釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

若い世代も安心出来ない

2020-03-20 19:12:58 | 科学
世界の新型コロナウイルス感染者は245000人を超え、死者は1万人を超えた。イタリアの死者も中国の「公表数」を超えた。3月18日のBloombergの「99% of Those Who Died From Virus Had Other Illness, Italy Says(イタリアによれば、ウイルスで亡くなった人の99%は他の病気があった)」と題する記事は、イタリア国立衛生研究所による調査で、ウイルスによる死者約3000人の99.2%は何らかの基礎疾患を有していたことを伝えている。75%以上が高血圧で、約35%が糖尿病、約30%が心臓病であった。基礎疾患を複数持っている場合は致死率も上がり、基礎疾患がない人は死亡率は1%にも満たなかった。3つ以上の基礎疾患がある人が48.5%を占め、2つの人が25.6%、1つの人が25.1%で、何もない人は0.8%であった。年齢の中央値は80.5歳である。イタリア保健省に専門的なアドバイスをする、エビデンスに基づく医療を提唱しているNPO(非営利団体)GIMBE財団によると、イタリアで新型コロナウイルスによる致死率が他国に比べて高いのは、症状がある人のみに検査を行ったため、氷山の一角を観察しているに過ぎず、無症状・軽症者を全て検査出来ていないので過大に見積もられていると言う。イタリアの感染者は公表の41035人ではなく、10万人はいるだろうと言う。3月18日のThe New york Timesの「Younger Adults Comprise Big Portion of Coronavirus Hospitalizations in U.S.(若い成人が、米国のコロナウイルスによる入院の大部分を占めている)」と言う記事では、米国でもフランス同様に、若い年代で重症化が見られることを伝えている。ニューヨークタイムズが米国疾病予防管理センター(CDC)の発表した患者情報をあらためて精査したところ、38%の入院患者が20歳から54歳であった。集中治療室ICUに入院した121人の患者のほぼ半数は65歳未満の成人で、入院患者の20%、ICU患者の12%が20〜44歳であり、高齢者以外の年代でも重症化するケースが多発している。コロンビア大学Columbia UniversityのモースStephen S. Morse教授は、若者も注意が必要だと警告している。医学雑誌LWW Journalsに掲載された中国の「Clinical characteristics of COVID-19 patients with digestive symptoms in Hubei, China(中国湖北省における消化器症状のあるCOVID-19患者の臨床的特徴)」と題する論文によると、2020年1月18日から2月28日までの期間で中国の武漢市の3つの病院で204人の患者を調べたところ、約半数が、自身の主要な症状として、下痢や拒食、完全な食欲不振といった消化器系の不調を訴えたことを確認した。悪寒や嘔吐、腹部の痛みといった症状はあまり一般的ではなかった。そして、呼吸器系の症状の患者らより、消化器系の症状の患者らの方がより遅れて新型コロナウイルスが検出され、こうした患者の治療は長引き、困難で入院が長期化している。米国のClinical Gastroenterology and Hepatologyと言う医学誌でも、「What Should Gastroenterologists and Patients Know About COVID-19?(消化器専門医と患者はCOVID-19について何を知っておくべきか?)」と題する論文で、腸疾患のある人への新型コロナウイルスの感染の注意が促されている。各国の感染状況は参考になるが、ウイルスが予想以上に早く変異しており、他国とは違った感染状況となる可能性がある。集団免疫の獲得を対策の柱とした英国も、国内の研究者からの批判もあり、方針を変えた。免疫が必ず獲得出来るとの根拠はなく、むしろ隔離対策を取らないことで25万人もの犠牲者が出ると言う研究も出された。3月16日、シンガポール のローレンス・ウォンLawrence Wong国家開発大臣は、英国、日本、スイスに対して、「(ウイルスを)封じ込める意図的な努力がなければ、これらの国の感染症例の数は今後数日または数週間でさらに急激に増加することが予想され」るため、これらの国からの入国を制限すると発表している。昨夜の政府の専門家会議は、「欧州のように感染が爆発的に拡大する可能性を指摘」したが、何を今更と言った感じである。早くからの広範な検査体制を無視した訳で、水面下の感染を拡大させて来たのだ。中でも東京都の検査の少なさが、現在の感染者の半数以上で感染経路が不明となる事態をもたらせている。神奈川県で1月15日夜、国内の初感染が確認されてから2ヶ月以上が経過するが、広範な検査体制も、軽症者から重傷者までの隔離、治療体制がほとんど確立されておらず、シンガポールが見るように、日本は他国から見れば、対策への「意図的な努力」がないと判断されるのだ。少し前までは米国も同じ姿勢であったが、さすがに感染者が全州に拡大し、わずか3日で感染者が倍増しイタリアと同じペースで増加しているためか、大統領も180度姿勢を変えた。しかし、すでに感染は広がっている。米国は当初入国検疫を中国からの渡航者にしか行っておらず、大量に入国・帰国して来る欧州からの渡航者・帰国者には検疫を行わなかった。そして、PCR検査の実施も日本同様にCDCによる独自検査キットの開発にこだわり遅れてしまった。米国も長期戦にならざるを得ないだろう。これは単にウイルス感染問題に留まらず、米国経済を叩き潰すほどの影響を及ぼすことになるだろう。
白梅