁は無意味だ。

2014年当時、ロシアと中国の包括的な戦略的パートナーシップを定義するために、貴重なダブル・ヘリックス(二重らせん){3}という概念を作り出した非常に鋭いアナリストを除いては、このすべての展開を見ていた者はいなかった。

ダブル・ヘリックスは、偶然かつての帝国である2つの文明国家間の全スペクトラムの地政学的な共生を完璧に説明している。しかし前の10年間の半ば頃から、彼らは自発的に、多極性への道にグルーバル・マジョリティを導くために相互の推進を加速させることを決意したのである。

多極化への道


アジア太平洋の中心に位置し、日本人や韓国人にも「アジアのヨーロッパの首都」として非公式に知られているウラジオストクでの最後のパネル{4}では、上記のすべてが細かくまとまった。討論のテーマは「西側の支配に代わる世界的な支配」であった。ちなみに、西側諸国はこのフォーラムではまったく存在感がなかった。

外務省のマリア・ザハロワ報道官は、最近のG20サミットとBRICSサミット{5}が、ウラジオストクでのプーチン大統領の本会議での注目すべき演説の舞台を整えた、と総括した。

ザハロワは「素晴らしい戦略的忍耐」について言及した。これは、2012年に始まった「アジアへの軸足」政策と極東開発の促進、そして現在ではロシア経済のアジア太平洋地域経済への全面的な転換を意味する。しかしそれは同時に、北朝鮮を地理経済学的なユーラシア高速鉄道に統合することでもある。

ザクハロワは、ロシアが決して「孤立を支持しなかった」ことを強調し、常に「パートナーシップを提唱してきた」と述べ、それはこのフォーラムで数十のグローバル・サウス代表団にわかりやすく示された。そして今、この「非合法でルールのない汚い戦い」という深刻な対立状況の下でも、ロシアの立場はグローバル・マジョリティにとって簡単に認識された。それは「独裁は認めない」ということだ。

アンドレイ・デニソフ特命全権大使は、大ユーラシア構想の重要な推進者の一人として、卓越した政治アナリスト、セルゲイ・カラガノフに言及した。デニソフは「多極性」以上に、構築されつつあるのは「多中心性」であり、多くの対話パートナーを巻き込んだ一連の同心円状のサークルであると主張した。

元オーストリア外相のカリン・クナイスルは現在、サンクトペテルブルクの新しいシンクタンク「GORKI」の代表を務めている。彼女は、キャンセル文化のあからさまな毒性によって仲間はずれにされたヨーロッパ人として、ヨーロッパで自由と法の支配がいかに消えてしまったかを強調した。

クナイスルはアクティウムの戦いを、東地中海から西地中海への権力の重要な通過点として言及した。「それが西の支配が始まった時だった」、ローマ帝国を中心に構築された神話は今日に至るまで英国圏をとりこにしている。

制裁{6}痴呆症とEUと非合理的なロシア恐怖症がEUと欧州委員会のトップに据えられたことで、「条約は守られなければならない」という概念は消え去り、「法の支配は破壊された。これはヨーロッパに起こりうる最悪の事態である」とクナイスルは強調した。

アレクサンダー・ドゥーギンはオンラインで参加し、超自由主義を通じて表現される「西欧支配の深さ」を理解するよう呼びかけた。そして、彼は重要な突破口を提案した。西洋の運用方法は研究対象になるべきであり、西洋のイデオロギーを特徴づける要因を定義するためのグラムシ的な試みとして、「深い脱植民地化」に向けて行動すべきだとした。

ある意味では、これがマリ、ブルキナファソ、ニジェールといった現在の西アフリカのアクターたちが試みていることでもある。このことは、新しい世界において誰が真の主権者なのかという問題を提起している。ドゥギンによれば、核保有国であり、米国に存立の脅威と定義された主要な軍事大国であるロシアもまた主権者である。

そして、中国、インド、イラン、トルコがある。これらは文明の対話において重要な役割を果たす柱である。実際、それはイランのハタミ元大統領が1990年代後半に提案し、その後米国によって却下された。

ドゥギンは、中国がいかに「文明国家の建設において遠くまで進んでいる」かを指摘した。ロシア、イラン、インドもそれに続いている。これらは世界を多中心主義へと導く、重要なアクターとなるだろう。



今世紀の世界

2023-09-29 19:15:40 | 社会
最高気温が28度まで上がったが、爽やかな風が吹き続け、暑くはなかった。昼休みに川の近くへ行くと、2組の親子鹿4頭がいた。こちらに気付いたが、気にせず草を食んでいた。今晩は中秋の名月が見られる。昨夜もすでに綺麗な月が見られた。いつも月を見上げるたびに、東北の縄文人もこうして同じ月を見ていたのだろうと思ってしまう。 国際決済銀行BISは21日、8月の円の実質実効為替レート(2020年=100)が73.19と過去最低となったことを発表した。これまで過去最低だったのは1970年8月の73.45だ。この時、円は1ドル360円の時代だ。円が現在のような変動為替になったのは、1971年12月からだ。自国の通貨価値をこれほど貶める政府と言うのも「先進国」では珍しい。25日、東海テレビは、「消費者は既に“値上げ疲れ”か…10月から「4533品目値上がり」との調査結果 食品だけでなく電気やガスも」を、また昨日の東京新聞は、「<値上げラッシュ一覧>光熱費、日用品に「第三のビール」も…2022年~2023年」を載せている。経済制裁による物品の減少と円安が重なり、輸入品の物価が上昇し続けている。特に産業活動と生活に必須のエネルギー源である原油は全て輸入であり、今月はじめサウジアラビアとロシアが原油減産を発表し、昨日は原油先物が95ドルまで上昇している。米国ゴールドマンサックスでは、来年は107ドルも予想されている。日本のインフレは経済制裁とゼロ金利による円安が続く限り、治らない。経済制裁は米国主導だが、円安は日本銀行が是正出来る。しかし、日本銀行は決して円安を是正しようとはしない。円安を是正するためには金利を上げなければならないからだ。金利が上がれば、政府の債務負担が増え、日本銀行は保有する債権価格が下がり、大きな損失を抱えることになる。インフレにより国民生活が圧迫され、企業活動も抑制されるが、日本銀行はそれを放置するしかない。そして、そのためにインフレが続いて行く。インフレは貨幣価値を低下させる。現預金を保持していると、時と共にその現預金の価値は下がり続けているのだ。今日のブルームバーグは、「30年債利回りが1.73%に上昇、2013年以来の高水準」を報じている。30年国債の利回りが上昇するとは、30年国債の価格が下がることを意味する。つまり、30年国債が市場で売られているのだ。超長期国債を保有することに警戒している。今日の日本経済新聞では、「日本の生産性、25年間ほぼ伸びず 労働経済白書」が報じられた。「厚生労働省は29日、2023年の労働経済の分析(労働経済白書)を公表した。日本の1人あたりの労働生産性は1996年以降ほぼ横ばいで、他国に比べて伸び悩んでいると指摘した。1人あたり賃金の停滞はパート労働者が増えた影響もあり、賃上げの波及には非正規の処遇改善が重要になる。」とある。日本の2023年のGDP成長率予測は、1.6%とか1.7%だ。生産性が変わらず、わずかでもGDP成長率があるのは、民間企業ではなく政府支出によるものだ。「失われた30年」に横ばいのGDPを政府支出で維持して来た。この事情は米国も同じだ。表面上景気後退が見られなかったのは、日米とも政府が支出を増やして来たからだ。しかし、そのために両国とも政府債務は積み上がるばかりで、日本の過去最高の税収も焼石に水だ。しかも、過去最高の税収も中身はインフレによる消費税の増収でしかない。インフレは金利さえ上げなければ、政府にとって税収増になる。米国ではここ1年近く景気後退の指標である長短金利の逆転が続いている。新債権王と呼ばれる米国DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラックJeffrey Gundlach氏は、2024年前半に米国経済が景気後退入りすると予想している。そして、インフレも持続し、いわゆるスタグフレーションを予想している。インフレの中で金融バブルが弾ける。2008年のリーマン・ショックでは、「大き過ぎて潰せない」として、巨大金融機関に中央銀行が通貨を流し込み、救済した。この時、インフレではなかった。しかし、今回、バブルが弾けて、巨大金融機関が危機に陥ると、中央銀行は身動きが取れなくなる。2008年と同じように「非伝統的金融緩和」で、巨大金融機関に通貨を流し込めば、インフレの火に油を注ぐことになる。ガンドラック氏は今回の景気後退では国債の暴落も予想している。国債=ドルである。ドルの暴落、終焉だ。そして、それは輸入大国である米国にインフレの嵐をもたらすことになる。過去の歴史で超大国の覇権が終焉を迎える際に、必ず起きて来たのが通貨の暴落だ。しかもドルはグローバルサウスにより離脱が起きている最中だ。理想的な自由市場であれば、とっくに金価格は急上昇しているだろう。しかし、巨大金融機関はドルの表面上の価値を維持するために従来通り、金の先物取引きを使って金価格を抑えている。しかし、それも遠からず出来なくなり、金は上昇せざるを得なくなる。ドルが暴落するからだ。1971年に金の足枷がなくなると、米国も日本も通貨量を増やし続けて来た。特に基軸通貨となったドルは、なおさらだ。輸入大国でもあり、支払いのドルはただ印刷しさえすればいい。貿易赤字を延々と続けられて来たのは、ただ印刷しただけのドルであっても基軸通貨であったからだ。でなければ、ドルはとっくに信用を無くしていただろう。これが基軸通貨の特権だ。物を買うのにただ印刷しただけの通貨を払い続ければ、誰もそんな通貨を受け取らなくなる。しかし、全ての国が必要とする石油をドルでしか取引しないとなれば、各国はドルが必要にうなり、米国との取引で得たドルを大事にする。しかし、今、その基盤が崩れた。サウジアラビアはじめ産油国は、ドルではなく中国の人民元やロシアのルーブルでも取引し始めた。さらに、今、米国国債の最大の外国保有者である日本や中国は保有量を減らしている。中国はピーク時から37%、日本は17%減らしている。米国は今年2兆ドルの新規国債発行が必要になると言われている。中国は間違いなく買わないだろうし、日本も買いたくはないだろう。ただ日本は米国から指示されれば買う。ドルや米国債離れはすでに始まっている。そこに金融バブルの崩壊が加われば、ドルの終焉は簡単にやって来る。ソ連崩壊後は米国一極主義が貫かれて来たが、すでに多極主義が台頭し始めており、通貨もドルの基軸通貨が弱体化して来ている。米国経済の崩壊後は本格的な多極主義といくつかの通貨の世界となるだろう。米国と中国は世界第1位と第2位の経済大国だが、同じ経済大国でもその経済は大きく異なる。米国の金融経済に対して、中国は資源・製造経済だ。これが、同じ経済危機を迎えても回復の違いに大きく差をもたらす。金融経済の基盤は通貨にあるからだ。基盤である通貨が価値を失えば、その国の金融経済は再起不能になる。その意味でも米国の覇権は1971年のニクソン・ショックで終わっていたのだ。その後の金融経済へのシフトは、単なる延命でしかなかった。ドルの実際の崩壊がいつになるかだけであり、米国の金融経済の崩壊そのものは避けられない。21世紀は資源や製造を基本とする本来の経済を主とする国が発展して行くことになる。第三次産業を主とする国は依存性が強く、脆弱性を内包している。

季節外れに咲いたクチナシの花

「ウクライナ代理戦争の中で厳しい現実に目覚めたワシントン」

2023-09-28 19:11:02 | 社会
Wikipediaを見ると、「アメリカ合衆国が関与した戦争一覧」や「ロシアの関与した戦争一覧」はあるが、中国が関与した戦争一覧はない。中国は軍事的侵攻は1949年の建国以来、一度も行ったことはない。ロシアにしても1991年にソ連が崩壊して以来、国内紛争以外では、グルジア、シリア、中央アフリカ共和国に軍事介入しただけである。圧倒的に米国が世界中で軍事介入している。米国では大統領と言う政治家は変わっても、CIAや国務省の役人は変わらず、彼らが軍需産業と共に、世界の国々に介入し、反乱やクーデターを引き起こさせ、米国に都合の良い政権を作らせて来た。アフガニスタンやウクライナも同じだ。アフガニスタンではソ連を弱体化させるためにオサマビン・ラディン率いるアルカイダを米軍自体が育て、ソ連を混乱するアフガニスタンに侵攻させた。ウクライナも同じ構図だ。2014年のマイダン革命を米国が指導し、反ロシア政権を樹立させ、その政権にアゾフ大隊と言うネオナチグループを使って、ウクライナ東部のロシア語住民を8年にわたり攻撃させ、ついにロシアを侵攻に踏み切らせた。日本のメディアは中国の習近平やロシアのプーチンを悪者、独裁者として描き、米国やNATOこそが民主的で正しい行動を行なっているかのように報じる。習近平は中国の最高学府、 清華大学出身で、プーチンは法学と経済学の博士号を持つ、いずれも知性ある政治指導者だ。現在の欧米の政治家は金銭まみれか、世界経済フォーラムWEFのヤングリーダープログラムを受けた、知性の欠けた人物ばかりだ。26日のブルームバーグは、「元ナチス隊員、カナダ議会で喝采浴びる-ゼレンスキー氏の演説時に」を、また今日のBBC日本は、「元ナチス隊員がカナダ議会で喝采浴びる トルドー首相が謝罪、議長は辞任」を報じた。ドイツ軍武装親衛隊(SS)の師団である「ガリーツィエン」第1師団に所属していた98歳のウクライナからカナダに移住した人物を、ゼレンスキーも出席したカナダ議会で英雄として、スタンディング・オベーションで迎えた。カナダは第2次世界大戦時のドイツやウクライナの、ナチスの隊員を戦中、戦後に移民として受け入れた国であり、首相のトルドーの父親もナチスの受け入れに積極的だった人物だ。現在のカナダの副首相もウクライナ人ナチスの子孫だ。カナダにはナチスを記念した石碑まである。そしてトルドー首相もまたWEFのヤングリーダーだ。米国の属国化した日本や韓国、そして欧米はウクライナが優勢でロシアが負けていると報じるが、グローバルサウスはそうは見ていない。それ故に、グローバルサウスはロシアにも中国同様接近している。そこにはインドも含まれている。以下は、ロシア科学アカデミー東洋学研究所が運営するインターネットメディアNew Eastern Outlookに、25日、元米海兵隊員でバンコクを拠点とする地政学研究者、ブライアン・バーレティックBrian Berleticが寄稿した「Washington Wakes Up to Harsh Reality Amid Ukraine Proxy War(ウクライナ代理戦争の中で厳しい現実に目覚めたワシントン)」の訳だ。

NATOに訓練され武装したウクライナの軍隊が「プーチンの徴兵隊を一掃できる」と西側諸国が喧伝する見出しは、今年6月に掲載された記事でハミッシュ・デ・ブレトン・ゴードン元英国陸軍大佐が主張したように、とうの昔に消えた。

ウクライナの攻撃部隊がザポロジエからハリコフに至る連絡線に沿ってロシアの広範な防衛線を突破するにつれて、ワシントン、ロンドン、ブリュッセルはロシア連邦を経済的、政治的、外交的に、そして最も重要なこととして軍事的、工業的に過小評価していたことに気づき始めた。

ロシアの軍事生産は増大し、西側の備蓄は枯渇する

今日、西側諸国のメディアでは、さまざまな見出しが躍っている。 『ニューヨーク・タイムズ』紙は最近、「ロシア、制裁を乗り越えてミサイル生産を拡大、政府関係者が語る」と題する記事で、ロシアの弾薬生産は西側諸国の少なくとも7倍に達していると報じた。

同記事は、ロシアが戦車生産を2倍に増やし、年間200万発の砲弾を生産していることを認めている。この数字は、2025年から2027年の間に予定されている米国と欧州連合の砲弾生産拡大の合計よりも大きい。ロシアは西側諸国を圧倒しているだけでなく、西側諸国の武器や弾薬の何分の一かのコストで武器や弾薬を生産しているのだ。

ロシアの軍需産業が拡大し、戦車、大砲、巡航ミサイル、ウクライナで進行中の特別軍事作戦用の弾薬が生産されるにつれ、ウクライナ軍は武器弾薬の供給源が枯渇していることに気づく。

BBCは最近の記事「ポーランド、穀物問題でウクライナへの武器供給を中止」で次のように報じている:

ウクライナの最も忠実な同盟国のひとつであるポーランドは、キエフの穀物輸出をめぐる外交論争の中で、隣国への武器供給を停止すると発表した。

マテウシュ・モラヴィエツキ首相は、ポーランドはより近代的な武器で自国を守ることに重点を置いていると述べた。

ポーランドもBBCも、この決定をポーランドとウクライナの緊張の高まりによるものとしているが、現実には、ポーランドがウクライナに送ることの出来る消耗品の武器弾薬には限りがあり、その在庫を使い果たしてしまった。そのため、ポーランドが自国防衛のために手に入れた最新式のシステムの数は、はるかに少なくなっている。ポーランドも外国の武器供給国も、ウクライナ軍を戦場で維持するのに必要な量の武器や弾薬を生産していない。つまり、ポーランドがこの先もウクライナへの供給を続ければ、いずれは「非軍事化」されることになる。

他の国々も、期待された兵器システムの納入に失敗している。この中には、ウクライナが数ヶ月前から米国に要求していたATACMS弾道ミサイルも含まれており、その到着が間近に迫っているとの主張にもかかわらず、ロイターは最近の記事で、国防総省の次回の支援策を前に、再びそれを除外している。

ドイツの航空発射巡航ミサイル「タウルス」もまた、追加援助に姿を現すことはなかった。ブルームバーグは、「ドイツ、ウクライナに4億2800万ドルの追加軍事援助を計画」と題した記事で、ベルリンが最終的な支援を行う前に、「政治的、法的、軍事的、技術的な側面」をまだ検討中であると述べている。

どちらのミサイルも、いわゆる「不思議な兵器」の数々とともに、ウクライナでの戦闘の結果を変える見込みはないことに留意すべきである。ミサイルが運搬されれば、キエフにとって戦術的な勝利につながるだろうが、戦略的には戦闘にほとんど影響を与えないだろう。

西側諸国のウクライナへの軍事支援で残っているのは、不十分な量の弾薬、レオパルド1主力戦車のような冷戦の遺物を含む古い、あるいはますます不適切になる装甲車、そして圧縮されたスケジュールで行われるウクライナ兵士のための「訓練」であり、戦場に到着してから数日以内に滅びることがほとんど確実な、まったく準備の整っていない兵士を生み出している。

ウクライナにおけるアメリカ主導の対ロシア代理戦争は持続不可能であり、西側諸国の権力中枢の多くがそのことを理解しつつあるようだ。

妄想は続く

しかし、欧米の他のメディアでは、ウクライナの失敗を認めながらも、ウクライナの軍事戦略を「再考」することで、明らかに「長期戦」へと変貌しつつある戦争に勝つことが出来ると信じている記事には、依然として深い妄想が反映されている。

例えば、『エコノミスト』誌は「ウクライナは長い戦争に直面している。もちろん、変化が必要だ」とし、長らく期待されていた攻勢が「うまく行っていない」ことを認めつつも、防空システムの追加や「信頼できる大砲の供給」など、ウクライナにさらなる攻勢と防御の能力を要求している。

『エコノミスト』誌はこの記事のある箇所で、ヨーロッパが「防衛産業を強化する」と主張しているが、そのために必要なリードタイムが何年という単位で測られることにどうやら気づいていないようだ。

欧米の集団は、自分たちに有利な形で戦争を早急に終結させる計画が失敗していることに気づいているようだが、自分たちを待ち受けている「長い戦争」が、代理戦争やその他の方法で戦う能力を超えていることに気づいていないようだ。「ロシアに全力を出させる」ために計画された代理戦争は、今やロシアを軍事的にも工業的にも強くしている。同時に、この紛争と西側諸国がロシアに課した制裁は、他の国々が米国主導の一極的世界から離れ、多極的な代替案に投資するきっかけとなっている。

西側諸国が交渉の席でウクライナをより強い立場に置こうとすればするほど、ウクライナとその西側スポンサーが弱体化するのは明らかだ。この紛争が長引けば長引くほど、ウクライナとそのスポンサーにとって不利になる。集団的西側諸国にとって、代理戦争に勝利することは軍事的にも産業的にも不可能だが、集団的西側諸国の指導部にとって、この現実を受け入れることは心理的にも同様に不可能に見える。


リンドウ

暗い未来しかない日本

2023-09-27 19:10:52 | 社会
今、庭では萩、ススキ、女郎花、藤袴が咲いている。桔梗は早く咲き終わった。葛と撫子が見られないだけで、秋の七草のうち5つが咲いた。彼岸花も次々に咲いている。ウォーキングコースにはいまだに紫陽花が咲いているところもある。自然豊かな岩手は、日射し加減で、同じ種類の花が場所を変えて、長く咲くのを見ることが出来る。野生の鹿は家の近所で日常的に遭遇する。今年は山が豊かなせいか、北海道ほど熊の出没がないようだ。先週、コロナ感染者が全ての都道府県で減少したが、人口3万人の釜石では昨日40人を超えた。職場の外来でもまだ陽性者が続いている。感染者には最初イベルメクチンを処方したが、結局、支払い基金はそれを切って来た。今は、葛根湯を処方している。厚生労働省が、特例で認可したコロナ治療薬は、1人の治療で、パキロビッド9万9027円、ラゲブリオ9万4312円、ゾコーバ5万1851円、ベクルリー24万7988円である。ツムラ葛根湯エキス顆粒であれば、1週間分で478円で済む。東北大学がコロナに対する葛根湯の有効性を明らかにしている。特例で認可したコロナ治療薬は高額であるだけでなく、重篤な副作用もある。厚生労働省がまともに機能していれば、こんな薬剤は承認されなかっただろう。もっとも、それを言えば、そもそもワクチン自体が承認されていなかったはずだ。インド政府はちゃんと機能していて、ファイザーワクチンを排除した。もはや今の日本政府は、日本政府とは言えなくなっている。海外へは100兆円もの支援をする一方で、国民負担率を上げ、インフレにも根本的対応を全くしようとしない。昨日のFNNプライムオンラインは、「年金6万円「老人も応援して」 政府経済対策に“悲痛訴え” 5本柱...「還元」は誰に?」で、「岸田首相は26日、新たな経済対策の具体策を、10月中に取りまとめるよう閣僚に指示した。物価高にあえぐ高齢者からは、切実な願いが相次いでいる。」、「岸田首相は25日、新たな経済対策の方針を表明。 岸田首相「コロナ禍を乗り越えた国民の皆さんは、今度は物価高に苦しんでいます」「物価高から国民生活を守る」として、経済成長の成果である税収増を、国民に適切に還元したいとした。」と報じた。今日の東京新聞は、「「生活に余裕ない」が半数以上…でも「億り人」はほぼ倍増 物価上昇と円安が広げた格差は数字でクッキリ」を報じている。「物価上昇が続く中、子育て世帯などで困窮する家庭が増えている。政府も経済対策を10月末をめどにまとめる。対して、日銀の長年の金融緩和で株式などの資産価格が上昇した恩恵にあずかり消費意欲が旺盛な層も。有識者は格差拡大を指摘し、消費の現場では商品やサービスの二極化が進む。」。共同通信は、「【速報】NY円、149円01~11銭」を報じている。日本のインフレの原因は、金利と経済制裁にある。経済制裁で原油高を招き、エネルギー価格が高騰している。各国はインフレ対策で金利を引き上げているが、日本はいまだに「異次元の金融緩和」を続け、ゼロ金利を維持している。このため、高金利を求めて日本のお金が日本を出て行き、円を売り、ドルを買う流れが続き、円安が止まらない。円安は輸入に頼る日本をインフレに縛り付ける。ゼロ金利や円安で利を得るのは政府債務とトヨタなど輸出企業だ。安倍政権以来の円安誘導で、何もしなくとも円安になればなるほど輸出企業は利益が増えて、危機意識が希薄になり、今年、ついにトヨタは中国に輸出台数の王座を奪われてしまった。1980年代、日本は自動車、家電、半導体で世界のトップを走っていた。1990年の世界の半導体のランキングでは、1位NEC、2位東芝、3位日立、6位富士通、7位三菱電機、10位松下電器である。それが今では見る影もない。自動車も間違いなく同じ運命を辿る。その時、日本は何を経済の拠り所とするのだろうか。牽引する産業を失い、少子高齢化と人口減である。日本のメディアは仕切りに中国経済の低迷・崩壊を報じるが、中国経済の問題は、不動産と14.6兆米ドル(1067兆人民元)と言われる地方政府債務である。米国政府債務33兆ドルの約半分だ。不動産も今のところ多くが国外でのデフォルト、破産である。25日の米国The Wall Street Journalは、「Huawei’s New Gadgets Show How China Aims to Move Forward Without Foreign Tech(ファーウェイの新しいガジェットは、中国が外国技術なしでどのように前進することを目指しているかを示している) Washington’s poster child for Beijing’s bad behavior stages a comeback(北京の悪行に対するワシントンの象徴がカムバックを果たす)」を載せている。ファーウェイは、Bluetooth と WiFi を組み合わせた「NearLink」として知られる新しい技術およびワイヤレス標準を作り出した。Bluetoothより6倍高速で距離は2倍 、電力を50%削減 、遅延は1/30 、デバイス数は10倍だ。中国は以前の日本のように教育・研究を重視し、nature誌は、2022年の調査結果について、「初めて中国が米国を抜き、自然科学分野の高品質学術誌『ネイチャー・インデックス』に掲載された研究論文の投稿数で第1位となった」と報じた。2022年の自然科学分野におけるシェアは、 中国:19,373 米国:17,610 だ。質の高い科学を示すもうひとつの指標、被引用数の上位1%に入る論文への貢献でも、日本の科学技術・学術政策研究所によれば、中国は2022年に米国を上回っていた。日本の子供達の学校給食の貧しさは以前にも書いたが、平均250円の学校給食は刑務所の給食より貧しい。その結果が身長の差に如実に現れている。高校三年生で、日本:男性170.9cm 女性157.9cm、韓国:男性174.9cm 女性161.3cm、中国:男性175.7cm 女性163.5cmだ。中国の給食は品目の多いバイキン方式で、好きな量を食べることが出来る。韓国は無料で有機食材が使われる。平均給与はすでに韓国に抜かれてしまった。1980年代に世界のトップに躍り出た日本は、米国によって潰された。米国コロンビア大学ジェフリー・サックス教授がこの点を明言されている。サックス教授はハーバード大学助教授であった1981年に「ジャパン アズ ナンバーワン」のエズラ・ボーゲル教授と共に日本を訪問し、日本の脅威的なシステムに感動された。と同時に、いずれ米国に抑えられることも感じたようだ。米国は自国と肩を並べる国を脅威と見なす。元外務省官僚で防衛大学校元教授の孫崎享氏は、今日のツィートで、「米国世論調査 RCP(今ウクライナ戦争が行われているが)米国への最大の脅威どこか? 中国53.2%、ロシア28.8%、米国の最大の同盟国はどこか英国 40.7%、加 19.2%、イスラエル6.1%、仏5.5%。中国 4.2%、日本2.7%、独 1.9%、露 1.9%、豪1.5%、メキシコ0.9%、韓国0.9%」と書き込んでいる。米国人がいかに日本を同盟国として見ていないかが分かる。日本は単なる米国のATMでしかないのだ。教育・研究、医療・福祉を削り、長年にわたり円安で日本の産業や土地を海外に売り渡した日本に再起を期待することは困難だ。来年前半にも起き得る米国発の金融崩壊により、日本の円も終焉を迎えることになる。どれほど税を増やしても政府債務には焼石に水でしかない。メディアに登場する経済学者は、政府は大きな資産を保有しているため、債務不履行、デフォルトはない、と言うが、その資産は売れない資産が大半だ。日本銀行が政府国債を買い取れば問題ないと言う、暴論を述べる学者までいる。それが可能ならば、税などいらない。日本銀行も債権資産を大量に保有し、金利上昇で破綻する可能性すらあるのだ。

企業の内部留保(青)と給与(赤)の推移

「ファーウェイの知られざる一面」

2023-09-26 19:18:40 | 社会
漢字Talk7.5と言うMacintosh OSからアップル社のパソコンを始めた関係で、スマートフォンもiPhoneを使っているが、iPhoneはすでに米国でバックドアがあることが明らかになっている。強いては使いたくはないスマートフォンだが、iPhoneは最低限しか使っておらず、主にはパソコンのMacBook Proを使っているので、そのままスマートフォンはiPhoneを使い続けている。今月、中国のファーウェイが最新のスマートフォン、Mate 60 Proを出し、アップル社はiPhone 15 Proを出した。Mate 60 Proのダウンロード速度は1037Mbpsに達するのに対し、iPhone 15 Proは196Mbpsにとどまり、両者の差は5倍以上である。Mate 60 Proはファーウェイ独自のOS、HarmonyOSを使っている。以下は、インド系マレーシア人実業家、学者であるチャンドラン・ネールChandran Nair氏の「The Side of Huawei We Don’t Know(ファーウェイの知られざる一面)」のビル・トッテン氏訳、である。

西側の政策立案者や専門家から非難され、疑われることの多いファーウェイだが、その出自や独自のガバナンス・システムはほとんど知られていない。

30年という短い間で世界第2位の経済大国となりグローバル・パワーとなった中国の急成長は、21世紀最大の出来事である。しかし不幸なことに、それは世界の恐れを抱く西側諸国の大きな不安とともに、世界の主要メディアがこの国の目覚ましい発展のペースを醜く描いてきた。

この進歩の最も目に見える現象のひとつがファーウェイという中国企業で、今や世界最大の通信機器メーカーである。しかし同社の成長は、西側諸国、特にファーウェイを国家安全保障に対する潜在的脅威とみなす米国からの恐怖と不信を伴うものだった。

ファーウェイの評判があまり良くないとされる要因は、大まかに2つに集約される。1つ目は同社が実際に非常によく経営され、非常に革新的であるという点だ。これは、自身の技術的優越性と技術革新と特定の政治/文化的価値観の関係を確信している西洋人たちにとって不安を覚える事実である。次に、中国の技術企業であり、その創業者が軍に所属していた上、中国共産党(CCP)のメンバーであったため、中国政府によって制御されているという見方がある。この後者の見方は現代の中国、特に中国の商業エコシステムと国家との関係について、どれほど理解されていないかを示している。

ファーウェイの起源、方法論、および中国との関係に関するこの知識の欠如がファーウェイを繰り返し攻撃対象にする原因となっている。ワシントンはまず、同社とその成り立ちについてもっと知ることが賢明だろう。

ファーウェイの起源


1949年に中華人民共和国(PRC)が誕生した後の中国国内の苦闘争を知らない人にとって、1970年代や1980年代でも、中国の一部地域で飢饉が珍しくなかったことを覚えておく価値がある。そのような地域のひとつが江蘇省で、人々は森の中でベリーや木の実など、食べられるものを探して生き延びることを余儀なくされていた。

近隣の香港(そしてシンガポールも)では、マクドナルドやKFCのようなファーストフードがいたるところで見られるようになった時期でもあることを忘れてはならない。中国でこのような貧困と苦しみが続いたのは、継続的な内部闘争と、国を支えることに失敗した思慮の浅い政策の結果だった。

この時期に育った一人の男が任正非(Ren Zhengfei)である。彼の家は非常に貧しかったため、彼は自分のわずかな食糧の一部を我慢して兄弟に与え、代わりに自分のご飯はふすまを混ぜて食べていた。彼は家族が生き延びるために森に入って食べられるものを何でも採っていた。

幼いころの苦闘の日々が、若い彼を驚くべき旅へと駆り立てた。任は建築と工学を学んだ後、中国軍に入隊した。やがて彼は、社会に貢献したいという願望に駆られ、より大きな起業計画を携えて軍を去り、独学でコンピューターやその他のデジタル技術の仕組みを学んだ。いくつかの失敗をへて1987年、43歳のときに最後の賭けとして「中国にコミットし、変化をもたらす」という意味のファーウェイを設立し、プログラム制御のスイッチを販売することを意図した。

同社は現在、さまざまな意味で世界で最も知られたブランドのひとつとなっている。それはイノベーションと時価総額のおかげであり、 また欧米と中国の地政学的な争いに巻き込まれたせいでもある。

任の窮乏と絶望的な物語は、今日の巨大テクノロジー企業の創業者の多くとは対照的である。それはまた、同社の回復力、持ち前の前向きな感覚、そして現在の外部からの圧力にどのように耐えようとしているのかについての手がかりにもなるはずだ。ファーウェイが米国の制裁を克服し、自らイノベーションを起こせることを示す新型スマートフォンの発売は大きな注目を浴びた。同様に、世界的な見出しにはならなかったが、同社は最近、独自の基幹業務ソフトウェアの導入を発表し、オラクルのソフトウェアへの依存を終了した。必要こそが発明の母であるという古い格言を証明するように、今後も多くのイノベーションが期待されている。

ファーウェイの何が革新的なのか。これを理解するには、同社の3つの側面とその経営方法を見る必要がある。

ファーウェイのガバナンスと所有制度


ファーウェイは中国共産党の商業的な延長であり、そのように運営され、創業者である任正非が絶対的な権限を持ち、非常にトップダウンで階層的なシステムを密接に監督しているのと同じように運営されているとよく誤解されている。

現実はそれとは異なっている。同社は非上場企業で100%従業員が所有しており、任正非は0.7%の株式を保有している。このガバナンス構造はファーウェイ独自のもので、世界中のベストプラクティスを幅広く研究し、ニーズに合わせてカスタマイズしたものだ。

同社は、多数のチェック・アンド・バランスを備えた集団的リーダーシップ・モデルのもとで運営されており、株主代表と意思決定機関に座る者は民主的に選出されている。株主総会は、増資、利益配分、取締役会および監査役会のメンバーの選出など、会社の主要事項を決定する、会社にとって最高の意思決定の場である。従業員は労働組合委員会によって代表され、代表委員会は、労働組合が株主責任を果たし、株主権を行使するための従業員の手段である。議決権を有する従業員が1株につき1票の割合で代表委員会を選出し、その後、代表委員会が1人1票の割合で取締役会および監査役会を選出する。これらの行事は透明性が高く、全従業員にライブストリーミングで配信されることさえある。

ファーウェイの創業者として、任の影響力と権威は彼の業績に対する尊敬から生まれたものであり、年長者やリーダーを敬う文化に根ざした、組織の調和と秩序に対する中国的なアプローチである。任は取締役会の決定に対して拒否権を持っているが、この権利を行使したのはわずか数回であり、一般的には技術や事業の方向性についてである。彼は社内では、方向性決定の指針となる全社的な演説を通じて、自分のビジョンやアイデアを共有することを好む人物として描かれている。

このようなガバナンス体制を構築する主な動機は、会社の永続性を確保し、持続可能な成長を実現するためである。非上場企業であることで、ファーウェイは長期的な視野に立って構造を設計し、目標を設定することができ、顧客と従業員を含めた中核的なビジョンと使命に集中することができる。

最近の制裁措置はファーウェイのスマートフォン事業と短期的な利益に影響を与えたが(2022年の純利益は前年比69%減)、ファーウェイは戦略的な投資を継続し、研究開発(R&D)にさらに多くの資本を投入した。2022年には売上高の25%、1615億元に相当する金額を研究開発に投資し、絶対額ではアメリカ以外の世界のどの企業よりも多く、売上高に占める割合ではテクノロジー大手を上回った。ちなみに、世界最大の研究開発費を投じるアマゾンとアルファベットは、同じ年に売上高の約14%を研究開発に投資している。

ハイエンドの5G携帯電話をグローバルに発売できないにもかかわらず、スマートフォン事業部門はスタッフを解雇していない。これはまた、しばしば誤解され、評価されない文化の違いでもあり、従業員は家族の一員とみなされる。そのため、困難な時期が訪れても誰もがそれに耐え、「サバイバル」モードに入るのだ。新しいMate 60、Mate 60 Pro、Mate 60 Pro+、そして折りたたみ式携帯電話の新バージョンであるMate X5の発売は、この戦略の知恵を証明している。

ファーウェイのガバナンス構造は、経営不振や外部からの圧力がある時でも、会社、施設、研究開発、従業員に再投資することを可能にしている。

世界から学ぶ文化とグローバルな開放性


ファーウェイは、儒教の伝統である集団的回復力に基づくハードワークを重視することで、障害を克服し、「顧客中心主義を貫き、顧客のために価値を創造する」という会社の公式目標を達成するための最適なソリューションを生み出すことができると固く信じる人材を惹きつけることを可能にした。従業員は金銭的な報酬だけでなく、目的意識や問題解決に携わる必要性にも突き動かされている。同社の魅力は、中国が提供できる最高の人材を惹き寄せるのに役立っている。

現在のコーポレート・ガバナンス・モデルを考えるにあたって特筆すべきことは、ファーウェイの首脳陣が、日本の同族会社やフランス、ドイツ、アメリカの企業など、世界中の長く成功している企業のガバナンス・モデルを時間をかけて研究したことである。彼らはさまざまなモデルの長所と短所を積極的に検討し、成功と失敗の教訓から学び、それらのアイデアをファーウェイ用にカスタマイズした。

ファーウェイの監督委員会の設計はその好例である。ドイツのコーポレート・ガバナンス構造とフレデムンド・マリクが開発したガバナンス原則からインスピレーションを得ている。しかし、ファーウェイの構造は、株主の代表がトップに座るという点でドイツ企業とは異なっている。また、監査役会は取締役会を監督するだけでなく、社内のさまざまな階層におけるリーダーシップ・パイプラインの育成や、会社の運営方法に関する規制の設定に積極的な役割を果たしている。

従業員の参加もユニークだ。監査役会および取締役会のメンバーは全員、ファーウェイの従業員である。また、取締役会に推薦される株主代表は、会社に貢献し、必要なリーダーシップ能力を発揮していることが条件となっている。

異なるモデルから学ぶという同様の考え方は、後継者計画と5年前の持ち回り共同議長制度の確立にも適用された。ファーウェイは、社内でリーダーを育成することに重点を置いている。同社が望む体制を実現するために、同族会社を含め、同様のアプローチをとる既存企業のさまざまなリーダーシップ構造を研究した。

優秀な人材を確保することで、一個人の限界を乗り越え、チェック・アンド・バランスを実現できると同社は考えている。ファーウェイは現在、3人の共同議長が交代で務めている。共同議長が非番のときは、他国を訪問し、従業員と会い、ビジネスについて学び、そして重要なこととして、考えるためのスペースと時間を持つことが重視されている。

ファーウェイのオープンな世界観と異文化への理解は、「ヨーロッパ都市」というニックネームを持つ東莞市(City of Dongguan)の研究開発キャンパスに最も劇的に反映されており、3万人のスタッフがヨーロッパ9カ国を模した12の「村」で働いている。手入れの行き届いた庭園が、ヴェルサイユ宮殿、ハイデルベルク城、アムステルダム、ヴェローナなど、ヨーロッパで最も有名な都市や建築物の実物大レプリカを取り囲んでいる。村々には数多くのレストランやカフェが点在しており、コーヒー文化を提唱する任の姿勢がうかがえる。また、キャンパス内を車で移動する必要がないよう、電気鉄道も走っている。このキャンパスのコンセプトはデザイン・コンペの一環として考案されたもので、通常のテクノロジー企業や中国風のデザインとは一線を画すユニークさが評価されて選ばれた。

この組織とその従業員は、グローバルな文化交流を促進し、中国以外の成功モデルから学ぶことを明らかに評価し続けている。著名なオブザーバーもこれに注目している。

社会的義務と変化をもたらすことへのコミットメント


多くの人は、ファーウェイが持続可能性を事業の優先事項の不可欠な一部と考えていることを知って驚くかもしれない。同社には4つの持続可能性戦略があり、そのすべてがビジョンとミッションに沿ったものである: デジタル・インクルージョン、セキュリティと信頼性、環境保護、健全で調和のとれたエコシステムである。これらの戦略はそれぞれ、同社のビジネスや製品開発と統合されている。例えば、ファーウェイの製品とソリューションは、事業とその顧客のエネルギー消費とCO2排出の削減を支援するように設計されることが多くなっている。

同社はサステナビリティ・レポートを毎年発表しているが、欧米の典型的なESG(環境・社会・企業統治)やCSR(企業の社会的責任)報告には準拠していない。同様に、同社は慈善事業に重きを置いておらず、財団や慈善部門を設立していない。その代わりに、自社のテクノロジーを活用した費用対効果の高い持続可能なソリューションの開発に投資し、ニーズが最も高い国々でその目的を達成するために、地元や多国間のパートナーと協力している。

TECH4ALLは、インクルーシブで持続可能な世界を実現する革新的なテクノロジーとソリューションの開発に特化した、同社の長期的なデジタル・インクルージョン・イニシアチブである。同社はAIとクラウドを応用して、絶滅の危機に瀕した動物や熱帯雨林、湿地帯の音を学習し、違法な狩猟や伐採を遠隔監視・防止している。このアプリケーションはラテンアメリカやヨーロッパの多くの国で使用されており、他の分野でも展開できる可能性を秘めている。

もうひとつの例はRuralStarだ。地方開発へのコミットメントの一環として、また遠隔地の開発を促進するためにデジタルデバイドを埋めるために、ファーウェイはデータ伝送のよりシンプルで小型の技術革新に投資した。

RuralStarソリューションでは、基地局を専用タワーではなくシンプルなポール上に建設でき、6枚のソーラーパネルで電力を供給できる低消費電力機能を備えている。RuralStarは、遠隔地や農村地域で利用可能な最も環境に優しく、費用対効果の高いソリューションの1つとして広く認知されている。特筆すべきは、従来のように高密度の都市部のみを対象としていた場合に比べ、農村部でのサービス提供というビジネス上の決断は、利益率を30%削減できると推定されることだ。世界的に見ると、この技術は従来のソリューションに比べて70%のコスト削減で、数千人規模の小さな村にサービスを提供している。2017年のガーナでの最初の試験的導入に続き、60カ国以上がRuralStarを導入し、農村部の5,000万人以上が恩恵を受けている。このようなプロジェクトの資金調達の一例として、ガーナでは2020年、通信省とガーナ電子通信投資省が、ファーウェイがガーナ向けに2,000カ所以上のRuralStarサイトを展開し、340万人以上に音声とデータサービスを提供するための融資契約を中国輸出入銀行と締結した。

デジタル化を推進するという目標の中で、ファーウェイは一貫してグリーン変革にも投資してきた。自社事業における再生可能エネルギーの利用を大幅に増やす(2020年から42.3%増)だけでなく、自社製品のエネルギー効率の向上もイノベーション・プロセスにおける重要な指標となっている。同社は2019年以降、主要製品のエネルギー効率を1.9倍に高めたと報告しており、その結果、顧客や業界パートナーの二酸化炭素排出量削減に貢献している。

より広く言えば、ファーウェイのデジタル・パワー技術は、世界中の多くの太陽光発電所で展開され、使用されている。これは、ワットをビットで管理し、クリーンエネルギーの生産と排出量削減を支援するというものだ。

2021年末までに、ファーウェイ・デジタル・パワーは、顧客が4829億kWhのグリーン電力を発電し、約142億kWhの電力を節約するのを支援した。こうした努力の結果、CO2排出量は約2億3000万トン削減され、これは3億2000万本の植樹に相当する。

社会的コミットメントを果たすことを選択し、ミッション・ステートメントを超えた企業ビジョンの実現に向けて具体的なステップを踏む能力はファーウェイにとって比較的ユニークなものである。企業がESG目標を達成し、短期的な優先順位と持続可能な成長のための投資との間の根本的な緊張を克服しようと努力している現在、ファーウェイは、自社の製品とサービスを持続可能な開発の重要なイネーブラーと見なすことによって、そのような課題の克服に取り組んでいる。同社は、二酸化炭素排出量の削減、再生可能エネルギーの促進、循環型経済への貢献のための情報通信技術の開発に取り組んでいる。ファーウェイは、自社事業における省エネルギーと排出削減を推進し、より多くの再生可能エネルギーを使用するよう努めている。このようなことが可能なのは、持続可能性の課題に沿った戦略的選択を行うリーダーシップ・チーム、長期的な野心に投資する意欲、持続可能性の目標達成を可能にする新製品を革新する能力など、社内のコンセンサスがあるからである。

なくならない企業


新たなイノベーションを提供する卓越性に基づき、グローバルな舞台で成功を収めているファーウェイは、中国が世界の他の国々に教えることが多くあることを示している。しかしこの成功は、オープンな戦略と他者から学ぶ姿勢によってもたらされた。最近の展開に対応しようと必死になっているファーウェイの批判者たちは、注意するべきだ。


フジバカマ

「ドルの世界支配の終焉はBRICSのせいだ」

2023-09-25 19:13:39 | 社会
先週末から岩手にもようやく秋が訪れた。最高気温は25度ほどで、昼夜の気温差も大きく開いた。日中の風も爽やかになった。夜間の外気は肌寒くさえ感じる。庭では彼岸花も咲いた。先週金曜日にNHKが発表した新型コロナウイルスの感染状況は、都道府県全てで減少している。今回の第9波のピークは第8波のピークの3分の2であった。もっとも、7回目のワクチン接種が始まっているので、いずれまた減少から増加に転じるのだろうが。NHKのデータを見ると、ワクチン接種も1回目、2回目は1億人を超えていたが、4回目には5892万人に減少し、6回目は2066万人まで減少している。7回目も無料であるため、東北の真面目な人たちは、接種を続けるだろうが、来年、有料となると、かなり減少するだろう。身の回りで、ワクチン接種をしても感染した人がいくらでもいるのだから。感染してもほとんどの人は風邪程度になっている。今月19日、学術誌RadiologyVol. 308, No. 3に掲載された慶應義塾大学の研究者による論文、「Assessment of Myocardial 18F-FDG Uptake at PET/CT in Asymptomatic SARS-CoV-2-vaccinated and Nonvaccinated Patients(無症候性SARS-CoV-2ワクチン接種患者と非接種患者におけるPET/CTでの心筋18F-FDG取り込みの評価)」は、「非ワクチン接種患者と比較して、2回目のワクチン接種を受けた無症状の患者は、撮像の1~180日前にPET/CTで心筋FDGの取り込みが増加していた。」ことを明らかにしている。ワクチン2回接種者では症状がなくても心筋にダメージを受けている可能性がある。22日の厚生労働省発表のワクチン接種後の死亡認定数は1ヶ月で一気に59人増え、269人となった。しかもなお、死亡の申請数は741件ある。米国や欧州では日本と違って、メディアもワクチンの事実を報じ始めている。同じようにウクライナ情勢についても欧米メディアが事実を伝え始めている。21日の英国The Expressは、「Ukraine bombshell: Millions of EU citizens are praying Putin will win(ウクライナの爆弾発言: 数百万人のEU市民がプーチンの勝利を祈っている)」を、また、米国主要メディアCNNは、23日に、「Poland’s spat with Ukraine angered many in Europe, and was a gift for Putin(ポーランドとウクライナの喧嘩はヨーロッパの多くの人々を怒らせ、プーチンへの贈り物となった)」を報じ、欧州市民がウクライナ支援に反対し始めていることを伝えている。戦場ではロシアがレーザー兵器を投入したようだ。21日、ロシアのSPUTNIK Internationalが、「Sci-Fi Becomes Reality: Russian Laser Weapons Successfully Tested in Combat(SFが現実に: ロシアのレーザー兵器、実戦テストに成功)」を報じていいる。米国もすでにレーザー兵器を開発しているが、実戦での有効性確認はロシアが先となった。今後さらにロシアのウクライナ軍事施設への攻撃が強まって行く可能性がある。欧米によるロシアへの経済制裁はロシアと中国を接近させ、中東をロシア、中国に接近させた。23日の米国The New York Postは、「Blame the BRICS for the end of the dollar’s global domination(ドルの世界支配の終焉はBRICSのせいだ)」を載せている。米国の立場でロシア、中国を「悪者」と読んでいるが、ドルが終焉を迎えていることは認識しているようだ。

2009年に主要新興国からなるBRICSが発足してから15年近くが経つが、BRICSは米ドルを世界の支配的通貨として追い落とすという野望をまだ達成出来ていない。

しかし、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成されるBRICSは、最近南アフリカで開催されたサミットで、共同通貨としての力を発揮するための大きな一歩を踏み出した。

サウジアラビア、イラン、エチオピア、エジプト、アルゼンチン、アラブ首長国連邦の6カ国が新たに加盟し、数十年にわたるドルの支配力を弱め、世界貿易の主役である石油という商品の優先的な決済手段としてのドルの使用をやめさせようとしている。

世界経済の「脱ドル化」は、米国にとって危険な結果をもたらす可能性がある。

世界の基軸通貨としてのドルの役割は、米国のグローバル・リーダーシップの基盤である。

ドル化は、国際金融政策の形成において米国に過大な影響力を与え、国際社会はワシントンで下される経済決定に適応することを余儀なくされる。

イランからサウジアラビアまで、その多くが世界有数の産油国である。

最も重要なことは、前例のない世界的な紛争が起きている今、ドルの重要性を低下させることは、イランやロシアのようなならず者国家が、地政学的な悪行に対して制裁を免れることを可能にするということだ。

ドル安は国内にも深刻な影響を及ぼす。

ドルに対する需要が減れば、輸出品は安くなるかもしれないが、ドルの購買力が低下し、ドルの安定性に対する信頼が損なわれる。

その結果、金利上昇とインフレが株式市場に悪影響を及ぼし、巨額の連邦赤字の資金調達が困難になる。

BRICSサミットが明らかにしたように、石油市場におけるBRICSの影響力はかつてないほど大きくなっている。

これによりBRICSは、世界のエネルギー市場において最終的にドルに代わって自国通貨を使用すると言う、かつてない力を手に入れたのである。

加盟国拡大のために同盟が用いた選択的アプローチをよく見てみよう。

同盟国は具体的な加盟基準について詳細を明らかにしなかったが、その選択は明らかにエネルギー中心である。

トルコやインドネシアのような経済大国が目立った。

反欧米同盟には現在、世界有数の産油国であるサウジアラビア、ロシア、中国、ブラジル、イラン、アラブ首長国連邦の6カ国が加盟している。

また、世界最大の石油輸入国である中国とインドがある。

商品市場分析会社Kplerのデータによれば、アジア最大の経済大国である中国と第3位の経済大国であるインドは、世界の原油輸入量の40%以上を輸入している。

現在、石油取引の90%はドル建てで行われているが、中国元やロシア・ルーブルで行われるものも増えている。

ロイター通信によると、例えばインドはロシアの石油輸入代金を人民元で支払うようになり、中国も今年の第1四半期にエネルギー輸入の大半を人民元でロシアに支払うようになったと言う。

サウジアラビアはBRICSの一員としては新しいが、すでにロシアと結託して石油の減産を進めている。

最近の国際エネルギー機関(IEA)の報告書によれば、この減産によって今年いっぱいは「大幅な供給不足」に陥る可能性があり、ガス価格は高止まりし、インフレに拍車がかかると言う。

BRICSの新規参入国について特筆すべきは、その多くが米国の制裁の威力を熟知している権威主義政権であると言うことだ。

イランはもちろん、何年も制裁と闘って来た。

サウジアラビアは米国の重要な同盟国だが、OPEC+が大幅減産を発表した後の10月にバイデンが求めた「結果」を避けようとしている。

バイデンはまた、2020年にサウジアラビアのジャーナリスト、ジャマル・カショギが殺害された件で、サウジアラビアを「亡国」にすると脅した。

もちろん、ロシア、中国、イランを支配するような外国の独裁者の意思決定の主要な原動力は経済ではない。

権力を維持し、市民の自由を抑圧し、体制の安定を確保することこそが、彼らを最も突き動かすものなのだ。

ワシントンを貿易や外交から締め出すことで、BRICSの加盟は、プーチンのような悪者を懲らしめる道具としてドルを「武器化」する我々の能力を、ならず者国家が根底から覆すことを可能にする。

米国は何十年もの間、イランや北朝鮮、そして現在のロシアと言った権威主義政権に対して、軍事介入の代わりに制裁を採用して来た。

例えば、ホワイトハウスはウクライナ侵攻後、ロシアの資産6000億ドルを差し押さえた。

バイデンはまた、ロシアを国際送金システムであるSWIFTから排除し、ホワイトハウスの怒りを買う危険性のある非欧米諸国に衝撃を与えた。

しかし、どんなに強固な制裁も効果がないことが証明されている。中国とインドは、ウクライナ侵攻を行ったロシアをまだ非難していないが、モスクワのエネルギー収入を維持し、プーチンの戦争マシンの資金源となり、BRICSの協力の力を浮き彫りにしている。

BRICSはすでに世界経済で大きな存在感を示している。

総人口は30億人を超え、世界GDPの31.5%を占めるBRICSは、世界経済大国G7に対する強力な挑戦者だ。

例えば、世界のGDPに占めるG7のシェアは現在30%で、スタティスタの調査によれば、2027年には27.95%まで低下すると予測されている。

ドルの優位性によって、多くの非西洋諸国は力を合わせ、西洋の経済覇権に対抗する力をつけようとしている。

ワシントンがグリーンバック(ドル紙幣)を経済的な道具としてではなく、地政学的な道具として使っていることに辟易していたBRICSは、ついに独自の経済戦争の手引書を開発した。

そして彼らは今、我々に対していつでもそれを翻すことが出来るのだ。



『あの70年代ショー』

2023-09-23 19:15:23 | 社会
第2次世界大戦で国土が無傷であった米国は、製造業が盛んで1960年代には黄金時代を迎えた。賃金が上昇し、それとともに物価も上昇した。しかし、1973年、イスラエルとエジプト・シリアをはじめとするアラブ諸国との間で、第四次中東戦争が勃発し、中東の産油国は原油価格を70%引き上げた。第1次オイルショックだ。また、1979年にはイラン革命を機にイランでの石油生産が中断し、さらにOPEC(石油輸出国機構)がこの年1月、4月、7月に段階的に原油価格を引き上げ、第2次オイルショックとなった。米国では、60年代から賃金上昇が発生し、1970年代からは、賃金は7%を恒常的に上回り、石油高騰と相まって高インフレの状況が定着した。1974年にはインフレ率は13.5%にまでなった。その後、一旦インフレ率は低下したが、第2次オイルショック後の1980年には再び13.5%にまで上昇した。インフレを抑えるために中央銀行の政策金利は、1981年には19%台まで急騰している。インフレが進んだ背景には、中央銀行による通貨量の増大もある。通貨量の指標の一つであるMlの1年当たり増加率は,1965~69年において4.9%、1970~74年において6.1%、1975~79年において6.9%となっている。この当時の米国は現在と異なり製造業がサービス業より優位であったため、賃金上昇しやすい環境があり、それがまたインフレに拍車をかけてもいた。以下は、今日の米国ZeroHedgeの「"That 70s Show"(『あの70年代ショー』)」の訳だ。

"That 70s Show"
『あの70年代ショー』
2023年9月23日 ZeroHedge

1998年から2006年まで放映された大ヒットTVシリーズ『あの70年代ショー』は、70年代後半のウィスコンシンに住む6人のティーンエイジャーの友人たちに焦点を当てた。皮肉なことに、ティーンエイジャーを演じた俳優たちは70年代後半に生まれておらず、その時代の生活を体験したことがなかった。インターネット、ケーブルテレビ、携帯電話、ソーシャルメディアのないライフスタイルなど、現代に生きる多くの人には想像も出来ない。ああ...恐ろしい。

しかし、50年近く経った今日、当時を知らない金融評論家たちは、インフレと利回りは 『あの70年代ショー』を繰り返すだろうと指摘している。当然のことながら、インフレと金利が歴史的な低水準から上昇することは懸念材料である。ジェームズ・ブラードが指摘したように、「インフレは悪質な問題である」。

「米連邦準備制度理事会(FRB)が昨年、インフレ抑制のための積極的なキャンペーンに乗り出したのは、インフレが制御不能に陥り、経済が不調に陥った1970年代の痛みを伴う繰り返しを避けるためだった。- CNN

連邦準備制度理事会(FRB)が現在の金融政策を決定する際、「インフレの急進」という懸念は依然として重要な関心事である。それはまた、多くのエコノミストが歴史を振り返り、『あの70年代ショー』の時代を基準にして、インフレの復活に対する懸念を正当化することを後押ししている。

「当時の連邦準備制度理事会(FRB)のアーサー・バーンズ議長は、1972年から1974年にかけて金利を大幅に引き上げた。その後、経済が縮小すると、彼は方針を転換し、金利を引き下げ始めた。

その後インフレが再燃し、1979年にFRBに就任したポール・ボルカーが手を下さざるを得なくなった、とリチャードソンは言う。ボルカーは2桁のインフレを収束させたが、それは1980年代初頭に失業率が10%を超えたこともある連続不況の引き金となった借り入れコストの引き上げによるものだった。

カリフォルニア大学アーバイン校の経済学教授であるリチャードソン氏は、「もし彼らが今インフレを止めなければ、歴史的な類推によれば、インフレは止まらず、さらに悪化するだろう」と語った。

しかし、バーンズが間違っていて、フォルカーが正しかったと言うのは単純化し過ぎかもしれない。なぜなら、今日の経済は『あの70年代ショー』の時代とは大きく異なっているからだ。

今日の経済は1970年代とは大きく異なる

70年代、連邦準備制度理事会(FRB)はインフレとの戦いに没頭していた。ブレトン・ウッズ体制が終焉し、賃金・物価統制が失敗し、さらに石油禁輸措置が重なったことで、インフレは急上昇した。この高騰は、金利上昇の重圧で市場を崩壊させた。継続する原油価格ショック、食料品価格の高騰、賃金上昇、財政逼迫により、この10年の終わりまでスタグフレーションが続いた。

最も注目すべきはFRBのインフレ対策だった。今日と同様、FRBは外生的要因によるインフレ圧力を鎮めるために利上げを行った。70年代後半には、石油危機が製造業集約型経済に原油価格を押し上げ、インフレ圧力をもたらした。今日のインフレは、供給が制限された経済に対して需要を創出する金融介入がもたらしたものだ。

ここが重要な点だ。『あの70年代ショー』の時代、経済は主に製造業を基盤としており、経済成長に高い乗数効果をもたらしていた。今日では、その構成は逆転し、サービス業が経済活動の大部分を占めている。サービスは不可欠ではあるが、経済活動に対する乗数効果は極めて低い。

主な理由のひとつは、製造業よりもサービス業の方が賃金の伸びが低いことだ。


ここ2、3年の間に賃金は急上昇したが、これは経済封鎖の影響であり、雇用マトリックスに需給ギャップを生じさせた。このように、人口に占めるフルタイム雇用の割合は、パンデミック(世界的大流行)の封鎖期間中に急激に低下した。しかし、完全雇用がパンデミック以前の水準に戻ると、雇用主が労働バランスをコントロール出来るようになるため、賃金の伸びは低下する。

さらに、賃金、金利、経済成長率の経済複合指標は、『あの70年代ショー』と現在とで高い相関関係を保っている。このことは、シャットダウンによって生じた需給の不均衡によってインフレ率が上昇した一方で、正常な状態に戻れば、経済活動が鈍化するにつれてインフレ率が低下することを示唆している。

相関関係は85%で、インフレ率の低下は経済成長、金利、賃金と一致するだろう。

経済成長と賃金が右肩上がりで上昇し、金利水準とインフレ率が上昇した『あの70年代ショー』とは異なり、あの時代の再現が不可能であるのには理由がある。

債務負担と経済的弱さ

That 70s Show』の特筆すべき点は、それが第二次世界大戦後の出来事の集大成だったということだ。

第二次世界大戦後、米国は "最後の一人 "となった。フランス、イギリス、ロシア、ドイツ、ポーランド、日本などは壊滅的な打撃を受け、自分たちのために生産する能力はほとんどなかった。米国は、"戦争の少年たち "が帰還し、戦争で荒廃した地球の再建に着手したことで、最も実質的な経済成長を遂げた。

しかし、それは始まりに過ぎなかった。

50年代後半、人類が宇宙への第一歩を踏み出したことで、米国は奈落の底へと足を踏み入れた。20年近く続いた宇宙開発競争は、米国の未来を切り開く革新と技術の飛躍につながった。

これらの進歩は、産業や製造業の背景と相まって、高水準の経済成長、貯蓄率の上昇、設備投資を促進し、金利上昇を支えた。

さらに、政府には赤字がなく、家計の負債比率は約60%だった。そのため、インフレ率が上昇し、金利が連動して上昇しても、平均的な家計は生活水準を維持することが出来た。このグラフは、金融化以前と以後の家計負債と所得の差を示している。

政府は32兆ドルを超える債務を抱える深刻な財政赤字を抱えており、消費者債務は記録的な水準にあり、経済成長率は脆弱であるため、消費者がインフレと金利上昇に耐えられる能力は限られている。前述の通り、生活水準を維持するための収入と貯蓄の「ギャップ」は記録的な水準にある。このグラフは、インフレ調整後の生活費と収入と貯蓄の間のギャップを示している。この「ギャップ」を埋めるには、現在、毎年6500ドル以上の借金が必要である。

同じではない

FRBは現在、インフレを鎮めようと「命がけの闘い」に挑んでいるが、現在の経済状況は大きく異なっている。債務負担が重いため、2%というわずかな経済成長率を維持するためにも、経済は低金利を必要としている。このような水準は歴史的には「不況前」と見なされていたが、今日では経済学者が維持することを望んでいる。

これが、経済成長が低水準で推移する主な理由のひとつである。このようなことは、私たちが経済を目の当たりにすることを示唆している:

景気後退がより頻繁に起こる、

株式市場のリターンの低下

生活費が上昇する一方で賃金の伸びは抑制されるため、スタグフレーション(インフレと景気後退の共存状態)的な環境となる。

雇用構造の変化、人口動態の変化、生産性の変化に由来するデフレ圧力は、こうした問題をさらに大きくするだろう。

米連邦準備制度理事会(FRB)が『あの70年代ショー』を心配していると言いたい人は多いが、そのような心配を裏付ける経済力があれば幸いである。

FRBがもっと心配すべきなのは、金利上昇の影響が債務に依存した金融システムの破たんを引き起こす場合である。


一人当たりの家計債務(青)と所得(黄)推移(1959年〜1984年)

一人当たりの家計債務(青)と所得(黄)推移(1985年〜現在)

総国内製品と生活コストのギャップ(緑)、一人当たりの消費者クレジット(黒線)

平均経済成長率(青)、総債務のGDP比(黒)

「ロシアは産業戦争競争に勝利している」

2023-09-22 19:10:48 | 社会
日本の首相はビル・ゲイツの財団(「岸田首相、ゲイツ財団から受賞 保健分野の貢献評価」20日時事通信)や国連から賞をもらった。国民の税金との引き換えのようなものだ。20日のNHKは「岸田首相 国連総会で演説 国際協調と国連改革を呼びかけ」を報じたが、総会にもかかわらず首相の演説に出席が極めて少なかった(一般にガラ空きと表現される)ことは報じていない。テレ朝newsでは、「異例の首脳欠席・目立つ空席…ゼレンスキー氏 対面演説で団結訴えるも“結束”程遠く」とゼレンスキーの演説の出席が少なかったことは報じている。日本の首相と同じくドイツの首相の演説でも出席は少なかった。しかし、ブラジルの大統領の演説ではほぼ満席であった。国連加盟国196カ国がどの国を重視し始めているかを如実に語る。日本のメディアはいまだにウクライナがロシアに対して優勢であると報じ続けているが、欧米主要メディの論調が変化して来ている。今月6日、「ウクライナ東部コスティアンティニウカへのミサイル攻撃は、ここ数カ月で国内で最も死者数が多いものの一つとなり、少なくとも民間人15人が死亡、30人以上が負傷した」。これをウクライナ政府はロシアによる攻撃だと即座に発表した。しかし、18日、米国主要紙The New York Timesは、「Evidence Suggests Ukrainian Missile Caused Market Tragedy(ウクライナのミサイルが市場の悲劇を引き起こしたことを示唆する証拠) Witness accounts and an analysis of video and weapon fragments suggest a Ukrainian missile failed to hit its intended target and landed in a bustling street, with devastating consequences.(目撃者の証言とビデオや武器の破片の分析によると、ウクライナのミサイルは意図した目標に命中せず、賑やかな通りに着弾し、壊滅的な結果をもたらした)」を報じた。同じ日のNewsweekも「It's Time to Admit the Truth About the War in Ukraine—and Course Correct(ウクライナ戦争の真実を認め、軌道修正する時が来た)」を載せている。また英国The Economistは昨日、ウクライナ国旗に「TIME FOR A RETHINK(再考の時)」と書いた画像を載せて、「Ukraine faces a long war. A change of course is needed(ウクライナは長期戦に直面している。軌道修正が必要)  Its backers should pray for a speedy victory—but plan for a long struggle(ウクライナの支持者たちは一刻も早い勝利を祈るべきだが、長い戦いに備えて計画を立てるべきだ)」を載せている。ウクライナでの戦いの現実は、ウクライナは50万人もの戦死者を出し、欧米が提供した戦車やミサイル、弾丸がロシアのドローンやミサイルの標的となり、ほとんどを失い、ロシアが敷設した地雷原で行手を阻まれている。本格的な攻撃全てが撃退され、散発的にロシア領となった地域の「民間施設」にドローン攻撃、ミサイル攻撃を行うしかない状態だ。ロシアは意図的に戦争を長期化させ、欧米の当初の思惑とは真逆に、欧米自体の疲弊を狙っているように見える。以下は14日の米国Moon of Alabamaに載った、「Russia Is Winning The Industrial Warfare Race(ロシアは産業戦争競争に勝利している)」の訳だ。

昨年、私は『ロシアは何もかも使い果たしている』と主張するメディアを嘲笑した。

ロシアは、そしてプーチンは、どのように武器化し、失い、そして使い果たそうとしているのか?すべて - 2022年6月3日
ロシアは[メディアが主張するものは何でも]不足している - 2022年6月26日
ミサイルを使い果たしたロシアがウクライナに弾幕を張る - 2022年10月10日

> 3月に私は「嘘は戦争に勝てない」と警告した。その実例がここにある。

ミサイルを使い果たした」とされ、さらに重要なこととして、忍耐を使い果たしたとされる後、ロシア連邦の指導部は、「ミサイルの連打」でウクライナの都市を非電化することを決定した。<

西側の軍事評論家たちは、ようやく明白なことを受け入れ始めた。ロシアは勝利し、大差をつけている。

同じような変化は、ロシアの兵器産業が西側諸国を凌駕していることを認めることに取って代わられた、新しい『ロシアが不足している』という記事の少なさにも見られる:

ロシア、制裁を克服してミサイル生産を拡大、と当局者 - NYタイムズ
モスクワのミサイル生産は今や戦前のレベルを超えており、ウクライナはこの冬、特に脆弱になる、と当局者は言う。

制裁の結果、ロシアは2022年2月の開戦時、少なくとも半年間はミサイルやその他の兵器の生産を劇的に減速せざるを得なかったと米国政府関係者は推測している。しかし2022年末には、モスクワの軍需産業は再び速度を上げ始めたと、機密評価を公表するために匿名を条件に話した米国政府関係者は、現在では認めている。
...
ある西側防衛当局の高官は、戦前はロシアは年間100台の戦車を製造できたが、現在は200台を製造していると述べた。

西側政府高官はまた、ロシアは年間200万発の砲弾を製造する勢いだと考えている。これは、西側情報機関が戦前にロシアが製造できると当初見積もっていた量の倍である。

その結果、ロシアは現在、米国やヨーロッパよりも多くの弾薬を生産している。エストニア国防省の高官であるクスティ・サルム氏は、ロシアの現在の弾薬生産量は西側諸国の7倍に上ると推定している。

サルム氏によれば、ロシアの生産コストは西側諸国よりもはるかに低いが、これはモスクワがより安く武器を製造するために安全性や品質を犠牲にしているためだと言う。例えば、西側諸国が155ミリの砲弾を製造するのに5000ドルから6000ドルかかるのに対し、ロシアは同等の152ミリ砲弾を製造するのに約600ドルかかると言う。

私は、ニューヨーク・タイムズ紙が引用しているロシアの現在の兵器生産の数字は低すぎると思う。前ロシア大統領のドミトリー・メドベージェフが2月、兵器の生産量が「指数関数的に増加している」と語ったことを思い出してほしい:

メドベージェフは、モスクワはいくつかの工場で軍事生産を「数十倍」に増加させ、優位に立つためにウクライナ側からロシア領内に発射された武器を綿密に調査していると述べた。

私はまた、制裁がロシアの兵器産業を妨げることは決して出来なかったと主張したい。兵器を作るのに、最新で最高のチップを使う軍隊はない。それらに制裁を加えても、ほとんど意味がない。インテル80386互換の古いCPUでも、正しくプログラムすれば、現代の大砲システムを管理するには十分だ。わずかなお金で、アジアの電子市場で何千個も手に入る。

特殊なものが必要な例外はいくつかある。ロシアはしばらくの間、暗視装置の生産で遅れをとっていた。ロシアはフランスから暗視装置の一部を輸入していたが、そのためにさらなる移転が妨げられていた。しかし、この問題は解決されたようだ。基礎素材とエネルギーについては、ロシアは必要なものをすべて持っている。新しい兵器を開発・製造するための有能なスタッフもいる。

5年前、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、西側諸国より優れた新兵器システムの数々を明らかにした。プーチン大統領はまた、これらの兵器がロシアの科学者によって発見された「新しい物理的原理」に基づいていることにも言及した。先日の東方経済フォーラムでも、彼はその主張を繰り返した:

安全保障の分野に目を向ければ、新しい物理的原理を利用した兵器が、近い将来、どの国の安全保障も保証することになるだろう。我々はこのことをよく理解しており、それに取り組んでいる、とプーチンは言った。

(この文章は全大会の議事録にはないが、スプートニクが正しく伝えていると信じている)。

プーチンが何を言いたかったのか、推測の域を出ない。私もしばらく考えてみたが、彼が何を考えているのか見当もつかないことを認めざるを得ない。

ロシアが西側諸国を凌駕するという警告は、2022年6月にRUSIのアレックス・ヴェルシーニンが「産業戦争の再来」についてのメモを発表したときに出された:

2つの大国間の長期戦争における勝敗は、どちらの側が最も強力な産業基盤を持っているかによって決まる。ある国は、大量の弾薬を製造する製造能力を持つか、弾薬製造に迅速に転換できる他の製造業を持たなければならない。残念ながら、西側諸国はもはやそのどちらも持ち合わせていないようだ。

西側諸国がその能力を取り戻すにはコストがかかりすぎるのだ。

ロシアが物資を使い果たしていると言うのは、事実に基づいた分析ではなく、常に希望的観測だった。この点に関しては、メディアが現実に追いつくのに1年以上かかった。戦争の他の側面、たとえば死傷者数については、メディアはまだ何マイルも遅れている。


芙蓉

「米国は中国の台頭を止められない」

2023-09-21 19:16:26 | 社会
中国経済が崩壊すると言う趣旨の本が日本で出版され始めたのは2005年頃からだ。しかし、2010年に日本のGDPに追い付き、その後も中国経済低迷や破綻を言われ続けて13年後の現在、中国のGDPは日本の約5倍となっている。The Wall Street Journal日本版が、「不動産開発の佳兆業集団がオフショア債でデフォルトか 」を報じたのは2015年1月9日だ。今月15日、ブルームバーグは、「中国の遠洋、全オフショア債の支払い一時停止-不動産危機深刻化」を、19日朝日新聞DIGITALは、「中国不動産大手「融創」が米破産法申請、恒大に続き 負債20兆円」を、昨日のThe Wall Street Journal日本版は、「中国経済を脅かす新・不動産危機   恒大問題から2年、碧桂園の経営不安はより深刻な危機をもたらす恐れも」をそれぞれ報じている。碧桂園については、18日のブルームバーグが「碧桂園、18日にドル建て債利払い期限と元建て延長投票終了-試練続く」を報じている。メディアがこれまで中国不動産企業の経営危機で報じているのは、ほとんどが米国での破産申請(債権者は米国の投資家)かオフショア債のデフォルト状態である(オフショア債は中国国外で発行された債券)。つまり損失を受けるのは海外投資家、主に米国の投資家だ。もちろん中国国内への影響もかなりあるだろうが、現在のところ中国不動産企業は、海外投資家向けの債券をデフォルト状態にしており、破産も米国内でのものだ。直接には中国より米国の被害の方が大きいのだ。中国は1978年末に鄧小平政権によって打ち出された「改革開放政策」により資本主義経済を導入したが、特に2012年に習近平が登場すると、貧困撲滅と腐敗撤廃を掲げ、鉄道や道路などのインフラを地方にまで徹底した。地方鉄道の赤字は中国政府は問題にしない。地方のインフラ整備や教育・医療の整備は国家の責任だとする。米国のように超富裕層による政治や経済の支配を排し、経済人が政治に大きく影響を持つことは許さいないが、それがない範囲では自由な経済活動を許す。国家として教育、研究、技術発展を重視し、国費も多く投じている。以下は19日に米国Foreign Policyが掲載した「America Can’t Stop China’s Rise (米国は中国の台頭を止められない) And it should stop trying.(そして、止めようとすることはやめるべきだ)」を載せる。

 米国政府が中国の経済的台頭、とりわけ技術開発の分野での台頭を遅らせることを決定したことは疑いない。確かに、バイデン政権はこれらの目標を否定している。ジャネット・イエレンは4月20日、「中国の経済成長は米国経済のリーダーシップと相容れないものである必要はない。米国は依然として世界で最もダイナミックで豊かな経済である。どの国とも健全な経済競争を恐れる理由はない」。また、ジェイク・サリバンは4月27日、「我々の輸出規制は、軍事バランスを崩しかねない技術に焦点を絞ったものにとどまるだろう。われわれは単に、米国や同盟国の技術がわれわれに対して使用されないようにしているだけだ」。
しかし、バイデン政権の行動は、そのビジョンがこの控えめな目標を超えていることを示している。大統領候補のジョー・バイデンが2019年7月にこう批判したにもかかわらず、ドナルド・トランプが2018年に中国に課した貿易関税を撤回していない: 「トランプ大統領は中国に厳しいと思っているかもしれない。その結果として彼がもたらしたのは、米国の農家、製造業者、消費者が損をし、より多くの支払いをすることだ。」その代わりにバイデン政権は、チップや半導体装置、特定のソフトウェアの輸出を禁止することで、中国への圧力を強めようとして来た。また、オランダや日本のような同盟国を説得し、追随させて来た。さらに最近では、8月9日、バイデン政権は「半導体・マイクロエレクトロニクス、量子情報技術、人工知能分野の機密技術・製品」で、「中国の軍事、諜報、監視、サイバー対応能力を著しく向上させる可能性があるため、国家安全保障上特に深刻な脅威となる」中国への米国からの投資を禁止する大統領令を出した。
これらの行動はすべて、米国政府が中国の成長を止めようとしていることを裏付けている。しかし大きな問題は、米国がこのキャンペーンを成功させられるかどうかである。幸いなことに、米国が中国政策を米国人、そして世界の他の国々にとってより有益なアプローチに方向転換するには、まだ遅くはない。

中国の技術発展を遅らせるという米国の決断は、「馬が蹄鉄を打ってから納屋の戸を閉める」という古い決まり文句が示す愚行に似ている。現代の中国は、中国の技術発展を止めることが出来ないことを何度も示して来た。
1949年に中華人民共和国が誕生して以来、核兵器、宇宙、衛星通信、GPS、半導体、スーパーコンピューター、人工知能など、さまざまな重要技術において、中国のアクセスを制限したり、中国の開発を停止させようとする努力が何度も行われて来た。米国はまた、5G、商用ドローン、電気自動車(EV)における中国の市場支配を抑制しようとして来た。歴史を通じて、中国の技術的台頭を抑制するための一方的または治外法権的な執行努力は失敗しており、現在の状況では、長年にわたる米国の地政学的パートナーシップに回復不能な損害を与えている。1993年、クリントン政権は中国の衛星技術へのアクセスを制限しようとした。今日、中国は宇宙に約540基の衛星を保有し、スターリンクの競合機を打ち上げている。
GPSでも同じことが起こった。1999年に米国が中国の地理空間データシステムへのアクセスを制限した時、中国は主要な技術的デカップリングの最初の波の1つとして、独自の平行した北斗全球航法衛星システム(GNSS)システムを構築しただけだった。いくつかの指標では、BeiDouは今日GPSよりも優れている。GPSの31基に対し、北斗は45基と世界最大のGNSSである。また、120の地上局によって支えられているため精度が高く、双方向のメッセージングなど、より高度な信号機能を備えている。他国も以前、中国の技術的台頭を阻止しようとして失敗したことがある。1950年代から1960年代にかけて、ソ連が中国から核兵器技術を遠ざけていた時、中国は1960年代初頭に独自の「マンハッタン計画」を立ち上げ、1964年までに初の核実験に成功した。ロシアの中国に対する核の影響力はその日に終わった。

バイデン政権が中国に対してとった措置の多くも、中国の報復能力を考慮せずに実行された。中国は、米国のテクノロジー・スタックの本当にかけがえのないコンポーネントの多くを物理的に構築しているわけではないが、米国のイノベーション・エコシステムに燃料を供給する上での原材料投入(レアアース)と需要(収益創出)の重要性を痛感しており、現在それらをテコとして利用している。現在の一触即発のダイナミズムの中で、中国は米国の技術と資本の輸出制限に対抗して、バリューチェーンの重要な両端を圧迫し始めるだろう。中国が7月にガリウムとゲルマニウムの輸出を禁止したのは、レアアースとクリティカル・メタルの分野における中国の優位性を米国(とその同盟国)に思い知らせるための口火を切ったに過ぎない。中国はマグネシウム、ビスマス、タングステン、グラファイト、シリコン、バナジウム、蛍石、テルル、インジウム、アンチモン、バライト、亜鉛、スズの加工においてほぼ独占状態にある。中国はまた、リチウム、コバルト、ニッケル、銅など、米国の現在および将来の技術的願望のほとんどに不可欠な材料の中流加工でも優位を占めており、これらは世界的に急速に発展しているEV産業にとって不可欠である。

米国や他の中立国は、これらの物質の多くを鉱物資源として埋蔵しているが、単に採掘や生産のスイッチを入れればいいと考えるのはナイーブだろう。必要な採掘と加工のインフラを構築するだけでも、少なくとも3年から5年はかかる。熟練労働者の確保と訓練、あるいはそうした活動に必要な操業許可と環境許可の取得には、言うまでもない。どちらも不可能となる可能性がある。レアアースの加工は、非常に有毒で環境破壊的な取り組みである。そのような許可が下りる可能性は低い。アリゾナ州がTSMCの製造施設のために有能な労働者を見つけるのに苦労し、外国の熟練労働者を輸入することに反対する国内の労働組合に対処しているのであれば、米国が同様の材料加工能力を開発出来るとは思えない。その過程で、中国は加工材料へのアクセスをどのように配分するかでキングメーカーを演じることになり、米国の技術・防衛大手への供給が制限される可能性が高い。中国の報復能力を考慮に入れていないことは、米国が中国に対処するための綿密で包括的なアプローチを持っていないことを示している。

中国から最先端チップへのアクセスを奪おうとする米国の措置は、中国にダメージを与える以上に、米国の大手チップ製造企業にダメージを与える可能性さえある。中国は世界最大の半導体消費国である。過去10年間、中国は米国企業から大量のチップを輸入して来た。米国商工会議所によると、中国に拠点を置く企業は2019年に米国企業から705億ドル相当の半導体を輸入しており、これはこれらの企業の世界売上の約37%に相当する。クオルボ、テキサス・インスツルメンツ、ブロードコムのように、収益の約半分を中国から得ている米国企業もある。クアルコムの収益の60%、インテルの収益の4分の1、エヌビディアの売上の5分の1は中国市場からのものだ。これら3社のCEOが最近ワシントンに赴き、輸出規制によって米国産業のリーダーシップが損なわれる可能性があると警告したのも不思議ではない。中国が5月に米マイクロン・テクノロジーのチップを禁止したように、米国企業は中国からの報復措置によっても打撃を受けるだろう。中国はマイクロンの売上の25%以上を占めている。
中国への販売によってもたらされた莫大な収益余剰は、研究開発努力に回され、その結果、米国のチップ企業はゲームに先んじることが出来た。商工会議所の試算によると、米国が中国への半導体販売を完全に禁止した場合、米国企業は年間830億ドルの収益を失い、12万4000人の雇用を削減しなければならない。また、年間研究開発予算を少なくとも120億ドル、設備投資を130億ドル削減しなければならないだろう。そうなれば、長期的に世界的な競争力を維持することはさらに難しくなるだろう。米国の半導体企業は、チップ分野における米国の対中行動が、中国の利益よりも自分たちの利益を害することを痛感している。米国半導体工業会は7月17日に声明を発表し、ワシントンが「過度に広範で、あいまいで、時には一方的な制限を課そうとする度重なる措置は、米国半導体産業の競争力を低下させ、サプライチェーンを混乱させ、市場の重大な不確実性を引き起こし、中国による継続的なエスカレートした報復を促す危険性がある」と述べ、バイデン政権に対し、半導体業界の代表者や専門家とのより広範な関わりなしに、さらなる制限を実施しないよう求めた。

チップス法は米国の半導体産業にいつまでも補助金を出すことは出来ないし、中国に代わる世界的な需要基盤もない。他のチップ生産国は必然的に仲間割れして中国に売り込み(歴史的にそうして来たように)、米国の行動は無駄になるだろう。そして、中国へのチップやその他の核となる投入物の輸出を禁止することで、米国は戦いの数年前に中国に戦争計画を手渡したのだ。中国は、自給自足を構築するよう、そうでなかった場合よりもはるかに早い段階で駆り立てられているのだ。ZTEとファーウェイの部品が禁止される前、中国は米国のチップを購入し続け、フロントエンドのハードウェアに集中することに満足していた。ASMLのCEO、Peter Wennink氏は、中国はすでに半導体の主要アプリケーションと需要でリードしていると述べている。Wennink氏は、「通信インフラ、バッテリー技術の展開は、ミッドクリティカルで成熟した半導体のスイートスポットであり、そこでは例外なく中国がリードしている 」と書いている。


紫式部

「経済成長、G7vs BRICS」

2023-09-20 19:19:13 | 社会
今日は一日曇天が続き、最高気温は28度で、暑さが消え、風が吹くと秋を感じさせてくれた。今日から7回目のワクチン接種が始まった。職場での予約も来月まで埋まっている。ワクチンを1度も接種せず、ワクチンん接種に批判的なためか、早い段階でワクチン担当から外された。自分にとってはありがたい。担当すると、犯罪者のような気持ちにもなる。現在の第9波は先週、少し勢いを失ったが、今日からのワクチン接種で再び勢いづく可能性がある。そして、これまでで最悪のワクチンでもあるため、また多くの死者や有害事象が発生するだろう。米国も日本と同じくこのXBB対応ワクチンの接種を始めるが、日本と違って接種する人はずっと少ないだろう。1年前の時点で、すでに接種率は17%に落ちている。 今日の日本経済新聞は、「米長期金利、約16年ぶり高水準 引き締め継続観測で」を載せ、「19日の米債券市場で長期金利が一時、4.37%まで上昇(債券価格は下落)した。8月下旬に付けた金利水準を上回り、2007年11月以来15年10カ月ぶりの高水準になった。インフレ再燃を警戒する米連邦準備理事会(FRB)が高い政策金利をより長く保つとの見方が広がり、国債売りが優勢になった。」と報じている。ブルームバーグは、「インフレとの闘い困難、予想上回るカナダCPIで国債利回り急上昇」で、「カナダのインフレ率が2カ月続けて市場予想を上回る伸びを示した。ガソリン価格の上昇が全体を押し上げた。 カナダ統計局が19日発表した8月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比4%上昇と、4月以来の大幅な伸び率。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は3.8%上昇だった。7月は3.3%上昇していた。」、「カナダ国債相場は大幅下落。2年債利回りは一時4.897%と、2001年以来の高水準を付けた。」と報じている。米国では10年国債の金利が2007年来の水準に上昇し4.362%になった。台湾の逢甲大学教授などを歴任したピーター・セント・オンジェPeter St Onge教授は、7月に「米国債の津波がやって来る」と述べていた。今月3日のGlobal Times は、「Yuan settlements in global trade reach record high of 24%: central bank data(世界貿易における人民元決済、過去最高の24%に:中央銀行データ)」を載せていた。ドル離れ、米国債離れはますます加速して行くだろう。
以下にビル・トッテンBill Totten氏訳の「Economic Growth in G7 Versus BRICS(経済成長、G7vs BRICS)」を載せる。

イギリスでは1月、BBCが国際通貨基金(IMF)の2023年と2024年の各国の成長予測に関するデータ{1}を作成し、公表した。 BBCが前面に出したのは英国にとって本当に悪いニュースだった。G7(アメリカ、カナダ、日本、ドイツ、イギリス、フランス、カナダ)、ロシア、中国という9つの主要工業国の中で、イギリスは唯一、実質的な経済衰退に見舞われることになるという。つまり、2023年のGDP(国民が年間に生産する財とサービスの総計)が縮小するのである。保守党による長い政治的支配の夜が明けた後、イギリスはこのような不名誉な結果となったのだ。

その暗い夜の出来事には、2008年から2009年の世界的な資本主義の崩壊の後に続いた緊縮政策、イギリスの経済的な問題をヨーロッパのせいにし、その頂点で行われたブレグジット(EU離脱)、イギリス市民には禁じたコロナ禍でのカクテルパーティをボリス・ジョンソン前首相が楽しんでいたこと、そして、国民に嘘をつき、それがバレてしまったときに果てしなく明らかにわかる恥ずかしい嘘をついたこと、など。しかしBBCの新しいIMFデータに関する報道{1}は、イギリス経済の低調さ以上の衝撃的な内容だった。

IMFによれば、2023年の残りの期間、中国のGDP成長率は5%以上、日本のGDP成長率の倍以上になるという。他のG7諸国はすべてGDP成長率が日本より緩やかになるだろう。中国の成長率は2023年にはアメリカの3倍以上になる。最後に、IMFが予測する2024年のGDP成長率を見るとロシアと中国はG7のどの国よりもはるかに速い成長を示している。これらの比較予測は、ほとんどの政治家の発言、マスメディアの説明、G7の旧資本主義体制からのプロパガンダ(ウクライナ戦争によって悪化した)と衝突するリアリティチェックを構成している。BBCの報道{1}はしたがって、稀有で目を見張るものであった。

30年もの間、中国が自国の経済成長を主張すると、それに対して懐疑的な見方や中傷がなされてきた。北京の主張を否定するこうした試みがその後の中国の優れた経済成長の圧倒的な記録によって誤りであることが証明されると、それでもなおそうした努力は激しさを増した。実際に中国を訪問し、高い工業化率、国内移住と都市化、そして大量消費レベルの急上昇を確認しても、中国の経済成果に対する不信感は強まった。中国が極度の貧困から米国に匹敵する経済大国へと変貌を遂げたことを無視する必要性は、1945年以降、冷戦によってソビエトの経済的業績が認識されなかったことを思い起こさせる。ウクライナ戦争をめぐるG7の対ロ制裁戦略にも、同様の非認識が見られる。今世界経済を覆っている重大な変化を真剣に理解しようとする者にとって、ひとつの疑問が立ちはだかる。古い資本主義の体制が言うこと(そして信じてさえいるかもしれないこと)と実際の状況とのギャップをどう説明するのだろうか?

その答えは、我々は、アメリカ資本主義とその世界帝国(または覇権)の衰退がもたらした、否定と見せかけの組み合わせに直面しているということだ。 こうした衰退は、旧資本主義体制内の観察者にとっては、少なくともつかの間、時折明らかになることがある。例えば、アフガニスタンやイラクのような貧しい国々を相手にしても、米軍が局地的な戦争に「勝つ」ことができなくなったことがそのような瞬間である。もうひとつの例は、新型コロナによる多数の死と病気を管理する米国の医療産業複合体のさえない実績だ。2020年から2021年にかけてのアメリカ資本主義の暴落は深刻で、すぐに悪いインフレが起こり、その後急速に信用が不安定になった。米国政府、企業、家計の負債レベルは記録的か、それに近い水準にある。富と所得の不平等は、すでに極限に達しているが、さらに拡大し続けている。このような事実を目の当たりにした一般市民は、これらの出来事を単独で見るだけでなく、何かもっと大きな問題が起きているのではないかと考えるのも無理はないだろう。もしかしたら、システム的な問題があるのではないか?

しかし、そのような考えが、答えを真剣に追求するどころか、意識的な疑問にまで発展する前に、否定が始まる。システムの崩壊は耐え難いことなので、システム的な否定が行われる。具体的な問題についての発言は、衰退する資本主義システムという文脈と結びつけるのを省略するように注意深く作られる。システム的な次元の回避は、それぞれの特定の問題や危機がもたらす危険を過小評価することにつながる。バラ色のメガネのように、反システム的なメガネは、経済問題を実際よりも危険性が低く、狭く、影響も限定的に見せる。反システム的なバイアスは一種の否定である。

例えば、ジャネット・イエレン財務長官やその他の高官が、米国経済の不平等が深まっていると嘆いていることを考えてみよう。彼らは衰退する資本主義の中で、富裕層や権力者がその地位を利用して、衰退のコストを他者に転嫁することに反論しないし、想像すらできないようだ。例えば、1971年にニクソン元大統領が行ったような賃金・物価の凍結や1940年代にフランクリン・ルーズベルト元大統領が行ったような商品の配給制度の代わりに、彼らは最近インフレに対抗するために金利を引き上げた。それが彼らの選択した反インフレ政策である。この選択肢の負担は富裕層よりも中低所得者に重くのしかかる。巨額の連邦財政赤字は、社会の富裕層から不釣り合いな借金をする(つまり富裕層により多くの利子を支払う)ことで賄われるため、同様のコスト・シフトが生じる。しかし、こうした政策選択と財政赤字に関するG7の主流派の議論は、米国資本主義の衰退とその世界的覇権と結びつけることはほとんどない。

G7諸国の経済におけるシステム的な問題の否定を補完するのは、他の国の問題とは対照的に、G7経済が健全であるかのように見せかけていることである。例えば、米国経済が「すばらしい」という繰り返し肯定することは、ロシアや中国経済を苦しめている深刻な困難と対比される。皮肉なことに、こうした困難は「独裁的」あるいは社会主義的な経済システムの「性質」に由来する、システム的なものとして扱われるのが常である。例えば、近年、米国の主要メディアは、ロシアのルーブルは間もなく「崩壊」する、中国の建築ブームは崩壊しつつある、中国の反コロナ政策が経済を破壊している、などと報じた。ロシア経済については故ジョン・マケイン米上院議員が{2}、ロシアを「国を装ったガソリンスタンドだ」と一蹴した。ドナルド・トランプ元大統領やジョー・バイデン大統領の周辺では、(関税、貿易、制裁、香港、台湾などに関する)あらゆる具体的な政策にかかわらず、中国の経済システムの変革が必然的に目前の目標であるという議論がしばしば展開された。

現実はこうした否定や見せかけを台無しにする。それが、彼らが現実を覆い隠そうと必死になる理由の一つなのだ。例えば、過去四半世紀のGDP成長率で世界をリードしてきた中国経済の実績は、その特定の経済システムに対する自信と忠誠心を裏付けている。BBCの図表{1}はその自信をさらに裏付けるものでしかない。同じ論理で、この図{1}は旧G7資本主義体制のシステム的自信に挑戦している。G7の業績と、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に集まる新興の(GDPベースではすでに大きくなっている)代替諸国との間に広がる差に対して、否定や見せかけは持続可能な対応にはなりそうにない。

もちろん、G7もBRICSも共に多様な集合体であり、メンバー間には多くの重要な違いがある。またどちらのブロックも資本主義や社会主義の構成要素を維持したり、その間を移行したりする保証はない。G7とBRICSの関係は、さまざまな形態の資本主義と社会主義の間で起こりうる移行と同様に、現在、重要な社会的問題と闘いである。両ブロック内部の社会運動がこれらの問題と闘いを形成していくだろう。そのためには、特に戦争を回避するためには、社会運動は否定や見せかけを止めて現実を直視する必要がある。


過去最高の米国政府債務33兆ドル

米国の8月の債務不履行件数が月間で2009年以来最高を記録