ジョンズ・ホプキンス大学のシステム科学工学センターThe Center for Systems Science and Engineering:CSSEが集計する新型コロナウイルスの世界での拡散状況を見ると、世界では感染者が98382人で、10万人に迫って来た。うち、中国が80552人、韓国6284人、イタリア3858人、イラン3513人、その他696人、ドイツ545人、フランス423人、日本360人、スペイン282人、米国233人などとなっている。韓国は中国に次いで多いが、その原因はもちろん宗教団体による集団感染にもあるが、何よりも検査件数の多さにある。世界人口をリアルタイムに表示している米国のworldometersと言うサイトの「Coronavirus Testing: Criteria and Numbers by Country」を見ると、3月2日時点で、韓国は検査件数が109591で、人口100万人当たりで2138人となり、中国を除くと世界で最も多く検査をしている。イタリアは23345、イギリス13525で、日本は9000ほどでしかない。人口が5130万人の韓国と比べると、いかに日本の検査件数が少ないか分かる。検査が少なければ少ないほど当然ながら感染者数は少なくなる。今日から日本では、検査が保険で可能となったが、依然として検査が出来る医療機関が限定されている。インフルエンザのようにほとんどの医療機関で検査が可能と言う状態にならなければ、国内の感染の実態は掴めない。米ノースイースタン大学Northeastern Universityのネットワーク研究者である、マッテオ・チナッツィMatteo Chinazzi氏が、中国の武漢の封鎖の効果を判定するモデルを共同開発したが、それによると、1月23日の人口1100万人の都市である武漢封鎖は、すでに手遅れであり、世界的な流行を3〜5日遅らせただけだとしている。1月23日にはすでに国内の他の主要都市に感染は広がってもいた。そのため、武漢の封鎖は、感染の可能性を下げるどころか、逆に日本や韓国へ新型コロナウイルスを運ぶリスクを高めることになった。日本と韓国では移動制限が限定的で、武漢や湖北省からの旅行者はブロックされていたが、中国本土の他地域からの旅行者は入国出来たからだ。米国、ワシントン大学University of Washington公衆衛生学部のニコール・エレットNicole Errett講師も、長い目で見ると、移動の禁止が感染症拡大のリスクを完全に抑えられるという証拠は、あまり多くないとし、エボラ熱とSARSの際に実施された移動制限を再検討すると、そのほとんどが短期的な効果しかなかったと報告している。インフルエンザに関する同様の調査でも、移動制限によって流行の拡大を1週間から2カ月遅らせたものの、トータルでの発生率は3%しか減らせなかった。ジョージタウン大学Georgetown University教授で、WHO協力センターの国内・国際保健法研究所ローレンス・ゴスティンLawrence Gostin所長は、日本の「ダイヤモンド・プリンセス号」への対応について「あれは紛れもない大惨事です。本来は、乗員と乗客を船から降ろして隔離するか、検疫施設に入れるべきでした」と語っている。米国のよく知られたシンクタンクであるブルッキングス研究所The Brookings Institutionは、今月2日付けで「The Global Macroeconomic Impacts of COVID-19: Seven Scenarios(COVID-19のグローバルなマクロ経済的影響:7つのシナリオ)」と題するオーストラリア国立大学The Australian National Universityのワーウィック・マッキビンWarwick Mckibbin教授とローシェン・フェルナンドRoshen Fernando教授の論文を公開した。この論文では、この新型コロナウイルスによる世界的な流行、いわゆるパンデミックpandemicが発生した場合の経済的影響を報告しているが、経済的影響と同時に感染の人的被害まで予測しており、それがまさに驚くべき数値になっている。最少のケースでも、世界での死亡者は1500万人にもなり、最多のケースでは6800万人と言う途方もない数である。日本に限ると、感染拡大が抑えられた場合でも12万人が犠牲となり、最多では57万人に上る。経済的には世界のGDPが最少ケースで2.4兆ドル、最多ケースでは9兆ドル失われる。
オナガガモ(雄)