釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

「アジア」とは異なる日本の対応

2020-03-30 19:13:13 | 社会
1週間前の3月23日は世界の新型コロナウイルス感染者数は32万人であった。それが1週間でほぼ倍増し72万人を超えた。感染の拡大時には、よく言われるように感染者数は指数関数的に増えて行く。映画が好きで、欧米やアジアの映画も見る。韓国ドラマに「ホジュン~伝説の心医」と言うドラマがあり、何度か見て来た。主人公は16世紀から17世紀初めにかけての朝鮮王朝時代の許浚(ホ・ジュン)と言う名の医師である。身分的なハンディを乗り越え、最後には国王を診療する医官の最高位に着き、歴史的にも貴重な医書『東医宝鑑』を編纂する。ドラマでは、医書の編纂が終えられたとして、余生を民衆の治療で過ごしたいと、最高位の医官の地位を自ら退いた。しかし、感染症の広がりの中で、治療に取り組むうちに自らも感染し、命を落とす。ドラマでは二度感染症が広がる場面があり、いずれも感染の勃発した地域が閉鎖されている。閉じ込められた人々には健常者も混じるが、この時代には検査で選別などなし得ないため、やむを得ないのだろう。横浜のクルーズ船はまさにこれを強いられた。4世紀も前と同じである。封鎖内ではしかもまともな衛生管理すら守られていなかった。それを国立感染症研究所所長は、自分たちの「研究論文」として、WHOへ提出している。政府の専門家会議のリーダーとして、命を守る医者ではなくウイルスしか見ない研究者の立場でしか臨んでいない。こうした姿勢は米国疾病予防センターCDCも同じである。感染症研究所もCDCもすでに検査キットがあるにもかかわらず、自分たちの検査キット開発にこだわり、早期発見に着手せず、CDCの開発した検査キットなどは、正確さに欠けて、かえって医療現場を混乱させ、本格的な対応を結果的に遅らせてしまった。それが現在の感染者の急増を持たらしている。26日のNHKも、「アメリカで感染者急増の理由は? 新型コロナウイルス」として、「専門家は、これまでの検査態勢の不備が実態の把握を遅らせ、感染の拡大につながったおそれがある」と伝えている。今の日本もまさに米国と同じことをしているが、そこには触れていない。古今東西、感染症の基本は、先ずは早期に感染者を見出し、隔離することである。そこで遅れをとれば、確実に、後に感染爆発を迎える。政府は検査件数を当初1日4000、その後1日7000とか8000に増やすと言いつつ、いまだに1日に2000に満たない件数である。「集団免疫」を掲げた英国も検査を行わず、掲げたわずか数日後に、ニール・ファーガソンNeil Ferguson教授を中心とするインペリアル・カレッジ・ロンドンImperial College LondonのCOVID-19対策チームからの批判的論文が公表されると、方針を180度変え、封じ込めに転換した。しかし、そもそもが何も準備していなかったことから、英国は現在、医療現場が厳しい状況に立たされている。28日の医学誌THE LANCETは、“a national scandal(国家的不祥事)”と言う言葉を使って英国の対応を批判したリチャード・ホールトンRichard Horton編集長の記事を載せている。医療現場がさらに厳しいのは、無論、米国である。防護装備から医療機器、医師や看護師の不足。地域的には医療崩壊そのものである。アジアの韓国、台湾、シンガポールなどと異なり、日米英は、早期検査を怠ったための感染拡大・実質的な医療崩壊に甘んじざるを得なくなっている。日本もその状況になることは避けられない。「感染症」専門家は、軽症者は自宅待機と訴える。欧米もそのようにする国が多いが、これも基本を無視している。家族内感染を増すだけであり、たとえ無症・軽症であっても、感染力があることが分かっている以上、専用施設を設けて隔離しなければならない。感染を拡大させるのは2割の重症者ではなく、自由に動ける8割の無症・軽症者である。経済活動を考え、対応が遅れるほど逆に、後で経済的ダメージが一層大きくなる。再感染があり得る上、変異があるため免疫も獲得出来るか、いまだに分からない。米国や中国もワクチンの開発を急いでいるが、通常だと1~1.5年はかかる。3段階に分けて試験が行われるからだ。収束はして来ている中国も、今では、新規感染者がほとんど国外からの帰国者であるため、国際便は週に1便とか極端に制限されている。米国から中国への航空運賃は片道300万円などと言う途方もない額になっているが、それでもたちまち売り切れてしまうようだ。帰国後は韓国や台湾同様に2週間厳しく隔離状態となる。この点でも日本の甘さが目立つ。政治家が感染症を熟知しないのは当たり前で、問題は、その政治家に助言すべき感染症専門家が救命に関心がないことである。クルーズ船の衛生管理の問題を的確に指摘した神戸大学の岩田健太郎教授は、日本は感染者の全数把握を目的にしているのではなく、重傷者の治療を優先しているのであり、検査数を無闇に増やすべきではないと言う。同じ人物なのかと疑ってしまった。
米国は今後もイタリア以上に悪化して行く